ソードアート・オンライン ~IF 黒の剣士と絶剣~   作:舞翼

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ふぅ、二週間以内に更新できました。
では、投稿です
本編をどうぞ。


第6話≪再会、学校見学≫

俺は弾かれたように勢いよく顔を上げた。

ベットの上で眠る木綿季を見るが、先程と何も変わっていない。 しかし、側面に設けられたインジケータの一つが、不規則に点滅しているのに気づいた。

其処には小さな文字で、【User Talking】という一文が浮かんでいる。

 

「……ゆ、木綿季か?」

 

『うん。 レンズ越しだけど、見えてるよ。 凄い……キリトって向こうと、ホントそっくりなんだね。 ありがと……来てくれて』

 

「見つけるの大変だったんだぞ。 まあ、根性で如何にかなったが。 お前にも会いたかったしな」

 

『ふふ、キリトって、ホントに天然シゴロなのかもね。 そんな事、サラって言えちゃうなんて』

 

「は、はあ」

 

はて、そんな事とはどんな事だろうか?

倉橋医師は苦笑するだけだ。 え、何で?

 

『先生、キリトに隣の部屋を使わせてあげてください』

 

疑問符を浮かべながら振り向くと、倉橋医師は穏やかな笑みを浮かべていた。

 

「いいでしょう。――あのドアの奥に、私がいつも面談に使っているフルダイブ用シートとアミュスフィアがあります。 時間は、二十分程にしておいてください。 色々手続きを省略してるもので」

 

「あ……ありがとうございます」

 

すると、再び木綿季の声が届く。

 

『ログインしたら、ボクたちが初めて会った場所に来て』

 

「おう、了解」

 

俺は倉橋医師に一礼してから、身を翻し、奥の部屋に入った。

其処は、モニタールームの半分程の部屋だった。 黒いリクライングシートが二つ並んで据えられ、双方のヘッドレスト部分にアミュスフィアが掛けられていた。

シートに体を横たえ、アミュスフィアを取り上げると頭に装着する。

電源を入れると、電子音と共に、俺の意識は現実世界から切り離された。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

第22層ログハウスのベットの上で影妖精族(スプリガン)として目覚めた俺は、VR感覚が順致するのを待たずに飛び起きた。

翅を鳴らして空を滑り、床に足を着けずに窓から飛び出す。 最速で翅を羽ばたかせ、雲を切り裂くように第24層まで到達。

外周部からアインクラッド内部に入り、都市の北にある小島を目指す。 朝靄が流れる湖に影を落としながら、全速で飛行する。

向かう先の大きな樹のシルエットが姿を現し、あの木の根元で《絶剣》が俺の事を待っている。

徐々に速度を落としながら、樹を回り込むように着陸態勢に入った。

地面に降り立つと周囲を見渡した。 ユウキは俺に背を向けて、長い濃紺の髪と、矢車草の色のロングスカートを風に揺らしていた。

ユウキは振り向き、アメジストの瞳で俺を真っ直ぐ見詰めた。

 

「――不思議だね。 キリトが現実世界でボクを見つけてくれる予感がしてたんだよ」

 

「いや、シウネーから『病院』のヒントを貰ったんだ。 まったく、探すの苦労したんだからな」

 

「そっか、シウネーが。 あとでお礼しとかなくちゃ。 でも『病院』だけで、ここを当てるなんて普通じゃできないよ」

 

「っておい、俺は普通じゃないのかい!」

 

「ふふ、冗談だよ。 やっぱり楽しいな。 キリトと話すのは」

 

いつのように言葉のキャッチボールを交わす、俺とユウキ。

だが、ユウキ今にも消えてしまうそうな儚いものであり、何処か透明感を増してるようにも思えた。

ユウキは一歩、また一歩と歩み寄る。

俺の目の前に立ったユウキは、ニッコリと微笑んだ。

 

「改めて、久しぶりだね。 キリト」

 

「おう、久しぶり」

 

