黒崎翔太の暗殺教室   作:はるや・H

95 / 109
受験勉強忙しくて全然投稿できない。


87話 吸血鬼の時間

「お前は……、ヴァンパイア‼︎」

 

黒崎は驚きを隠せなかった。

 

当然だろう。自分が夏休み倒した殺し屋が、目の前にいるのだ。

 

「よう、久しぶりだなガキ、今度こそ、お前の大事な物を頂こうか!」

 

おかしい、彼は防衛省が…

 

彼は記憶の糸を辿る、するとある事を思い出した。

 

そう、あの時グリップとスモッグは言っていた。

 

ヴァンパイアは居なかったと。つまり、自力で脱出したか、誰かに助けられたか。

 

恐らく後者で、こいつを救出した人物が、今回の事件を引き起こしたのだろう。

 

だが遅過ぎる、あれから半年が経った。何故今になって動き出す必要がある?

 

何故今まで動かなかった?

 

「一体…、なんのつもりだ?こんな所に出てきて。」

 

俺は問う。

 

「決まってるじゃねーか。お前に復讐しに来たんだよ。

 

あの時の屈辱、忘れはしねーぞ。自分より何歳も年下の奴に、

 

恐怖を感じ、怯え、挙げ句の果て殺されかけたんだからな!」

 

…馬鹿な奴だ。黒崎は内心そう思った。ヴァンパイアは確かにプロの殺し屋だ。

 

だが、奴の動きは、暗殺者ではあっても、正面戦闘のプロの物ではなかった。

 

だからこそ、黒崎は奴の攻撃で死ぬ事は無かったし、覚醒した彼はヴァンパイアを倒す事が出来た。

 

だが、あの時の事は未だに分からない。トドメを刺されかけた時、突然目が赤く血走り、

 

急に戦闘力が、身体能力が大幅に上昇した。

 

だが一方で理性を失い、立ちふさがる敵を排除する事しか頭に無かった。

 

何せ両親を殺した相手だ、彼は復讐を果たすまで、たとえ相手の戦意が喪失しても戦っていた。

 

黒崎はあと一歩のところで、ヴァンパイアを殺さずに済んだが。

 

あれは茅野が止めてくれたお陰だ。あれが無かったら今頃どうなっていたか。

 

想像するだけで恐ろしい。彼が茅野を命がけで助けたのも、

 

あの南の島での出来事が大きく関係していた。

 

だが、あの能力は代償も大きかった。あの後、彼は1週間程、身体がまともに動かなかった。

 

かなりの筋肉痛だった。

 

恐らく人間の身体にかかっているリミッターを外して、限界を超える能力だろうが、

 

そもそも身体に極度の負担をかけない為にリミッターがあるのに、

 

それを外したら身体を痛めるのは当然か。

 

何はともあれ、ヴァンパイアは正面戦闘のプロでは無い、

 

武道の心得もあり、戦闘ならE組でもトップクラスの黒崎に勝てる見込みは薄い。

 

その筈だったのだが…

 

 

「…フン、お前はあの時の復讐に来ただと?

 

少なくとも正面戦闘のプロでは無いお前が、俺に勝てるのか?

 

以前負けたのにも関わらず、愚かにも勝負を挑むとは…」

 

黒崎は相手を嘲る。だが…

 

「愚か者はお前だ、黒崎。俺があれから何もしなかったと思うか?

 

教えてやろう。俺がどういう経緯で此処に立っているのかを。」

 

ヴァンパイアは語り出した。復讐の経緯を。

 

「俺はお前にやられて簀巻きにされ、その場を動けなかった。

 

お前にやられた恐怖で、身体がまともに動かず、挙げ句の果てに気絶した。

 

だが、俺は目が覚めたら別の場所の床に寝ていた。

 

すると、そこに仮面の男が立っていたんだよ。」

 

「…お前は、誰だ、此処は、何処だ!」

 

ヴァンパイアはその男に向かって叫んだ。帰って来た答えは、

 

「私かい?名乗る程の物でもないさ。だが一つ言う事があるとすれば、

 

黒崎翔太、彼をいずれ潰そうとする者だ。」

 

「…あのガキを、潰す?何の為に。 」

 

ヴァンパイアは怪訝な顔をする。彼は強いが、それでも唯の中学生だ。

 

わざわざ潰す意味とは…

 

すると、男は仮面を外した。

 

ヴァンパイアはそいつを見て驚愕する。

 

「お前は…、」

 

そう、仮面の男は、黒崎の両親の暗殺を依頼した者だったのだ。

 

「そう、私だよ。彼にはある秘密があってね、その為に、彼を誘き出し捕らえる必要がある。

 

その為の君だ。そう、私は君に依頼する。黒崎翔太を捕らえる事を。

 

勿論たっぷり痛め付けてやってもいい。ただ、命を奪ってはいけないがね。

 

君だって、彼に復讐したいだろう?」

 

ヴァンパイアは答える。

 

 

「勿論だ。あのガキに与えられた屈辱、たっぷり返してやる。

 

それで、決行はいつだい?具体的な計画を話してくれ。」

 

「…そうだね、決行は来年の1月頃になるだろう。」

 

「何い!そんなに遅いだと!一体どう言う事だ。」

 

