PMC探偵・ケビン菊地  灰狼と女神達   作:MP5

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 任務当日、影はゆっくり動いていた


45話  報い

 護送任務当日。街頭モニターでもアナコンダ輸送が報道され、全国的に感心が高まるなか、ケビンは任務前にオマル、新垣、宏美を集める。

「これは護送作戦だ。残党共が奴の救出にどんな事をしてでも行われると思われる、宏美は警察庁内の作戦本部でNシステムを用いて不審車両がいないかのバックアップ、ハマー運転は新垣、銃撃は俺とオマルだ」

「了解。武器はアサルトライフルですね?」

「そうだな。バックアップは忘れるな、不安ならもう一つメインを持って行ってもいい。弾薬は予備を積んでいくから安心してくれ」

「ありがたいですね」

 次に車両配置図を置く。

「真ん中の大きい四角がアナコンダ。上下左右にある、小さい四角が俺達とSAT車両、他PMCだ。上空からはヘリで監視するし、先ほどのNシステムもフル活用する。なお、俺達が通行する間は全面通行止めになってるから、ICから入ってくる車両があったら射撃しても構わない」

「PMCの名前はわかりますか?」

「オーストリアに本部を置く、新参者のカイロス・セキュリティーだ。ウチの他にいるのが不思議だから彼らもマークしておこう。もしかしたら、ってこともある」

「確かに」

「この作戦は失敗は許されない、何としても襲撃者を始末しニューヨークまで届けるんだ。以上、質問は?」

 全員が首を振る。

「よし、準備して行こう。出発は10分後、解散!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 東京拘置所から出発した護送車は、首都高速から成田空港へ向かった。沿岸部を通るルートは一般的で襲撃されても逃げにくい場所であるが、それは自分達も同じことだった。

「海も見せてくれないのかね?」

 人を食ったような笑みで監視の警察官に声をかける。

「脱走するつもりだろうからな」

「手を拘束され、体にGPSを埋め込まれてんだ。逃げても意味がない。私も歳をいってる、逃げられないよ」

「・・・」

 監視達は静かにその場を制する。

「君達に人生を楽しむ、唯一の方法を教えてあげたい。それはだね・・・」

 途端、タイヤがバーストした音が聞こえ、車が急停車した。監視員の一人が後ろのドアを開き、外の様子を見る。

「スパイクが仕掛けられていたぞ!クソ、多くの車がやられた!」

 残ったのは一部SAT車両と軍用に改造されたケビン達のハマーと装甲車、カイロス・セキュリティーのジープだった。

(不測の事態に陥ったか。部下が作業員に扮して設置したのだろうな)

 

 

 

 

 

 

 

 

 警察庁作戦本部では、GPSからの位置情報を映した画面を注視する、偉い方々が口論をしていた。陰で呆れた表情でせんべいをかじる宏美。

(一番安全だけど、一番疲れる場所にいるかも・・・)

 Nシステムの画像を見ていると、下り車線に不審車両を見つける。マイクを手に取り、ケビンにオペレートする。

「ケビン、みんな、向こうから複数の車両が来てるわ。迎撃できる態勢を作って!」

「了解した。全員武装せよ!」

 タイヤが減った音が聞こえ、AK74、PKP、PP―19を武装した兵士達が現れ、ケビン達の襲い掛かる。

「車を盾にしろ!PKP消すまであまり姿をさらすな!」

 隠れながら射撃し、前に出られるところでは徹底的に出る。

「グレネード!」

 オマルの足元に転がって来たそれを拾い、敵に投げ返す。こちらの想像以上の反撃に押され、最後のひとりが倒された。

「クリア!」

「オールクリア。しかし、呆気ないですね」

「まだ似たような奴らが来る、そう考えた方がいい(しかし、ヘリの奴らは何をしてる。まるでサボってるみたいじゃないか・・・上空から見えるだろうし、予め教えてもいいハズ)」

