PMC探偵・ケビン菊地  灰狼と女神達   作:MP5

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 夏は終わるが、気温はあまり変わらない


15話 危険な花火

 今日事務所にはケビンしかいない。宏美は盆休みで祖母の家に行っており、オマルは関西へ旅行に行ってしまったためだ。

「でもミコトちゃんが遊びに来てる」

「ことりも忘れないでください!」

 ケビンにとっていい感じに一人の時間が取れるはずだったが、夏休み中で仲の良い二人が事務所に遊びに来ている。二人とも何故か大きめのカバンを持っており、どこかに出掛ける用意までできていた。

「事務所開けたくないんだけど・・・」

「先生にも休暇は必要です。明日の夕方、稲村ケ崎でのど自慢大会があって、優勝すれば周辺店舗のドリンクとランチが無料なんです」

「話聞いてた?一応、探偵業も特別警備会社の仕事も休みにしたくないって」

「でも、のど自慢大会面白いと思いますよ」

 人の話を一切聞いていない二人に押され出発しようとしたその時、一人の男が事務所に入ってきた。肌が日焼けで黒く、程よく鍛えた肉体の男だった。

「すいません、ちょっと相談したいことが」

「構いません。二人とも、少し席外してくれる?」

 

 

 

 

 

 ソファに座らせ、話を聞く。彼の名は桑田博、今度稲村ケ崎で大型イベントを主催する、桑田企画株式会社の社長らしく、運営本部に脅迫状が届いたらしい。

「渡辺曜を出場させるな・・・誰です?」

「ご存じないのですか?彼女はAqoursのメンバーで、今勢いのあるスクールアイドルですよ!」

「へぇ・・・これ以外で怪しい動きとかは?」

「会場の準備中に照明が落ちてきたり、演出用の爆薬が盗まれたりと、明らかに人為的なものを感じます」

「・・・爆薬って、どのくらい盗まれましたか?」

「だいたい半数の15キロほどが盗まれました」

「どこにしまっていましたか?」

「会社にある鍵の付いた離れの倉庫です。あんな危なっかしいもの、そこら辺に置きませんよ?」

「鍵を誰が持ってましたか?」

「限られた職員のみが携帯しています。私も許可と免許持ってますから、管理はできます」

 ケビンは焦りを感じた。不特定多数の人間が来るであろう夏の浜辺で起爆されたら、想像するだけでも恐ろしく感じる。

「・・・警察には知らせましたか?」

「もちろんです。しかし、警察だけで対応し切れないと思いましてここに相談に上がったのです」

「なるほど・・・今回はその、渡辺曜って子の護衛をしながら盗まれた爆薬を発見してほしいのですね」

「はい。しかし探偵さんもなかなかやりますね」

「?」

「だって、元トップアイドルの二宮ミコトちゃんとμ’sの南ことりちゃんと交流があるなんて、羨ましいじゃないですか!」

「ミコトちゃんは時々来ますよ。今日だって、その稲村ケ崎の大会に行きたいって話をしてましたから」

 

 

 

 

 

 

 仕事を引き受けることにしたケビンは、早速準備を始めた。もちろん仕事の準備である。

「レミントンR5に556NATOマガジンを15個。Px4マガジン4個入れて・・・」

 他に予備のボディーアーマーや非常食を専用のAMMOボックスにマガジンを入れ、それをクラウンのトランクに入れる。

「先生、今回重装備ですね」

「俺が首突っ込む事件はいつもヤバいが、今回は特別ヤバい」

「でもそんな簡単に持ち出せるのでしょうか?」

「種類と保存方法にもよるが、刺激すれば大爆発は確かだ。30キロをどうやって運んだんだろう?」

 ケビンは二人を後ろの座席に座らせ、稲村ケ崎へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 現場の会社に入り、盗まれた爆薬と同じものの、四角い粘土みたいな物の画像を見て、ケビンは桑田の胸倉を掴んだ。

