浅野から突然舞い込んだ…理事長の暗殺依頼。
「もちろん物理的に殺って欲しいわけじゃない。殺って欲しいのは…あいつの教育方針だ。
その手段として、次の期末でE組に上位を独占して欲しい。」
と言う浅野。
「むろん一位は僕になるが、優秀な生徒が優秀な成績でも意味が無い。
君達のようなゴミクズがA組を上回ってこそ…理事長の教育をぶち壊せる。」
…大分傲慢な言い方だった。だが言いたい事は大抵分かる。
「どーいう事よ なんでA組の頭のおまえが…。」
「ひょっとして…お父さんのやり方を否定して…振り向いて欲しいの?」
片岡がそう訊く。しかし、浅野はそれを否定する。
「勘違いするな。」
と言う浅野。
「父親だろうが蹴落とせる強者であれ、そう教わって来たし…そうなるよう実践してきた。
他人はどうあれそれが僕等親子の形だ。
…だが僕以外の凡人はそうじゃない 今のA組はまるで地獄だ。
A組の皆はE組への憎悪を唯一の支えに限界を越えて勉強させられている。
もしあれで勝ったなら…彼等はこの先その方法しか信じなくなる。
敵を憎み蔑み陥れる事で手にする強さは限界がある。」
浅野は絞り出すように言う。
確かにそうだ、憎悪、軽蔑、そういった感情は勝利への執念を増幅させるが、
真の強さを得ることはそれでは出来ない。それは、俺が一番よくわかっていた。けれど…
浅野はさらに続ける。
「彼等は高校に進んでからも僕の手駒だ。偏った強さの手駒では…、
支配者を支える事はできないんだ。
時として敗北は…人の目を覚まさせる…だからどうか…正しい敗北を僕の仲間と父親に。」
頭を下げる浅野。
俺は内心驚いていた。浅野がここまでするのかと。
俺は2年の時一年間浅野と同じクラスだったが、彼が生徒などに頭を下げるのは
見たことない。ましてやE組に。
傲慢な本心を隠さず語るのは、きっと本音で話しているからだ。
と好意的に俺は解釈した。しかし、それでも…
「ちょっと虫が良すぎるんじゃないか。」
「え?」
「お前は今まで、E組を見下し、陥れ蹴落そうとして来た。期末テスト、棒倒し、
学園祭では特に何もなかったが…。とにかくだ、今まで俺達にそういう扱いをして来て、
いきなり理事長にA組が支配されたから助けてくれって言われ、俺らが簡単にはいと言うか?」
別にA組を倒す事自体は言われなくても目標としている。浅野の言いたい事も納得出来る。
でもその前に、A組とE組に深い確執があるのを忘れてはならない。
すると浅野はこう返した。
「…分かっている。身勝手なのも理不尽なのも。それでも、
僕は、てし…仲間を元に戻したいんだ。正しい敗北で…。そうしなければ椚ヶ丘は崩壊する。」
「そうか…。まあいい、お前の覚悟は良く分かった。それに俺らが上位を独占する事に何の異論も無いぞ。
元からそのつもりだった。」
しかし話はここで終わらない。
カルマはそんな事を気にせず挑発的に煽る。
「え、他人の心配してる場合?1位取るの君じゃなく俺なんだけど。」
ピキッとくる浅野。そりゃそうだ。誠意をこめて頭を下げたら煽られるんだから。
カルマは続ける。
「言ったじゃん次は容赦しないって。1位は俺で2位は黒崎。
その下もE組で、浅野クンは10番あたりがいいとこだね。」
しかし竹林は指摘する。
「一学期末と同じ結果はごめんだけどね。」
そう、あの時の黒歴史だ。慢心で大きく順位を下げたあの時。
さらにカルマに絡む寺坂。
「今度は俺にも負けんじゃねーのか ええ!?」
...大分調子に乗っていやがる。
カルマに蹴られる寺坂。
「ぐほっ」
自業自得だな。
「浅野...」
すると磯貝が口を開く。
「俺たちは。今までだって本気で勝ちに行ってた。今回だって勝ちに行く。
いつも僕等とお前らはそうして来ただろ。
勝ったら嬉しく負けたら悔しい。そんでその後は格付けとか無し、恨みっこなし。
もうそろそろそれでいいじゃないか。」
カルマも続ける。
「余計な事考えてないでさ、しとめる気で来なよ。それが一番楽しいと思うよ。」
それに対し、ニッと笑う浅野。
「面白い、ならば僕も本気でやらせてもらうぞ。」
***
一方理事長は職員室を訪れる。
そしておもむろに参考書を持ち出し、数学の教員の机の上に置く。
「これが今回のテストの範囲です。この中から最難問を出題してかまいません。」
テスト範囲の広さに驚く教師。
「これ全部、数学だけの範囲だと...」
(…これが中学生のテスト!?下手な大学なら入れるレベルだぞ!?理事長は…どこまで生徒のレベルを上げる気だ!!)