「この計画には慎重な準備がいる。ふさわしい場所の用意と、

 

彼を捕らえる為の準備、そして…、あわよくば、あの超生物の暗殺もやってしまおうとね。

 

彼を人質として。

 

勿論、賞金100億は全て君に支払おう。超生物を暗殺出来たのなら。

 

そしてね、こんなにも決行が遅いもう一つの理由。

 

君はまだ、到底戦える状態じゃないだろう?」

 

そう言われてカチンと来たヴァンパイアは拳を振り上げる。

 

しかし、腕が思うように動かない。あまりにもギクシャクした、ぎこちない動きなのだ。

 

「…嘘だろ?」

 

「君は彼にやられた戦いで、相当な重傷を負っている。

 

完璧に、君がプロの殺し屋として戦えるようになるまで、後2ヶ月は掛かるだろう。

 

勿論それは肉体的な回復だけじゃない。精神的な意味でも。

 

君は、かなりの恐怖を彼に与えられた。

 

恐らく今のまま戦おうとしても、彼への恐怖のせいで身体がまともに動かない。

 

その恐怖は、そう簡単には克服されない。

 

方法があるとすれば、君が彼を圧倒的に上回る自信と戦闘力を身に付ける。

 

そうすることで恐怖を消すしかない。

 

その為にはより時間がかかる。

 

そう、君が彼に完全に勝てるよう、君を改造してみせよう。」

 

 

 

「それから俺は、ただひたすらに、お前を倒す為に強くなろうとした。

 

何度も、てめえにやられた瞬間がフラッシュバックしたよ。

 

その度に身体が動かなくなって、恐怖を味わった。

 

だが、俺はそれを克服した。そしてさらなる強さを手に入れた。

 

今度こそ、お前の大事な物を頂こうか!」

 

「上等だ、やってみろ!」

 

そう言うと、ヴァンパイアはナイフを取り出す。黒崎もナイフを構える。

 

2人の戦いが始まった。

 

***

 

「おや、戦いが始まったようだ。」

 

仮面の男は語る。

 

由夏は縛られている為様子はよく見えないが、

 

2人の男が立っているのだけは分かる。

 

1人は間違いない、彼女の兄だ。

 

2人は何か話している様子だ。

 

「…君には状況がよく分からないだろうから、教えてあげよう。

 

君のお兄さんの前に立っている男は、彼が南の島のホテルの中で倒した男なんだよ。」

 

「…え?なんの事?南の島?」

 

由夏は状況がさっぱり分からなかった。

 

兄が、校外学習の一環として、南の島のリゾートで夏期講習へ行ったのは覚えている。

 

だがそこのホテルで一体何が起きた?

 

仮面の男の話によれば、誰かと戦って、その男をお兄ちゃんが倒して、

 

その男が再びお兄ちゃんの前に立ちはだかったと。

 

でも、何故そんな状況になるのかが理解出来ない。

 

「ああ、君は何も聞かされていないのかい?お兄さんから。

 

まあ無理もないか。何しろ国家機密だ、簡単に話すわけにはいかない。たとえ身内と言えども。

 

大事な事を教えてあげよう。今、君のお兄さんは、学校である事をやっている。」

 

「ある事…?」

 

由夏は聞き返す。

 

「…君のお兄さんが通っている、椚ヶ丘中学3年E組では、

 

…暗殺が行われているんだよ。」

 

「…え?暗殺?」

 

「そう、地球を破壊すると予告した超生物のね。」

 

「…超生物?地球を破壊?何を言っているの?」

 

彼女は混乱した。仕方のない事だ。こんな荒唐無稽な話を次々と言われても、理解が追いつかない。

 

「去年の3月、月の7割が消し飛び、常時三日月になっただろう?

 

あれを引き起こした犯人が、今年3月、地球を破壊すると言っている。

 

その超生物を暗殺し、地球を守る。それが君のお兄さんとそのクラスメイトに与えられた任務なんだ。」

 

由夏は思い出す。

 

月が7割消し飛び、大ニュースになった事。

 

それから、お兄ちゃんが、椚ヶ丘のE組へ転級した事。

 

その時から、確かに兄は、黒崎翔太は、前より格段に明るくなった。

 

以前より、兄は運動量が多くなった。家でのトレーニングも。

 

それも暗殺訓練の一環だと思えば納得がいく。

 

そして、夏祭りで出会った、関節が曖昧な巨漢の先生。

 

今思えばどう考えても人間じゃないし、あの人が、恐らく月を壊した暗殺対象なのだろう。

 

何故そんな人が、お兄ちゃん達の担任を?

 

そもそも何でただの中学生が暗殺を?

 

謎は山程あった。だが、これ以上聞いても混乱するだけだ。

 

今はそれを聞く時ではないと判断した由夏は、黙って男の話を聞く事とした。

 

 

一方、その時、黒崎は、息も絶え絶えに、その場に膝をついていた。

 

「…嘘だろ。か、身体が…、動かないだと…、何故、お前が、こんな力を…」

 

ヴァンパイアは、そんな黒崎を悠々と見下ろしていた。

 

「所詮はただのガキ。この程度か。」

 

ヴァンパイアは、退屈そうに呟いた。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。