黒崎翔太の暗殺教室   作:はるや・H

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これで茅野編はひとまず解決。ですが過去編が終われば新たなオリジナル展開が待っていますよ。


76話 告白の時間

(触手の根を素早く、精密に抜け!この一年学んだことを生かす時だ!

 

教師を全うしたいならば!)

 

自分に語りかける殺せんせー。目にも留まらぬ速さと精密さで、茅野の触手を抜いていく。

 

俺はその光景を息を呑んで見つめた。

 

殺せんせーの治療だ。ほぼ間違いなく助かるだろう。

 

それでもそれを俺は見ていた。

 

 

そしてしばらく経った後。

 

「ふう、終わりました。これで完璧に茅野さんの触手は除去されました。」

 

「と言う事は、茅野はもう大丈夫なのか…?」

 

俺は茅野を抱えながら言う。

 

「ええ、恐らくは、しばらく絶対安静が必要ですけれどね。」

 

そう言うと殺せんせーは倒れみ吐血する。

 

「殺せんせー!」

 

皆が心配して声をあげる。

 

「ちょっと疲れただけです。先程の心臓近くの一撃といい、ダメージが大きかったんです。

 

回復に時間がかかるので、先生の過去を話すのは、もう少し待って下さい。」

 

すると俺の肩にカルマと中村が手を置いた。

 

「…何だ?」

 

「いやあ、やるじゃない王子様。いや騎士様かな?キスで殺意を殺すなんて。」

 

そう言って2人は俺をからかう。

 

「…それしか思い浮かばなかったんだよ!殺意を止めるには。

 

茅野には…後で謝っておくさ。」

 

そう俺は叫んだ。その後、

 

「疲れた。奥田さん、茅野の様子見といてくれ。」

 

「はい!」

 

俺は茅野を奥田さんに任せ休息する。

 

…茅野に怒られたりしないだろうか。その時俺はそう心配していた。

 

すると渚が俺に訊いてきた。

 

「あの戦い、一体何があったの?」

 

そういえば説明するのを忘れていた。読者の皆もきっと分からないと…

 

いや何でもない。

 

「俺も気になってたんだよ。黒崎、一体何をしたんだ?」

 

「それはだな…」

 

 

時は、今日の朝まで遡る。俺は訪ねた。完全防御形態のまま教室に佇んでいた殺せんせーを。

 

勿論茅野を救う為である。恐らく殺せんせーが1番触手の事を知っている。

 

だから殺せんせーと協力して計画を立てたのだ。

 

それは、俺が律に叱咤されてから1番最初にやった事だった。

 

「殺せんせー、お願いだ、茅野を助けたいんだ。その為に、俺は何をすれば良い?」

 

「そうですね…。恐らく、茅野さんの触手はメンテナンスされていない。

 

一刻も速く触手を抜き取りたい所です。まず、黒崎君には、触手を抜き取る方法を話しましょう。」

 

殺せんせーは計画を話した。茅野から触手を抜き取る為には、触手の殺意と本人の殺意、

 

両方を忘れさせる必要があると。どちらかがある内は、触手は強く神経に癒着し離れない。

 

「その為にどうすれば良いんだ?」

 

俺は問う。

 

「まず触手の殺意ですが、…方法ならあります。

 

先生の心臓に触手を直撃させます。やったという手応えがあれば、

 

触手の殺意は消えますから。」

 

殺せんせーはそう語る。でも、

 

「そんな事したら殺せんせーが…」

 

「ええ、死ぬかもしれません。致死点からはずらすつもりですが、それでも助かる確率は6割程度です。

 

けれどね黒崎君、先生にとって、クラス全員が無事に卒業出来ないのは、死ぬ事より嫌なんです。

 

君だって、誰かを助けられないのは、自分が傷つくより嫌だから、

 

この話を持ちかけたんでしょう?」

 

「否定は出来ない。」

 

率直に言ってそうだ。誰だって分かる。触手相手に戦うというのは非常に危険だ。

 

生身の人間には余程の覚悟がなければ出来ない。

 

「でも、流石に危険過ぎる、茅野さんの触手は、スピードもパワーも、イトナ君以上にある。

 

だから…

 

超体育着を使いましょう。」

 

「…!」

 

その手があったか、と俺は内心思う。そうだ、超体育着を使えば、触手のダメージも大分軽減される。

 

その後も俺と殺せんせーは相談を続けて行く。

 

「殺せんせー、じゃあ茅野本人の殺意を失わせるってのはどうやって…」

 

「…それは、先生には出来ません。殺意の対象に変な事をされても、

 

殺意が増幅されるだけ。君が、やって下さい。思わず暗殺から気が逸れる何かを。」

 

俺は思い出す。狙撃、ナイフ術、俺が今まで学んだ事を。

 

胸ポケットに入っているのは、護身用と暗殺用を一本で兼ねる為に特注したナイフ。

 