教育の鬼、浅野學峯。その向上心と執念はどこまでも深い。
彼がそこまで強さを求める理由とは...
理事長が自室に戻ると、そこの机には殺せんせーが乗っていた。
「…おやあなたからやって来るとは珍しいですね。何も悪い事はしてませんよ。」
殺せんせーは何も釘を刺しにきたのではない。殺せんせーの手には菓子折りの袋が。
「我々の教育合戦もおそらくこれで最後です。
私の存在を拒まずに受けて立って頂いたお礼をと思いましてねえ。」
そう語る殺せんせー。それに対し、理事長はこう返す。
「では、もし私が勝ったら、何故貴方が教師になったのか、教えてくれませんかね。」
「...」
殺せんせーは少し考えた後、こう言った。
「そもそも人に何かを教えたいと欲する時 大きく分ければ理由は2つしかありません。
自分の成功を伝えたい時か…自分の失敗を伝えたい時。あなたはどちらですか?」
「さあ、どうでしょうね。」
理事長はその質問に答えなかった。
そして場所は教室。 E組はとにかく勉強をした。
分からないことは殺せんせーの分身に聞きまくり、生徒同士で教えあったりもした。
やりすぎて先生の分身が磨り減る事も。
そしてとうとう決戦の日。
2人の怪物に殺意を教育された生徒が、因縁に決着をつけるべく今…紙の上でやりあう。
その結果やいかに...
***
当日、教室へ向かう俺達。すると、A組の連中が血走った目でこちらを睨む。
「…殺気立ってるな。」
「うわ、あいつらに勝てる自信ある?カルマ。」
中村が問いかける。すると
「さあ、本気で殺す気のある奴がいたら怖いけどね。」
カルマが思い浮かべたのは、誰あろう浅野学秀だった。
そしてテスト開始の宣言がされる。
迫り来るモンスター。俺らは全力で立ち向かう。
例え暗殺が成功しても、このテストで良い結果が出なければ、
俺らは暗殺者として胸を張る事は出来ない。
俺らが殺し、先生が教えた暗殺教室。
第二の刃を身につけた事を、ターゲットに証明出来ない事には、
卒業など出来ない!
中村がモンスターにとどめを刺したところで、テストは終了した。
「…終わった。」
皆消耗が激しく、かなり疲れている。
「えげつない問題だったな。」
「難しい上に問題数が多過ぎるよ。」
「ヒアリングやばかった。ビッチ先生でもあんなボキャブラリー豊富じゃねえよ。」
まだ1時間目だというのにこの消耗。渚など英語が1番の得意科目だというのに。
だが油断はしていられない。休憩する暇も無い。
恐らくだが、平均点ラインも大幅に低くなる。
難易度が段違いだからだ。恐らくどこの高校入試よりも難しい。
満点など学年に3人いれば奇跡。俺とて、万全の対策をしたつもりだが、
満点を取れるかは危うい。
だからこのテストでは、順位の白黒がはっきりつく!
