つれづれ喫茶   作:色羽

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色羽ですお久しぶりです。いつまで夏休みするんだ、と思われるかも知れませんが、それは自分の気が済むまでですので付き合ってやって下さい。
では、どうぞ。


インデパートアウト

楓、紅葉ちゃんとプールへ行った二日後の八月一日、昼現在。お決まりの三人組でデパートにきている。昨日は楓がテニス部の成海と遊びに行ってたらしいので、家でゴロゴロしていた。

目的は特に無い。がしかし、家にいてもすることが無いのでフラーっとデパートへ入ってきた次第だ。

 

「そう言えば楓のリュック何でそんなにおおきいんだ?」

 

カバン自体はそこまで大きくないが、問題は中身だ。カバンがはち切れんばかりにパンパンにつめられている。あと、少し四角い。

 

「家に帰ったら見せるよー」

 

デパートに入ると自然と足がある場所に向かう。一階フードコートだ。三人ともお昼ご飯はまだだったのだ。

 

自分の頼んだラーメンを啜りながらふと思った。

 

「ラーメンってさ、時間たったら伸びて美味しくなくなるって言うよな?」

 

目の前にたこ焼き、お好み焼き、焼きそば等のB級グルメを貪っていた楓は食事の手を止めた。

 

「言うね」

 

「伸びるのは分かるよ?麺がスープを吸って長くなるからだし。でもさ、それってめっちゃ美味しくない?」

 

ローストビーフ丼(並)を食べていた紅葉ちゃんは水を飲み一息つく。

 

「ごめんねーちょっと意味わかんない」

 

「ラーメンは主に麺とスープが合わさって美味しいだろ?そこを更に近くに合わせた結果が伸びるってことだろ?なら超美味しくなるのがものの道理ってもんじゃねえの?言ってること分かる?」

 

二人共直ぐには分からなかったようで、少し唸っている。

先に答えたのは楓だった。

 

「分かるけど、ラーメンのことは知らない」

 

「わたしは分かるよ。ラーメンの方の事ね。でもそれって……」

 

「いい例えが思いつかなかったんなら言わなくていーよ」

 

再び食事に集中。

最初に食べ終えたのはまたしても楓だった。

 

「美味かった!」

 

「食べるの早いねー楓ちゃん」

 

「B級だからね!食べる速さもB級だよ!」

 

よく分からんけど、なんか面白かった。紅葉ちゃんの方を見ると、結構受けがいいようだ。今日の流行語大賞だね、食べる速さもB級。

 

「じゃあわたしはC級だね。並だけに」

 

今度は紅葉ちゃんか。C級と並は同じレベルなのか?楓よりもよく分からんかったけど、ドヤ顔は可愛い。

全員が食べ終わると、暇になる。元々何の目的もなく、掃除機に吸われる埃のように何となく来たのだ。

食べ終えた食器をそれぞれの店に返し、念のため備え付けのナプキンでテーブルを拭いてから、ダラダラしている女子高生三人組。

 

あまりに暇だったのか、あたしと紅葉ちゃんが何もしてない間に楓は何度も水を飲んではお代わりしていた。自分で入れる装置があるので誰にも迷惑をかけていないから別にいいのだが、かれこれもう二十杯は飲んでいるだろう。

 

「もう帰っちゃおうか?」

 

紅葉ちゃんがそれを見かねたのだろう。

 

「あ、うん……」

 

どうも何か含みがある言い方だ。気になったので聞いてみることにした。

 

「どうした?」

 

「いやね、普通何かあるじゃん?」

 

一体何を言ってるのかわからない。なんの事だ。

 

「例えばさ、何回飲むんだよ!とか、お前は干からびたミイラか!とか」

 

「何度も水飲んでたのはボケだったのか。分かりにくいわ」

 

いやほんとあの奇行は暇を持て余した末路ではなかったのか。

 

「今からでも遅くない、早くするんだ!」

 

面倒になってきたのでスルーを決め込もうとしていたのだが、紅葉ちゃんはそうでは無かったみたいだ。

 

