どうしてこうなった。   作:駒由李

2 / 2
※pixivからの転載 お題は「切ない30の言葉達(http://pain.babyblue.jp/30w.html)」からお借りしました。時系列は「どうしてこうなった。」の前。ヤンデレに愛されすぎている話。


優しい嘘

 泣き腫らした顔。涙でぐしゃぐしゃになったそれを手で拭い続けている。赤くなってしまうから、その手首を黙って握ると、豊子(ほうこ)は僕を見上げ、名前を呼んだ。

「……謙人(けんと)ー……」

「ああよしよし。また谷村(たにむら)に虐められたのか」

 僕は彼女の頭を撫でてあげた。しゃくり上げる彼女は、鼻を啜り、言う。

「何で谷村さん、私の事突いてくるんだろ……」

「……お前は悪くないよ」

 涙を流す彼女を、僕は抱き締めた。細い身体が容易く腕の中に収まる。嗚咽が再び始まり、僕は彼女の黒い頭を撫でた。

「泣くなって。な。…いや泣いてて良いよ。 お前についててやれるの、僕だけなんだからね」

 彼女に見えないように、うっそり、微笑んだ。

 

 幅のある茶封筒だ。父はまた多額の額を包んだらしい。確かに彼女はそれだけの働きをしてくれている。

「はい」

「ん。……確かに」

 それを手渡すと、谷村は口を開いて中身を取り出す。万札が何枚も顔を見せ、そして直ぐに引っ込んだ。壁に寄りかかり腕を組んだ僕は言う。

「何時も悪いね。 豊子の事、虐めて貰って」

「全くよ。あたし別にあの子の事嫌ってる訳じゃないのにさ。 まあ、あたしより成績良いのだけは気にくわないけど」

「はは」

 僕は笑う。谷村は肩を竦めて、赤い唇から溜息を漏らした。

「しかしまぁ、あんたの家もよーやるわね。 太田(おおた)さんの事を虐める為に、人を金で雇うなんて」

「頷いてくれたのは君だろう?」

「割良いからね。そこらのおじさんと付き合うより稼げるもん。しかしあんたの家も歪んでるわね」

 谷村は言う。

「太田さんを孤立させれば、味方はあんたしかいないと思わせられる。そして太田さんをあんたに執着させて依存させて、簡単には離れられない様にする。それだけの為に、あの子を虐めさせるんだから」

「だって、精神的に卑屈になってた方が扱いやすいだろう?」

 僕は言った。

 多分、笑っていたのだろう。谷村は、少しばかり眉間を顰めていたけど。

「……それに、曾お祖父様は、良かれと思って真実を伝え現実を見せてやったら、豊子の曾お祖父様に恨まれたんだ。それぐらいだったら、優しい嘘で目隠しをしてやって、手を引いて自分の都合の良い方に連れ込んで心を手に入れた方が、余程良いに決まってるだろう?」

「……あたし、あんたが怖いわ」

「はは、昔から僕の家のみんなはこうだそうだよ」

 自分の身体を抱き締めるように腕を組んだ谷村に、僕は笑う。

「太田の血に、酷く執着してるんだ」

 

 

 

End.

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。