「どこで買った!」

「え、ど、どこでって・・・」

「答えろ!」

「友人の紹介で知った通信販売のサイトです。最近、独自に開発した演出用爆薬を扱ってるって話を聞いて・・・」

「バカ野郎!C4が演出用なワケないだろうが!あれは軍用爆薬だ!」

「ええ!じゃ、じゃあ騙されたんですか!?」

「サイト見せろ!」

 桑田のPCの履歴に専門サイトがあったため、それを開いてみる。ケビンはそのサイトに見覚えがあった。アメリカで仕事してた時、本社がCQB訓練用ブリーチを購入するサイトと同じものだったからだ。

「誰から教えてもらったんだ?」

「平っていう、マーキュリーセキュリティー茅ケ崎支社に勤務してる友人です。安全で素人でも扱えるから、安心して・・・」

「確かにC4は安全で信管が無ければただの粘土だ。だが、信管とスイッチがあれば、仮に15キロ全部爆発させれば会場の人間の多くが一瞬で挽き肉になるほど威力を持ってるんだぞ!」

「じゃあ、私は無自覚で殺人計画を」

「そういうことになる・・・」

 ケビンは疲れた様子で頭を抱える。もし犯罪集団に渡ってしまえば、大惨事は免れない。

「私はどうすれば・・・」

「とりあえず火薬を使わない演出を考える、次に出演者にその旨を伝える、それだけだ。俺はその渡辺曜の身柄を確保しに行く」

 

 

 

 

 

 

 

 待ち合わせ場所の書かれた紙を手掛かりに、3人は沼津に向かった。

「なんか大変なことになりましたね・・・」

「本社に連絡して上海支部から援軍呼んでもらった。すぐに来る」

「探偵さん。C4って危険なものですか?」

「ダイナマイトわかるかな、それの1.3倍の威力があって、遥かに上回る安全性を有した軍用爆薬だ。どのくらい安全かって言うとね、火につけてもただ燃えるだけだし、ハンマーで殴るなど乱暴に扱っても爆発しない。ただ、信管とスイッチがあれば一瞬で危険物に早変わりだ。問題は、盗んだ相手が信管を持っているかだ。もしあったら」

「地獄絵図になる・・・」

 ことりは想像するあまり失神してしまった。

「彼女連れてくるの失敗だったね」

「そうですね」

 沼津に到着後、指定の場所である港の駐車場で待機することにした。髪型こそ花陽と似ているが彼女に比べて筋肉質な少女が窓をノックしている。

「桑田さんが言ってた、ボディーガードさんですか?」

 窓を開ける。

「そうだが、君が曜ちゃんかい?」

「渡辺曜です。ホテルまでお願いします」

 ドアを開け、助手席に座らせると、彼女が驚いた表情になる。

「え・・・南ことりちゃんに、二宮ミコトちゃん?」

「二人とも知り合いでね。俺が仕事がてら送迎することにしたんだ」

「ミコトです、よろしく」

「よ、よろしく・・・ドア重たいですね」

「この車、完全防弾仕様だから。そうだね、ロケットランチャー撃たれなければ生きて帰れる保証ができるくらいだね」

 この人何者だろうか。曜は内心不審に思った。

「これ、俺の名刺だ」

「・・・あ、もしかして花丸ちゃんの言ってた探偵さん?」

「そうだけど、知り合い?」

「はい」

「そっか。明日は来るのかい?」

「千歌ちゃんと花丸ちゃんと合流する予定です。Aqoursの動けるメンバーだけで歌うので、少し緊張しますけど」

「頑張りすぎないようにね。そうだ、ひとついいかな?沼津の君達が、どうして稲村ケ崎でライブをすることになったの?」

「父の友人が企画会社に勤めていて、そのツテで参加です。それに、人気あるんですよ?」

「へぇ。知らなかったな」

 関心なさそうにつぶやくが、曜の言っていた父親の友人という触れ込みに興味を抱いた。しかし、わざわざ彼女に聞かなくても明日聞けばいいと思い、それ以上は聞かないことにした。

 

 

 

 

 

「なんか退屈だねミコトちゃん。そうだ、現役だった頃の話してよ」

「・・・ごめんなさい、あまり話したくない・・・」

「え~なんで?」

「報道では華々しいかもしれないけど、私にとって居心地のいい場所とは言えなかった。音楽番組の収録の後、仲良しグループと言われてた連中が、楽屋で罵り合ったり、司会者の陰口言ってたり・・・ホントは自分が大事で他人なんて踏み台にしか考えてない連中ばっかり・・・怖かった、信じられる人が周りにいない環境が」

