ジャブローのモグラども   作:シムCM

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01 一年戦争背景

そもそも、アニメやゲームでは色々あって開戦した理由なんかはぼかしていたが、この時代で30年を過ごすと、さすがにこの時代はやばい事が見えてくる。

その最大の理由は「少子化」。

現代日本でも社会現象になっているが、それが地球規模であると思えばいい。

そもそも、増えすぎた人口により人類は宇宙に出て新しい生活圏を作った。

そうなる前、地球では増えすぎた人口の統制が急務であり教育や価値観も、それに準ずるものであった。

が、宇宙世紀に入り宇宙に生活圏が広がると、人類にとって待望の的であった「自分だけの空間」を手に入れる。

国民は歓喜し、政府は上がる支持率に鼻高々だった。

そして、そのまま価値観の変更をせずに時間が進む。人口過密により密接な関係を余儀なくされていた者達が、自分だけの空間を手に入れ、自由というのを手に入れた結果、コミュニケーション能力の低下による結婚率の低下、コミュニティーからの孤立、精神病の増加、孤独死。まあ、そんな感じで、出生率は見るに堪えない状況になっていった。

それでも早期対応していればよかったのだが、一部の有識者の警鐘も、宇宙開拓熱狂の陰に埋もれ、消えていく。

そして、ようやく宇宙開拓に陰りが見えた宇宙世紀50年代に、この問題が爆発した。

これに対し政府がとった対策はまさにお粗末な一言で「子沢山政策」とか「結婚優遇制度」一部では「重婚法案」なんてものも議会を通りそうになったほどだ。

そんな場当たり的な対策の結果、中間年齢層の空洞化という社会問題が発生する。政府は「平均年齢」なる数字上のごまかしで、言い逃れをしていたが継承問題による技術力の低下、経験未習熟者によるイージーミスからの大規模障害は頻度をまし、地球の経済は大きく衰退する。

これに対し、地球連邦はその損失を埋めるために、スペースコロニーに目を付けた。明らかにあてつけのような地球連邦政府からの命令にスペースノイドは憤ったのは当然であった。が、当時それができる余裕があったのがスペースコロニーだけだったというのもの事実である。

まあ、そんなわけでスペースノイドとアースノイドの確執は増し…

 

宇宙世紀0079.01.03。

地球より最も離れたスペースコロニーサイド3は、地球連邦に対し宣戦を布告。開戦後、コロニー壊滅と、コロニー落としにより、人類の人口は半分になった。

地球連邦とジオンの決定的な戦力差を覆したのが、ジオン軍の開発した巨大人型兵器モビルスーツである。

この新兵器と新戦術に、愚鈍な巨獣と化した地球連邦は後手後手に回り、敗戦を重ねる。

わずか2か月で、地球上の3分の1がジオンの勢力下に落ち、なお劣勢なのである。

 

 

 

「モビルスーツ開発ですか?」

「そうだ。今の地球連邦の苦境はひとえに、敵の新兵器モビルスーツにあることは周知の事実だ。我々は早急に対応する必要がある」

 

ジャブローの一室で、書類に埋もれた自分のデスクを背に、ジョン・コーウェン准将がオレに説明していた。

 

「そのために、レビル将軍の指揮の元、地球連邦軍のモビルスーツが必要不可欠なのだ」

 

熱弁を振るうコーウェン准将を前に、俺は思い出す。

ジオンの独立戦争。のちに「一年戦争」といわれる開戦をオレは知っていた。なので、安全なジャブローへの配置転換を数年前から工作し、見事ジャブローの一室で、たいして他に影響の出ない仕事を繰り返していたのだ。

後に一週間戦争とよばれる開戦当初の地球連邦軍の連戦連敗どころか、連戦惨敗の中で、父親が戦死したり、親族の多くに死傷者が出ていたりしたが、実家からの連絡はなかったし、十数年音信不通の実家と両親に、何の感情も浮かばなかった。オレ的にこの戦争による不利益らしい不利益と言ったらその程度である。

 

「君に、その統括を任せたいのだ」

 

ちょっとまて、お前の仕事はどうしたゴリラ。

 


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