生存の術は何もしない事よ   作:キューブケーキ

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生存の術は何もしない事よ

その1

 

 My name is Tarou Yamada.I like study ero.

 拙者は息子を弄くって一人遊びに夢中だった。

「うひっ」

 画面のアイマスキャラが俺に微笑んでくれている。画面の向こうで輝く伊織たんのデコが拙者のリビドーを刺激する! ああっ伊織たん、僕はもう、辛抱たまりません!

「んごぉ」

 来た、来た、来たぞ! もよおして来た。

「一緒に行こう、伊織たん!」

『なっ、な、何を言ってるのよーっ! この変態っ! ド変態っ! de変態っ!』

 罵り声を有難うございます。

 白く真っ白な光に視界が包まれた。これがイクって事なのか?

 そして気がつくと荒野にトランクスをずり下げて下半身丸出しの拙者が居た。

 

「おい、おっさん」

「んごぉ?」

 振り替えると三人組が居た。汚い服装に頭巾を被って危ない得物を持っている。

(映画のエキストラかな?)

「てめえだよ。汚ねえ粗末な物出してふざけてんじゃねえぞ、ウジ虫!」

 拙者の息子を馬鹿にした。許せない。

「人を息子のサイズで評価するなんてお前、生きてる価値無いよ。死んだら?」

 プルプルと震えてノッポのおっさんは怒鳴った。

「死ぬのはてめえだ!」

 ノッポのおっさんが剣で斬りかかって来た。危ないじゃないか。こんなきちがいはお巡りさんを呼んで逮捕して貰わなくては!

「うわ、何をする止めくぁwせdrftgyふじこlp」

「うるせえタコ」

 ネタは通じなかった。なんじゃい、心に余裕の無いやつだな。

 拙者は走って逃げた。

 これでも小学校の時は熊本のカール・ルイス、辛島町のベン・ジョンソンと呼ばれてたんだ。

「待てこら!」

 馬鹿か。待てと言われて待つやつがどこに居る。

 でも涙がでちゃう。だって裸足で、足の裏がチクチクするの!

 

 

  ★    ★    ★

 

 