対人殺傷能力がありながら、対先生物質を埋め込んだ、人間と超生物の双方に効く。

 

これを使えば…、しかし、問題点があった。

 

あらゆる武器の使い方を身に付けた。

 

でも、それは茅野を傷付ける物だ。

 

触手を斬り、攻撃を止めたり、牽制することは出来ても、根本的な解決は出来ない。

 

何かないのか、殺意を失くす手段、全て学んだはずだ、この暗殺教室で。

 

野球部に野球で勝つ方法、殺し屋に勝つ方法、棒倒しの人数差をカバーする方法。

 

護身術、狙撃術、ナイフ術、フリーランニング…

 

するとビッチ先生がドアを開け、俺を廊下に引っ張り出す。

 

「どうしましたイリーナ先生。」

 

「ちょっとクロサキに用があってね。」

 

「何だビッチ。俺はいま大事な用が...、そもそも何でここにいる?」

 

すると、なんとビッチは俺を抱き寄せるとおもむろにディープキスをした。

 

なんとか耐え、俺は息を切らしながら立ち上がった。

 

ビッチはそんな俺にこう言った。

 

「話は聞かせてもらったわ。殺意を忘れさせる?どんな相手にも効くのがコレよ。

 

さあ、カエデ相手に一発決めて、あの子の目を覚まさせて頂戴。

 

これはあんたにしか出来ないわ。あんた女を落とす才能あるんだから、

 

使わなきゃ勿体ないわ。」

 

俺はこの時初めて、ビッチ先生の存在価値を実感した。

 

「それに、あんたカエデの事好きなんでしょ。

 

だからそこまでして助けるんじゃないの?」

 

「...さあな。」

 

俺はビッチ先生の問いをはぐらかす。

 

するとビッチ先生はつまらなさそうに去って行った。

 

俺は教室に戻る。

 

「おや、用事は終わったそうですね。ところで何の用?」

 

「そんな事はどうでもいい、…それより例の方法、思い浮かんだぞ。」

 

「ほほう、一体なんです?」

 

「…あまり言いたくはない。やってみれば分かる。」

 

俺はそう言って誤魔化した。絶対に言えない内容だからだ。

 

その後も計画を練っていき、最終的に辿り着いた結果が、先程の戦いだった、

 

まずは殺せんせーが様子を見て攻撃を受ける。そうしないと何も始まらない。

 

そして、頃合いを見計らい、それを俺が止めさせ、俺が茅野と戦う。

 

そこで触手を破壊出来ればそれで良かったのだが、現実はそうはいかなかったので、

 

俺はわざと遠くへ投げ飛ばされ、殺せんせーの心臓を突かせた。

 

その後とどめを刺されたらアウトなので、俺は水で炎の触手を消火し、無力化する。

 

これを思いついたのは俺だった。

 

殺せんせーも、盲点でしたと驚いていた。

 

そして最後に、俺が殺意を失わせると。

 

そう、これは周到な計画だったのだ、と言っても、

 

俺と殺せんせーがいかに上手くやるかにかかっていた訳だが。

 

 

「…なんだそりゃ。物も言えないわ。」

 

「あんだけ苦しそうにしてた割には、全部お前の計画通りだったって訳か。」

 

寺坂が呆れたように呟く。

 

「いや、結構危なかった。顔が弱点だと気付かれて狙われた時とかな。

 

俺は本気だったさ。最後の方は体力が持たなかったしな。正直限界だった。

 

それに、本気で救いたいからこそ、周到な計画を立てたんだよ。」

 

「ていうか、あんだけの高温の触手食らったら、火傷じゃ済まないはずだけど。」

 

カルマがそれを指摘する。

 

「ああ、一応超体育着を、事前に水に浸しといたんだ。そうすれば、茅野が攻撃するほど

 

触手の威力は弱まるからな。という訳だ。分かったか?さっきの戦いの真相。」

 

誰も答える者はいない。その沈黙は、肯定と受け取って良いだろう。

 

すると、

 

バン!

 

銃声がした。その銃は、明らかに殺せんせーを狙って撃たれた。

 

しかし殺せんせーは間一髪で回避する。

 

振り向くと、そこにはシロがいた。

 

「瀕死アピールも大概にしろ、モンスター。どうせ死なないように計画を立てていたんだろう?

