県警の公安とケビン達は山の中にある倉庫の前にいた。県警が独自につかんだアナコンダの潜伏先と思われるからである。
「隊長」
「これより突入を開始する」
スレッジハンマーでドアを破り、一斉になだれ込むが、ケビン達は動かない。
「ケビン、我々も」
「待て。大勢で入ったらまずい」
「一気に制圧できるでしょう?」
「わからんか、人間がもしいたら反撃されるし、たとえされなくても何らかの動きを見せる。だが、突入したにも関わらず銃声が響かなければ公安の声も聞こえん。恐らく、ここに奴はいない」
ケビンの指示で一度森の中に隠れ、様子を伺うことにした。数分後、中から逃げろと聞こえた途端、轟音とともに倉庫が大爆発する。
「情報はダミーか・・・全員撤退、マスコミが来る前に戻るぞ」
これにより合計20名の公安課の突入部隊が命を落とした。全員で公安課の指揮官と対談し、情報源を聞き出すことにした。彼によればタレコミの電話があったらしく、それをそのまま鵜呑みにしたらしい。ケビンは呆れた顔で軽い説教をし、その際、録音された音声を入手した。
急いで大隅科学研究所まで運び、金剛の音声データと照らし合わせる。すると、あろうことか一致することがわかった。
「これは・・・とんでもないことになりそうだ・・・」
「グルってことでしょうね。もう、容赦する必要性がなさそうです」
AUGA2を手に構える。
「まだ結論は早い。そもそも出張先に顔を出してるみたいだし、電話もそこじゃなく駅の公衆電話。時間も発覚してるのに調べないのかが疑問だな。まぁ喝入れたからするだろ」
体たらくぶりに憤りを感じるが、急いで沼津に戻り調査を再開することにした。
秘書から電話が入り、今日出張から帰ってくると聞いたため、彼の会社で待ち構えることにした。
「あれか」
黒のベンツがビルの前に停まり、後部座席から金剛が出てきた。
「おや探偵さん。御用ですか?」
「用があるから来たんです、俺のクラウンに乗ってもらいましょうか」
後部座席に隣り合って座った瞬間、ケビンはPx4を彼のコメカミに突きつけた。
「ヒィ!な、なんなんですか!?」
「家族人質に取られててノコノコ帰ってきた人間のセリフじゃねぇな。何故電話に出なかった、言え」
「は、外せない会議があったんですよ、石材メーカーと新しい墓石作りの件で」
「普通なら仕事投げてでも家族を心配しそうなお前が、そっち優先させるとは思えん。本当は誰と会っていたんだ?」
「こ・・・この方です・・・」
一枚の写真を見せてもらった。痛々しい恰好とはいえアナコンダだった。
「まさか本当に金渡したって話じゃないだろうな」
「げ・・・現金だけは」
「良いこと教えてやる。奴は金及び保身のためなら平気で人を裏切り、紙屑同然に始末する。たとえ女子供が相手でもな。お前はそんな相手と取引したんだぞ!」
「ひ、ヒィ!ご、ごめんなさい・・・」
威厳の欠片のない彼が哀れになり、運転席にいた宏美が助け舟を出す。
「ケビン、生きていたんだから良しとしましょ?今度こうならないようにするのが得策じゃないかしら?」
「・・・フン、まぁいい。これから家族と話し合って今後のことをしっかり考えるんだな。今度は警備を強化することを薦めるぜ。ところで、奴とはどこで会ったんだ?」
「沼津港深海水族館。シーラカンスの展示場所で取引があったんです」
「随分近かったんだな」
「人質に取られて音信不通だと思った4日後、彼がそこで話をするって言ったんです。渡し終えるとすぐ、探偵さんから電話が掛かって来たんです」
「なんだそりゃ」
まるで最初から殺すつもりがなかったと言わんばかりだ。現金を手に入れ、その後どうするのかはわからない。
「アイツの行動パターンだと考えられん」
ケビンは改めて写真を見る。すると、彼の持っている団扇にダイヤの写真が貼ってあることがわかった。
「なるほど、彼女のファンでもあるってことか?」
資金を調達し、フィリピンに逃げ帰る算段が出来た彼が未だ沼津に残っている。船が来ていないだけなのか、それとも別の目的を成し得てから逃げるのか、4人は手に入れた情報を照らし合わせることにした。
「新垣。まずはお前から」
「倉庫を爆破した爆弾は燃料タンクに張り付けたC4であることは間違いないでしょう。現在、情報漏洩については俺と公安、監察で調査中」
