ソードアート・オンライン ~IF 黒の剣士と絶剣~ 作:舞翼
……つ、つかれた。
今回は、ボス戦からですね。ちょいと弄ってますが、ご了承ください<m(__)m>
MR編は、アスナさん要素が強いですからね。
では、投稿です。
本編をどうぞ。
全員が作戦通りのフォーメーションにつき、武器を構えたとほぼ同時に、部屋の中央に、荒削りな巨大なポリゴン塊が立て続けに現れ、其れは人型を形成してから、無数のポリゴン片を撒き散らして実体化した。
身の丈四メートルはあろうかという黒い巨人。 逞しい胴体から、二つの頭と四本の角の腕を生やし、その手に鈍器のような得物を携えていた。
そいつが一歩踏み出すと、ボス部屋が地震のように揺れ、ボスは、俺たちを赤く光る四つの目で暫し睥睨した後、野太い咆哮を放った。 上側の二つの手に握られたハンマーを振り上げ、下側の二本の手で、太い鎖を床に打ちつけた。 此れにより、石畳が割れ、欠けた破片が飛び散る。 この破片も、攻撃判定があると見ていいだろう。 鎖やハンマーを避ける事が可能でも、破片を躱す事は不可能だ。
「ユウキさんや。 鎖やハンマーを完璧に躱しても、破片ダメージは躱せそうにないな」
「だね。 現実的に見て無理そうだもん」
ボスは、俺たち目掛けて鎖を振り下ろすモーションを取ろうとしたが、其れを予測していた俺は、全員に指示を出す。
「鎖攻撃くるぞ! 全員散開だ!」
「「「「「「了解!!」」」」」」
俺たちは左右に跳び鎖攻撃を躱すが、やはり俺の予測通り、破片のダメージの完全回避は不可能だった。
俺は、後方援護のシウネーに指示を出す。
「シウネー! 全員に脈動回復魔法をかけてくれ! 破片のダメージは、これで何とかなるはずだ!」
「わ、わかりました!」
シウネーが魔法詠唱を始め、《スリーピング・ナイツ》メンバーに淡い光が包み込む。
此れにより、破片で微弱に削られたダメージが、目に見えるように回復していく。 此れで破片ダメージは何とかなるはずだ。
「行くぞ! 皆!」
「「「「「了解!!」」」」」」
俺とユウキはツーマンセル、ジュンとテッチ、ノリとタルケンの四人でボスへ接近し攻撃を与えていく。
俺とユウキは全ての攻撃を躱してボスに斬撃を与え、他の四人は、テッチが壁となりスイッチして攻撃をする。
「俺とユウキが専攻してヘイトを稼ぐ! 皆はその隙に大きいのをぶちかましてやれ。 シウネーも、皆の支援が完了したら攻撃魔法に移っていいぞ!――ユウキ、行くぞ!」
「OK!」
脈動回復魔法が功を制し、俺たちにはHPを削られなく事無く攻撃を叩き込んでいく。
ボスは、時折四本の腕を体の前で交差させ、防御姿勢を取りあらゆる攻撃を弾くが、俺とユウキは、斬撃の手を緩める事はない。 一般プレイヤーなら従労感に襲われていくが、黒と紫コンビは、そんなものは微塵も感じさせない。
ボスのHPが半分になったのか、広範囲のブレスの動作に入った。
――ユウキ、ブレス攻撃だ。 敏捷力をMAXにして振り切るぞ。
――OK、任せて。
ブレスが吐かれる前にボスの背部回りブレス攻撃を回避。 隙が出来た所を、大技のソードスキルを打ち込みHPを削る。
ヘイトを稼ぎ、ボスの標的を俺たちに強制的に向けさせる。 この長期戦で、ユウキを除く《スリーピング・ナイツ》メンバーには、疲労感が見え隠れしてきた。 だが、この人数でここまで削る事が出来たのは、驚異的ともいえる事柄だ。
俺は駆けながら魔法の詠唱を始める。
「――フレア・バースト!」
俺の背後に火球が作られ、ボスに無数の火球が襲う。
威力は弱い魔法ではあるが、物理的な目暗ましに効果的だ。
「皆! 今だ!」
この隙を逃さず、全員がソードスキルを繰り出し、ダメージを与える。
此れを食らったボスは、悲鳴にも似た咆哮を上げた。
だが何故だ。 今までも同じような攻撃を繰り出したが、このような咆哮は上げなかった。
――先程の火球が、弱点である何処かの部位に直撃した?