樹の根元に、俺は胡坐で座り、ユウキは体育座りで腰を下ろした。

 

「倉橋先生に聞いたよ。 ユウキのこと。……お姉さんのことも」

 

「うん。 姉ちゃんはね、初代スリーピング・ナイツのリーダーだったんだよ。 ボクなんかより、ずっと、ずーっと、強かったんだ」

 

誇らしげに姉のことを語るユウキ。

 

「ほう。 是非とも手合わせをしたかったものだ」

 

「キリトはボコボコにやられてたね。 うん、絶対」

 

「で、ですよね~っ」

 

がっくりと項垂れる俺。

 

「スリーピング・ナイツのメンバーは、最初は九人いたんだ。 でも、姉ちゃんを入れて三人いなくなっちゃた……。 だからね、シウネーと話し合って決めたんだ。 次の一人の時には、ギルドを解散しよう、って。 その前に、みんなで最高の思い出を作ろうって……。 姉ちゃんたちに胸を張ってお土産にできるような、すごい冒険をしようって」

 

ユウキたちが最初に出会ったのはセリーンガーデンと言う、医療系ネットワークの中にあるヴァーチャル・ホスピスらしい。

病気は違っても、大きな意味では同じ境遇の人同士、VR世界で話し合ったり、遊んだりという最期の時を豊かに過ごそう。という目的で運営されてるサーバーの事だ。

 

「ごめんね。 本当のことを言えなくて、スリーピング・ナイツが解散する理由は、みんなが忙しくなってゲームを引退するからじゃないんだ。 長くても後三ヶ月、って告知されてるメンバーがいるからなんだよ。 だから……だからボクたちは、最高の思い出が作りたかった。 剣士の碑に、ボクたちがここにいたよ、っていう証を残したかった」

 

俺は、彼女の言葉を一言一句聞き逃さないように耳を傾け続けた。

 

「でも、なかなか上手くいかなくて……一人だけ、手伝ってくれる人を探そう、って相談したんだ。 反対意見もあったよ。 もしボクたちのことを知られたら、その人に迷惑をかけちゃう、嫌な思いをさせちゃうからって。……その通りになっちゃったね。 ごめんね……ごめんね。……今からでも、ボクたちの事は忘れて……」

 

俺は重い口を開く。

 

「いや、お前の事は一生忘れないし、迷惑だとも思ってないぞ。 お前たちと一緒に居た期間は短いかもしれないけど、俺は楽しかったぞ。 共に笑い、共に戦い、この世界に思い出を残す、って。 俺はスリーピング・ナイツに出会えて本当に良かったと思ってる。 友達にもなれたしな。……だから、そんな悲しい事言うな」

 

俺の言葉を聞いて、ユウキは瞳から涙を零していた。

それは、頬を伝って一筋の光に変わる。

 

「ボク……この世界に来れて、キリトに出会えて本当によかった。……今の言葉でじゅうぶん、じゅんぶんだよ。 これでもう……何もかも……満足だよ……」

 

俺はユウキの頭をぐりぐりと撫でる。

 

「まったく、お前はこんなに諦め安い性格だったのか? 違うだろ、まだやってないことが山ほどあるはずだ。 アルヴヘイムにも冒険してない場所がたくさんあるはずだし、VRワールドだって無限にあるんだぞ。――さて、何でも言ってみ。 やりたいこと、行きたい場所。 俺が出来る範囲なら、何でも叶えてやるぞ。……あ、お前が言う、えっちいことは禁止な」

 

ぷっ、と噴き出すユウキ。

え、何で。 俺、おかしな事言ったの? あれー、カッコいい事言ったと思うんだが。

 

「キリトは、悲しい事を吹き飛ばしちゃうんだね。 凄いよ」

 

ユウキは、いたずらっぽい笑みを浮かべた。

 

「そうだね。……ボクね、学校に行ってみたいな」

 

「ふむ。 学校か。……――可能だな」

 

