魔法少女まどか☆マギカ 聖なる焔と新たなる運命   作:緋月ルナ

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お待たせしました。第8話です。
今回は戦闘もなく短いです。申し訳ありません。


第8話 絶望を切り開く力

「これから、ここにいる全員で手を組もうと思う」

 

そう言い放った澪鵺の顔は真剣だ。

だが、さやかは反論する。

 

「こんな奴らと手を組むって言うの⁉今までさんざんあたし達の邪魔をしてきたって言うのに!」

 

さやかの言い分はもっともだ。

今まで敵対してきた人間といきなり手を組むと言われても難しいだろう。

だが、それでも澪鵺は続ける。

 

「さやかの言いたい事は分かる。だが、今ここで俺達が敵対して何の得がある?俺達の敵は同じ魔女、そしてキュゥべぇだ。魔法少女同士が争って何になる」

 

澪鵺はまどか、さやか、杏子、ほむらを見て言う。

自分達が戦うべき相手は魔法少女ではないと。

敵は魔女、そしてその根元であるキュゥべぇだ。だからこそ、手を組み、共に戦うべきであると。

 

「魔法少女同士で争っても何も解決はしない。なら、ここは手を組むべきだと俺は思う。もちろんすぐに答えを出せとは言わない」

 

「…あたしは、少し時間がほしい。頭では分かってるんだ。あたしの戦うべき相手はあんたらじゃないって。でも、すぐには答えられない」

 

杏子はそう答えると部屋から出ていく。

 

「…あんたはどうなのよ、転校生」

 

「そうね。私は手を組んでもいいと思うわ。ただ、その前にあなた達の事を教えてもらえるかしら──?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ルーク、さっきはごめんなさい」

 

ルークとマミはほむらの家を出て外を歩いていた。

マミはルークの後ろを歩きながら小さく謝る。

 

「ん…?ああ、いいんだ。わかってくれたなら」

 

「本当に私達を助けてくれるって言うの?」

 

「…ああ。俺は誰にも死んでほしくない。マミも、さやかやまどかにも、あの2人にも。そう簡単な事じゃないかもしれない。でも、何か方法はあるはずだ。だから…」

 

ルークは立ち止まって拳を握る。

そんなルークをマミは後ろから抱き締める。

 

「ま、マミ⁉」

 

ルークは驚いたような声を上げるが、マミは離さず、そのまま続ける。

 

「ありがとう、ルーク。そう言ってくれて。あなたのおかげで私はまだ戦える。あなたを希望として、私は戦うわ」

 

マミの言葉は優しく、そして確かな覚悟を感じた。

ルークはそんなマミの言葉に安心し、その手に触れ、呟く。

 

「必ず、俺達がなんとかしてみせるから」

 

そう、誓うように────

 

 

 

 

 

 

 

「…あなた達の事はよく分かったわ。私にあなた達と敵対する理由はない。手を組みましょう」

 

澪鵺は自分達が別の世界の人間であることをほむらに話した。

一部黙っていた事はあるが、ほむらはそれを受け入れ、手を組む事を了承してくれた。

 

「助かる。戦力は少しでも多い方がいいのでな」

 

「それで、魔法少女を助ける、と彼は言っていたけど。何か策でもあるのかしら」

 

ほむらは澪鵺に魔法少女を助ける方法に心当たりがあるか聞くが、澪鵺は首を横に振る。

 

「それはこれから考える。多少時間はかかるかもしれないが、何もしないよりはいい」

 

「…そう。わかったわ。何かあれば連絡をちょうだい」

 

「わかった。よろしく頼む」

 

ほむらと連絡先を交換すると澪鵺はまどかとさやかを連れて彼女の家を出ていくのだった───

 

 

 

 

 

 

 

 

途中でルーク、マミと合流し、さやかとまどかとは別れてルーク達は家に帰って来た。

マミも落ち着いた様子で普段と変わらない。

 

「さすがに疲れたな」

 

澪鵺がリビングに座り込むとマミはクスクスと笑う。

 

