オマルはこの日、非常に笑顔だった。彼によればジョセフに注文した銃が今日手に入るかららしい。
「ふふふ、とうとう手に入りますね・・・デザートイーグル357マグナムモデルが!」
「それを注文したのか。だが、357マグナムモデルって、ジャム酷いって聞いたけどよ」
「最近、改良されて使い勝手が良くなったんですよ。陸軍時代に仲が良かった友人に借りて使ったことがありますから」
「・・・なんか信用できないな」
そう雑談しているうちにジョセフのトラックが事務所前に停まる。3人は荷台に乗り込んだ。
「おうオマル。頼まれてたデザートイーグル6インチ357モデルだ」
Px4やグロッグ17とは桁違いの大きさのハンドガンを手渡される。
「ありがとうございます。ところで、新垣のメインアームですが」
「これだ」
ジェラルミンケースを開け、中身を見る。新垣は思わずうなった。
「空艇隊が使用するために短くした、FNC-paraだ。まぁオリジナルはもう入手できないからイタリア製のコピーモデルだけど、はっきり言ってオリジナルよりいい出来だぜ」
「へぇ・・・試しに撃っていいですか?」
試射してみると、多少、弾が飛び散るものの想像以上に反動が素直で制御が容易、折り畳み式ストックのおかげで取り回しにも困らなくなっている。
「すごい使いやすい!いくらですか?」
「まけて40ドルだ」
「日本円で、4400円ですか。買います!」
日本円で購入し、早速ホロサイトを取り付けた。
「っでだ。これもタダでやるから持ってけ」
壁に掛けてあったイサカM37ソードオフモデルを新垣に渡す。
「これもっすか!?太っ腹っすね!」
「売れ残りの処分に決まってるだろ。安心しろ、ちゃんと弾出るからな」
オマルと新垣は武器の準備のため、一回地下室で整えることにする。ケビンは宏美と共に別の仕事に向かうことにした。笹山充治からの以来で、内容はアイドルになった矢澤にこの護衛。彼女が芸能界入りしたことでファンが駆け出しにしては多く、誘拐予告の手紙まで来ているのだと言う。CD販売ど同時に開催される握手会を心配になった笹山は彼を護衛として雇ったのだ。
「・・・」
「よろしくね、にこちゃん」
彼女の顔が不安だと言い張っている。
「アンタが妹と弟の通う保育園を救って、二宮ミコトの憧れの人?想像してたより、外人っぽくないわね」
「驚いた、怖いとかって言わないんだ。てっきりビビられると思ってた」
「恩人に対して失礼よ、それよりも」
「?」
「そんな物騒なモノ持ち歩かれちゃ困るわよ。ファンが逃げるじゃない」
背中のサイガ12を指差す。流石のケビンも頬を掻く。
「この国も武力行使が増えてきたから、徹底的にと思ったけど・・・お気に召さないみたいだね」
そう言ってマガジンを取り出し、弾を一発抜いて見せ、それをテーブルの上で解体してみせた。
「ねぇ。何がしたいの?」
「銃は人を殺す道具だけど、この12ゲージを見てくれ。この小さなペレット、何で出来てると思う?」
「?・・・あれ、何だろう、コルクみたいな触り心地ね」
「コルクだよ。これは暴徒鎮圧弾と言って、非殺傷で犯罪者を捕らえるのに使うんだ」
「死なない弾使ってるってわかっても、やっぱり怖いわよ・・・」
予定通りCDショップで握手会が開催された。ケビンは犯人を刺激しないために、彼女の後ろにあるカーテンに隠れて隙間から様子を伺う。
(このタイミングで誘拐かよ。ファンに取り押さえられるのがオチだろう)
呑気に身構えている間に多くのファン達が握手を終え、嬉しそうに立ち去って行くのが見える。
(いつの時代にもいるんだな、なんだが腹が立つな)
ふと、外の様子がおかしいことに気がついた。ケビンは耳を澄ませ、目を配る。
「おい、横入りは禁止だ。最尾に戻ってください!」