そう、《視聴覚双方向通信プローブ》を使えば可能なのだ。

 

「ほ、ホントッ!? うわっー、楽しみだなー」

 

「ふっ、俺にかかれば不可能はないのさ」

 

「……キリト、カッコつけすぎだよ。 ナルシスト見たい」

 

「うぅ、そこは突っ込まないで欲しかったな……」

 

この後、俺たちは吹き出し笑いをしてしまった。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

ユウキと話したあと、俺は第22層ログハウスでログアウトした。

ログアウトし、現実に帰還した俺は、一連の流れを倉橋医師に相談した。

 

「と、言う事なんです。 先生の力もお貸し頂けると嬉しいんですが」

 

「僕もその案に賛成ですね。 僕も後で、学校に連絡しておいた方がいいかもしれませんね。 それにしても、木綿季くんからのお別れをこのような形にしてしまうとは……。 桐ケ谷君は凄いですね」

 

「いえいえ、俺には大そうな力はありませんよ。 ただ、友人の為に出来る事をするだけです」

 

「本当にありがとうございます。 桐ケ谷君」

 

頭を下げる倉橋医師。

 

「あ、頭を上げてください。 これからなんですから」

 

「そうでしたね」

 

笑みを浮かべる倉橋医師。

俺は倉橋医師に送られて、病院を後にした。

帰ったら、やらなければならない事が山ほどある。 さて、気合を入れて行こう。

 

 

♦♦♦♦♦♦♦♦♦♦

 

翌日の一月十二日。 第二校舎三階北口。

昼休みの電算機室にある椅子に俺は座っていた。 また、俺の右肩には、細いハーネスで固定された、直径七センチ程のドーム型の機械が載っている。

基部はアルミの削り材、ドーム部分は透明なアクリル製で、その内部にレンズ機構が見て取れる物だ。 基部ソケットからは二本のケーブルが伸び、一本は俺のポケットに収められた携帯端末に、もう一本は鎮座されたデスクトップPCへと接続されている。

PCの前では、俺と同じくメカトロニクスを受講してる生徒が集まっている。

 

「パラメータにも少し遊びを作ってくれよ」

 

「でもよ、カズ。 それじゃあ、急な挙動があった時にラグるんじゃねぇか?」

 

「うーむ。 確かに」

 

「その辺は、最適化プログラムの学習に期待するしかねぇよ」

 

「何か、議論だけで昼休みが終わりそうだな……。 初期設定は、最初の奴でいいんじゃないか」

 

「まあ確かに。 取り敢えず、これでOKにしとくか」

 

「んじゃ、レンズ周りの初期化を頼んだ。 木綿季も、視界がクリアになったら声を出せよ」

 

『はーい、了解です』

 

そう、これが通称《視聴覚双方向通信プローブ》だ。 俺たちが、今年度試行錯誤してるテーマでもある。

簡単に言えば、アミュスフィアとネットワークを通して、現実世界の遠隔地と視覚、聴覚のやり取りをするプログラムでもある。

プローブ内部のレンズとマイクに収集されたデータは、携帯端末を介してネットワークに送信され、横浜港北総合病院のメディキュボイドを経由して、専用の仮想空間にフルダイブしている木綿季に届く仕組みである。

レンズはドーム内を自由に回転し、木綿季視点の動きと同期して映像を得る事が出来る。 木綿季は今、自身の体が十分の一ほどになり、俺の右肩に座っている感じである。

レンズがフォーカスを調整するモーター音が響き、木綿季の『そこ!』と言う声と同時に止まった。

 

「さて、俺は先生に事情を説明に行くから、後は頼んでもいいか?」

 

「OKOK。 また授業でな」

 

「つ、疲れたぜ」

 

「お前は、爺か」

 

とまあ、このように、俺と木綿季は電子機器室を後にした。

 

「さて、まずは職員室か。 先生に事情を説明しないとな」

 

俺が言うと、すぐにスピーカーから木綿季の声が届いた。

 

