東方新抗禍 ~A new Fantasy destroys devious vice~   作:ねっぷう

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第11話 「不死の少女」

ついにマガノ国の支配から解放された幻想郷。しかし、再び魔の手が忍び寄るのも時間の問題だ。

本居新子、茨木華扇、そして二ッ岩マミゾウの三人は、マガノ国に囚われた人間と妖怪を救い出すため、新たなる旅へと出るのだった。

 

地底の旧都、地霊殿にて、打ち出の小槌を手に入れることに成功した新子たち。

マガノ国へと向かうまでの数日間、彼女らは新都で過ごすのだった。

 

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第11話 「不死の少女」

 

場所は戻り、地底の新都。昨日、新子たちは古明地さとりから打ち出の小槌を貸りることができた。今は、まだマガノ国へ行くには旧都の隣に住む、さとり曰く”とっても関わりたくない連中”とも話を付けなければならないらしい。それには少なくとも4日程はかかるそうで、それまではこの旧都に滞在することになる。

 

「腹も減ったし、道に迷ったなぁ」

 

旧都の繁華街の裏路地で、新子は路頭に迷っていた。旧都には、勇刃の案内で少ししか歩いたことが無い。それに、通りから少し離れると急に道が入り組むようになり、自分がどこから歩いてきたのか分からなくなる。

 

「生憎、私にもどう行けば通りに出られるのか分からない…」

 

新子が人目のつかないところに立ち入ったとたん、背後から正邪が顔を出した。

 

「お前、元はここに居たんだろ?」

 

「記憶も曖昧、それに…私が居た頃は旧都。今は新都だ、町並みも大きく変わってしまっている」

 

「ていうか邪魔くさいんだよ!打ち出の小槌は宿で華扇が持っている筈だろ、そこに居なくていいのかよ?」

 

「私は小槌の持ち手部分だった木片を依代としていた。しかし、木片が小槌と再び融合したことによって、木片は膨大な妖力で満たされた。その妖力のおかげで、私はある程度離れていても活動できるようになったのだ」

 

「へいへいそうかい…って」

 

新子はふと振り向くと、建物の影に複数の人影を見た。どれもじっと新子を睨み付けている。口の端から牙が見えていたり、額から短い角が生えていたりしている、変な集団だった。他にも、尖った長い耳を持った奴らも居る。

 

「こりゃ、ちと運動しなくちゃいけないかな」

 

新子がそう言うと、集団はのそりと立ち上がり、新子を囲い込んだ。

 

「お前が…地上から来たっていう人間かよ…」

 

「おう、それがどうした?」

 

新都のゴロツキの妖怪共か?

 

「せっかくマガノ国が日常から離れつつあったのによォ…お前のせいでまた俺達が危険にさらされるじゃねぇか!」

 

「そうかい、このアタシに喧嘩売った今の方が危険だと思うけどな?」

 

…よし、能力は発動してる。

新子はこのゴロツキの妖怪たちの悪意を感じて、体に力が湧いてくるのを感じていた。地上で破魔師シャムや星熊勇刃と戦った時と比べれば微々たるものだが、充分だ。

新子が足を踏み出そうとした瞬間、背後から別の足音を感じた。コイツ等の仲間と思い、眼だけを後ろへ向ける。

 

その時だった。後ろに居た影がさっと自分の横から飛び出し、ゴロツキの一人の顔面に膝蹴りを浴びせた。ゴロツキは鼻血を出しながら後ろへ倒れ込む。

 

「な…テメェは…!」

 

それは、自分より少し年下くらいの見た目の少女だった。白いカッターシャツを着て、赤いズボンをサスペンダーのようなもので吊っている。髪は真っ白く、腰ぐらいの位置まで長い。紅い瞳に映る光が動きに合わせて、一筋の炎のように尾を引いていた。

少女はズボンのポケットに手を入れたまま、ストンと地面に着地する。

 

「アンタら、もう下がりなよ」

 

「クソ…お前は…藤原妹紅!」

 

どうやら、この少女は藤原妹紅というらしい。

ゴロツキは手の爪を鋭く伸ばし、それを素早く突き出した。妹紅という少女はにやりと笑い、余裕あり気な態度を取っているが、それを見た新子の体はすぐに動いた。

 

ザク

 

紙一重のところで、新子の手の平が妹紅の顔の前に広げられた。直後、肉を破る音と共に、ナイフのようにとがった爪が飛び出してきた。そう、爪を自らの手に貫通させ、妹紅に向かうのを防いだのだ。

 

「な…アンタ、何して…」

 

新子はそのまま敵の手を掴み、上体を後ろへ逸らす。

 

「オラァ!!」

 

そして、一気に頭を振り下ろし、ゴロツキに強烈な頭突きをかまして見せた。石と石をぶつけたような音が周囲に響き渡り、ゴロツキは頭を押さえたままよろよろと後ずさった。

 

「くっ…引き上げだ!」

 

一人がそう叫ぶと、ゴロツキたちは四方八方へ逃げていった。

 

「いてて…」

 

「ああ、アンタ何してるんだ!」

 

