警察から連絡があり、思いもよらぬ知らせが来た。先日狙撃された同好会会長の遺体はダミーだという。
「歯形が違いました。どこからか別場所で狙撃し似せたのでしょう」
「どういうことだ、ダミーを置く必要性が見えないぞ」
ダミーを置く理由があるとすれば、ターゲットから情報を聞き出すときか、死んだことにさせ整形しスパイとして潜り込ませるかぐらいだ。
(だが素人の大学生をわざわざ使うか?情報を聞き出すと言っても・・・もうソイツ終わったことは変わらんか)
宏美が慌ただしく駆け寄り、ケビンに報告する。
「前日、地方都市のホテルで爆発事件があったよね、犯人とされる外国人の特徴が、ケビンが見つけた5人組の外国人と一緒だってわかったわ」
「ふむ・・・(もしかして、CIAとは別の組織か?)」
一度再集結し、アナコンダがどうやって金剛に指示を送ったか説明する。
「金剛から、重要な情報を入手した。彼がどうやって指示を送っていたかの方法だ」
「電子機器使ったら逆探知されかねないですよ?このご時世、まさか糸電話だって、言いませんよね」
「まさか・・・この画像を見たら答えがわかる」
ケビンは魔法使いが主人公の映画のポスターの画像を見せる。
「ケビン、頭打った?」
「魔法なわけないだろ。主人公の肩に乗ってるモノを見ろ」
「・・・シロフクロウですか・・・まさか」
「フクロウは夜間で飛ぶことが出来、訓練すれば狙った人間に、手紙ぐらいの荷物なら届けることが出来る。奴はペットのフクロウに金剛の顔を覚えさせ指示書も持たせ飛ばした。逆探知できるわけがない、アナログなんだからな」
「ってことはつまり、空見上げて一羽のフクロウを探せって言うんじゃ」
「効率の悪いことはしない。フクロウがいても問題のない場所を徹底的に探す、いいな」
しかし、神社仏閣にある林から学校の裏山まで隈なく捜せるハズがなく、日が暮れる寸前、国木田元尚から電話が入る。最近夜中に森から人影が見えると言うものだった。ケビンはR5を手に夜の森に入っていく。
(人影か・・・ハズレじゃないことを祈る)
ふと足元に違和感を覚え、ペンライトを取り出し照らす。
(ほぅ、ワイヤーか。特に爆薬があるわけじゃなく、出入りしたか否かのサイレントアラームか)
低い位置の木と木の間に細い金属糸が見える。仕掛けに注意しながら進むと、木の葉や枝で擬装したテントを発見する。
(ここか・・・)
テントを調べてみると一羽分のフクロウが入りそうなゲージに作戦資料、ダイヤの写真が貼られた団扇、修理中のマカロフが置いてあった。足元を触れるとまだ暖かいことがわかる。
(最近までいたようだな。足取りはともかく、これはデカイ)
スマホを取り出し、中の様子を撮り、作戦資料の中身も拝借した。足音が聞こえたため、こっそり抜け出し木々の中に隠れる。しばらくして覗き見るとタヌキがテントの近くで通り過ぎて行った。
(化かされたか)
持ってきた暗視機能付き小型カメラを設置し山を降りて行った。
その頃、オマルは多目的ホールの近くにある狙撃現場付近にいた。殺人場所となった現場は工事中止になり、入り口には見張りの作業員と警察官以外はいなかった。
(作業員の多くが日雇い。それをいいことに忍び込んでズドンっですか)
オマルは疑った。あまりにも無防備すぎではないか、まるでその護衛が邪魔だと言わんばかりに偵察に行かせたかのようにも感じる。
(奴らの中に内乱が?あり得ますが、確信と言えるモノがないですね)
ふと空を見上げると少量だが雨が降ってきた。
「帰りましょうか」
帰ろうとした矢先、殺気を感じたオマルはAUGA2を取り出し構える。
「隠れても無駄ですよ。出て来てください」
柱の陰からイタリア系の男が姿を現す。彼の手にはP90が握られている。
「尾行に気付くのが遅いんじゃないか?」
「いいえ、最初から気づいてました。ですが、互いに殺し合う気がないので気づかないフリをしてましたがね」
AUGを肩に掛け、すぐに撃てない状態にすると、男もそれに応えるようにP90をしまう。
「パキスタン陸軍に優秀な工作員がいるって聞いてたが、君だったのかオマル」
「私のことをご存じなら、何をしていたかわかりますね」
「狙撃地点に残っている証拠の回収及び多目的ホールの観察。確かにここなら気づかれずに向こうの様子が見える・・・しかし」
「ここではライブステージは残念ながら見えない。アナコンダ狙撃は不可能と言えるでしょう」
ずばり言い当てると、わざとらしい態度で拍手する。
「では、君をつけた理由はわかるか?」
「さしずめ、忠告でしょうか。アナコンダの件から手を引けってことでは?」
「残念、少し違う。俺達のリーダーからの伝言を頼まれたんだ、明日の予選会で現れるであろう奴を、どちらが先に確保するか勝負しようっとな」
「ふーん。フェアではないですね、偽物の死体を用意できるチームと資金が限られるこちらではワンサイドゲームです。ハンディぐらい用意してもいいんじゃないですか?」
「残念だけど無理だ。もう、ゲームは始まったばかりだからな」
「まぁ、そう来ると思いましたね」
用事が済んだとばかりに男は去って行った。
(奴は恐らく、アナコンダの行動パターンを把握してますね。厄介な相手です)
宏美はと言うと、カフェでPCと睨めっこしながら防犯カメラの映像を確認する。
「あぁ~!何もないじゃない!」
イライラした様子で大声を上げ、周囲を驚かす。それに気づいた彼女は恥ずかしそうに小さくなってしまう。
(うぅ・・・こんなことならケビンと一緒に行動すればよかった)
軍事関係出身の他のメンバーと違い、記者上がりの彼女が得意とするのは取材であり、決して監視カメラの分析ではない。
(もういいわ・・・旅館に帰りましょ)
バスに乗り、無事旅館に帰ってくると、先に帰っていたケビンが布団に入らずに壁に寄りかかったまま眠っている。
(お疲れ様。でも布団で寝なさい)
顔をつねったりくすぐったりしても起きないため、鼻をつまんでみると勢いよく飛び起きた。
「ウオッ!頼むから寝てる間に鼻を塞ぐな!」
「ごめんなさい、でも布団に入って寝なさいよ」
「あーあーわかったわかった」
自分の母親みたいな態度を取る彼女に押され、渋々布団に入って眠りについた。
(彼と私とじゃ、生きる世界が違う。でも、彼の支えになりたい)
予選会まで、あと数時間。果たしてどう転がるかは天のみぞ知る。
この三つ巴に終着は来るのか・・・