黒崎翔太の暗殺教室   作:はるや・H

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本編再開。ついに茅野編スタートです。

この話はまだ基本原作通りですね。


71話 嵐の時間

それは演劇発表の前日、茅野は自宅の洗面所にいた。

 

「う…」

 

触手の激痛が彼女を襲う、初めて激痛に襲われたは苦しみで発狂しそうになった。

 

けれど、次第に時が経ち、触手の激痛にも身体が慣れていった。

 

今では触手の激痛に耐えながらも平然と眠る事も出来るようになった、

 

その痛みを、触手を自分の身体の一部のように飼い慣らす。

 

拒絶反応で常人なら3日もすれば発狂死する危険な代物だが、彼女はそれに

 

9ヶ月間耐え切った。けれど、痛みを飼い殺し、触手に耐え続けた肉体に対し、

 

彼女の精神は次第に蝕まれていった。

 

そしてその触手の殺意が、彼女の中で、もう限界まで膨れ上がっていた。

 

最初は純粋に、姉の仇を討つという殺意だった。けれど次第にそれは、触手の殺意に呑まれていく。

 

けれどもその一方で、殺せんせーとE組で暗殺を続ける内、「殺したくない」

 

という思いも強くなっていった。

 

そもそも、殺せんせーは本当に姉を殺したのか。

 

そんな疑念が胸に渦巻く。

 

考えてみれば、ずっと、殺せんせーは私達生徒の事を思っていた。

 

ピンチに陥った時も助けてくれた。そんな人が、本当に殺したのか。私の姉を。

 

どうしても、茅野にはそれが疑わしく思えた。

 

…でも。もしそうじゃなかったら、私がやってきたことは一体何だというんだ。

 

茅野は鏡を見つめる。

 

私は一体誰?雪村あかり?それとも茅野カエデ?

 

いくら悩んでも答えは出て来ない。

 

もう自分で自分が分からない。それほど彼女の悩みは深くなった。

 

そして、皆を騙しているという罪悪感も、彼女の迷いを強くしていったのだ。

 

そして2つの感情が、彼女の中でせめぎ合う。

 

「殺したく、ない…」

 

頭の中で触手の声がする、

 

「殺せ、そいつはお前の姉を殺した怪物だ、殺人鬼だ。」

 

「だ、だめ、そんな事、考えちゃいけない…」

 

膨れ上がる触手の殺意に必死で耐える茅野。

 

しかし、

 

「殺せ、殺せ、殺せ…」

 

「い、嫌だ…」

 

「殺せ、お前は何の為に触手を生やした…、殺し屋になりたい、そう言ったのはお前だ…」

 

限界まで増殖された触手の殺意、彼女の精神はもう限界だった。

 

「で、でも、嫌だ…、殺したく、ない…、うわああ!

 

…ごめんね、殺せんせー…」

 

そんな彼女の抵抗も虚しく、彼女の心は触手の殺意に支配されてしまった。

 

「そうね、殺さなきゃ、あの怪物を。」

 

彼女は微笑む。しかしその目は、触手の暗い殺意に満ちていた、

 

***

 

体育倉庫。そこに茅野は1人でいた。

 

演劇で使ったビーズ、それを彼女は床にばらまいた。

 

「殺すしかない、あの怪物を。」

 

私にもう迷いはない、ただ、あの怪物を殺す。

 

ーその為に、私はこの教室に来たのだからー

 

 

とある一室、シロは誰かに話していた。

 

「最初、教室に入った時驚いたよ。あまりにも意外な人物がいるのでね。

 

そいつの事を怪物だと思った理由?そうだな…、強いて言うならば、

 

普通に教室にいたって事だ。そんな事、余程の精神力が無いと出来やしない。

 

あの人物があの場所にあの状態で居る、それだけで異常なんだよ。

 

私に気付いた時、目を逸らしていたようだが…、

 

間違いない、あの子こそ稀代の殺し屋だよ。」

 

シロが言及した少女、それは茅野だった。

 

***

 

場面はE組。杉野が机に伏して落ち込んでいた。

 

「神崎さんと共演出来るからって舞い上がっちゃって…、あんな顔したら嫌われるよなー。」

 

うん、確かにあの演技はやばかった。けどそんな事で嫌われはしないだろう。

 

あくまで演劇だし。

 

「そんな事ないよ、杉野君。演技力ある人ってカッコいいな、って思ったよ。」

 

と慰める神崎さん。それを聞き、

 

「マジで、俺野球やめて役者になろうかな?」

 

と意気込む杉野。単純な奴めと黒崎は思った。

 

「ヌルフフフ、ピッチャーにも演技力は必要ですからねえ。生徒の成長は素直に嬉しいです。」

 

と殺せんせーが感慨深そうに言う。

 

すると、茅野が彼を手招きしていたように見えた。

 

「え、俺?」

 

ジェスチャーでそう示すと茅野は頷いた、

 

「ついて来て。」

 

そして茅野と一緒に体育倉庫へ向かう。

 

そこにはビーズが所狭しと散らばっていた。

 

「…これはまた派手にやったなあ。」

 

「うん、片付けてたら手が滑っちゃって、川の表現に使ったビーズなんだけど、

 

小道具会社から借りててさ。重さが足りないと…」

 

そういう事か。

 

「なら手伝おう。2人でやったほうが早いしな。」

 

「ありがとう、みんなの暗殺邪魔したく無かったし。」

 

そしてビーズを片付けていく黒崎と茅野。

 

やはり数が多くて大変だ。

 

するとそこに殺せんせーが現れた。

 

「話は聞きました。ビーズをこぼしてしまったようですねえ。それでいなくなったんですか。

 

