つれづれ喫茶   作:色羽

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佐倉楓の一日

 昨日は桐谷と紅葉ちゃんとプール行ったし、クラブ頑張ろう!

 勘違いされたら困るけど、勿論、部活動のテニスは好きでやってるから苦痛でも何でもないんだけど、疲れは溜まるものなのだ。

 三人でプール行ってリフレッシュ出来たので、単に頑張ろうというだけの事だ。

 

 今日は部活は九時から十六時まである。うちのテニス部は午前だけの時と午後だけの時と朝から夕方までする時がある。今日は朝から夕方までの日だ。家から学校までの距離は大体自転車で十分ぐらいである。余裕を持って七時半には起きるようにしている。

 

 朝起きるとまずはテニスの準備をする。いつも朝ごはんはその後だ。パジャマの状態で朝ごはんを食べてもいまいちしっくりこないから。

 

 服を着替えてリビングへ行くと、焼かれた食パンが一枚。うーん……。朝ごはんを用意してくれることは大変嬉しいことなのだが、ついでにそこにジャムか何かを置いておいて欲しいものだ。

 冷蔵庫にいちごジャムがあったので、それを食パンに塗って食べる。

 

「お母さーん。お弁当どこー?」

 

 この時間まだお母さんも家にいる。お母さんはパートをしている。なんか受付の仕事……かな?その仕事も私と同じく九時からだ。

 

「その辺にあるでしょー」

 

「その辺って何の辺だよ……」

 

 ぶつくさぼやいていると、台所に置いてあったのを見つけた。もうちょっと頑張って「そのへん」から「だいどころ」に変えて欲しいなあ。一文字だけだよお母さん!

 

「思い出すのがめんどくさいだよ!」

 

 やばい、声に出ちゃってたか。まあいいや、ありがとう。

 心の中でお母さんに感謝しながらお弁当をカバンに入れて、時間確認。現時刻、八時半。

 

「よし、行こう!」

 

 

 ◆◆◆

 

 

 学校に着くと既にテニス部員の自転車ががちらほらとあった。全員で四十人くらいのうちの部員の中で、私と同学年の人数は十人だ。

 部室(部室というより用具入れ)の中に入ると同じクラスの成海が道具の準備をしていた。この娘とは気が合うもので、部活中はいつも一緒に、勿論教室でも話をすることもある。

 

「はよっすーなるみん」

 

 私が声をかけるとテニスの邪魔にならない程度の長さの黒髪を揺らしこちらを振り向き、成海も私に軽い挨拶を返す。

 

「はよーさっちゃん」

 

「ちょっと待て。確かに名字は佐倉だけど、さっちゃんと言うとなんかもう違うものになってる気がするからやめてもらおうか?」

 

「そんな細かい事気にしてたら……禿げるよ?」

 

「禿げないわっ!女子高生舐めんな!」

 

 はぁー……禿げるのは男の人だけで女の人は禿げることはないんだから。(偏見)

 そうだ、クラブが始まるまでにまだ二十分ほど時間があるから二人で打ち合いでもしようかしら。

 

「へい、ちょっとだけ練習しない?」

 

 背中に引っ掛けていたラケットを取り出しブンブンと振りながら誘ってみた。

 

「いいけど、いつまで?」

 

「そりゃ始まるまで!」

 

「はいはいじゃあ早くねー」

 

 手をヒラヒラさせながら、成海はテニスコートへ向かったようだ。よし、私も準備(鞄を置いて必要な物を取り出すだけ)をしよう。後ボール、はちょっとでいいか。

 

 コートに行くと成海は壁に向かってボールをポコポコとリズムを刻んでいた。

 ……なんかボッチ臭が漂っている気がする。成海、友達いるけどね。ボール持ってるし。

 

「なーるみー」

 

 呼びかけて、持っていたボールを成海の方に打つと練習(打ち合い)開始。

 

 打ち合いの途中、あることを思いついた。

 