 ケビンは護送車の様子を見る。中を開けると衝撃的な光景が映っていた。監視員全員が殺され、アナコンダがいなくなっていたのだ。

「やられた・・・奴が逃げたぞ!」

 叫んだ瞬間、カイロス・セキュリティーのジープが急発進した。後方座席にアナコンダがいるのがわかる。

「急いで追うぞ。絶対に逃がすな!」

 

 

 

 

 

 

 

 ほぼ直線コースのカーチェイスを、報道の連中がヘリを飛ばし生中継していた。全国に流れ、警察は記者会見を開き、苦し紛れの説明をし、本部内は混乱に陥っていた。そんななかでも宏美だけは冷静になりカイロス・セキュリティーについて調べてみることにした。その結果、存在すらしない、幽霊企業であることが発覚した。

(何やってんのよ警察は・・・調べたらわかることなのに、どうして)

 隣の席に座っていた女性オペレーターが肩を叩く。

「SATとSITが仲が悪いことはご存じですか?似たような任務に配属される二つの部隊ですから、出会い頭に派閥争いみたいになって、任務どころじゃなくなってしまうんですよ。だからSITには成田空港で待機させ、SATが護衛するみたいな形になったのですが、人数が足りなくて、おたくとカイロスに依頼したんです。あっ、これは上の会議の話を盗み聞きしたものですよ」

「・・・どいつもこいつも意地っ張りばっかりなんだから・・・ケビン、殺傷許可が下りてるから、殺しても差し支えないけど、できるなら捕縛して頂戴ね」

「わかってるよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 障害物がないがSAT車両が破壊され、一対一の勝負。敵が成田空港方向にハンドルを切ったことを確認すると、こちらもそちらに向かった。

「もうすぐ空港だ、SITの連中も待ち伏せしてる。協力して捕まえたいが、装備が心許ない連中だ、さっさと追いつこう」

 敵護衛を全て倒し、途中、高速を降りる。しかし、それでもまだスピードが落ちておらず、ゲートを無理矢理突破してみせた。

「その先の大きな道路はカーブだ、そこで追いつけ!」

 カーブに差し掛かり、膨らみながら曲がる瞬間を狙って平行に走り、R5でドライバーの頭を撃ち抜く。車は暴走し壁にぶつかりながら停まる。さすがのアナコンダも瀕死したかと思うような傷を負いながら脱出を果たす。急停車し、3人は降り、彼の元へ走る。

「ぐ・・・君達も欺けたかと思ったのに・・・」

「ここで殺してもいいが、檻の中にぶち込むのが任務だ。さっさと拘束しろ」

 途端、ヘリの音が近づいてきたかと思えば。SR-25を持った男がアナコンダに狙いを定め脳天に3発撃ち込んだ。ヘリは急いで引き返す。

「野郎ふざけやがって!」

 R5を連射し、ヘリを落とそうとするがこちらの攻撃が当たっていない。

「よしなさい!もう、終わったのですよ」

 悔しそうに地面に仰向けで倒れ、声にならない叫びをあげた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 作戦から数日後、防衛省から報酬を受け取り、臨時休業することにした。宏美が調べた結果、警察庁のトイレで本物のパイロットが下着姿で拘束されていたらしく、変装して任務に尾行していたという。

「奴の目的がアナコンダ殺害か・・・俺は沼津で殺せばよかったのか?」

「ケビン、あなたは間違ってないわ。復讐で殺すのは簡単よ。でも、人間として正しいかは別。殺さないで司法にかけようとしたのは正しいと、私は思うわ」

「宏美・・・」

 チャイムを鳴らす音が聞こえる。外では宅配業者が待っており、荷物を受け取ると、早速開けてみた。

「何かと思えば、ラブライブのチケットとサイリウム、沼津土産の干物が届いたぞ。千歌ちゃんの実家からだ」

「あら、気が利くわね。今度の休みに開催されるらしいから応援しに行きましょうよ」

「行ってみるか、彼女の好きな大会を見に」

 二人は希望を胸に膨らませるのだが、その日に別の場所で事件が起こるとは知る由もなかった。




 長編終結


 
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