東方新抗禍 ~A new Fantasy destroys devious vice~   作:ねっぷう

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第21話 「空へ」

ついにマガノ国の支配から解放された幻想郷。しかし、再び魔の手が忍び寄るのも時間の問題だ。

本居新子、茨木華扇、そして二ッ岩マミゾウの三人は、マガノ国に囚われた人間と妖怪を救い出すため、新たなる旅へと出るのだった。

 

地底での滞在を終え、月の民の力を借りてついにマガノ国へと足を踏み入れた新子たち。囚人たちを救うためのダイヤサカ奪還作戦は開始された。

予定通り、空へと舞いがった新レジスタンスは、敵の戦艦軍を目の当たりにするのだった。

 

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第21話 「空へ」

 

「チィイ、地平線の彼方までぶっ飛ばす気合で殴ってんのに…!!」

 

先ほどから二発の渾身の攻撃をゲムルルへ見事命中させた新子。しかし、二発とも敵へ響いている様子は感じられない。自分へ対して無防備の状態の敵にも係わらず。

 

「ヌゥウ!」

 

ゲムルルは唸ると同時に慌てて辺りを見渡した。しかし、煙の中には先ほどまで居た侵入者の姿は既になかった。

 

「おのれェエエ!!…!」

 

沸騰しかけたゲムルルを冷静に戻したのは、増殖した眼が捉えた影。煙の中に、上着を脱ぎ去った勇刃が立っていた。右足がほとんど動かなくなろうが、左腕を後ろへ引き、腰を落として闘志を称えた目でこちらを睨みつけている。

単独での戦いに加え、右足の負傷。ただ当人は追い込まれるほど力がみなぎってくるのをこの状況で楽しんでいた。逆境を糧に、勇刃は翔んだのだ。

その凄まじい気迫とスピードは、ゲムルルの全神経をコンマ数秒防御へ集中させることに成功した。

 

「コイツとは俺が闘る!お前たちは空へ!」

 

勇刃はそう叫びながら、ゲムルルの触手の一本を掴む。

 

「…ええ!」

 

華扇はそう言うと、建物の屋根に上り、さらに空中へと舞い上がった。新子は咄嗟に打ち出の小槌を取り出し、願うを言う。

 

「『アタシ達を空に飛ばせ』!!」

 

すると、新子たちの体は一人で浮かび上がり、上空へと押し上げられていく。すると、遠くに位置する王宮と巨大なダイヤサカの方向から、無数の敵軍隊がこちらへと迫りつつあった。

 

 

 

「地上から何かがこちらへ向かって飛び上がりました!」

 

「うふふ、あのサイレンは本当だったようね。相手になってあげるわ、このメンドーサ率いる…”マグツヒ艦隊”がね!」

 

ゲムルルからの咆哮による知らせを受け、三禍の一人であるメンドーサは自らが持つ艦隊と共に侵入者の排除へとその力を振るおうとしていた。堂々と腕を組みながら、こちらへ近づいてくる新子たちを見つめる黄色い目が蛇の如く輝いた。

 

 

 

「ふう」

 

神子のマントによる能力を解除した新子が華扇達の前に姿を現した。

 

「新子!やっぱり無事だったのね!」

 

「当たり前だ」

 

新子は、ふと下を見た。正邪やバンキの話では、王都には憲兵団の他に敵の手下に成り下がった妖怪や、闘技場メンバーに属している妖怪も住んでいるらしい。だが、それらしい気配は全くしない。憲兵は徴兵されているから居ないのはわかるとしても、妖怪すらいないのは何故だ…?