俺はベルトからピックを引き抜き、気になったボスの部位、二本の首の付け根に命中させる。 攻撃力がないピックだが、確かにボスの動きが鈍った。――あそこが、ボスの弱点と見て間違えない。
いや、でも、弱点が解っても、ボスの身長は約四メートル。 ボス部屋では翅の使用は不可能である。
跳ぶにしても、飛距離が足りなすぎる。
「キリト!」
ユウキの声で我に帰った俺に頭上に、ハンマーが振り下ろされていた。
俺は持ち前の反応速度で躱したが、HPが約三割持っていかれた。
剣を構えた俺の隣に、ユウキが立つ。
「どうしたの? 動きが鈍ったけど?」
「ああ、ボスの弱点が解ったかもしれない。 あと、さっきは助かった」
「どういたしまして。 それで、弱点っていうのは?」
「ボスの二本目の付け根の部分。 あそこには、通常よりも攻撃が通ったんだ。 弱点として間違えない」
ユウキは其処を見て思案顔をした。
おそらく、俺と同じ事を考えているのだろう。 数秒考え、何かを閃いたように、
「うんうん、踏み台があれば届きそうだね」
「は? 踏み台?」
ユウキの視線の先には、少し離れた所で盾を掲げ、鎖の乱舞からノリを守っているテッチの姿が映った。
俺を見て、二カッと笑みを浮かべる。
「なるほど。 そういうことね」
「そうそう。 そういうこと」
これは賭けに成る可能性もある。
HPを全て削る事が出来なかったら。ソードスキル後の硬直時間が課せられる。 其処にボスの直撃を受ければ、死亡は免れない。 近接前衛の二人が居なくなったら、パーティー全体が崩壊する事にも成りかねない。 だが、ボスHPは後僅かと予想される。
俺の考えを読んだように、ユウキが俺の肩を叩き、
「大丈夫。 ボクとキリトなら倒せるよ」
「そうだな。 やってやろうか」
頷き走り出すと、テッチの背部三メートルの位置に回り込んだ。
「テッチ! 次のハンマー攻撃の防御後、すぐにしゃがんでくれ!」
テッチは振り向くと、小さな目を見開いたが、すぐに頷いた。
ボスは、上側の腕に握ったハンマーを高く振り上げ、テッチはその攻撃をしゃがみ防御する。
「――今だ! 行くぞ!」
「――OK! 姉ちゃん!」
いやいや、姉ちゃんじゃなくて、兄ちゃんだと思うんだが……。
今はこの事は置いといて、俺とユウキは走り出し、テッチの背を踏み台に、ユウキから先に跳び上がった。 其れに続いて、俺も跳び上がる。
「はああぁぁああ!!」
「うりあぁぁああ!!」
凄まじい速度突き込み、二刀流OSS《スターバースト・ストリーム》計十六連撃。 恒星から噴き出すプロミネンスの奔流如き剣閃がボスの弱点に殺到する。
ユウキもOSS《マザーズ・ロザリオ》計十一連撃を放つ。 紫色のライトエフェクトを纏った剣が、円を描くように、星のようにボスの弱点に襲いかかる。
また、空中でソードスキルを発動させた場合、其処が飛行不可能エリアでも、技が終了するまで、使用者が落下する事はない。
滞空したまま、最後の攻撃が、ボスの二つの首の接合点に命中し深々と貫いた。
やがて、深く貫いた剣を中心に、ボスに亀裂が入り、それはポリゴンの片となって爆散した。
「いで!」
「いた!」
俺とユウキは、声を上げ尻もちをついてしまった。
俺が立ち上がってから剣を鞘に収め、ユウキに右手を差し出した。
ユウキも剣を鞘に収めてから、俺の手を取り、俺が引っ張り上げるように手を引いた。
「ふぅ、お疲れ。 やったな」
「うんうん、……やった、勝ったよ。 ボクたち!」
歓喜の声を上げながら、ユウキは俺に抱きついてきた。
「ちょ、ちょ、抱きつくな。 当たってる、当たってるから。 俺には刺激が強すぎるから」
