・銃は私物が基本。弾薬は会社持ち
・職にもよるが誰でも入れる。ただし、殺人の前科があったり不名誉除隊は基本的に門前払い
・実力主義
・貧しい村などに井戸を掘ったり、学校を建てたりする慈善活動には積極的
・規則を破ったものは基本的に解雇
ライブか中止になったため、ケビンは姉妹を空港まで送り届けることにした。
「もし北海道で困ったことがあったら、名刺の電話番号に連絡してくれ。解決するからさ」
「いろいろと、ありがとうございました」
「いいんだよ、本来なら金もらうけど、正式に依頼したわけじゃないから」
空港に入ったことを見届け、事務所に帰ることにした。運転中考えることは二人を襲った連中の共通点が北海道で暮らしていることと、彼女達には特に非がないことだった。
「有名税ってか。下らない」
オマルから電話がかかってくる。どうやら沼津に出張に行くらしい。
「ケビン。ミスター新垣とヨハネと名乗る、痛い少女の護衛に行くことになりました。ヨハネって男性名詞なのに・・・」
「まぁ事情があるんだろう。俺は事務所に帰るから、何かあったら電話してくれ」
「はい。ではそろそろ行きますので失礼」
夕方。銃の整備をしていると、鹿角姉から電話がかかってきた。
「どうした?早速騒ぎかい?」
「いえ、そうではなくて。今から札幌に来ることできますか?」
「どうして?」
「理亞、気が強そうですけど実は臆病なんです。今度こそ銃撃されるかもって心配してて」
「・・・要は少女のケアってことかな。カウンセラーじゃないが、行ってやろう。ただし、1週間だけ。その1週間で騒ぎがなければすぐに帰る。1日でも騒ぎがあれば護衛の仕事をしよう」
急遽札幌に行くことになったケビンは準備を始めた。実を言うと北海道に遠征しに行くのは初めてである。武器を持って行くため飛行機を使うわけにはいかず、車で津軽海峡まで行き、そこからフェリーで函館へ、そして札幌に着くのだが、それだけでも1日かかった。
初めて行くすすきので釣竿ケースは不自然と判断し、防弾仕様のアタッシュケースにレミントンR5を入れ、待ち合わせ場所の喫茶店へ足を運ぶ。
「あっ」
「ごめんね、仕事の都合で飛行機乗れないんだ」
「まさかフェリーですか?」
「車は防弾仕様だし、何より信頼性高いからね」
ケーキと紅茶を頼み、話の続きをする。
「っで、依頼の確認だけど、妹の理亞ちゃんの子守りってことでいいかな?」
「まぁ・・・そうなりますね」
「つきっきりの警護は難しいぞ。学校もあるだろうし、何より俺に警戒していなくなった際に襲ってくる可能性もある。したがって、少し離れた場所から見守る形になるけど、いいね?」
「はい。報酬の方は」
「成功報酬でいい。女子高生相手に多額の金は請求しないさ」
そういって運ばれてきたケーキを一口食べる。
「ここからは雑談だけど、どうしてスクールアイドルに?」
「A-RISEみたいなストイックになりたかったんです。今でも目標として目指していますよ」
「ほぅあの3人にね。確かにプロ意識は高いね」
「会ったことあるんですか?」
「以前ウチに依頼しに来たことがあってね。全員と交流あるよ」
意外すぎる人脈に開いた口が塞がらない。
「さすがに依頼内容は話せないけど、すごくいい子達だよ」
「・・・ひとつ、よろしいですか?あなたは自衛隊か何かなの?」
「いいや。元アメリカ陸軍75連隊レンジャーだけど」
「?」
よくわかっていないが、彼は普通じゃ考えられない波乱万丈な人生だったのだろうと勝手に納得することにした。
「そんなことはいい。そういえば理亞ちゃんは?」
「今日は別の方に護衛させております」
「・・・は?」
他の人間にも護衛させている。ケビンにとって大きい計算違いだ。
「どうして、それを最初に言わなかったんだい?護衛計画が大きく狂うし、複数で動く場合、マンツーマンでやるより警戒されやすいんだよ」
「そ、そうなんですか!?てっきり数が多ければいいと思って」
「プロでも方針が大きく違うんだ、仲間割れで対象が殺害されるケースもある。簡単に守ると言っても、実際にやると思ったより違うんだ」
誰にも見せたことがないぐらい厳しい目で聖良を見つめる。レンジャー時代と中東で働いていた時に培った経験が物を語った。聖良が固唾を飲む。
「今後はそう考えてくれ。理亞ちゃんの護衛の人、誰なんだい?」
聖良は一枚の写真を見せる。ガタイの良い白人の男が写っている。
「この男、名前は?」
「ドミニクさんって名前です。しつこいファンに困っていたところを助けられました」
「ドミニクね・・・」
ケビンは宏美にドミニクの映像を転送し、調べてもらうことにした。結果すぐ返って来て、ドミニクはチェコ出身の元警察官で、現在札幌にPMC、アーロン・インターナショナル日本支部で働いていることがわかった。ケビンも同業者としてその企業のことは知っていたが、最近設立された企業のため、あまり気に掛けていなかった。
「(一応、叔父貴にも話すか)今からドミニクと話がしたい。彼と連絡できないか?」
札幌タワー前で合流することになり、ケビンは聖良を連れて待つことにした。
「これはこれは、東京のPMCの方がわざわざ遠く札幌までお越しになって」
「アンタがドミニクか?」
正面から現れたドミニクと理亞。
「そのコートの下にある、AK74Uはともかく、M10は明らかに護衛向きじゃないと思うが?」
「ひどい言い草だな。ウチは設立して間もないから、装備もオタクとは違って貧乏そのものなんだ」
ほかの人間には見えないように装備を見せる。そのタイミングで護衛計画をドミニクに伝える。
「離れての警護?」
「そうだ。相手はどんな奴かわからないし、こちらの存在も知られていない。したがって、明らかに守ってるより、離れた場所から見守っていくのがいいと思うんだ」
「なるほど。確かにそうだな」
「アンタの装備を心配したのはそのためだ。M10は弾が飛び散って一般人に被害が出る」
「それはわかってるがな、俺達金ないんだ」
「・・・それ、支給品か?」
「軍などからの払い下げだけど。私物だよ」
途端、ロバートから電話がかかってきた。
「ハロー。僕だけどいいかな?」
「なんです?」
「今決まったことなんだけど、ウチ、アーロン・インターナショナルを買収したから」
「え、もう一回」
「だから、アーロン・インターナショナルってPMCを買収したって言ったんだ。友人でもある設立者のグルカ兵が内戦に参戦して部下を虐殺されるポカやってさ、僕のところに泣きついてきたんだよ、だから助けるかわりに買収したってわけ」
あまりの展開に置いてけぼりにされかけるが、冷静になって今おかれている状況を話すことにした。
「実はですね、その買収したアーロン・インターナショナルの社員と仕事することになっていまして」
「おぉいい機会じゃないか。明日、ジョセフが札幌に行くって言ってるから、弾薬補給も兼ねたらどうかな?」
「ドミニクの評判、聞いてますか?」
「ドミニク?・・・あぁ優秀だけどケチなドミニクね。安い武器しか買わない、貯金が趣味だって言ってたよ」
「そうですか。仕事に戻ります」
こうして、前代未聞の護衛作戦が始まった。
冬が近くなると、温かい抹茶が恋しくなります。
茶菓子も良いものが欲しい