「そこまでだ悪党ども!」

 竜狩りオーンスタインやグンダの様な強烈な突き、振りを伴って、水色の髪をした姐さんが現れた。

 そして悪党三人組を「アッー!」と言う間に惨殺した。美貌は際立っているけど、その強い眼差しが怖いンゴ。

「大事無いか?」

「へえ、姐さん。危ねえ所を助けて頂きありがとうございます」

 相手はマブラヴの夕呼先生みたいな声だ。服の隙間から大胆に覗いたパイオツが拙者のリビドーを刺激する。

 あ、凝視してたのがばれた。姉さんが口許に笑みを浮かべてる。やべえ。

 相手は槍を持ってるし、怒らせたらヤバイ。これマジでヤバイよ。

「お兄さん、こんな所に裸足で何をしてたのですか」

 そんな事を考えていると、頭に人形を乗せたジャリが話しかけて来た。

 悪くない容姿です。ですが、ロリコンは犯罪者でござる。お縄は勘弁です。

「それが、気がついたらここに居まして……」

 顔を伏せながら考えたが、拙者の装備はRPGの初期装備よりしょぼい。ああ勿論、対戦車ロケットじゃねえぞ。

 Tシャツにトランクス姿で、手にはテイッシュの箱。これは酷すぎる。

「ほう。見た所、部屋着の様ですが」

 長い睫毛がパチクリして、隣の眼鏡さんが話しかけて来た。

「ぶひひ、千早ちゃん?」

「え?」

 まじまじと見るまでもない。

 おっと、千早ちゃんとこんな眼鏡を見間違えるなんてやっちまったぜ。不信な目で見られちゃった。めんごめんご。

「失礼、拙者の知り合いに声が似ていた物で」

「そうですか」

 その後、お互いに自己紹介した。

「拙者は山田太郎(仮)と名乗ります」

「サンタタローさん? 変わったお名前ですね」

 自分でもそう思う。どうせならヤマダの方がスッキリする。

「ですよね。よく言われます」

 人外染みた水色髪の夕呼先生は趙雲さん、人形少女は程立ちゃん、偽千早ちゃんの眼鏡は戯志才さんと言う。

「姉さんは、趙雲様とおっしゃるんで」

「おや、私の名前をご存知かな?」

 趙雲と言う名前で気づいた。三國志のキャラじゃねえか。

 とりあえず乗りに合わせておだてておくか。 

「へぇ。常山の子龍さんと言えば、滅法強いお方とか。姉さんの事でしたか」

「星さん、凄いです」

 三國志って言うと、某大手ゲーム会社の歴史シュミレーションゲームか無双シリーズぐらいしか思い付かないが、どうやらマジらしい。

 趙雲さんは痴女系の人だろうか? 乳揺れが拙者の視線を誘惑してくれるが耐える。

「所でお兄さん、天の御遣いをご存知ありませんか」

「天の御遣い?」

 聞いた話では、天の御遣いが現れて世界を救うみたいな話が広まってるらしい。

 拙者はそんな大層な者でも無いし他人だな。

「知らないでござる」

「お兄さんが天の御遣いだったら話は早かったんですが」

 程立ちゃんはわざとらしい溜め息を吐いた。

 そんな事を言われても困っちゃう。

「拙者、基本的に何もしたくないでござる」

 無能は無能なりに日々、平穏に過ごせれば十分です。

 さらけ出す本音に三人は呆れた表情を浮かべていた。でも働いたら負けだと思う!

 美人はイケメンに夢中で俺なんかは振られるパターンの人生。だったら他人の為に何かをするなんてやりたくない。引き立て役や踏み台は御免だ。

 どうせこの三人もイケメンを見ればヤリマンビッチに早変わりするんだ。

 余計なかかわり合いはごめんです。

「使えないおっさんだな」

「これ、宝譿(ほうけい)。失礼ですよ」

 人形の腹話術か。なんちゅう名前を付けてんだこのガキ。

 拙者は近くの街まで送って貰えた。物乞いでもして穏やかに暮らそう。

「じゃ、お兄さんお元気で」

「お世話になりました。天の御遣いさんが見つかると良いですね」

 背中に三人の視線を感じるが振り返らず街に入って行った。

 

 

  ★    ★    ★

 

 

 それは古代中国な時代。女が男より優れた女尊男卑な社会で、ちょっと俺の知る古代と違う感じがする。

 そんな異世界ライフだが、生きる為には稼がないといけない。

 ここでも本気を出さないのは甘えだ。古代は殺伐としており、平和ボケした左翼団体さんな思想では隙だらけ、カモになる時代だ。

 とは言っても、下手に権力者に目をつけられる様な目立つ事は無しだ。何もしないと言っても限度がある。

 廃品回収で使える物は修理して売ったり、それなりにホームレス生活をエンジョイした。

 その後、拙者は運命の相手を見つけた!

 恋に落ちるのは見た目からだけど、浮浪者仲間の麗羽さんと結ばれ、それなりに幸せな家庭を築いた。

 人は身の丈にあった生活をすれば良い。野望など虚しいだけだ。

 異世界だからと介入や努力をする必要はないのだよ。

「ちょっとタローさん。お食事が冷めますわよ」

「うっす。今すぐ行きます!」

 my wifeが金塊を拾って来てくれたので最近は、屋根のある家でそれなりの食事が取れる。

 思えば麗羽さんとの出逢いが幸運を呼んだのかもしれない。

 麗羽さんは浮浪者には似合わない美貌で、良いところのお嬢様だったらしい。悪い奴に何もかも奪われたそうだ。

 だけど浮浪者になっても高貴さが漂っていた。傷んだ髪も水浴びすれば艶々と光沢を見せる。

「美しい……」

「あら、貴方は見る目があるのですわね」

 なんて言ってくれた。浮浪者なのに。

 その後、なんやかんやあって拙者が小銭を集めて麗羽さんが料理をする共同生活が始まった。

 麗羽さんの作る料理は、肉だけ大盛りの焼き肉って感じで栄養バランスがてんでだめだった。

 焼肉には飯が居る。主食と副食、おかずとかのバランスを考える大切さを教えた。

「お米が無ければお肉を頂けば宜しいのではなくて?」

 なんて言うんですよ。

 敬われ、据え膳、上げ膳な日々を送っていればそんな物かもしれない。

 まったく、拙者が居ないとどうなっていたやら。my wifeは困ったちゃんだ。

 今日の料理は何が用意されているか不安です。

 

 

 

その2

 

