しかも課題出されたし。
律が映像を流し始める。
若干のノイズが混じった映像、最初に出てきたのは、1人の仮面を被った男だった。
「こんにちは。椚ヶ丘中学3年E組の皆さん。
まずは、この映像をご覧いただきたい。」
そう言うと、監視カメラから撮ったかのような一室の光景が現れる。
そこでは、黒崎が鎖で繋がれていた。
「黒崎……!」
皆息を呑む。
すると、その部屋にスーツ姿の、サングラスを掛けた男が、鉄パイプらしき物を持って現れる。
「まさか、」
皆青ざめる。おそらく、この男がこれから黒崎を攻撃するのだろうと。
その予想通り、男は鉄パイプを黒崎の身体に振り下ろす。
ドサッ、と鈍い音がする。
男はなおも黒崎の事を攻撃し続ける。
その度に鈍い音がする。
だが、黒崎は目を覚まさない。意識を失っているようだ。
そしてなんと、男は黒崎の頭部めがけて鉄パイプを振り下ろす。
ガツンと音がして、黒崎の頭から、赤い血が流れる。そのおぞましい光景に、皆顔を歪める。
今度は、黒崎の顔めがけて鉄パイプを振り下ろす男。
複数回殴り続け、黒崎の顔に痣が出来始める。
「やめて……、もう見てられない。」
茅野がそう呟く。彼女にとってこれはとてもショックな映像だった。
黒崎が、一方的に暴力を受けている。そして、彼は痛々しい姿で横たわっている。
そして、その映像は突然途切れた。
また仮面の男が現れる。
「手短に言おう。見ての通り、黒崎翔太の身柄を預かった。ついでに言うと彼の妹のもだ。
もし彼が暴力を受け続けるのを止めさせ、彼を救いたければ、
君達はここへ来たまえ。勿論、タコ教師も含めて全員だ。1時間以内にここに来なければ、
彼の命はないと思いなさい。もし来なければ、君達にも火の粉が降りかかるだろうしね。
場所はこのメッセージの後で表示する。
さて、殺せんせーとやら、君は生徒の命と自分の命、どちらを優先する?」
そう言って映像はプツンと切れた。
「……」
皆はしばらく言葉が出なかった。
残酷なあの映像を見せ付けられては、当然だろう。
すると、誰かが呟く。
「気持ち悪い。一体どうして黒崎君にあんな事を?」
それに誰かが答える。
「分からない。けどよっぽど趣味が悪い奴だってのは確かだ。」
「……黒崎をあんな目に合わせやがって。」
そしてカルマが殺せんせーに問う。
「……でどうする殺せんせー。このままだと黒崎殺されるよ?
助けないといけないんじゃない?そうしないと、俺らにも危害加えるって言ってるし。」
「勿論ですカルマ君。助けに行きましょう、黒崎君を。
ですが皆さん、敵はどうやったか知りませんが黒崎君を捕らえる程の相手です。
私がいることを知っていながら、堂々と私を来させるのですから、
余程私を捕らえる自信があるのでしょう。おそらく狙いは私。
彼をダシに私を呼び寄せ、100億をかっさらおうとしているのでしょう。
何にせよ相手は恐らく相当強い。それに、今回は烏間先生がいない事もある。」
そう、烏間先生は、今日は出張でいない。何でも重要な会議だとか。
だから、より今回の作戦の難易度が上がる。
「皆さん、警戒して臨んで下さい。覚悟はいいですか?」
皆は頷く。
「勿論、クラスメイトを助ける為だ、何だってやってやるよ。」
こうして黒崎救出作戦が始まった。
すると、律がデータを受信したらしく、表示する。
「皆さん、恐らくこれが、黒崎さんが捕らわれている場所です。
この場所は、かつてテレビ局として使われていた場所。
老朽化により、今は閉鎖されています。近々取り壊し工事が始める予定なのですが、
敵はそこを占拠した模様。ここからは距離にして15kmほど。敵は1時間以内と言って来ましたが、
どうしますか?」
「私が君達を運びましょう。先生単体の力では、皆さんを一斉に運ぶ事は不可能ですが、
そこは上手く工夫します。皆さん、超体育着を着て、武器を持って校庭に集合して下さい。
できるだけ早く出発しますよ。」
「はい!」
皆一斉に準備を始める。そんな中、茅野は浮かない顔をしていた。
「はあ……」
溜め息をつく茅野。