ユウキはしぶしぶ離れ、ぺろっと舌を出した。
「ご、ごめん。 つい」
「まったく」
周囲では、へたり込んでいた仲間たちも、一斉に飛び上がりガッツポーズを決めながら歓声を上げていた。
鍵が開いた扉を潜り、長い螺旋階段を登り、東屋風の小さな建物から飛び出すと、其処には、第28層の草原が広がっていた。 主街区まで飛び、中央広場の転移門をアクティベートした所で、前代未聞、七人でのボス攻略は終了となった。
♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦
転移門を潜り、第27層《ロンバール》の街まで戻ってきた七人は、広場の片隅でハイタッチを交わした。
「皆、よくやったぞ。 七人でボス撃破だ」
ボス攻略が成功したのだから、俺の助っ人としての役目は此れに手終了である。
また、契約終了は、《スリーピング・ナイツ》との別れを示すことにもなるのだ。
「まあ、俺の役目はここまでだ」
その時、不意に肩を、ぽんと叩かれた。
俺の肩を叩いた人物は、シウネーだった。 いつになく真剣な表情である。
「あー、確かに。 まだ、確認してなかったな」
俺は、このボス攻略の趣旨を思い出したのだった。
《スリーピング・ナイツ》の目的は、ボス攻略ではなくて、第一層にある《剣士の碑》に名前を刻む事である。
其れを確認する前に、おつかれさまでした。と言うには、まだ早い。
「――打ち上げ、しましょう」
「…………は? 打ち上げ?」
俺は予想外の言葉に、目を丸くした。
ユウキも、俺の反対側の肩に、ぽんと手を乗せる。
「そうだよ、キリト。 せっかくの記念に、打ち上げしようよ」
「……いや、でもなぁ」
「……だめ」
ユウキは、上目遣いで俺を見てきた。
これで、NOと言える男性プレイヤーは居ないだろう。
「はあ、わかった。 やるか」
俺がそう言うと、ジュンがにやっと笑みを浮かべた。
「うん、やろう! どーんと盛大にやろう。 なんせ、予算はたっぷりあるしな! 場所はどうする? どっか大きい街のレストランでも貸し切りにすっか?」
「あー……それならいい場所があるぞ。 第22層にある、ちっこい俺たちのホームだな」
でもまあ、いきなりホームやろうなんて、少しばかり抵抗もあると思うが。
「あれだったら、別の場所にするか? そこら辺は、お任せするぞ」
どうやら、ユウキとシウネーが何かを話していた。
もごもごしてるユウキの言いたい事を読み取ったように、シウネーは右手でユウキの頭をぽんと手を置くと、俺に向き直った。
「キリトさん、ありがとう。 お気持ちに甘えて、お邪魔させて頂きますね」
今の一幕の意味が解らず、俺は首を傾げていたが、混み言った人の事情をあれこれ聞くのは無粋な事である。
「そうと決まったら、まずは酒だな! 樽で買おう、樽で!」
そう、ノリが豪快な声で言った。
「ここには、ノリさんの好きな芋焼酎はないですよ」
眼鏡を押し上げながら、タルケンが口を挟むと、厳しい突っ込みが背中に飛んだ。
「なんだとこら、いつアタシが、芋焼酎好きなんていったか! アタシの好きなのは、泡盛の古酒なんだぞ!」
「色気のなさじゃ、一緒じゃんかよ」
ジュンの突っ込みにこの場に笑いが起きるが、笑い合うユウキの瞳には若干揺れ動き、どこか切なそうにしていた。
ロンバールの中央広場に赴き、大量の酒と食料を買い込んでから、一行は第22層に転移した。
広場から飛び立ち、深い雪に埋もれた森を目下に見ながら南を目指す。
氷の張った湖を超えると、木立の中にひっそりと開けられた空き地と、其処に立つ小さなログハウスが見えた。
「あ、あそこ!?」
ユウキのはしゃぎ声に、俺は頷く。