『げっ、職員室』

 

「ふむ。 木綿季は、職員室は苦手と見た」

 

『……まあそうなんだけど、うん。 頑張るっ!』

 

それから職員室まで向かう間、ユウキは何かを見つけるたびに小さな歓声を上げていた。

その様子を見て、俺は笑みを浮かべる。

木綿季には、俺が《SAO生還者》であることは伝えてある。 この学校が、生還した学生たちが通う学校であることも。

其れでも木綿季は、『そうだったんだ。 ボクと同じで、キリトも大変だったんだね……。』の一言で一蹴してしまった。 【職員室】プレート前に来た時、木綿季が静まり返ってしまった。

 

「到着だな」

 

『……うぅ、やっぱり緊張する』

 

「問題ない。 この学校は、変わった先生が多いからな」

 

『も、もう、先生に聞かれた怒られちゃうよ』

 

そう言いながら、俺は勢いよくドアを開けた。

ちなみに、この学校ではVRネームはご法度なので、現実名前で。と言う事になっている。

 

「失礼します」

 

『失礼しまぁす』

 

俺は大きめに、木綿季は小さめに挨拶をすると職員室に入っていく。

俺が職員室に入ると、この後の授業を受け持つ先生が俺の前に立った。

 

「と、言う訳なんです。 OKですか?」

 

「私は構わないわ」

 

「ええ、私もです。 倉橋先生からも大まかな事情は聞いています」

 

流石、倉橋医師。 手回し早いです。

 

「君、名前をなんと言ったかね?」

 

『は、はい。 ユウキ……紺野木綿季です!』

 

現代国語を担当する60代後半の白髪白髯の先生が訊ねて、プローブから返答があると少し驚いてから表情を綻ばせた。

 

「紺野さん。 君が良かったら、これからも授業を受けに来たまえ、今日から芥川の《トロッコ》をやるんでね。 あれは最後まで行かんとつまらんから」

 

『は……はい、ありがとうございます』

 

礼をして職員室を出ると、早足に教室に向かった。

自身の席に座った途端、質問攻めにあったが、木綿季は入院中であることを説明し、実際に木綿季が喋ると仕組みを理解して、次々に自己紹介を始めた。

 

「なるほどね、事情は分かったわ。 あたしは篠崎里香よ。 よろしく」

 

「わたしは結城明日奈。 よろしくね」

 

『うん、よろしく!』

 

各自が着席し、日直の号令を終え授業が開始された。

 

「それでは、今日から教科書九十ページ、芥川龍之介の《トロッコ》をやります。 これは、芥川が三十歳の頃の作品で――」

 

俺はタブレット型端末を持ち上げ、テキストの該当箇所を表示させ、木綿季に見えるようにする。

てか、《トロッコ》の授業は眠くなる……。

だが、次の先生の言葉で素っ頓狂な声を上げる事になる。

 

「では、最初から読んでみましょう。――紺野木綿季さん。 お願いできるかな?」

 

「は!?」

 

『は、はい!?』

 

この声に、教室が一瞬ざわつく。

明日奈と里香は苦笑するだけだ。

 

「無理かね?」

 

木綿季が大きな声を上げた。

 

『よ、読めます!』

 

俺は立ち上がり、両手でタブレッド端末をレンズの前にかざした。

 

「お前……読めるか?」

 

『むっ、これでもボク、読書家なんだよ』

 

「ほほう。 お手並み拝見といきましょうか」

 

木綿季は一息吐いてから、テキストを朗読し始めた。

 

『……小田原熱帯間に――』

 

木綿季は名分を読み続け、先生、生徒たちも止めようとしなかった。

教室内は静まり返り、生徒全員が、木綿季の凛とした声に耳を傾けているようだった。 そのまま授業を受けてから、学校案内をして、学校見学は終了した――。




MR編も中盤に差し掛かってきましたね。
ではでは、感想、評価、よろしくお願いします!!
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