彼女は落ち込んでいた。黒崎があんな目に遭っている映像を見て、強くショックを受けていた。
彼女はショックのあまり、何も考えられず呆然としていた。
(黒崎君があんなに苦しんでいても……私に出来る事なんてないのかな)
すると、殺せんせーが茅野の前に現れた。
「茅野さん、あの様な映像を見せられ、ショックを受けたのは分かります。
しかし、彼の為に我々が出来る最善の行動は、彼を助ける事。
心配ありません。ここには君を含めた28人の生徒がいる。きっと力を合わせれば、
彼を救い出せるでしょう。黒崎君のことを本気で想っているのなら、尚更、
彼を助けるべきです。」
「殺せんせー。」
「それに、」
最後に、殺せんせーはニヤリと笑ってこう付け加えた。
「好きなんでしょう?黒崎君の事が。」
「……どうしてそれを!」
思わず赤くなってそう言う茅野。
「ヌルフフフ。生徒の恋愛をチェックするのは教師の役目ですから。
それに、君の本心に、最後まで気付けなかった事は申し訳なく思っています。
だからこそ、生徒の心情はしっかり見ていかねばと思いましてね。」
言っている事は正しいが、若干方向性がズレている気がする。
けれど、その言葉は、茅野の心には確かに響いたのであった。
そうして皆が準備を終え、校庭に集合する。
「準備はいいですか、皆さん。それでは、これから私が皆さんを運びます。
あの袋の中に全員入って下さい。」
そう言うと、殺せんせーは地面を指差す。
そこには、巨大なスポーツバックの様なものが2つ置いてあった。
「アレに入れって事?」
「はい。ちょっと狭いかもしれませんが、よろしくお願いします。」
と言う訳で、皆がバックの中に入っていく。
そうして全員入ったところで、殺せんせーはバックのファスナーを閉じ、持ち上げ、
なんと思いっきり投げた。
「ええ〜!」
そのあと、マッハで飛行し、そのバックを掴む殺せんせー。
「こうやって勢いをつければ、皆さん全員でも運ぶ事が出来るのです。
ヌルフフフ、創意工夫と言うやつですよ。」
それを聞いて、全員がこう思ったと言う。
「無茶すぎるだろ!」
そうして飛行する事およそ10分。敵がいると言う旧放送局まで辿り着く。
そこは人の気配のない山間だった。
「さて、いよいよ作戦を開始します。まずは入り口に入ります。
そこで、敵が潜伏していないか確かめ、潜入を開始しましょう。
できれば全員で一緒に行動するのがベストですが、
途中で、なんらかの要因により散り散りになってしまったら、
闇雲に動こうとせず、出来るだけ大人数で動きましょう。
この様子からして、敵は恐らく強力なジャミングをかけています。
携帯やトランシーバーなどの通信手段は一切使えないと見ていいでしょう。」
「その通りだ殺せんせー。」
イトナが呟く。
「俺の新作ドローンの試験飛行には丁度いいと思って持ってきたが、
さっきから操作がまるで効かない。ジャミングがかけられているのは間違いないだろう。」
「では、潜入を開始しましょう。まずは私が入ります。」
そう殺せんせーが言い、建物の中に入ろうとする。
しかし、ドアを開けようとした瞬間。
殺せんせーの触手が溶け始めた。
「!!!」
「やられましたね。これでは私は入りようがない。
どこか私でも侵入できる経路を探しますので、皆さんは先に入って下さい。
心配ありません。皆さんならきっと出来るはずです。」
殺せんせーがそう言うと、皆は入り口を通り、潜入を開始する。
こうして、救出作戦が始まった。
……
その様子を、モニターで眺める仮面の男。
「……勇敢だねえ。泣けるじゃないか。クラスメイトを救うために潜入を試みるなんて。
こんな危険までおかして。どんな気分だい黒崎君。君の為にクラスメイトが危機に晒されるなんて。
さぞかし悔しいだろうねえ。」
そう言って嘲る仮面の男。彼の仮面の奥には、残虐な笑みを浮かべた顔が。
しかし、それに答えるものはいなかったのであった。
さて、一体黒崎はどうなってしまったのか?
無事黒崎を救出できるのか?E組メンバーの命運やいかに。