 寂しそうに窓の向こうに映る海を見つめる。

「ごめん。そうと知らないで・・・」

「いいの。どの世界にも裏なんてあるんだから」

 途中コンビニに寄り、夜食を簡単に買い込むことにした。

「でもその分、スクールアイドルって良いと思う。だって、みんな仲良しだし悪いことを悪いと言える、それだけでも立派だと思うの」

「ミコトちゃん・・・」

 買ってきたパック入りグレープジュースを飲む。曜にも分け与え、少し笑った。

「もし私にも、曜さんのように素敵なお友達と会えたら、人生変わってたかも」

 

 

 

 

 

 ホテルの一室で持ってきた銃の手入れをする。

「探偵さんいいですか?」

 ことりが部屋のドアをノックする。ケビンは彼女を部屋に入れた。

「もう動いて大丈夫?」

「ことり元気ですから。あ・・・もしかしてこれって」

「君の家に入るときに持っていたアサルトライフルだ。アメリカ製で信頼性と命中精度がいいんだ」

「・・・探偵さんって軍人さんでもあるんですか?」

「そうだね、軍人よりも傭兵かな。ミコトちゃんには話したけど、アメリカ陸軍の特殊部隊、75レンジャーの出身なんだ」

「えっと・・・傭兵さんって言いましたけど、どんな人がいるんですか?」

「PMCは元特殊部隊の人間が多くて、かなり手強い連中ばっかりだ。トライデント・アウトカムズはそれに加えて道徳心はもちろん、不名誉除隊した人間は絶対に入れない。つまり、悪人は絶対に入れない」

 R5を組み立てて終わると、今度はPx4を分解し始めた。

「銃は使う人間によって、殺戮兵器にもなるし人命を守る盾にもなる。もっとも、使わないに越したことはないけどね」

 あっという間に分解し手入れを終え、組み立てて終わる。

「そうだ、冷蔵庫に君の夜食と好物のチーズケーキ買ってきたから受け取ってくれ」

 

 

 

 

 

 ことりが自室に帰ったことを確認すると、R5を釣り竿ケースに入れ、桑田企画に向かった。桑田に危険物保管庫に案内してもらい、徹底的に調べる。見覚えのある青い粘土状のC4が鍵付きの金庫に入っていた。

「この部屋に入るのにも鍵がいるが、まさか金庫に入れるとは」

「最初からそこに入れていました。でも、どうして開けられたのでしょうか?」

「?どういうことです?」

「実はですね、この金庫開けるには私の持っている専用のカギが必要なんです。合鍵のできないタイプなので、これを無くしたら、一生開けられません」

「(おかしい・・・犯人はどうやって盗んだんだ?)ここに防犯カメラありますか?」

「社内にはありますが、離れのここには無いですね」

「そうですか・・・その鍵は盗まれたことは?」

「いいえ盗まれたことないです。このカギも専用の金庫に入れていて、いつも持ち歩いていますから」

 ケビンは内心穏やかではない。専用のカギでしか開かない金庫だったにも係わらず、中にしまってあったC4が現実盗まれている。それが真実なら彼がC4を盗んだ犯人だということになる。だったら何故、自分に依頼したのか不思議である。もし彼が犯人ならば、危険度の高い特別警備会社に仕事を依頼するだろうか。

「・・・そうだ、平さんの顔写真を見せていただけませんか?」

 そう言うと、桑田は困った様子になる。なんと彼とは面識が無く、SNSで知り合った関係らしい。つまり直接会ったことがないのだ。

「(よくそんな奴にアドバイスもらったな・・・)わかりました。今日はこれで十分です、失礼します」

 

 

 

 

 

 ケビンは帰る車中で先ほどの捜査状況を整理する。

(今回も難儀だ。まず考えるべきは、桑田氏は何故、顔を見たことない友人にC4を買わせたのだろうか。俺なら怪しくて相手にしないのだが、彼は知らないで購入したと言ったが、普通あり得るだろうか。次にしまった金庫のカギは専用のモノじゃないと開けられない。監視カメラが無いし倉庫に入るだけなら鍵を壊して入れる。だが他には手をつけずに金庫に真っすぐ向かってそれを盗んだ。最初からそれを盗むことが目的だったみたいだな)

