札幌のオフィス街にある中村建築を前に異様な空気に包まれる。戦場で感じたことがある、殺伐とした空気だ。何故カタギでそのような空気が流れているのか、その多くが犯罪集団と結託し銃を密輸しているケースだ。ケビンは受付を通して社長であり中村青年の父親、中村洋二と会うことになった。
「はじめまして、中村洋二でございます。今日はどのようなご用件で?」
「アンタの倅が死んだ事件で話がある、心当たりはないか?」
「いやぁそんな覚えないですよ。倅は爽やかな男で、学校でも人気者だって話じゃないですか」
鹿角姉妹から聞いた話と正反対のことを喋っている。この男は実際に息子がしてきたことを知らないのか。
「なんてたって、Saint Snowの鹿角姉妹と波長が合ってて学校が楽しいとか」
「そうか。彼女達と会ったことあるがね、そんなことは一切感じなかったぞ」
「倅が嘘をついていたって言いたいのですか?」
「アンタこそ、ろくに息子を見てないんじゃないか?参観日とか見に行ったことあるのか?」
洋二が黙ったところを確認すると、遺体の写真を見せる。
「あぁ・・・どうしてマカロフなんて握っていたんだ」
ケビンは違和感を覚えた。警察より先に事情聴取しに来たハズなのに、どうして彼の手に握られているものがマカロフだとわかったのか。
「事件のことはどうやって知ったんだ?」
「テレビでやってたんですよ。緊急特番でね」
「・・・俺はここで帰らせてもらおう、他に仕事があるんでね」
ケビンは帰りがてら商店街を歩くことにした。理亞の言う通り、確かに古い感じはあるものの素人目で見ても耐久年度に余裕があることがわかる。しかも張り紙には取り壊し反対の文字が書かれており、住民は強い憤りがあるようだ。
(確かここの少し外れに、クソガキ共の集り場があったな)
明るいうちにそこを訪れる。静かで人間二人並んでようやく通れるほど狭く、多少入り組んでいることがわかる。
(よし。夕方ぐらいに行ってみよう、手段は・・・まぁいいか)
R5をドミニクに預け、ケビンは一人、不良たちの集り場に足を運んだ。向こうから気取った格好の男達が現れる。
「外人さんか?噂通り金持ってそうだ、金奪って飲もうぜ!」
「やめとけ、ケガするだけだ」
一人が殴りかかってきた。それを躱し、その勢いを利用し腹部に蹴りを入れる。怯んだ隙に顎に拳を食らわしKOしてみせた。
「ヤケだこの野郎、一斉にかかれ!」
(彼らは狭い場所での戦いを知らない。一斉に動いたら詰まるだろうが)
冷静に攻撃を避け、返しの一撃を与え、時には掴み、投げ技で一網打尽にしていると立っている人間がケビンとリーダー格のチンピラだけになった。
「何故俺を襲った?」
「う、噂だよ!金持ってる外人がいるから巻き上げたらいいってヒロの親父から!」
「ヒロ?」
「そいつは表じゃ建築会社やってるけど、裏じゃ武器の密売やってんだ!俺だってほら・・・!?」
チンピラがポケットからマカロフを取り出した瞬間、M629の銃口が向けられ、マカロフを撃ち抜いた。
「どうした、奪って飲みに行くんじゃないのか?」
「ヒィィィ、お、お助けェェェ!」
「銃を向けるって意味を教えてやる」
無慈悲に両足を撃ち、動けなくした後、今度は両肩を撃つ。
「それと話がある。中村って男が死んだニュースを知ってるな?」
「ひ、ヒロだろ、どうして銃が暴発したのかわかんねぇ!知らねえよ!」
ケビンはマカロフを左手で拾い上げ、マガジン内の弾を見る。
「弾が10発。同じだな」
「へ?」
「・・・まぁいい。コイツをもらっていくぞ、文句はないな?」
ケビンはチンピラの頭に強力な一撃をおみまいし、気絶させることにした。
証拠品のマカロフを回収後、事務所に帰り、解体することにした。予想通り、弾丸に花火の火薬が入っておりチンピラを殺すつもりでいたことがわかった。
(中村・・・あの親父が暴発銃を配っていることはわかった。根岸さんが奴らから聞き出していることを祈るだけだな)
解体したマカロフを写真に撮り、これを現像する。
「ケビン、いつになく顔が険しいぞ」
ドミニクの右腕に巻かれた包帯が痛々しく見える。
「当たり前だ。息子を殺しておいてノウノウと生きてるクソッタレがいるんだ、そいつを野放しにできるか?」
「無理だな、できない」
「だが決定的な現場を押さえてからじゃないと攻め込めない。無理する必要はないから、俺一人で張り込みをする」
スマホが鳴り、見てみると宏美からかかってきていた。
「ケビン、札幌の仕事どう?CEOの指示で私が派遣されるからよろしくね」
「CEOが?」
「沼津出張が終わって二人が帰ってきたの。彼らに留守番任せて向かって欲しいって直接言われたのよ」
「危険だ、昨日はゴーストってスナイパーが一般人狙撃した事件があったんだぞ」
「ゴーストの詳細データ、欲しくないかしら?」
一瞬口ごもる。正体不明のスナイパーのデータがあればそれに越したことはないからだ。
「まぁ明日には新千歳から向かうし、時間掛からないわ。札幌事務所で落ち合いましょ」
翌日、宏美はゴーストの資料を手に事務所に入った。そこでケビンと合流し、それを手渡す。
「コードネーム・ゴースト。元アメリカ海兵隊所属のスナイパーでB4、わかりやすくいえばスナイパー養成専門学校卒業。腕は超一流で、700mにいる動き回る標的を全てヘッドショットで仕留めることが可能。PTSDである」
「危険すぎるじゃないのよ。ケビン、大丈夫なの?」
「俺がもしターゲットならとっくに撃ってる。彼にとって、一番まずいのは狙撃を阻止されること、つまり姿を見られることだ。特定されれば狙撃し辛いからな」
「ってことは、別の誰かを狙ってるってことよね。誰が狙われているか特定できればゴーストの暴走を止められるってことよね」
「そうだ。しかし、俺は既に奴に見られてる。狙撃地点を確認したからだ」
「でも狙われていない。つまりエサってことかしら」
「宏美。そこで久しぶりの記者の仕事だ、商店街再開発について調べてくれないか?誰が率先して反対しているのか、調べてくれ」
「わかったわ。任せなさい」
宏美は持ってきた取材道具を手に、商店街へ向かった。
「元気だな、あの女性は」
「そうだな。言う通りだ」
ケビンもまた、鹿角姉妹の護衛をしにジェラルミンケースとクラウンの鍵を持っていった。
札幌は1度だけ行ったことありますが、いいところですね。