 あれから色々あった。世間では曹操が魏王に成って、劉備が漢中王に成って三国鼎立だとか色々とあった。

 あの関羽が呉に討たれたとか、劉備が怒りで呉を攻めたけど負けたとか。

 最近、世間も物騒に成ってきたので麗羽さんに引っ越しを持ちかけた。

「他所の街にですか?」

「そう。麗羽さんに怪我なんてさせれないから」

 拙者の言葉に夕食の小鉢をつついていた箸を止めて考え込む。

「そうですわね……。私、暑い所とか寒い所は苦手なので、それ以外の所なら」

 マイペースな麗羽さんの言葉に苦笑を浮かべてしまう。

 とりあえずは反対では無いと言う事で良かった。

 料理の後は二人でお風呂に入ってイチャイチャした後、ちょっとハッスルして寝たんだ。

 翌朝、勤め先に挨拶して荷造りをした。

 元から大した荷物は無かったので準備は一日もかからなかった。

 戦乱の大陸なんておさらばして、目指すは台湾だ。

「あれ、麗羽様」

「姫? 何言ってるんだよ、斗詩。姫が生きてる分けないだろう」

 ん、なんか汚い二人組がうちの麗羽さんを見つめて口を開けてるぞ。

 まあ、うちの麗羽さんは美人だから見惚れるのは仕方ないよね。

「れ、麗羽様!」

 駆け寄る二人を拙者は止めようとしたが弾き飛ばされてしまったでござる。

 飛び付いてくるバッチぃのに麗羽さんは驚きの声をあげた。

「何ですの!?」

 何でも二人は知り合いだったらしく、前髪パッツンな方が顔良さん、緑色の髪が文醜さんと言う。

「麗羽様とお付き合い成されて居るのですか?」

「姫とあんたが?」

 何ですかじろじろと見て、その疑いの目は。

 拙者は温厚だけどぶちギレちゃいますよ?

 

 

  ★    ★    ★

 

 

 うちの麗羽さんは他人に慕われています。

 お二人は麗羽さんの供をしたいと言うので一緒に台湾を目指す事に成りました。

「タローさん、私達は孫権の領国を通過する事に成ります」

「そうなんだ?」

 顔良さんにこれからの道中を訊かれたが、とりあえず海を目指していた。三國志の記憶は無双シリーズと赤壁(レッドクリフ)で山寺さんがドンパチやるってぐらいだ。

 拙者は山寺さん嫌いだ。作品出過ぎで飽きたと言うか、またこいつかって思ってしまいます。

 ま、それはともかくとして孫権の支配地を確認する。と言うか現在地もよくわかっていない。

「アニキ、それぐらいあたいでも知ってるぜ」

 文醜さんに笑われちまったぜ。

「勃海の蓬莱山には不老不死の妙薬があるそうですわね」

「さすが麗羽様、物知りっすね」

 それって徐福が日本に来たとか言う噂話の元ネタだっけ?

「タローさんは不老不死に成りたいと思いますか?」

 ボッチは寂しい。それは嫌だな。

「不老不死なんていらないよ。麗羽さんと一緒が良い」

 麗羽さんの結いあげた髪から、頬にそっと手を伸ばす。

「タローさん?」

「これからもよろしく」

 一人より二人、一緒に過ごす相手が居る方が不老不死より何倍も素晴らしい。

 

 

その3

 

 船足を手に入れる。その金はあったが、準備は万全にしたい。だから仕事をしながら物や金を蓄えようとした。

 その間、色々教えて貰って麗羽さんが、曹操と並ぶガチの有力者だったと言う事を思い知った。と言っても戦に負けて没落してるそうだけど。

「袁本初で袁紹?」

「そうですわ」

 曹操に負けた袁紹が麗羽さんだと言う。

 顔良さん、文醜さんが麗羽さんの下に来てから、予想外にも袁家ゆかりの人達が集まって来た。うーん、うちの麗羽さんは愛されていると言う事か。

「蓬莱の島で袁家を再興しますわ!」

 麗羽さんの言葉に皆が喜び沸き立った。

 ニート生活を求めながらも相反する事に、拙者も理想のニート生活を実現する為には働かなくてはいけない。

 中国についての知識と言えば、無双シリーズで三國志のぐらいしかない。それでも理解出来る事があった。今は後漢王朝末期であり、何もしない、動かないでは麗羽さんも拙者もシビアな抗争で自分の領土(シマ)や命を守れない乱世だ。ヤバイし心を折られるけど、生きる努力って物はやるしかないと言う事だ。

 よくあるなろう小説の転生者みたいなチート能力なんて拙者には無い。そもそもFateやドラゴンボール、NARUTOやONE PIECEの力みたいに世界観破壊する様な物は存在しない。