 

「さて、あれが奴らの艦隊か…」

 

これも新子たちの予想通りだった。敵は自分たちの存在に気付けば、すぐに軍隊をけしかけ、始末しに来るだろうと。それがこのようにして現実となったのならば…

 

「正邪、あの戦艦を奪えるのじゃな!?」

 

マミゾウが正邪に問いただす。

 

「できる。私の使う”矢印”があれば容易い」

 

正邪の背後から先端が矢印の形になった触手が何本も出現する。

 

「矢印とは、すなわち”力の向き”を示している。私の能力を使い矢印を突き刺すことで、敵固有の力の向きを無理やりひっくり返す。こうして敵戦艦の力の向きは我々と同じになり、乗っ取りが可能となる」

 

「なるほど!じゃあ、まず向かってくるアイツらを何とかしねぇとな!」

 

敵の戦艦から出撃した憲兵団たち。彼らは銀色の”戦闘鎧(せんとうがい)”と呼ばれる鎧を身にまとう事で、空中での戦闘を可能とするほか、その能力を大幅に拡大することができていた。

三角形の頭部に、しわの無いツルツルした蛇のような外見、そこから伸びる二本の腕には鋭利な剣が装備されている。

 

「こんな風になァ!」

 

新子は向かい来る憲兵団を次々と殴り飛ばす。戦闘鎧を破壊された憲兵団は、次々と眼下に広がる都の町並みへと墜落していく。

 

「馬鹿めが、いつまでも避けていられるか!我らの剣で同時に斬りかかられて、無事でいられるものかァ!」

 

十人以上もの憲兵団が同時に襲い来る。新子もさすがにまずいと思い、小さく舌打ちをした。

しかし、その時、ガキンという金属と金属がぶつかり合う音と共に、何かが憲兵たちの剣による攻撃をはじき返した。憲兵は後方へ仰け反りながら、自分の剣と、その攻撃を弾いた何かを交互に見つめる。

 

「新子の姉御ォ、あまり無理はしねぇでくれぃ。姉御が香霖堂で手に入れしこの”バット”も、使ってやってくだせぇ!!」

 

新子を守ったのは、付喪神化したバットであった。新子を姉御と呼び付き従うバットは独りで新子の手に収まった。新子もそれを手にすると、敵を攻撃する構えを取った。

 

「つけあがるな、たかが金属が…!!」

 

それでもなお、新子へ剣を向ける憲兵。それに向けて、新子はバットを振り下ろした。バットは浮かび上がった顔にある口を開き、剣を噛んで受け止めると同時に、その剣を粉々に砕いてしまった。

 

「あ、ああ…信じられない、我らの剣が…」

 

さらに剣を失った憲兵を殴り、下へと叩き落とす。

 

「私たちも!」

 

華扇はドリル状に変化させた右腕を使い、憲兵をまとめて吹き飛ばした。

 

「まだまだ敵は来ますぜ、新子の姉御~!」

 

 

 

「見苦しいわねぇ。あの憲兵共じゃ足止めにもならないわ!もうマグツヒ艦隊出しちゃって」

 

メンドーサがそう指示を出すと、隊列を組んで飛行していた戦艦たちが動き出した。銀色の鋭利な形状をした、近未来的な印象を受ける戦艦が主砲門を展開しながら、新子たちの元へと向かって行く。

 

 

 

「来たようだ」

 

遠くを見ていた椛がそう言った。新子たちも椛が見つめる先を見ると、戦艦がこちらへと向かってきていた。

 

「もっと艦を引きつけろ…その時アレを奪える」

 

新子たちが敵艦隊を引き付けるために各々で行動を起こそうとしたとき、正邪の表情に焦りが浮かんだ。なんと、敵戦艦はあれ以上こちらへ近寄る気配が無い。主砲門横の無数の小窓のような穴から槍を突き出し、それをこちらへ向けていた。

 

「奴らは我々に近寄ることなく遠距離からのミサイルで攻撃してくる…。あれを奪うにはもっと近寄らなければならないが…」

 

「そのミサイルとやらが近づけてはくれないという訳か…」

 

バンキが苦い表情を浮かべる。

 

「”マグツヒヤ”発射!!」

 

