泣き腫らした顔。涙でぐしゃぐしゃになったそれを手で拭い続けている。赤くなってしまうから、その手首を黙って握ると、
「……
「ああよしよし。また
僕は彼女の頭を撫でてあげた。しゃくり上げる彼女は、鼻を啜り、言う。
「何で谷村さん、私の事突いてくるんだろ……」
「……お前は悪くないよ」
涙を流す彼女を、僕は抱き締めた。細い身体が容易く腕の中に収まる。嗚咽が再び始まり、僕は彼女の黒い頭を撫でた。
「泣くなって。な。…いや泣いてて良いよ。 お前についててやれるの、僕だけなんだからね」
彼女に見えないように、うっそり、微笑んだ。
幅のある茶封筒だ。父はまた多額の額を包んだらしい。確かに彼女はそれだけの働きをしてくれている。
「はい」
「ん。……確かに」
それを手渡すと、谷村は口を開いて中身を取り出す。万札が何枚も顔を見せ、そして直ぐに引っ込んだ。壁に寄りかかり腕を組んだ僕は言う。
「何時も悪いね。 豊子の事、虐めて貰って」
「全くよ。あたし別にあの子の事嫌ってる訳じゃないのにさ。 まあ、あたしより成績良いのだけは気にくわないけど」
「はは」
僕は笑う。谷村は肩を竦めて、赤い唇から溜息を漏らした。
「しかしまぁ、あんたの家もよーやるわね。
「頷いてくれたのは君だろう?」
「割良いからね。そこらのおじさんと付き合うより稼げるもん。しかしあんたの家も歪んでるわね」
谷村は言う。
「太田さんを孤立させれば、味方はあんたしかいないと思わせられる。そして太田さんをあんたに執着させて依存させて、簡単には離れられない様にする。それだけの為に、あの子を虐めさせるんだから」
「だって、精神的に卑屈になってた方が扱いやすいだろう?」
僕は言った。
多分、笑っていたのだろう。谷村は、少しばかり眉間を顰めていたけど。
「……それに、曾お祖父様は、良かれと思って真実を伝え現実を見せてやったら、豊子の曾お祖父様に恨まれたんだ。それぐらいだったら、優しい嘘で目隠しをしてやって、手を引いて自分の都合の良い方に連れ込んで心を手に入れた方が、余程良いに決まってるだろう?」
「……あたし、あんたが怖いわ」
「はは、昔から僕の家のみんなはこうだそうだよ」
自分の身体を抱き締めるように腕を組んだ谷村に、僕は笑う。
「太田の血に、酷く執着してるんだ」
End.