妹紅がすかさず新子に駆け寄り、血の滴る手の具合を見ようとする。

 

「アンタこそ邪魔するなよなぁ…」

 

「「アンタが居なくても自分一人でぶっ飛ばせたのに!!」」

 

顔を見合わせた二人は、お互いに同じことを怒鳴っていた。

そこで改めて、新子は妹紅の顔をまじまじと見つめる。整った色白な顔に、頑固そうに引き結ばれた唇、切れ長な目、釣り上がった短い眉毛…。

 

「アタシに似てないか?」

 

心なしか、妹紅の顔は鏡で見る自分の顔と似ているような気がした。

 

「お前こそ、私に似てないか?」

 

 

「私の名前は藤原妹紅っていうんだ」

 

妹紅は自分のシャツを千切って作った包帯で新子の手の傷を手当てしている。

 

「サンキュ。くっそ…後で華扇のお説教タイムだなこれは…」

 

「全く、お前さんがフラフラと路地裏へ入っていくのを見て後をつけていたからよかったものの…そうじゃなければただじゃ済んでなかったぞ」

 

「だから、アタシ一人でも十分だっての!ホラ、見なよ」

 

新子は自分の手の甲を指差した。包帯を巻いたばかりだというのに、大分血が染みている。しかし、妹紅はそれを見て目を見張った。手を刃物が貫通したというのに、血が染みているだけだったのだ。普通ならば、包帯の布を超えてドバドバ垂れて流れてもおかしくないのに。

 

「これは…まさか、お前さんも?」

 

「アタシのは、説明するとな…悪い奴と対峙すると、自分の能力が上がるんだ。治癒力もな」

 

「…なるほど、なかなか面白い力だ」

 

妹紅は続けた。

 

「八坂神奈子から聞いたよ、地上から来た御一行様ってアンタの事だろ?お近づきの印しだ、何か飯でも奢ってやるよ、来な」

 

 

 

入り組んだ路地裏から抜けた妹紅と新子は、スタスタと通りを歩いた。

しかし、ここは凄い場所だな。アタシらが泊まっている場所とは真反対の地域で、同じ新都でもあちらの方とは随分変わっている。こりゃ迷子にもなるわけだ。

ゴウゴウと黒煙を吐き出す、ガシャガシャした巨大な建物。鉄骨とパイプだけで構成されているのかと思ってしまうような、近代的な景色が広がる。こんなところでちょっと大きい妖怪とかが暴れれば、一回新都が終わるのは簡単な事だろう。

 

「ここね」

 

妹紅に案内され、新子は一軒のこじんまりとした店に入った。ここが妹紅のおススメの店らしい。

入ったとたん、香ばしい匂いが鼻いっぱいに広がる。

 

「焼肉さ。好きなだけ食べな」

 

新子は改めて空腹だったことを思い出す。店員に案内され、二人は席に着く。妹紅は渡された大きなメニュー表をパラパラとめくり、通りかかった店員に注文を言った。

妹紅が注文を終える。出された水を少し飲むと、新子も店内を見渡す余裕ができた。店はちょっと洋風で、天井には煙を吸い上げる大きな鉄管が何本も下がっている。他の席に座っているのは、当たり前だが妖怪ばかり。心なしか新子と妹紅が座っている席をチラチラ見ているような気がする。

 

そんな事を考えている間に、店員が肉を運んできた。新子は箸を取り、机に置かれた肉を見る。

 

「あれ?」

 

生肉じゃないか。どういうことだろう?

 

「おいおい、何の為にここに網があると思ってるんだよ、自分で焼いて食べるのさ」

 

妹紅が小さめのトングで肉を取り、赤熱した木炭で熱せられた金網の上に置いた。

 

「ほう」

 

「な?」

 

なるほど、こういうことだったのか。焼肉と言えば、あらかじめ焼かれた生姜焼きみたいなものが出て来るのかと思ったが、これはいいな。

 

 

ジュウウウ… ジュウウウ…

 

「よく食べるなぁ」

 

ガツガツと勢いよく肉を食べる新子を見て、妹紅が呟いた。

 

「こっちゃ腹減ってるんだ」

 

「人間の里から来たんだろ?今の里にはこういうのは無いのか?」

 

「自分で焼いて食べるってのは無いな」

 

うん、コイツは中々良い肉だ。美味い。いかにも肉って肉だ。あんまり料理もできないし食べ物についても詳しくないが、きっと上等な肉だろう。

 

「そういえば、さっきの連中も妖怪なのか?ていうかアンタは?」

 

新子が妹紅にそう聞いた。

 

「”ゴブリン”とか、”エルフ”って知ってるか?」

 

「ん、外来本でちょこっと見たことが有るぞ」

 

「妖怪とはちょっと違うかもしれないが、まぁ似たようなモンだろう。私たちが地底へ引越したときと同じ時期に幻想郷に出没していてな、一緒になって来たって訳だ」

 

「へぇ」

 