 ホテルに帰ると、フロントから客人が来ていると伝えられた。待っているというソファに向かう。そこには40半ばくらいの男性が座っていた。

「菊地さんですか?桑田企画専務の向田真也です」

「菊地です。どうしたのですか、こんな時間に?」

「はっきり言いましょう、私が曜ちゃんの父の友人であり、脅迫状を送った本人です」

「・・・本当に?」

「えぇ」

「爆薬盗んだり、照明を落としたりしたのは、あなたの仕業ですか?」

「いいえ。私は確かに脅迫状を送りましたが、爆薬盗んだり照明を落としたりしてません」

「本当ですか?」

「私は高所恐怖症でしてね、しかも倉庫のカギを持っていないんですよ」

「つまり、倉庫の中身を見たことは無いのですね?」

「えぇ」

「なるほど。曜ちゃんをここに呼んでいただけますか?」

 向田は曜を電話で呼びだす。彼女は嬉しそうにしていることから、知り合いなのは確かなようだ。

「おじさん来てたの?」

「社長からここに泊まってるって聞いてね。顔を出したんだ」

 和気あいあいの様子から、向田の言っていることは本当のことだった。

「ねぇ曜ちゃん。おじさん、高所恐怖症なのかい?」

「そうですけど、どうしたんです?」

「さっき話をして、気になったからさ」

 

 

 

 

 

 

 大会当日。多くの海水浴客が特設のステージの前に集まり、まだかまだかと待っている。陰で見ていたケビンは目を光らせていた。

「ずいぶんのん気だな」

「それはそうですよ先生、企画会社がまさか爆弾盗難されたなんて知りませんからね」

「ミコトちゃん。どうして俺にくっついてんの?」

 左腕に柔らかいものが触れている。一発でミコトの胸だとわかった。

「動きづらいんだけど・・・」

「ステージ裏じゃ、曜さん達が準備してて暇ですから」

「かと言って、何時銃撃戦になるかわからない俺と一緒にいたら巻き込まれるよ」

 一旦裏方に戻り、Aqoursのメンバー達の待つ簡易楽屋に向かった。太陽のように明るい雰囲気の少女が落ち着きなくソワソワしている。

「すごい、すごいよ二人とも!だってカラオケ大会の前座で歌うんだよ!」

「落ち着いて千歌ちゃん。パフォーマンスする前に燃え尽きるよ」

「マル、緊張するずら」

 二人に気づいたのか、三人はこちらに向いた。

「あ、探偵さんにミコトちゃん!」

「やぁ、気分はどうかな?」

「曜ちゃん、もしかしてあの子」

「二宮ミコトちゃんだけど?」

「え!?私、高海千歌です、あああ握手いいですか!?」

「喜んで」

 穏やかに千歌の手を握ると、興奮がさらに加速する千歌。曜はそれをチョップで制する。

「いい加減にしなさい」

「ふぇぇぇ・・・ん、お兄さん誰?」

「秋葉原で特別警備会社のボディーガードと探偵をしてる、ケビン菊地って者だ。よろしくね」

「ええっと、特別なに?」

「ここからなのね・・・」

 特別警備会社について簡単に説明すると、やはりと言ったところか、千歌と曜は固まってしまった。

「探偵さん、銃持ってたんだ」

「じゃ、じゃあそれで」

「大丈夫だって、君達を撃たないから。それに、銃は使う人間によって守ることができるんだ」

「まる怖くなってきたずら・・・狙われてるみたいで」

「もし危なくなったら、俺が絶対に助けてやる。信じてくれ」

 ケビンの脳裏にレンジャーのモットー、『レンジャーは味方を勝利に導く』が過った。しかし彼女達は一般人、したがって、この場合の勝利は邪魔者を消し、無事に催しを終わらせることだ。

「だからステージに立ったら堂々として欲しい、怯えた表情したアイドルを見たいファンはいないだろうからね・・・おっと時間だ、みんなが待ってる」

 

 

 

 

 

 

 ケビンはミコト達と別れたあと、更衣室や屋台を訪れ、専用の探知機で危険物が無いか調べる。

「今のところはないか」

 すると、誰もいないはずの海の家に入る桑田の姿を見た。気づかれないように追跡すると、彼の様子がおかしいことに気がついた。まるで一人の人間の中に二人の人格が入っているかのような、大きな独り言が聞こえる。気弱な桑田とは違う、過激で粗暴な人格の方は、主人格を今にも征服するかの勢いだった。

(これは・・・多重人格か?)