 だからホームレスをやってたし、個人の武って物は諦めた。それよりは政の世界で上手くやって、麗羽さんの同盟相手を作るか麗羽さんが強くなるしかないんだ。

 同盟の場合は無条件な対等であり、傘下に収まる事ではない。麗羽さんが強くなるのは権力的な意味が占める割合が大きい。

 世間が認めるのは金か権威か武力であり、その内、先行投資の金と血筋の権威は持っている。先ずは金を増やし、人脈を作る事から手をつけた。

 善悪は時代や所属が変わっても不変な物がある。例えば賊徒の存在だ。人の生命や財産を奪い、脅かす存在なのだから悪なのは間違いない。

 今は曹魏の天下目前だった。だけど賊の襲来があるこの御時世だ。拙者は麗羽さんの力で建築関係の商会を作った。

「私はタローさんを信じます」

 金持ち相手に、民間防衛としてセキュリティ・ルームの設計から施工までを売り込んだ。

 無垢な人間は居ない。皆が財を守り生き残ろうとしてる。だからだろう。全く新しい分野だったので、随意契約で市場を独占出来た。

 今日の仕事は終えた拙者に、顔良さんがお茶を差し出して来た。顔良さんは若い頃から麗羽さんに仕えてくれているそうで、優しい彼女の気質は拙者好みだ。

「ありがとう、斗詩さん」

 礼を良い茶を口に含む。

 基本、ぐーたらな拙者でも、上っ面だけでも良い主人を演じれば周囲の受けは良い。顔良さんも麗羽さんの信頼する拙者に真名を預けてくれている。

 一息ついて顔良さんの腰に手を伸ばして抱き寄せ、くちづけをした。好意と権力を利用して女を物にする。最高ですね!

「あっ、タローさん……んっ」

 唇を離すと顔良さんが吐息を漏らし、息を整える。

「……恥ずかしいです」

「可愛いよ」

 反応は悪くない。

 顔を両手で覆い羞恥に悶える姿はそそられる。ブヒヒヒ、拙者、急にモテ期が来たでござる。

「旦那様、旦那様!」

 家令が大声で拙者を呼ぶ。あの声は、麗羽さんが戻って来た様だ。

 最近の拙者は侍女や女官に手を出しており、その辺りの事情を把握して動く、良くできた家令だ。

「わわわっ!」

 慌てる顔良さんと顔を見合わせる。

 急な仕事に出かけていた妻は予定より早く帰宅した。その時、夫はどうするのか。

 邪魔が入り舌打ちをしたくなるが、浮気を続ける訳にはいかない。顔良さんにくちづけをして下がらせた。

「お帰り。早かったね」

「ええ。詰まらない事は早めに終わらせて来ましたわ」

 麗羽さんを抱き締めて金髪の美しい髪を撫でる。

 妻は王の器を持つ英雄、生きた袁家の具像。ぞんざいな態度だが、俺の前では可愛く色っぽい声を出す。

「このまま、寝所に行く?」

 麗羽さんはクスッと笑い頷く気配がした。

「では」

 微笑む麗羽さんを、俗に言うお姫様抱っこで抱き上げて廊下に出ようとした。内心はチョロくて草生えるけど、ゲスっぽいから自重する。

 その時、文醜さんが駆け込んで来た。

「麗羽様、ヤバイです! 孫家の連中が兵を連れてやって来ます」

 少し派手に動き過ぎたのかもしれない。

 だが聞けば、孫権は曹魏への降伏論が出る中で、劉備の蜀と組んで対決しようとしていた。そこで在野の名士、名将を味方に取り込もうとしており、麗羽さん達にも目を着けたそうだ。