「成海ー、今度どっか遊びに行かない?」

 

「今度って何さ、今日じゃダメなん?」

 

「んー今日は桐谷んとこ行こっかなーって」

 

 私の言い方に成海は眉を顰めた。

 

「かなっーていうのは?」

 

「私の中の予定。桐谷には行くって言ってないよ?まだ」

 

「なんか用事でもあんの?」

 

「まああるかな」

 

 まあ、ないんだけど。何となく今日は桐谷のとこに行ったほうがいい気がする。

 

「ふーん、そ」

 

 少々会話を交えつつ、打ち合っているとあっという間に、部活が始まる九時になっていた。

 

 いくら高校生と言えども、一日中練習しているわけがなく、お昼休憩は必要なものだ。

 カバンからお弁当を取りに部室へ向かう。

 携帯ので桐谷に部活終わったら家に行くことを伝えようとしたが、やめた。サプライズの方が面白いしね。困った桐谷の顔を見たいものだ。

 

「なるみんさーん!弁当食べようぜ!」

 

 部室の中は砂埃が酷いので、テニス部員は決まって外での昼食となる。

 その辺にいくつかのグループに別れてお弁当やらコンビニのパンやらを食べる。私は今日は、私、成海、部長さん、先輩、と計四名のご案内になっている。

 

 座りながら部長さんが話し出した。

 

「最近さー浮気が流行ってるみたいだねー」

 

「流行ってるってなんだよ、病気かよ」

 

 先輩の呆れた物言いを適当にあしらい、部長さんは続ける。

 

「いやさ、うちらの学校では聞かんけどさ、芸能界は酷いんじゃろう?」

 

「そうみたいですねー。今月で十ぐらいの事件がニュースに流れてますね」

 

 と、成海が肯定する。

 

「そうなんですか!私ニュース見ないんで、あはは」

 

 芸能界酷いな。最近は凄いね……。怖いね……。

 私もニュース見た方がいいのかなあ。

 

「浮気する人って生きてる価値ないと思うんだ」

 

 ふんす、と堂々と言い張る部長さん。

 

「こらこら。そういえことは言うもんではないよ。誰が聞いてるか分かったもんじゃないからね」

 

 何故か目を光らせる先輩。キラン。

 

「浮気どうこうより、私達は彼氏ですね」

 

「だねー」と、皆で笑うと会話はひとまず休憩。私には彼氏なんてできそうにはないなあ。そういう成海はすぐできそうなんだけどね。

 

 他愛もない会話をしながら食べるご飯は美味しかった。

 こういう時間はとても楽しい。紅葉ちゃんや桐谷にも何かを部活動に参加する事を勧めてみようかな。なんならテニス部に来てもいいんだけど。絶対断るな。紅葉ちゃんは一応ピアノやってるし。

 

 

 ◆◆◆

 

 

 練習が終わると時間は四時になっていた。グラウンドの整備をして荷物を取りに部室に行く途中成海が近づいてきた。

 

「今度っていつ行くよー」

 

 どうやら予定を聞きたいようだ。

 ふーむ。いつでもいいんだけどなあ。二人でカラオケとかいいなあ。

 

「んー。明日は?」

 

「明日ね……。いーよ多分行ける」

 

 んじゃ。と成海と別れる。なんかあったらメールするし大丈夫かな。

 

 部室に入りカバンの中の携帯の通知を確認すると、桐谷から「部活の後家に来てもいいんだからね!」と、うん?なんでツンデレ風なんだ?