 この後、もう一方の人格の発した言葉に戦慄を覚えることになる。

「だいたいお前はひ弱なんだよ。見返したくないのかサーファー仲間によぉ?」

「お、お前を信じた俺がバカだった。まさか軍用爆弾買わせるなんて思いもしなかった」

「今頃気づいたのか、それで観客として来ている奴らを爆殺して世間を恐怖に陥れようと思ったのにな」

「貴様!」

「俺を殺すのか?お前と同じ肉体だ、お前も死ぬんだぞ!」

「平って偽名使ってまで、復讐なんてしたくない。俺に人を殺せない・・・」

 ケビンは確信する。平という名前は、桑田が作り出した攻撃的な性格の自分につけた偽名で、彼は侵食しつつあるそれを食い止めるために自分に依頼したことを知った。

「話は聞かせてもらった。本当は自分を殺してほしいから、遠回しで俺に依頼したんだな」

 R5を構え、いつでも撃てるようにする。

「お、お前は・・・」

「C4を盗んだのはお前だな、平。だから金庫を開けることができた。そりゃそうだ、桑田さんの肉体なんだからな。どこに仕掛けたか言え、そしてスイッチを寄越せ」

 桑田もとい平は右尻ポケットから何か抜こうとしたことを察したケビンは肩を撃ち抜き、握られていたPPKを蹴飛ばした。

「これで最後だ、言え!」

 平は不敵にほほ笑んだかと思いきや、左手に隠していたスイッチを押し、C4を爆破してみせた。

「ハハハハハハ!これで貴様のま・・・」

 フルオートで胴体にマガジンが切れるまで撃ち続けた。終わった頃、ミコトから電話がかかってくる。

「大変です先生!近くのモーテルが突然爆発して、炎が近所にまで燃え移っています!」

「なんだと!?」

「消防隊が来る前にほとんどが燃え尽きるかもしれません、どうしましょう!」

「よく聞いてくれ、君達は海側に逃げるんだ。そこなら炎が来ない」

「先生は、先生はどうするのですか!?」

「考えがある」

 

 

 

 

 

 ケビンは会場に戻ると、パニック寸前の向田と合流する。

「指示された通り、なんとか会場のお客さんを避難させた・・・探偵さん、このままでは稲村ケ崎が滅茶苦茶に」

「その前に、余ってるC4はありますか?」

「あの粘土ですか?すごい安全だってわかったから、社長が私に渡してくれました。車のトランクにあります」

 彼の乗ってきたバンに信管の刺さっていない10キロほどのC4発見する。近くに信管があるため、それをセットした。

「何を!?」

「向田さん。風上に移動してくれませんか?それが終わったら一緒にこれらを設置してください」

「え!?」

「C4の爆風で酸素を遮断し、消火するんです。今やらないでどうする!」

 指示された場所に移動し、C4を設置していく。設置し終え、避難したことを確認すると、死体から奪ったスイッチを押す。大爆発が起きたかと思った矢先、激しく燃える炎は一瞬にして鎮火した。

「・・・やったぜ」

 その後消防隊と救急隊が到着し、負傷者の手当て及び火災現場の調査をする。その様子を眺めていたケビンは電話である人物に連絡した。

「俺です。危機を脱しました、今のところ死傷者は出ていないみたいです。国に依頼料の半分を請求する予定です。はい、わかりました、帰り次第書類書きます。では失礼、CEO」

 この爆破事件、負傷者30名だったとはいえ奇跡的に死者はいなかった。もしケビンの機転がなかったら、稲村ケ崎は大火災になっていたかもしれない。

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