 仕度金としてかなりの金子が積み上げられた。これにはワイもニッコリ。

 難しい話は置いておくとして、拙者に出来る事は、麗羽さんを愛し、永遠の愛を誓う事。これだね。

 全てが冒険を開く鍵と言うけど、麗羽さんから小遣いを貰ったワイは、菓子を買いに出かけたンゴ。

 菓子を扱ってる商店までの道のりは大通りに出るだけだ。

「なんか臭い臭いがするぜ。ああ、豚が居るぞ」

「やーい豚、豚」

 例えば路地で絡まれた。これも冒険か? とりあえずチンピラとは違う雑魚だと断じよう。

 囃して来るのは怖いもの知らずな庶民のガキだ。

「親にどんな教育を受けてるんだ」

 道は舗装もされていないから石だって転がっている。糞ガキどもは手近なサイズを掴むと投げて来やがった。

「痛っ!」

 拙者の額から血が流れた。

 人の格は生まれた地位で決まる。スーパーエリートニートを目指すワイとの格の違いを教えてやろう。

 腰に提げていたすりこぎ棒を構えると拙者はダッシュした。逆襲を予想してなかったのか、ガキの動きが止まった。

「デブだからって舐めてんじゃねぇぞ」

 文ちゃんに遊び半分で習った護身術を活かす時が来た。生意気な糞ガキどもの顔をすりこぎ棒で殴り付けた。倒れた所に何度も振り下ろした。

 頭から血を流して見た目の負傷は派手だが、ガキどもは死んでいない。

「太るほど食えるデブを舐めんな。貧乏人が身の程弁えろ」

 その後、麗羽さんに叱られました。

「タローさん、今日は喧嘩をしたそうですね」

「はい、麗羽さん。その通りです。先手こそ打たれましたが、拙者は敗けはしませんでしたよ。フヒヒ」

 胸を張って麗羽さんに報告する。

「はぁ……。少々、やり過ぎですが、相手が先に手を出したのですから、そこは良いでしょう。それより両親が謝罪に参りました」

「そうですか。その辺りの賠償は麗羽さんにお任せします」

 麗羽さんは拙者より優れた人だ。麗羽さんには袁家と言う名族のステータスがある。靴新しと雖も首に加えず、と言う様に任せておけば問題ない。

「ええ、そう言うと思ってました。ですから貴方の側仕用人として引き取る事にしました」 

「側仕用人ですか」

 言ってみれば執事とかメイドさんみたいな使用人らしい。

 

 

  ★    ★    ★

 

 

 孫呉が曹魏や蜀に対抗し、味方を増やそうと麗羽さんに援助をしてくれた。

 足場を固めた麗羽さんは本格的に動き出した。

「タローさん、私と共に南蛮に行って頂きますわ」

「南蛮ですか」

 南蛮と言えば無双シリーズでも、三国の係争地としての魅力には欠ける僻地として登場している。拙者の中では南蛮王とか密林と言うイメージの方が強い。

「蓬莱に行く船を作る木材、それと積み込む家畜や食糧を得る事が目的ですわ」

 これが拙者と麗羽さんの進むべき道か。

 賊討伐や異民族の征討は人口調整の意味もあると歴史から学習してる。「敵って本当に殺さないといけないのかな」等と頭がお花畑ではいけない。戦利品と言うハクスラ要素も大きい。

 孫権にとって麗羽さんは客将と言える。南蛮を征討したら領地経営は孫権に引き渡し、摂取達は台湾に向かう。

 麗羽さんの兵は五千を超えて膨れ上がった。これらの兵を率いて南蛮平定に向かった。

 途中、初めて人を殺したのはいつかと文ちゃんに訊かれたが、そんな物騒な体験はございませんとお答えした。

「そんなんで麗羽様を守れるのか?」

「頑張ります」

 指針は定められている。麗羽さんに従う南蛮の民は人として扱おう。それ以外は人ではない。

「麗羽様、南蛮王は五万の兵を集めているとの事です」

「あら、確かに兵の数では此方の十倍ですが、所詮は烏合の衆ですわ。漢の名族である私に逆らう愚か者どもを制裁してあげますわ」

 スマートに、知的に戦うのは物語の英雄だけであり、拙者は泥臭く戦う。しかし麗羽さんは違う。

「閣下、敵には地の利があります。我が方も、元袁家の家臣とは言え実態は寄せ集め。油断が敗因では許されません」

「諫言は好ましく思います。しかし貴方は、敵を過大評価し過ぎですわ。負け戦の後、落ちぶれていた私達なのですから味方の錬度が低い。それは分かっています。その上、士気まで下げる気ですか?」

「それは……失礼しました」

 麗羽さんの言葉に俺達は勇気付けられた。

 敵にインテルのCPUが入ってるわけでもない。百姓が鍬の代わりに武器を持っても最強の軍にはならない様に、南蛮の土人も山賊紛いの雑魚だ。

 袁家再興の為の初戦だが、上手くは行かなかった。

 伝令の馬が飛び込んで来た。

「敵の抵抗は頑強で、御味方の軍勢は総崩れです!」

「閣下、ここは下がらせますか?」

 麗羽さんに、言わんこっちゃ無いと進言をしてくるが、麗羽さんの答えは違った。

「弓兵に射撃命令。ただし馬には気を付けて下さい。馬は貴重な財産ですわ」

 え?

「閣下、馬の件は宜しいのですが、味方の兵はまだ後退完了しておりません」

「構いませんわ、射いなさい。戦で死ぬのは当たり前。巻き込まれて死ぬ様な弱兵は私にいりません。どのみち足手まといに慈悲はありませんわ」

 うん、ソウダネ。尖兵が負けた。だからどうしたと言うのだ? 麗羽さんにとって元々、現地徴集の即席な兵だ。土地勘に明るいから前衛の尖兵にしただけで袁家の身内でもなく消耗品だ。

「は、はい」

 魚油の詰まった火炎壷と火矢を撃ち込んだ。狩る側から一転して、劫火の中を敵が逃げ惑っている。

 センの古城でアイアンゴーレムと戦ってると、上から火攻めを食らったプレイヤーの状態だ。

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