「おう、あそこだ」
俺がそう言うと、ユウキは両手を広げ、一気に加速した。
そのまま一直線に家の前の庭に目指して落ちていくが、俺も翅を震わせ加速する。
途中でユウキを抜く為、弾丸のように降下する。
其れに気づいたユウキも、翅を震わせ、再び加速した。
直後、どーんッ!という盛大な音と雪煙が舞い上がり、二人の妖精は前のめりに倒れていた。
「う、う、雪が耳に入った……」
ユウキは、全身雪まみれである。
まあ、俺も同じような惨状なんだが。
「そ、それは、俺にも言える事だぞ……」
シウネーが、俺とユウキの前に降り立ち嘆息する。
「もう、二人して何やってるんですか」
「「う、すいません……。 つい」」
気を取り直して立ち上がり、ドアに向かう。
部屋の中は予想通り、無人であった。
おそらく、これを予期していたアスナたちが気を遣ってくれたのだろう。
俺は立ち上がってから、右手を差し出し、ユウキも笑みを浮かべながら俺の手を握った。
手を引き、引っ張られたようにユウキが体を起こす。
俺がログハウスのドアを開け、俺が先頭に中に入って行く。
「へぇー、ふーん、ここがキリトたちのお家かあ!」
ユウキは嬉しそうに、床から生えたテーブルや、赤々と燃え盛る暖炉、壁に掛けられた剣などを見て回っている。
ユウキはニヤニヤしながら、
「キリト、男の子が隠し持ってる本はないのかな」
「あるかッ! てか、仮想世界にそんなもんないぞ。…………いや、ないはずだ」
「冗談、冗談だよ」
ユウキは笑みを浮かべ、俺も苦笑した。
全員がテーブルに集まると、其々のアイテム欄から買い込んできた物を取り出し、テーブルの椅子に着いた。
乾杯の音頭を任せれたユウキが、握ったグラスを掲げ、満面の笑みで叫んだ。
「それでは……ボス攻略成功を祝して……かんぱーい!」
「「「「「「かんぱーい!!」」」」」」
そう言い、グラスの音がぶつかり合う音が響き、全員がワインを一気に飲み干す。
「やっぱ、ボス戦後の酒は上手い!」
「……キリト、おっさんぽいよ」
「なッ! お、おっさんだと。 まだ、俺はお兄さんだ!」
「はいはい、お兄さん」
ユウキに、軽くあしらわれるように言われてしまった。
何か言い返さなければ、と思うが、何も思いつかず、唸り声を上げる俺だった。
「……ぐぬぬぬ」
やはり、俺とユウキの漫才は面白いのか、この場が笑いで満ち溢れた。
ジュンとテッチが先程倒したボスの話、ノリとタルケンがALOに存在する酒の話で盛り上がり、俺とユウキ、シウネーの三人は、今までコンバートしてきたVRMMOの世界の話で盛り上がっていた。
「間違えなく最悪だったのはねぇ、アメリカの《インセクサイト》って奴だよ。 虫、虫ばっか! モンスターが虫なのはともかく、自分も虫なんだよぉー。 それでも、ボクはまだ二足歩行のアリンコだったけど、シウネーなんか……」
「だめ! 言わないで!」
「……でっかいイモムシでさ。 口から、い、糸をぴゅーって……」
我慢しきれないように、ユウキは笑った。 シウネーが唇を尖らせていたが。
また俺は、自身の悪戯心を擽られた。
「ほうほう。 シウネーが女イモムシかー……。 その容姿からは考えられんな。 ま、まさか、攻撃オプションが糸を出すなんて」
俺が腹を抱えて笑うと、シウネーが若干涙目だ。
「も、もう知りません。 ユウキとキリトさんのバカ」
俺とユウキは揃って、
「「……ごめんなさい」」
と、頭を下げたのだった。
其れから、三人で笑った。
「それにしても、ユウキたちはVRMMO歴やっぱ長いんだな」
「あれ、キリトは? VRMMO歴、かなり長そうだけど」
俺は腕を組んだ。