「水の割合九割ぐらいありそうだね」

 

「紅葉ちゃん。それはちょっと微妙かな」

 

紅葉ちゃんのジョークは楓にはウケなかったようだ。あたしも面白くなかったけど。

 

外に出ると相変わらずの暑さで、またデパートの中に入りたいところだったが、帰るときに結局は外に出ないといけないわけで、つまるところ何が言いたいかと言うと、早く帰りたい。暑い。

あたしと同様に二人も暑いのだろう。両隣からヒーヒー言っているのが聞こえる。

元気な楓も流石に暑さには勝てないようだ。

 

「桐谷の家まで競走しない?早くついた人が勝ちで」

 

確かにそれはあたしも考えた。自転車を全力で漕いでその風で涼しくなるし、なにより早く家に着くため暑さからの解放が待っている。ペダルを漕ぐ運動で熱くなることはそんなに気にならないだろう。

だが、常識的に考えると実行に移せない理由がある。

 

「危ないだろ」

 

「ふっ。だよねー」

 

諦めた様に笑ったが、自分でも危ないことは分かっていたようだ。

 

「普通にゆっくり帰ろ?それが一番暑くないと思うの」

 

紅葉ちゃんの言う通り、ゆっくり帰った。

帰る途中学校の前を通ると、同じクラスのテニス部の成海がテニス部員らしき人達と二対二をしていたのが見えた。楓はここにいるから自主練かな?

 

「よっし!こっちの勝ちー!今日の夜は成海達の奢りね!」

 

「くっそ。次は勝つ!」

 

成海と誰かさんは悔しがっていて、相手コートの二人はピョンピョンと勝利への喜びを表している。

全然練習じゃないじゃん、夜ご飯の代金を掛けての勝負だった。

一人分奢るのはでかいなあ……。

 

「あいつらすごい事してんな……」

 

楓も驚きを隠せないようで、ポツリと呟いた。

 

「わたし達も今度やる?」

 

なぜか紅葉ちゃんはやりたがっているが、あたしは嫌だ。テニスは疲れる。

 

「やだよテニス疲れるだろ」

 

「つまりテニスじゃなかったらいいって事だよね?」

 

「私も嫌だよ。自分が食べたぶんくらい自分で払うべき!」

 

楓の反対により無しとなった。テニスじゃなくても嫌だったからちょうどよかった。

 

「だー!暑い」

 

家に着き部屋に入ると持っていたリュックを放り投げ、ゴロリと寝転がり喚く楓には呆れるばかりだ。

 

「今クーラー付けるから待ってろ」

 

ピッピとリモコンを操作していると、紅葉ちゃんが扇風機を起動していた。

 

「じゃあわたしは扇風機貰うね」

 

「自然な流れで扇風機を独り占めしようとしているんだろうけどそうはいかない!三人で使いなさい紅葉ちゃん」

 

独り占めはあたしも許せんぞ。たとえ紅葉ちゃんでも。

クーラーが効くまで少し時間がかかるだろう。扇風機には頑張ってもらわねば。

 

「ああそうだ、楓のそのリュックは何が入ってるんだ?」

 

「わたしも気になるなー」

 

「とか言って勝手に開こうとしてんじゃないよそこの二人」

 

そうはいっても何が入ってるのか結構気になる。四角くて大きなものか……。鉄板とか?

 

「なに、焼きそばでもご馳走してくれんの?」

 

当たり前だが、楓のリュックに鉄板なんかが入っているわけが無い。突然の鉄板発言に楓も紅葉ちゃんも困惑しているようだ。

 

「何言ってるか分かんないけど、この中に入ってるのはただの人生ゲームだよ?」

 

「そっか。梓ちゃん、ゲーム持ってないもんね」

 

馬鹿にしている。流石にゲームぐらい持ってるぞ。将棋とかあとはチェスとか、他には……うん、ないな。

 

「親父が、ゲームなんて女の子がするもんじゃありません!とか言うんだよなあ。自分は最新のゲーム機やらケータイのアプリとかめっちゃやってるくせにな」

 