「あれだけ怒ればね。正直、あなたが怒るところは初めて見たわ」

 

彼女にそう指摘されると澪鵺は頬をポリポリと掻くと照れ臭そうに呟く。

 

「俺もあそこまで怒るつもりはなかったんだ。だが、あいつの顔を見ると怒りがこみ上げてきてな。許せないんだ。あんな風に人の気持ちを踏みにじるような奴」

 

「優しいのね」

 

マミは紅茶を用意するとルークの隣に座る。

 

「別に優しい訳ではないさ。俺は俺の思うように行動してるだけだ」

 

「まぁ、そういうのもいいんじゃないか?間違った事さえしなかったら」

 

澪鵺の言葉にルークが紅茶を飲みながら肯定する。

 

「…そうだな。そうかもしれないな」

 

「それに、私達魔法少女を助けようとしてくれている。ありがとう」

 

「仲間、だからな。今はこうして一緒に暮らしている。家族も同然だ」

 

「家族、か…家族…。そうね、ありがとう」

 

澪鵺の言った『家族』という単語を繰り返すとマミは微笑んで再び礼を言う。

 

「やっぱり、優しいわね」

 

「な、なんだよ…急に」

 

「ふふ…そう思っただけよ?」

 

「照れてらー。もしかして慣れてない感じか?」

 

茶化すようにルークに言われ、澪鵺は何も反論できずに黙り込む。

どうやら図法だと感じたルークは勝ち誇ったように笑う。

 

「まったく…人をからかうんじゃない。俺は部屋に戻るぞ」

 

澪鵺は相手などしてられないと言うように部屋に戻っていくのを2人は「おやすみ」と見送るとマミはルークの肩に頭を乗せる。

 

「マミ?」

 

「少しだけ、こうしててもいいかしら?」

 

「いいけど…」

 

「実はね、やっぱり怖いの。あなた達がいるから大丈夫。頭では分かっていても、いつ自分が魔女になるか分からないって思うと怖くて胸が苦しくなるの」

 

「マミ…」

 

当たり前だ。ただでさえ生死を賭けた戦場にいるというのに、魔女に勝ったとしても自分が魔女になるかもしれないのだ。それに、まだ彼女達は中学生だ。大人でも死ぬのは怖いのに、彼女達にとってその事実はどれだけの負担になるのだろうか、到底わかるわけもない。

だが、ルークは彼女の頭を撫でると噛み締めるように言葉を紡いでいく。

 

「大丈夫。俺達が絶対に守ってみせる。こんなことしか言えないけど、マミもさやかも、誰1人として欠けさせない」

 

 

 

 

 

 

 

澪鵺Side

 

「ふぅ…」

 

澪鵺は自分の部屋に戻るとすぐにベッドに転がって息をつく。

 

(まったく…本当に疲れた)

 

天井を見つめて頭の中を整理する。

魔法少女はいつか魔女になる可能性がある。そして、それを防ぐ方法は今のところない。

完全にゼロからのスタートだ。

 

(…魔法少女を魔女にしないためには…)

 

魔法少女が魔女になるサイクルを思い出す。

ソウルジェムに穢れが溜まれば、魔女になる。

その穢れとは一体何なのか。

 

『魔力ですよ』

 

考えていると頭の中で女性の声が響く。

彼はこの声に心当たりがあった。

毎日聞いている声だ。分からない訳がない。

いや、正しくは、こっちの世界に飛ばされる前までは、だ。それでも聞き間違える事などない。

 

(どういう事だ。エリアル)

 

澪鵺は声の主をそう呼んだ。

 

『そうですね…』

 

エリアルと呼ばれた彼女は少し考える。

答えはすぐに出た。

 

『一度直接話しましょう』

 

彼女がそう言うと、澪鵺は何も答えずに目を瞑って意識をエリアルに集中させる。

そして、次に目を開けると、そこは彼の部屋ではなかった。

いや、違う。正しくは澪鵺の身体は部屋にある。

ここは彼とエリアルが共有する精神空間のようなものだ。

 