「言った通り、奴らは妖怪とは違う、西洋のモンスターだ。日本の妖怪とはウマが合わない…だからああやって新都のルールから外れていく。奴らが恐れるのは、勇刃とか神奈子とかと…マガノ国だけだな」

 

「そうなのか」

 

「そうなんだ。改めて自己紹介するよ…私は藤原妹紅。新都で暮らしているが、人間だよ」

 

「えっ、人間だったのか?テッキリ、アンタも妖怪かと…」

 

「まあ、あながち間違いでもないかな、半分は妖怪染みてるって自分でも思う。何せ、これだからさ」

 

妹紅は、おもむろにナイフを取り、自らの頬を斬りつけた。

 

「お、おいおい…」

 

血が、ツーと垂れるが、一瞬にして傷口はふさがり、何事もなかったかのように元に戻った。

 

「不死身なんだ。アンタよりも、ずっと傷の治りも早いよ。それに、こんな事も出来る」

 

妹紅は片手の上に、ボッと炎を作り出す。

 

「凄いな…」

 

「私は、正直幻想郷で暮らすのは飽きてたんだ。そりゃあ妖怪だったら何百年居たって平気かもしれないけど、私の心は人間さ、流石に飽きて来る。だから地底へ来たんだ」

 

「でも、今まで新都の人間は妹紅一人だったんだろ?色々と大丈夫だったのか?」

 

「元から妖怪は怖くないよ。それに、ここには仙人とか、人間の味方だった奴らも居るから平気さ」

 

「…そう言えば、アタシの名前言ってなかったな。本居新子ってんだ」

 

「新子、か。お前とは気が合いそうだ」

 

「アタシもそう思ってた」

 

「よし、私もどんどん食べちゃおっかなー!ビールも頼んじゃおーっと!!」

 

「ビ、ビール!?よく知らないが、アタシもそれ!」

 

 

 

旧都には焼肉が良く似合うという事が今日よくわかったよ。でも、早くご飯来ないかなぁ。こう、肉ばっかりだと、米とか野菜とかが恋しくなってくる。

 

「あちゃあ、ネギを焦がしちゃった。どうも野菜を焼くのは苦手なんだな」

 

妹紅は少し焦げたネギを口に押し込む。

 

「お待ちどうさま」

 

と、その時、店員が次の肉とご飯を運んできた。

 

「お…きたきた来ましたよ」

 

タレに漬けた肉をご飯の上に乗せ、一緒に食べる。くーっ、これですよ、これ。

まるでアタシの体は製鉄所。胃はその溶鉱炉のようだ。

 

二人はどんどんと注文した肉を平らげ、皿が山のように積まれていく。それを見かねた店員が、2~3人がかりで皿を厨房の方へ下げていく。

 

「このハラミっていうのも食べてみようかな」

 

網の上で焼き上がったハラミをお椀に乗せ、一気にかきこむ。そして、甘辛いタレで乾いた喉に丁度良くスッキリとビールが

 

通る。また少し肉を食べて、またビールを飲む。おお、これだな。

 

「うおォン、私はまるで人間火力発電所だ」

 

「あついな」

 

ようやく、一段落付いた。新子は箸をお椀の上に置いて、グイッとビールを飲む、最初はこれが酒か?と思ったが、飲んでみるとこれまた不思議と上手く感じる。このシュワシュワ感、何年も前、憲兵団が里で売っていたコーラって言う飲み物に似ているな。

 

「そういえば、今地上はどうなってるの?噂じゃあ、もう以前のように自然が元に戻ったそうじゃないか」

 

「確かに戻ったと言えば戻ったな。でも、またあと少し時間が必要かもな」

 

「そうか…。どうする?もうちょっと何かつまんでから帰ろうか?」

 

「そうしようかな」

 

 

 

「またお越しくださいませー」

 

二人は膨れた腹をさすりながら店を出た。

 

「いかん、いくらなんでも食い過ぎた」

 

妹紅が呟いた。

 

「でも美味かったぜ」

 

「…何日くらいここに居るんだ?」

 

「あと3日くらいじゃないか?そうだ、ところで、古明地さとりって奴が新都の隣に住む連中と話をつけるって言ってたがよ、どんな奴らなんだ?」

 

「酷く潔癖で、生きてるのか死んでるのか分からないような奴らさ。奴らと新都の連中はお互いに触れ合おうとしない。新都の端と奴らの街との間はわずか5メートル、境には結界とかもない。だけどお互いに不可侵なのが暗黙の了解となってるのさ」

 

妹紅は地底の天上の岩壁を仰ぎ見ながらそう言った。その真紅の瞳には、何かを懐かしむような色が込められていた。

 

「んで、あと3日…もしよければ私が他に美味いところ連れてってやるよ」

 

「本当か!?じゃあその時は華扇とマミゾウも連れて行こう」

 

「おっ、いいねぇ。大勢で行くのは私も初めてだよ」

 

 

この新都に滞在する間、新たに気を許せる知り合いができた。藤原妹紅、彼女とはうまくやっていけそうだ、と新子は心の中で考えていた。




「孤独のグルメ」のパロディが多く含まれてます。前作の小説でもこんな話を書いたような…?
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