ジャブローのモグラども   作:シムCM

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20 ホワイトベース宇宙へ

ジャブロー宇宙ドック。

 

なにげに知られていない事だが、地球連邦軍において、宇宙戦艦はすべて地球産。

Made In Earthである。

MSができるまで宇宙での戦力は戦艦が主力であり、当然、その製造工程は極秘中の極秘。

ジャブローの秘密ドックで作られ一隻一隻打ち上げていたのだ。

まあ、当然ともいえる。険悪な関係のスペースノイドの本拠地である宇宙で戦艦が生産可になれば反乱フラグである。まあ、そうでなくても反乱がおこったわけだからフラグ管理失敗だな。

たぶん、ジオンがモビルスーツという新兵器を主力兵器にしたのは、その辺も理由にあるのだろう。

 

 

 

「レイ大尉。RX-78をお願いします」

「お任せください。少佐。必ず期待に応えて見せます」

 

そのドックの一角で、新造の巡洋艦ホワイトベースへ乗り込むテム・レイ大尉と握手をする。

思えば半年近くの付き合いだった。

 

問題なくV作戦は進み、すでにRX-78の開発も終了。大きな問題もなく、ジャブローでのテスト作業も終了し、残りは宇宙でのテストだ。

 

同時並行で進むこととなった量産MSに関してだが、技術者チームからの反発はほとんどなかった。

まあ、量産MSが変わった所で、RX-78の開発に関して変更があるわけではないので、彼らの立ち位置が変わっていなかったというのも理由の一つだろう。

要するに、科学者として最新の技術で最高の期待を作る意欲はあふれまくっているが、コストパフォーマンスに優れた廉価安定性能の量産機の開発には興味がないという話だ。

世界最高の技術には興味あるけど、性能を落として安定性を求める廉価技術には興味ない話という事か。

消費者的には後者の方が圧倒的に重要なんだけどね。

まあ、科学者的には最新技術を開発することが、次の最新技術の開発にかかわるステータスになるわけで、そういう意味では、開発者と生産者の認識と価値観の違いという事なのだろう。

 

そんな中で、唯一難色を示したのがテム・レイ大尉だった。

もっとも面と向かってはむかうわけではなく「最初から分かっていたんじゃないのか?」的な雰囲気を匂わせた程度だ。

彼としては、あくまでもRX-78でジオンを倒すという構図を想定していたらしい。コスト問題の理由を説明したら納得はしてくれた。

そういう意味でも、彼は技術者としての知識と、管理者の求めるニーズを認識できる貴重な人材なのかもしれない。

 

まあ、これが今生の別れなんだがね。

 

「ご家族はすでに宇宙に?」

「いえ、息子はすでに上がっているのですが妻は…」

「そうですか。では、息子さんのお世話は誰が?」

「お恥ずかしい話ですが、一緒に上がった近所の方にお願いしている始末で。」

「それは申し訳ない。われわれが大尉に無理させたからですね」

「いえ、少佐。それは違います。私はこの計画に参加できた事を後悔していません。むしろ誇れることだと思っています。妻と息子には、この戦争が終わったらたっぷりサービスしてやりますよ」

「ぜひ、そうしてください」

 

そういって敬礼をすると、レイ大尉も少しぎこちなく敬礼を返してホワイトベースに乗り込む。これで、オレの義理的な理由も終わった。

後は、せいぜい原作キャラを探してみるだけなんだが…

 

うん。さっぱりわからん。何せ巡洋艦だ。搭乗員の総数は数百名に話。後年の名艦長ブライトさんは、確か士官学校卒業直後の新米少尉だったはずだし、他の著名はホワイトベースクルーって誰だっけ?ジョブジョンとかいたよね?数少ないヒロインのセイラさんとかミライさんは民間人だし…

 

 

 

カツカツカツ…

 

連邦士官の制服を着た一団が前を通り過ぎる。その中心は壮年の佐官だ。

慌てて敬礼する。

むこうも、こちらに気が付くが、当然面識はない。取り巻き士官ともども、不審な目でこちらを見る。

階級は…中佐か。向こうも、こちらの階級を見て少し驚いたようだ。とはいえ、その目は厳しい。

その視線をうけて、心の中で舌打ちする。

ここにいる時点で、オレがホワイトベースの関係者ではなく、V作戦の関係者である官僚士官だとわかったのだろう。そして多分このおっさんはバリバリの現場主義者。生粋の前線指揮官なのだろう。

コーウェン准将に呼ばれる前に、ジャブローの窓際大尉をしていた時代も、こんな感じで白眼視されていたのを思い出す。

こんなところでも派閥争いか。こりゃ、レイ大尉向こうでも苦労するんじゃないかな。

 

頑固そうな艦長は、そのままホワイトベースへと入っていく。

もしかして、あれがホワイトベースの最初の艦長か。えっと、逃げろの艦長だったけ?

はからずも原作キャラに会えたけど、うれしくない…

 


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