「うーむ。 一つのゲーム歴が長いからなぁー。 MMOを回ったりはしなかったんだよ」
「そっかー。 そう言えば、助けに来てくれた女の子って、キリトの彼女さん?」
「……お前、凄い質問ぶっこむのな。 まあいいけど。――アスナは幼馴染だ。 でも、怒ると《閃光》になるからマジ怖い……」
俺は《閃光》になったアスナを思い出して、肩を震わせたのだった。
「まあでも、世話になってるのは確かだな」
「へー、なんかいいな~」
ユウキは顔を上げると、もう一度両目を細めてリビングを見渡した。
「このお家、すっごい居心地がいいよ。 なんだか……昔を思い出すって感じ」
「そうですね。 ここにいると、凄くほっとします」
シウネーも、深く頷く。
「まあ、俺も否定はしないな。 てか、俺はこのログハウスで寝てる事が多いからな」
不意に、シウネーが小さく、アッと声を上げた。
「ん、どうかしたか?」
「わ、忘れてました!……私たち、キリトさんにボス攻略のお手伝いをお願いする時に、ボスがドロップしたものを全部お渡しするって約束してましたよね。 どうしましょう、こんなに色々買い込んじゃって」
「うわ、ボクもすっかり忘れてた」
申し訳なさそうに肩をすぼめる二人に、笑って手を振ってから、俺はメニュー・ウインドウを開き、アイテム欄からアイテムを実体化させた。――其れは、紅々と輝く宝石だ。 これは、俺のストレージにドロップした代物だ。
其れを手に取り、二人に見せる。
「大丈夫だって、この宝石だけで。 情報屋もこれで十分だって言うしな」
「あ、それもです! 私たちが死なずに攻略できたのは、その情報のお陰でもあるんです」
「ほ、本当に、何から何までありがとう、キリト」
二人は畏まって、頭を下げる。
「いいっていいって、俺も貴重な体験ができたんだ。 おあいこって奴だ。 だから、頭を上げてくれ」
俺がそう言うと、二人は頭を上げてくれた。
「で、でも、ちゃんとしたお礼がしたいな」
俺は顎に手を当てた。
「ん~、じゃあそうだな。 《スリーピング・ナイツ》のメンバーは、俺と友達になってくれ。 ユウキも、改めてお願いするよ」
驚きと喜び、そんな表情を浮かべたユウキは、どうしたらいいか解らない様子だ。
「で、でもね。 キリト。 ボクたち……《スリーピング・ナイツ》は、……春までに解散しちゃうんだ。 それからは、みんな、中々ゲームに入れないと思うから……」
「それも、わかってるさ」
俺がそう言うと、ユウキは目を丸くした。
「皆に事情があるのは察してたんだ。 でもな、会えなくても、友達という絆で繋がってる事ができるはずから。 俺の心には皆がいるんだ。 皆がどんな事情を抱えてるか知らないが、――これだけは言える。 俺は絶対に友達を裏切らないぞ」
俺は、ユウキの紫色の瞳を覗き込んだ。
「……あ、あの。 でも……ボクは……」
「……ユウキ。 あなたのしたいようにしたらいいわ」
傍らで、シウネーがユウキの背中の後押をし、ユウキは、恐れを振り切るようにして笑った。
「う、うん。 改めてよろしくね。 短い間だと思うけど」
「そんなこと言うなって、俺とお前はどんな事があっても一生友達だ」
俺は手を叩き、周りを見渡した。
「すまないな。 急に暗くしちゃって、景気ずけに、アレを見に行くか!」
「「アレ?」」
首を傾げるシウネーとユウキ。
「いやいや、お前たちの目的の所さ。 もう更新が反映されてるはずだ、《黒鉄宮》の剣士の碑だ」
「おっ、そうか!」
ジュンが、大きな声で立ち上がった。
「行こう行こう! 写真撮ろうぜ!」
ユウキを除く皆は、《黒鉄宮》に向かう為ログハウスのドアを潜っていく。
「ほら、行くぞ」
「うん」