 

全く、使えない子だ。命と引き換えの復讐劇、

 

もうちょっと面白いのが見られると期待していたんだが。」

 

シロは見下した目でそう言った。

 

「ふざけるな、お前に、茅野の何が分かる?使えないだと…!」

 

「分かるさ、たった1人の兄だからねえ。全く、黒崎君だっけ、

 

君が邪魔なんかするからこうなったんだ。愚かだねえ。地球が救えたかもしれないのに。」

 

「…それがどうした?俺にとって、いやここにいる皆にとって、茅野の命は、地球より重い!」

 

俺はシロに向かってそう叫んだ。

 

すると、シロはその言葉には答えずに、こう呟く。

 

「大した怪物だ。この一年、何人の暗殺者を退けただろうか、だが、

 

 

ここにまだ2人いる、最後は俺だ。覚悟は良いかモンスター。全てを奪ったお前に、

 

命をもって償わせよう。」

 

そう言ってシロはボイスチェンジャーを取り装束を脱ぐ。

 

そこにいたのは1人の男だった。

 

(覆面をかぶり、声を変えた天才科学者。やはり君か、柳沢。)

 

「行こう2代目。呪われた生物に完璧な死を。」

 

そう言って、柳沢と、2代目と呼ばれた黒いフードの男は去っていった。

 

「ケッ、あんな奴のブサイクな素顔なんざどうでもいいわ。それよりこっちだ。目覚ましたぜ。」

 

そう村松が言ったので、振り向くと、茅野が目を覚ましていた。

 

俺は慌てて駆け寄る。

 

「茅野、気がついたか。」

 

「私…あれ、触手は?何が起きたの?」

 

茅野は困惑していた。そこに渚が説明した。

 

「殺せんせーが完璧に抜き取ってくれたよ。それと、黒崎が、助けてくれたんだよ。」

 

「…黒崎君…、ごめんね、こんな怪我させちゃって…、私のせいで。」

 

茅野は俺の顔の火傷を見つめてそう言った。

 

「気にする事はない、茅野の命を助ける為だ、これくらいどうって事ない。」

 

名誉の負傷って奴さ。そんな言葉を言いかけて慌ててやめた。流石に口にすると恥ずかしい。

 

「最初は、純粋な殺意だった。けどみんなと過ごしていく内に、殺意に確信が持てなくなった。

 

この先生が殺したんじゃないのかもって、けれど、その頃には、膨れ上がる触手の殺意に

 

負けちゃって…、本当、バカだよねあたし。

 

皆が純粋に暗殺を楽しんでる間さ、私だけ、皆を騙して、ただの復讐に費やして。」

 

茅野は後悔したようにそう漏らした。けれどそれは違うと俺は思う。

 

「違う茅野。そんな事はないさ。例えば、俺は茅野と一年近く過ごしたから、

 

前より明るくなれたし、性格も変わる事が出来た。

 

それに、茅野も言ってたけど、殺せんせーって名前、皆が気に入ってずっと使ってきた。

 

最初の目的とか関係ないさ。理由はどうあれ、茅野はこのクラスで過ごして来た仲間だ。

 

だからこそ、俺はこうやって身体を張ってまで助けようとしたんだ。

 

この1年間の楽しかった思い出、俺を踏みとどまらせてくれた言葉、

 

それが演技だなんて言っても、俺は信じないぜ。皆だってそう思うだろう?」

 

俺が問いかけると、皆は笑顔で頷いた。

 

「殺せんせーは、皆が揃ったら全部話すと言った。だから聞こう、殺せんせーの過去を。

 

殺せんせーだって一匹の生物だ。良い事ばかりして来たわけじゃない。

 

きっと暗い過去があるんだろう。でも、受け入れよう、その過去をさ。」

 

俺は茅野にそう語りかけた。俺の思いを込めて。

 

「…うん、ありがとう…」

 

茅野の目から涙が零れおちる。

 

「もう、演技やめても、良いんだ…」

 

「ああ、もう演技なんてする必要はない。ありのままに過ごせば良いんだ。

 

演技を止めた本当の茅野が、どんな人間だとしても、俺はそれを受け入れる。

 

ここには、理由はどうあれ、1年近く共に過ごしたE組の仲間がいる。それにまだ2ヶ月ある。

 

これから作れば良いじゃないか、思い出を。これから楽しもう、暗殺をさ。」

 

「…黒崎君。」

 

茅野はその涙を拭った。

 

「殺せんせー、茅野はここまでして暗殺を決行した。並大抵の覚悟じゃ出来ない。

 

そしてこの暗殺は、殺せんせーの過去、つまり雪村先生とも繋がっている。

 

だから、話して下さい。どんな過去でも俺らは受け入れます。」

 

磯貝が殺せんせーにそう言った。

 

「…出来れば、先生の過去の秘密は、墓場まで、あるいは地球ごと隠し通したかった。」

 

そういえば殺せんせーは言っていた。

 

自分が死ぬか、地球が死ぬか、どちらにせよ過去を話す意味はないと。

 

「けれどそういう訳には行かない。みなさんとの絆を、信頼関係を壊したくない。

 

だから、話しましょう。先生の全てを。」

 

超生物は語り出した、秘められた過去の記憶を…

 




テストの結果が出ました。前回より良かったです。
5教科470点でした。(前回458)
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