さて、気が付いたらオレの連邦軍エリートコースが単線片道一方通行になっていたが、それはそれで仕事だ。
量産機RGM‐79だが、こっちに関しては恐ろしいほど順調だ。
ウッディー大尉。マジ有能。
計画開始時からほとんど注目されず、きっちり組織体制作りから始めたせいで、他からの横やりがほとんど入らない。さらに科学者連中がRX-78が最終段階に入った事によりテンションを上げまくり、そのテストに意識を125%(当社比)向けている。
おかげで、量産機に格上げする事になっても「(テストをしていない)最新技術が~」とか「(自分の中では)革命的な技術が~」といった口を出してくることもない。
上も下も余計な事をしないせいで、極めてスムーズに量産体制の確立へと進んでいる。
となると、そろそろ次の問題を視野に入れて動く必要がある。
V作戦完了後の対応だ
現在、ガンダムの最終テストのために、各チームの開発者はそこにとどまっている。RX—78のテストで問題が起これば即座に対応できるようにだ。だが、テストが終われば彼らに新しい仕事を割り振らなければならない。
ジオンに比べて、連邦のMS研究は遅れている。ジオンと同じことしていては、その差を埋めることは難しい。
それ故に、連邦軍では複数の分野で同時並行で研究する。それが有効なのか無駄なのものなのかは、研究成果によって取捨選択する。
そうすることで、ジオンの技術に追いつく、あるいはジオンが気が付かない分野で特出することにつながる。
そんな多種多様に分かれたMS研究に関して、オレの立場(というか仕事)も変わる。
今まで科学者たちは、各分野に分かれオレの管理下でMS開発をおこなっていた。それはあくまでRXシリーズの為だ。
それが変わる。V作戦のようなゴールを見据えた開発ではなく、V作戦をスタートラインとして、チームに分かれて各分野で開発を行う。そして、その一部をコーウェン准将(を補佐するという名目でオレ)が管理する。そして、各管理者(これはオレではなくコーウェン准将)の上に総括する連邦上層部が置かれ、そこが正式採用等の判断をするわけだ。
V作戦というレビル将軍の主導による速度重視のMS開発ではなく、MS同時並行開発という組織体制になったといえる。
…微妙につながってないぞ、この組織図。
オレの権限と手間が大きく減り、手続き等が面倒臭くなった半面、予算やトラブルなどの諸問題を上に丸投げできるようになるメリットがでる。これでジャミトフ大佐に直訴とか、ワイアット将軍の横やりや、他派閥からのダイレクトパワハラとも無縁になるわけだ。
純粋に、管理者として連邦組織に組み込まれオレの不安はほぼ解消される。
本当はV作戦の時もその辺の作業をコーウェン准将がするはずだったんだけどね…
そして、組織に組み込まれる以上、そこに組み込まれる人員の割り振りというのが発生する。どんな組織でも有能な人間を手に入れたいと思うわけで、その評価をするのは、当然彼らを管理していた人間というわけだ。
つまりオレだ。間違ってもコーウェン准将ではない。
一応、モビルスーツ開発において、各分野ごとにチーム分けをしていたから、その分野ごとに後任に割り振ればいい。
だが、そのままチームを移行させればいいという話でもない。
科学者の中には、軍人に尻を叩かれながらではなく、純粋な研究をしたいから戻りたいとか言い出す者もいる。各分野の後任を狙う派閥からは、有能な人材はどれだといった内容をオブラートに包んで聞いてきたりもする。
まさに上と下の板挟みである。
さらにコーウェン准将が調子に乗って約束したった人事的調整なんかもこちらに回ってくる。
まるで奥さんに言い訳して休日に趣味に出かける恐妻家の旦那の様にこちらを伺いながら。
「後任者との円滑なコミュニケーションのために、彼らの顔も立てねばならないのだ。よろしく頼むよ」
知らねぇよ!