ヌルフフフ、3人ならもっと早いですよ。」

 

「あはは、じゃあ頼っちゃおうかな。」

 

と言うわけで殺せんせーも一緒に3人で片付ける事に。

 

「あちこち備品の隙間に入り込んじゃってさ、だから丁寧に…」

 

「分かっていますよ。壊れ物が多いのでマッハでは片付けません。」

 

殺せんせーはあっという間にビーズを片付けている。

 

マッハではなく、俺らにも見える速度だったが、

 

それでも速い。背中がガラ空きになっていたので、狙おうとも思ったが、

 

それくらいで、たった2人で殺せるならこの一年苦労していない。

 

そういえば…

 

「なんか魚臭いな。」

 

黒崎はそう感じた。どことなく魚の臭いが漂う。

 

「文化祭で魚の燻製作ったから。思い出せば、色んな学校行事やったよね。」

 

「ああ、どの行事も全力だった。けど…、これ片付けたら全部終わりだ。」

 

そう考えると、黒崎は少し寂しく思った。

 

これからは、暗殺に専念出来る。そう考えれば良いのだが、

 

それでもどこか切ない。

 

修学旅行、文化祭、体育祭、どれも普通の学校では体験出来ない事を味わった。

 

「ほんと色々思い出すね。殺せんせーが来てからすぐの事。」

 

「ヌルフフフ、あの時は君達もど素人でしたねえ。」

 

「俺の暗殺も失敗したしな。」

 

「それでも、やっぱり黒崎君とカルマ君の暗殺は衝撃的だったなあ。」

 

「まあ初期でダメージ与えたのは俺とカルマだけだしな。」

 

「イリーナ先生には、随分と敵意剥き出しでしたねえ。」

 

「…あの時のビッチには本当に腹が立ったからな。」

 

黒崎はその時の事を思い出す、しかし…

 

「巨乳には過剰に反応してましたねえ、茅野さん。」

 

「…お互いにね。」

 

そっちかよと黒崎は思う。

 

「イトナ君の時は焦ったなあ、先にやられちゃいそうだったから。」

 

(そういえば、あの時は悔しかったな。このまま殺されるのかと思って。

 

…先に、やられる?)

 

何故かその言葉が引っ掛かった黒崎。その理由が分からなかった。

 

(殺せんせー、いつも私達の事を見守って、真剣に思ってくれて、

 

どんなに危険な状況でも私達を助けてくれた。

 

黒崎君も、いつも強くて鋭い殺気を私の隣で放ってて、

 

見てて本当にドキドキしたし、その真っ直ぐな殺意には思わず惹かれた。

 

私も、色んな事やれたなあ、この教室で。)

 

E組での日々を思い出す茅野。

 

「ふふふ、本当の刃は、親しい友達にも見せないものよ。」

 

「泳ぎは苦手だしなあ…」

 

「以前ここで、理事長の私物を壊した奴がいた、そいつは問答無用でE組行きさ。」

 

そう、そこから導き出される真実。

 

「また殺るよ、ぷるんぷるんの刃なら、他にもいっぱい持ってるから!」

 

茅野は、首筋から触手を生やした。

 

その触手がうねる。

 

(…気付かなかったね、最後まで。)

 

黒崎は何かの気配に気が付き振り向く、そして見えたのは衝撃的な光景だった。

 

触手が殺せんせーを襲う。そして大きな爆音がし、気が付くと、

 

 

 

 

床に巨大な穴が開いていた。

 

「…え、落とし穴!」

 

殺せんせーも唖然としている。

 

落下していく殺せんせー。

 

そして追うようにその穴に飛び込む茅野はこう言った。

 

「大好きだよ、殺せんせー、死んで。」

 

そこにいたのは明るく、元気な茅野カエデじゃない、1人の冷酷な復讐者だった。

 

***

 

俺はその場で起きていたことが信じられず、目を疑った。

 

「か、や、の…どうしてだ…」

 

(ずっと見てきた。色んな殺し屋が挑んでは失敗していくのを。

 

その中で、もっとも成功に近かったのは、単純な落とし穴!)

 

落とし穴へ落ちていく殺せんせー。

 

それを茅野は触手で追撃する。

 

(私の触手は、死神より上手く殺れる!)

 

一方ようやく状況を把握した殺せんせー。

 

(…茅野さんに、触手!)

 

攻撃を間一髪でかわす殺せんせー。

 

(穴の底、やはり、対先生物質のプール!)

 

下を見る殺せんせー、その光景は予想通りのものだった。

 

繰り返される触手の攻撃。

 

殺せんせーは回避するのが精一杯だった。

 

「上手でしょ、先生の触手の動きのパターン、特等席で1年間たっぷり予習したから。」

 

(…強い!)

 

なんとか壁を利用して登ろうと壁に触手をつける殺せんせー。

 

しかし触手は溶けていく。

 

(壁に対先生物質!)

 

今までのどんな暗殺より周到で、万全だったのかもしれない。

 

このままいけば、殺せんせーは触手か、対先生物質のプールのどちらかに確実にやられる。

 

そして、ついに殺せんせーとプールとの距離が紙一重というくらいに縮まったその時、

 

殺せんせーはエネルギーを凝縮した。

 

(まずい、あれはエネルギー砲!)

 

茅野は慌てて防御の態勢をとる、しかし、その瞬間、周囲は強烈な光に包まれた。

 

「え…」

 

 

 

 

そして、落とし穴の底落ちていたもの、それはオレンジ色の球体だった。




原作以上に周到(壁に対先生物質)な作戦で殺せんせーを追い詰めた茅野。

しかしまさかの完全防御形態で防がれます。
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