花束を持った男の様子がおかしいのは明白だった。視線が定まっていない。昨日のことり襲撃事件を思い出し、ケビンは矢澤にこの前に立った。
「ちょ・・・ちょっと」
「下がってろ。まずいことになりそうだ」
予感は正しかった。花束に仕込んでいたであろうMP5Kを抜き、ケビン、否、にこに銃口を向けるがケビンのサイガ12が火を噴き、男は成すすべなく倒れた。
「え、うそ・・・銃?」
「社長。コイツを警察に引っ張ってくれ、にこちゃんはバックヤードで事情聴取する」
更衣室のドアを閉め、誰も入って来ないことを確認すると、武器を収め、落ち着いた様子で彼女に対面する。
「早速だがさっきの男と面識は?」
「スクールアイドル時代からのファンよ。久しく顔見せないと思ったらどうして・・・」
「わからない。これから調べてみるし、ちょっと引っ掛かるんだ」
「どういう意味よ?」
「実はな、ことりちゃんも似たような被害にあったんだ。痣が出来るほどではないけど、平手をな」
「え・・・」
「その加害者ってのは、彼女の幼馴染って話だ。しかも彼女とはしばらく会ってない」
唖然とする様子に、ケビンも内心穏やかではない。
「どうもおかしい。ここまで共通点があるなんて・・・」
ふと、アフリカの紛争地で起こった過去を思い出す。そこでは奇妙なことに銃声が響かないのだ。その代わり、カルト集団の謎な経文が土地中に響き渡り、足を踏み入れた国連軍やNGOは姿を消したことを。調査を依頼され、潜入し、そこで見たものは教祖と呼ばれた男による催眠術によって作られた、偽りとも取れる楽園があった。よそ者だったケビンも勧誘があったが、それを断ると地下牢に閉じ込められ拷問を受け、危うく死にかけたが座標を送っていたおかげでCEO率いる救助部隊によって助け出された。その後入院し、体こそ動くが、頬の傷が惨事を物語っている。
(日本にもカルト集団いるが、まさか・・・ね)
外から悲鳴と銃声が響き渡る。サイガ12を握り直し、暴徒鎮圧弾から通常弾に装填し直した。
「ついて来い、脱出するぞ」
売り場を覗いて見るが、荒れ果てた店内を武装した男達が占拠し、CDとガラスが散らばっている。
「(おかしい、あれだけやって射殺してないだと・・・あの類なら殺ってもおかしくないんだが)裏から出よう、俺が先行する」
ケビンは違和感を覚えながらも焦らずゆっくり歩きながら非常口を目指す。
「どうなってんのよもぅ!アイドル活動ってそんなにハードなの!?」
「そこまでじゃないと思うが・・・」
気配を感じ、一旦別の部屋に身を隠す。
「どうしたのよ?」
「さっき大声出したろ?なのに追っ手が来なかった。普通なら、既に後ろから攻撃されている、しかしそれがないってことは?」
「先回りってこと?」
静かに頷き、ドアを閉めサイガ12を構えた。
「こうなったら答えはひとつ」
足音がこちらに近づいて来て、ドアが開かれたと思った瞬間、引き金を引き、敵を次々と射殺していく。
「入り口前で待ち伏せし、一掃するしかない」
クリアする頃にはにこは既に気を失って入た。彼女を抱え、今度こそ脱出したのだった。
「っで、収穫は?」
「野平は千葉の某私立大に通う普通の大学生ですね。そこまでは供述通りです。しかし、彼の部屋から変わった写真が複数見つかりました」
テーブルに写真を並べる。そこには一件のビル周辺を撮ったであろうものが写っていた。
「コイツは?」
「外資系企業、モルグ社が買い取ったビルです」
「モルグ?聞きなれんな」
「実態不明ですね。今頃ホームページすら作らない、情報機密の強い企業です。近隣住民も気味悪がっています」
「宏美。モルグ社と繋がりのある人間を探してくれ、新垣は彼女のボディーガードを。オマルと俺はもう一度、野平を洗う」
「わかったわ。しっかり守りなさいよね」
「言われなくっても」
外は暖かくなってきましたが、小説の中はまだ真冬です