 よし、絶対いく。何があっても行く。死んでも……死んでもあ 貴女に会いに行く。……と、メール送信。ヤンデレぽいか?これ。分かんないけどこんなもんかな。

 

「さよーなら!」

 

 部室のいた部員達に挨拶し、自転車を取りに駐輪場へ向かう。

 こっから桐谷の家は、二十分ぐらい?かな、うん。結構遠いなー。

 気合入れて行くよー。ちょっと無理かな。流石に疲れが、疲れが……。

 時間かかるし、音楽でも聴きながら帰ろう。

 

 桐谷の家に向かう途中にコンビニを発見した。

 ふむ、ブラックサンダーでも買って行こうかな私が二個で桐谷には一つやろう。そして自慢してやろう。どうだー私は二個だーって。

 

 目的のブラックサンダーを買い、再度桐谷の家を目指す。

 そこで気づいた。待てよ、一つあげたら普通に喜ばれるんじゃ……?

 うん、いいか。どっちにしろ微妙な顔か困った顔はしてくれるだろう。

 

 そんな馬鹿らしい事を考えていると、目的地に到着。

 よし、僅かな時間だが楽しもうじゃないか。ふっはっは。

 気合を入れてインターフォンを押すと、階段の音が聞こえた。

 ドアが開かれたと同時、息を吸い込む。「はーい」と聞こえたら溜めていた息を贅沢に使う。

 

「はいはい!!桐谷が大好きな女の子が来ちゃいましたよ!」

 

「うるせえ」

 

 嫌そうな顔だねー。なんか嬉しいね。あれ?あの靴紅葉ちゃんのかな?

 

「紅葉ちゃん来てるの?」

 

「ん、ああ。来てるよ。昼から」

 

 ちょうどいいや。ブラックサンダー三つあるし。

 

「やったね!」

 

「はいはい、早く上がりな。あ、ハーゲンダッツあるけどいる?」

 

「何それいるに決まってんじゃん!馬鹿なの?」

 

「やっぱあげねえぞ」

 

「えー、ブラックサンダーあげるから許して!ね?」

 

 ブラックサンダーと聞くと桐谷の目が少し輝いた。欲しかったのだろうか。

 

「ちょうど欲しかったんだよ!サンキュー」

 

 紅葉ちゃんはアイスが欲しいって言ってた、なんて聞こえなかったことにしよう。

 

「紅葉ちゃんどうだった?元気だった?」

 

「腹黒では無かったな。腹灰色ぐらい。あと今は寝てる」

 

 途中ちょっと意味わからんかった。けど紅葉ちゃん寝てるのかー。見てみたいな。

 桐谷の部屋に着くと、おお本当に寝ている。可愛い。

 

「紅葉ちゃんおはよー!起きろ、朝だよー!」

 

 ビクッと起きて、首を左右に振り回した紅葉ちゃんよ第一声は、

 

「学校遅刻しちゃう!」

 

 天然さんかな?まあ可愛いから許っ!

 ポカッと桐谷に殴られた。痛い。

 

「まだ夕方だよ。てか今は夏休み。ついでに、楓、来たよ」

 

 優しく呼びかける桐谷によって紅葉ちゃんは覚醒したようだ。

 おいおい、ついでって姐さん。

 

「ほんとだー!あ、ハーゲンダッツいる?」

 

「貰いますー」

 

「よーし今日はアイスパーティーだー!」

 

「いやもうほとんどねえよ」

 

 ほわっと叫ぶ紅葉ちゃんに現実的な桐谷のツッコミ。

 あー。安心感。楽しい。やっぱり来てよかった!

 

 この後は、アイスパーティー(コップに氷を入れてガリガリ食べるだけ)を開催し、流れで晩ご飯までご馳走になり、三人で笑い合った。

 

 家に帰ると午後十時を過ぎていた。部活と桐谷の家での疲れでシャワー浴びて歯ブラシをすると、私はすぐにベッドイン。

 グッドナイト。

 

 翌日、部活後に成海とカラオケに行ったことはまた別の機会に語ろうじゃないか。

 

 そんな、私の一日。




お久しぶりです。色羽(いろは)です!
今回は梓、紅葉ちゃんの二人が過ごした日の裏側の、楓の一日です。
ちょっと時間かかってしまいました。すみません。
眠気に負けてなかなか進みませんでした。

ではまた次回投稿にお会いしましょう。
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