「お父さんゲーム好きだもんね。娘には健全で?いて欲しいんじゃない?私はゲームが不健全だとは思わないけど。ね、紅葉ちゃん」

 

「うーん、正直どっちでもいいかな。わたしも少しやるぐらいだし。楓ちゃんは結構するよね」

 

「楓のゲーム事情は何でもいいけど。まあ、親父がいない時なんか勝手にしてるけどね」

 

話がそれたな。あたしの親父が頭かっちりおじさんなのはいいとして。せっかく持ってきたんだから人生ゲームやりたい。ちなみに人生ゲームは初めてじゃない。

 

「よし、涼しくなってきたところで、人生ゲームやろうか!」

 

楓がササッと準備し終えると、ジャンケンで順番決めをした。

紅葉ちゃん、あたし、楓の順番だ。

 

「じゃあ橘紅葉。一番行かせてもらいまーす」

 

 

◆◆◆

 

 

「お、あたしゴールした。残金は……百二十万ドル」

 

一番に着いたあたしは十万ドル札が十二枚残っていた。最大が十万ドル札までしかない人生ゲームなので、勝ちすぎて申し訳なくなる。

この人生ゲーム、小市民的だなあ。

 

「私もゴール!だけど、借金しか残ってない……」

 

次にゴールしたのは楓だ。ゴールしたのはいいものの、三回も浮気の末、夫を殺害。のマスに止まったのだから家もお金も一切残らなかった。残ったのは赤い借金のお札だけどった。

お札(借金)を数えてる楓の目は、気のせいなどではなく、潤んでいた。「お札濡れてんぞ」というのは流石に可哀想だった。涙拭こうぜ。

つかこの人生ゲーム殺人事件起こるのかよ、怖すぎるわ。

 

「わたしも終わったよー。疲れたー」

 

最後に到着したのは、当然ながら紅葉ちゃんだ。顔と声色から察するに、一時間にわたる人生ゲームにお疲れのようだ。ゴールした嬉しさよりもゲームから解放された嬉しさの方が大きいようだ。腕を広げて床に寝転がっている。

紅葉ちゃんは残金五十万ドルと、そこそこの戦績だった。

 

「一番はあたしか、べべの楓には何を奢ってもらおうかなー」

 

確か晩ご飯代をかけて勝負だったはずだよな。うん。

 

「な…!勝った後にそれ言うのはずるい!今日は自分家で食べますー」

 

「しゃーねーな。勘弁してやるよ」

 

「なんで私が駄々こねてるみたいになってるんだ……!!」

 

「疲れたからもう帰ろうよー」

 

紅葉ちゃんは理不尽な要求にイライラっとしている楓を冷ますためか、帰宅を提案した。

 

「なんか眠くなってきた」

 

と思われたが、そんなつもりはなくただ帰りたいだけのようだ。

うーん。マイペース。

 

「はー分かったよじゃあ帰るよ紅葉ちゃん」

 

楓はマイペースな紅葉ちゃんに気を削がれたようで、奢る奢らないは有耶無耶になった。実際、奢らなくてもいいんだけどね。

三人でパッパと片付けをして、二人を見送りに家の外までついて行った。

太陽は沈みきっていて、夜だというのにこれっぽっちも涼しさを感じない。ジメジメと、暑くないサウナにされされている気分だ。

 

「じゃあな」

 

「またねー梓ちゃん」

 

「次来る時までにはテレビゲームの一つぐらい置いときなよ!」

 

余計なお世話だ。特に不自由することもないんだからほっとけ。

軽い別れの挨拶を告げ、玄関のドアを開ける。そういえば楓のやつなんか忘れてなかったっけ?

まあいいや。と自分の部屋の扉を開くと、四角く変形したリュックが置いてあった。

アイツ、忘れて帰ったのか……。

 

携帯がメールの着信の知らせを鳴らしたので確認すると、「リュック忘れた。今度持って帰る!」との事だ。

 

まあいいだろう。明日か明後日か、また会うんだから。

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