前原がモンスターを叩き斬った。
…
理事長により洗脳され、正気を失いおぞましいほどの殺意で問題を解いていくA組。
しかし、そんな中、1人だけ正気を保ち、冷静に問題を解いていく男がいた。
黒崎の旧友、三山である、
彼は理事長がA組の担任になると宣言してから、一度も教室に入っていない。
「…あんな化け物の洗脳なんか受けたくないぜ。」
三山は冷や汗を浮かべる。あの時抜け出していなかったら、どうなっていたか、考えただけでおぞましい。
けれど、理事長、殺せんせー、どちらの教育も受けずに臨むには、テストの難易度が高すぎた。
彼はかなり苦戦していた。
そして、
「んで、A組の奴らはどうなんだ?」
「休み時間に休憩がてら偵察して来たけど恐ろしいぜ。
ただただ熱中してる。憎悪ってあんなに凄いパワーになるんだな!」
A組は狂気の様相でモンスターを倒す。
しかし、そうしてる間にこちら側にモンスターが襲い掛かる。
「まずいぞ、今はこっちを優先するんだ!」
慌ててその攻撃をかわす。そして砂埃が消え視界が晴れると、
律がモンスターの攻撃を受け止めていた。
「話は聞いたダス!全員50位以内が目標だそうですね。」
「誰だよ!」
「ああ、偽律さん。」
そういえばテストの時はこの人だったか。
「本物の律さんはこう分析してたダス。
全員50位以内の目標を達成するのは、私達のような成績下位組の働きにかかってると。」
「ああ、やってやんよ。」
前原が銃を構える。
「はじめ!」
最終教科。数学。
「問題の異常な難易度の高さと量の多さ。始めた直後にペース配分を決めないと。
どれから解くか迷っていたら、あっという間に追い詰められる!」
すると、竹林は横を見て安心した。
「どうやら、1番心配な奴が大丈夫そうだ。」
「うお!」
寺坂がしらみ潰しに場合の数を求めている。
「マジかよ寺坂。起こりうる全部の可能性を書き出して一つずつ潰していってやがる。」
「普通組み合わせの公式使って解く所だろう?」
しかしそれを否定する狭間。
「いや、あいつみたいな愚直バカには良い戦法よ。
下手に近道探して悩むより、手っ取り早く片付けてったほうが良いのよ。」
そう分析する。
…「寺坂君。君が確率の問題に出くわしたら、こういう力技を使いなさい。
君の長所はその単純性ですから。」…
「くっそー!あのタコ、バカだからってバカにしやがって。」
寺坂が半ばキレながら問題を解く。
「そうだよね、私達エンドのE組なんだし、カッコつけてないで泥臭くやってこう。」
岡野がそう決意する。
「基礎問題を早く片付けて、全力でラスト3問の難問に取り掛かる!」
「一発で急所を見つけ、一撃でも多く与えて弱らせるんだ!」
「例え正解でなくても、アプローチさえ正しければ部分点はもらえる!」
そして皆で連射を続け、ついにモンスターが砕け散る。
「よっしゃ、多分これやったぜ!」
「見直してる暇ねーぞ!次だ次!」
すると、地面が大きく揺れる。
「うわっ!」
そして地面は次第に隆起していき、一つの巨大な卵型の物体が現れる。
「…マジかよ、ラス前に漸化式なんて来るのかよ…」
「噂だけの存在と思ってたけど、まさか中学のテストで出てくるなんて!」
漸化式の登場自体は予測していた。だがまさかの最終問題じゃない?
「まずいまずい、弾の準備が!」
「くそっ…」
漸化式の対策はして来た。特殊解に持ち込んで解く。
だがしかし、俺に与えられた時間は少ない。元々数学は苦手だったから時間がかかった。
ここに来て、満点が遠のいていく!
皆の攻撃も効かない。
すると、カルマが銃を持ち突撃する。気付いたら漸化式の球体の上に立っていた。
「カルマ!」
するとカルマは穴の中に爆弾を投げ込む。
すると、漸化式は轟音を立て、爆煙を上げながら崩れていく。
「特殊解に持ってくの。先週教えたじゃん。」
…「今回のテストでは、授業だけでなく、生徒同士で、
互いに得意な科目を教え合わせました。人に教える事で、
教える側もより深く理解でき、チームワークが強くなる。
特にカルマ君、黒崎君には効果てきめんでした。
二人には多くの生徒に教えさせました。それにより隙が無くなり完璧に仕上がる。
さらに互いに教えさせました。一方の苦手が一方の得意でしたから。」…
しかし、ビッチ先生は不安そうだ。
「でも、相手の浅野って子も殺り手なんでしょう。」
「ええ、浅野君は今回クラスの強化担当を外され、一人で深く学んできた。
これもまた有効な学習法です。先生はベストを尽くしました。それでも、
3人のうち誰がトップを取るかは分かりません、ここから先は本人次第です。」
向こう側から浅野がやって来る。そして異空間から召喚される立方体。
「みんなはじっくり解いてなよ。皆の⚪︎は、俺がとっておくから。」
「そう、正解が出なくても、△くらいはもらえるはずさ。」
3人の天才と呼ばれた男が向き合う。
「さあて、」
「どうやって、」
「仕留めようかな。」
最終問題は、大きく、強烈な存在感を放ち浮かんでいた。
多分だけどこのテスト、駿台模試より難しいと思います。
ちなみに漸化式は勿論普通は高校で習いますが、椚ヶ丘クラスの進学校なら中3でも習うし、
テストに出てもおかしくないでしょう。
そして、現実の中学入試でも漸化式は出たそうです。(勿論難関校)
小6に解ける訳ないのに…
テストって怖いですね。