「来ましたね」

 

「それで、さっきのはどういう事だ?エリアル」

 

澪鵺の前には緑がかった薄い水色の髪を腰まで伸ばした女性が立っていた。

エリアル・シルヴァ・シルフィード。それが彼女の真名だ。

だが、彼女にはもう1つ名前がある。

シルフ。それが彼女のもう1つの名。そう、彼女は澪鵺が契約している精霊シルフだ。

だからこそ、彼女は澪鵺と精神空間を共有することが出来るのだ。

 

「そうですね。魔法少女が魔法を使う度に穢れが生じる。簡単に言えば、使って汚れた油のようなものです。魔法少女は私たちと違い、それぞれが持つ魔力は有限。だから戦闘後はグリーフシードを使って魔力を『濾過』するのです。そして、残りかすをグリーフシードに移した魔力は新品同様に戻るというわけです」

 

エリアルはそこまで話すと少し息をつき、澪鵺の目を真っ直ぐに見る。

 

「ここまでは、理解できましたか?」

 

「ああ…だが、どうしてその事を」

 

澪鵺は当然の事を聞く。

自分の中で見ていたとしても、直接関わってはいないのだ。そこまで分かるわけがない。

 

「マスター…いえ、澪鵺。精霊を見くびらないでください。こっちの世界に飛ばされて今まで出てこなかった間、何もしていなかった訳ではないのですよ」

 

エリアル溜め息をついて呆れたような目で澪鵺を見て続ける。

 

「こちらの世界は私たちの世界のようにC粒子が溢れているわけではない。だから、粒子の塊のような私は自由に動けなかったのです。その間、私はあなたの中で魔法少女達を観察していた。それに私はこのような力の源を分析するのは得意なのです。少し時間はかかりましたが、こちらの世界にも対応でき、今あなたの前にいるのです。実体化はまだ無理ですが、他の精霊だともっと時間はかかりましたよ?」

 

「わ、わかった。すまなかったな。また会えて嬉しいよ。エリアル」

 

「…私もです。いずれまたこちらの世界でもあなたの力になりたいと思います。共に肩を並べて戦いたいとも」

 

エリアルは柔らかな表情で微笑む。

それに澪鵺も「頼む」と答えると彼女は真面目な表情に戻る。

 

「さて、話を戻しましょう。魔法少女を救う為には、穢れを溜めないようにする必要がある。そして、魔法少女の魔力が有限だと言うなら、それを私たちと同じ仕組みに変えてしまえばいいのです」

 

「というと?」

 

エリアルの言う意味が分からなかった澪鵺は彼女に聞く。

自分達と同じ仕組みに変えるとはどういう事なのか。

 

「自分の持つ魔力だけではなく、私たちが使っているC粒子を使えるようにすればいいのです」

 

 

彼女の言うC粒子とは、澪鵺が言っていた粒子の事だ。

 

「だが、そんな事が出来るのか?」

 

「あなたが今、この世界で能力(スキル)を使えているということは、この世界に粒子が少なからずあるということ、その点では問題ありません」

 

「それもそうだが、どうやって仕組みを作り替えると言うんだ」

 

エリアルの言っている事は滅茶苦茶だ。

そう澪鵺は思っていた。だが、エリアルは難しい事ではないと言うように答える。

 

「絶望を切り開く力があなたにはあります。あなたの能力の本質は闇。あなたが…私たちが魔法少女と契約するのです」




この間、久しぶりにゲームセンターに行って来ました。
そこに偶然タイムクライシス5というゲームがあってやってきたのですが、タイクラファンとしては、うーん…って感じで少し残念でした。

今回で魔法少女を救う方法が見えてきた訳ですけど、正直これは自分の作品の登場人物なのにこの設定を忘れていました。
澪鵺の設定をまとめたページを見ていると、この方法が、あって「これだ!」となったわけですが、詳しくは後々わかります。
では、閲覧ありがとうございました。

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