その呼び声と共に、敵艦隊から無数のミサイルが飛ばされた。全てのミサイルが綺麗に一直線に新子たちをめがけて来る。防御壁等を使う術を持たない新子以外のメンバーが、自分らを取り囲う球体状の妖力によるバリアーを形成する。

 

ドガァァン

 

敵のマグツヒヤはバリアーに着弾し、とてつもない爆発を起こした。爆炎があたりを覆い尽くし、燃えた鉄片などが下へ落ちていく。煙が収まった後、かろうじて無事だったバリアーの中に新子たちの姿があった。

 

「ぐ…そう何度も防げないわ…!」

 

「…良いことを思いついた」

 

新子が呟いた。

 

「良いこと?」

 

正邪が聞き返す。新子は正邪の耳元へ口を近づけた。

 

「正邪、お前”ひっくり返す程度の能力”があるって言ってたな?だったら、だったらよ…アタシらとあの戦艦を動かしてる連中の位置を…ひっくり返してやることって…できるのか?」

 

それを聞いた正邪が笑みを浮かべた。

 

「…面白い、やってやろう!!」

 

 

 

「敵は妖力による防御壁でマグツヒヤから身を守った模様!」

 

「命中するまで撃ち続けなさい!今度は一隻だけじゃなく、全部の艦に積ませたマグツヒヤを撃ち尽くすのよ!」

 

玉座のような椅子に腰かけ、腕を組んだままイライラとヒールで床を蹴る。

 

「は、はいぃ!!」

 

 

 

「来るぜ!」

 

遠くでずらりと並んだ戦艦から、先ほどの同じようなマグツヒヤの発射台が展開されたのを見つけた新子がそう叫ぶ。正邪が狙いを定めたのは、自分たちから見て一番近くに居るあの戦艦だ。

次の瞬間、全艦に装填されたマグツヒヤが一斉に発射された。艦隊は新子たちを半円状に囲っており、故に撃ちだされたミサイルも決して逃げ場を作らせることなく迫るのだった。

 

「今だ」

 

正邪のその静かなつぶやきと共に、一行はその場から姿を消した。ミサイルが当たる直前だった。代わりにそこへ現れたのは、緑色の軍服を纏った憲兵の上官。

 

「へ?」

 

彼らは、この状況を掴むことができなかった。戦艦を操縦していたはずの自分と乗組員が、突然外に放り出され、気が付けば自分で発射したはずのマグツヒヤに四方を囲まれているこの状況を。

 

「なんで?」

 

ただ短い時の間にそう言うとともに、マグツヒヤが直撃し、彼らは瞬時に爆死した。

 

 

 

「よっしゃ!」

 

一方、爆死した憲兵が乗っていた戦艦内部へと移動していた新子たち。正邪がすかさず操縦室に自分が出した矢印型のワイヤーを突き刺し、戦艦のハッキングを完了させた。椛とリグル、そしてバンキがコクピット席に座り、そのハンドルを握る。

すると戦艦は動きを止めた。新子たちはこの戦艦を奪い取ることに成功したのだ。

 

「ふぅ、上手くいったな。敵のミサイルが直撃する瞬間に私の能力を使い、私たちと敵乗員の位置をひっくり返すとは…」

 

「これで、この戦艦は私たちのものだ」

 

「それなら…ドンパチ始めようかい」

 

椛とバンキが、コクピット席のモニターのボタンを押した。

 

 

 

「何だ?”ドゥルジ”の動きが止まったぞ?」

 

新子たちが奪った戦艦はドゥルジという名前が付けられている。そして、そのドゥルジとは別の艦の乗員が異変に気付いた。マグツヒヤを撃ち爆発を確認したとたん、味方の一隻の動きが急に止まったのだ。

 

「どうした、ドゥルジ…応答をしろ」

 

そう呼びかけると、ドゥルジは動き出した。だがどうも様子がおかしい。主砲門、そしてマグツヒヤの発射台をこちらへを向けたのだ。

 