「オマルは?」
「駅の監視カメラにアナコンダと思われるラブライバー及び、複数名の日系人ボディーガードを確認しました。コート下に見える銃口から装備はAK74にF2000、MP5A4でしょう。ロッカーからC4を取り出していることが確認できます」
タブレット端末で様子を映し出す。
「宏美」
「2日後に沼津の多目的ホールでラブライブの地方予選が開催されるわ。奴らがそこに来る可能性があるから警戒する必要があるわね」
「俺はアナコンダとは別に外港から沼津に潜入した複数人の外国人を確認した。これを見てくれ」
自分用のタブレット端末を取り出し、監視カメラの映像を見せる。日付はケビン達が沼津入りした時と同じだ。パっと見るだけだと漁船に見えるが、それに見立てた輸送船だとわかる。
「5人全員アタッシュケース持ってるわ。大小それぞれね」
「身振りからして工作員ですね」
「そして拡大映像だ」
1人の男のアップを映した。ケビンと宏美にとって見覚えがある男の姿があった。
「あっ!」
「星空光善。俺に近づいてきた男がいるってことは恐らくCIA関係者と思われる。目的は恐らく・・・アナコンダの暗殺だ、アメリカにも奴の麻薬が流れてる」
「危険を察して派遣ですか。にしては多いような」
「5人は多すぎる。せめて2人が妥当かと」
「どっちにしろ早く奴を捕まえないといけないわね」
遠くから悲鳴とバタバタと足音が聞こえる。ケビンと新垣はアサルトライフルを手に音のする方に走った。
「どうした!?」
千歌の部屋の窓から華麗な宙返りで隣に飛び移る赤毛の少女を見る。
「探偵さん・・・えっと、梨子ちゃんがしいたけから逃げて・・・」
千歌の足元にいる、しいたけを見る。
「そんなに凶暴に見えないけど」
R5を収め軽くじゃらし、窓の向こうから声をかける。
「おーいケガないか?」
「ぜぇ・・・ぜぇ・・・だ、だいじょ」
背中から見えるR5を見て即倒してしまった。
「ここからかよ」
桜内家にお邪魔し、家族及び梨子本人に自分達のことを説明する。
「我々はそういう者です」
「民間軍事会社って日本にあったんですね」
「ウチは国の許可を得て銃の携帯を許可されてます。一般人に向けて撃つことはないのでご安心ください」
「とは言っても、やっぱり銃を見ると怖いですね」
「俺もこれを使わないで解決したいものさ。だが、多くの案件がコイツが必要になってる」
梨子の目には彼らが殺人鬼ではないことがわかった。目の内に狂気がなく、とても澄んでいるからだった。しかしあえてそこには触れず、沼津にいる理由を尋ねる。
「仕事だ。少なくとも君達が知っていい案件ではない」
用が済んだと言わんばかりに立ち去っていった。
会場となる多目的ホールに足を運ぶ。駅の北口から東側にあるガラス張りのビルだ。周囲は建物に囲まれており狙撃で始末しづらい立地ではあるが、逆に大勢の人間が足を運びやすい立地になっているため、暗殺にはうってつけの舞台になっていることがわかる。
(CIAもアナコンダの動きを察知するはずだ、客に紛れてヤるだろう。問題はボディーガードが近くにいた場合、大勢の人間が犠牲になるのは必至だということ。いかに交戦せず奴を確保するか・・・)
居場所がわかっていない今、急襲はできない。かと言ってCIAと対峙するにはメリットが少ないばかりかデメリットしかない。
(そういえばどんな奴だったんだろう、情報を流した奴は)
途端、銃声が聞こえ悲鳴が上がった。現場に駆けつけると、オマルの映像で見た、アナコンダの護衛の特徴と似た男が側頭部左側を撃ち抜かれていた。貫通してその弾が女性の肩を掠めていた。向かい合うビルを見ると、工事をしているのかグレーの防音シートで覆われているのがわかる。
「救急車!警察も呼べ!」
現場に人間が近寄れないようにし、駆けつけた警察官に保管を任せ、辺りを警戒する。
(・・・被害者の所持品にMP5A4、M9A1、スモークグレネードがあった。警戒していたのは確かだな・・・スナイパーに対抗するような装備ではないが)
旅館に帰還し、金剛に電話を入れる。
「金剛さん、アナコンダはどうやってあなたに会う約束をしたんですか?・・・なるほどね、これなら足がつかないわけだ・・・それだけです、では」