俺の差し出した手を、ユウキは笑みを浮かべながら取ってくれた。
ユウキの手を引いてログハウスを出て、皆は横一列になって飛び立った。
♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦
転移門から飛び出すと、俺は久しぶりに訪れた《はじまりの街》の中央広場を見渡した。
「改めて思うが、始まりの街はやっぱ広いな。 さてと、行こうぜ!」
巨大な王宮に背を向け、花壇を縫うように歩くと、すぐ前方に四角い《黒鉄宮》の姿が映った。
アインクラッドでも、最も有名な観光スポットの一つなので、初心者からベテランまで多くのプレイヤーが出入りしている。
高いメインゲートを潜り、建物内に足を踏み入れると、ひんやりした空気が肌を撫でる。
奥の大広間に向かい二つの内門を抜けると、一際静謐な雰囲気に包まれた空間が広がり、その中央に巨大な横長の鉄碑が鎮座していた。
「あれか!」
ジュンとノリが、俺とユウキの両側を抜けて走っていく。
数秒遅れて《剣士の碑》の足許まで移動すると、俺も顔を上げ、並ぶ文字列の末尾を探した。
「あ……あった!」
不意に、ユウキが呟く。
黒光する鉄碑のほぼ中央、【Braves of 27th floor】の一文の下に、アルファベットで七人の名前が刻まれていた。
「あった……ボクたちの、名前だ……」
何処か呆然としたようにユウキが呟く。
その瞳が僅かに潤んでいるのを見て、俺の胸にくるものがあった。
「そうだな。 俺らの名前だ」
俺も、鉄碑を見ながら呟く。
「おーい、写真撮るぞ!」
ジュンの声が後ろから響いて、俺とユウキの肩を掴むと、くるんと半回転。
俺が撮影を買って出たが、ノリやタルケン、テッチやジュン、シウネーに引き留められ、七人で撮る事になった。
六人が碑の前に並ぶと、ジュンは《スクリーン・ショット撮影クリスタル》のポップウインドウを操作し、タイマーを設置して手を離し、横に並んだ。
カウントダウンを待ち、全員が大きく笑みを浮かべる。
「おりゃ!」
「うお!」
ユウキが、俺に背中から被さるように身を乗り出してきた。 それと同時にシャッターが切られ、クリスタルが光った。
「おっけー! ちゃんと撮れてる」
ジュンがクリスタルを確認し戻ってくると、俺とユウキは、もう一度振り返って《剣士の碑》を見上げた。
「撮影の時位落ち着きなさい」
「えへへ、つい」
「まったく。 ま、目標達成なわけだ」
「うん……ボク、ついにやったよ、姉ちゃん」
「いやいや、それを言うなら、姉ちゃんじゃなくて、兄ちゃんな。 ボス部屋でも言ってたけど」
「え……?」
何のことか解らない、という風にユウキは俺を見る。
ユウキが両目を見開き、口許を覆っていた。 その紫色の大きな瞳に、透明な雫が盛り上がり、頬を伝って次々に零れ落ちた。
「ゆ、ユウキ?」
手を伸ばそうとするが、ユウキは二歩、三歩と後ずさった。
唇が動き、微かな声が流れた。
「キリト……ぼ、ボク……」
不意にユウキは俯くと、溢れる涙を拭って、左手を振った。
出現したウインドウを震える手で操作し、その小さな体に白い光が包まれた。
「ゆ、ユウキ……。 どうしたんだ?」
俺と呟きは、虚空に消える。
これを最後に《絶剣》ユウキは、アインクラッドから姿を消したのだった――。
原作では、あそこで友達になりませんでしたが、ここでは友達になりましたね。
今後、この友達の部分を生かしていく予定です(^^♪
ボス戦が、すんなり進んでしまった……。はい、作者の文才の無さですね。すいません<m(__)m>
次回は、現実サイドになるのかもです。
ではでは、感想、評価、よろしくお願いします!!