「何をするつもりだ、まさか…!」

 

直後、発射された砲撃がこの戦艦を貫いた。砲撃は魔力をレーザーのように発射し、貫かれた戦艦は黒煙を吹き上げながら下へ墜落していく。

 

 

 

「ようし、まずは一隻撃破!」

 

「すげぇな、よく動かせる」

 

敵に砲撃を喰らわせた椛を見て、新子が思わず関心の声を上げる。

 

「初めてだがな」

 

「え?」

 

 

 

「マグツヒ艦隊、イルシアス墜落!何と…ドゥルジが暴走!ドゥルジの砲撃によって墜落しました!」

 

「何ですって…?」

 

メンドーサの顔に戸惑いの色が浮かんだ。

 

「ぐぬぬぬ…!もう、何が起こってるのって言うのよ!?もういい、ドゥルジを破壊しなさい!」

 

 

 

「続いて食らわしてやる、マグツヒヤ全弾発射~~~!!」

 

乗っ取ったドゥルジから発射された大量のマグツヒヤは残りの敵戦艦に突き刺さり、爆発によるダメージを与えていく。中破しバランスを崩す艦もあれば、運よくそれを回避した艦。

しかし、敵たちもドゥルジの様子がおかしい事、乗員からの反応が無い事により、ついにドゥルジに砲門を向けた。そして、敵の砲撃が一斉にドゥルジに向かう。

 

「そおれえええ!!」

 

バンキは思い切りハンドルを引く。するとドゥルジは物凄いスピードで動き出し、グルグルと回転しながら滅茶苦茶に空を飛び回った。

 

「うわあああああ!」

 

揺れる艦内。しかし、バンキの無茶苦茶な操縦が、かえって功を成した。予想外の動きにより砲撃は全て回避され、さらにドゥルジは他の艦に衝突するとその艦を貫いて次々と破壊していくのだ。これにより、メンドーサ指揮するマグツヒ艦隊は壊滅にまで追い込まれた。

そして、敵艦を全て薙ぎ払うと、まるでそれらの影に隠れていたかのような敵の司令塔の存在が露わになった。

 

「ありゃ何だ?」

 

新子がそう問いかける。

 

「…アレは…アレは…」

 

それを目で見た正邪が思わず言葉を失う。

目の前にそびえるのは、超巨大な逆さまの城だった。城が逆さまにひっくり返ったまま浮かんでいるではないか。城からは大砲のようなものが飛び出し、その大きさはドゥルジの三倍近くもある。

 

「輝針城か…!!」

 

 

 

「一体どうなっているの…!?」

 

「分かりません…暴走したドゥルジが…我がマグツヒ艦隊を壊滅させてしまいました…!」

 

「…ならば、この巨大要塞型戦艦”クリュサオル”をドゥルジへぶつけなさい。そこから私がドゥルジの中に入って、何が起こっているのか確認するわ」

 

メンドーサはそう言うと玉座から立ち上がり、部屋の外へと出た。

 

 

 

「輝針城じゃって…!?」

 

マミゾウが驚いた声を上げる。

 

「きしんじょう?」

 

「私も知ってるわ…。私は参加していなかったけれど、200年前の「幻想郷の戦い」の時に見事マガノ国軍を打ち破ったって言う、逆さ城の事よ」

 

「ダイヤサカの他に、輝針城までもが奪われていたとは…!」

 

「だが、好都合だ。忘れるはずがない、アレはこの私の城だ。丁度城はこちらへ突っ込んでくる。アレも奪い返すぞ」

 

正邪が目の前の輝針城を睨みつける。

大砲を撃ちながらこちらへ突っ込んでくる輝針城を迎え撃つために、こちらもドゥルジを最大出力で飛行させる。そして、物凄い衝撃と共に、ドゥルジの艦首が輝針城へ突き刺さった。

 

 

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