東方新抗禍 ~A new Fantasy destroys devious vice~   作:ねっぷう

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第24話 「成長」

ついにマガノ国の支配から解放された幻想郷。しかし、再び魔の手が忍び寄るのも時間の問題だ。

本居新子、茨木華扇、そして二ッ岩マミゾウの三人は、マガノ国に囚われた人間と妖怪を救い出すため、新たなる旅へと出るのだった。

 

地底での滞在を終え、月の民の力を借りてついにマガノ国へと足を踏み入れた新子たち。囚人たちを救うためのダイヤサカ奪還作戦は開始された。

勇刃と新子と戦うゲムルルは、新たなる能力を会得しようとしていた。それが、己を信じられない選択へと導くとは知らずに…

 

─────────────────────

 

 

第24話 「成長」

 

王都南区は、大爆発の衝撃と魔力の波動により壊滅状態となっていた。傍らで、焼け野原の中央、大きな窪みのクレーターの底には、ゲムルル。

 

─怒りで我を忘れ、獲物を求めて徘徊する愚かな怪物…そう思えばいい、思わせるのだ

 

「ああぁあぁぁあああああ!!どこへ隠れやがった、出て来いィイイ!!あああ!!」

 

─必ず奴はまた現れる。爆発寸前の我の隙を突くために…!

 

「うらああああああああああ!!」

 

ゲムルルは偽りを怒りに身をゆだね、新子を誘い込もうと気炎を上げていた。

クレーターの端から50メートルほど離れた地点には、半壊した家屋の壁に勇刃がよりかかり、目を閉じていた。そしてゲムルルの怒りの声を聞いている新子。

 

「そうだよな、勇刃…お前に、奴に一発入れるって約束したもんな…。今がチャンス、だからな!」

 

新子は走り出した。

 

 

クレーターの中に居たゲムルルは、上で何かの気配を感じ取り、振り向いた。

 

「元気だな、バケモン」

 

そう声をかけてきたのは新子だった。

 

「会いたかったぜぇ…ゴキブリ野郎」

 

─かかった、我の罠に…偽りの怒りの演技に!

 

「降りて来いィイ、オラァ!!」

 

「いちいち声がでけぇなァ」

 

「うるッッッッ…せぇあああ!」

 

─さぁ、いつでも爆発してやるぜ。正確には爆発のフリだがな…。我が爆発する寸前の膨張…奴は必ずその隙を突いてくる。だが!”冷静”に”平常”に怒れば膨張は必ずコントロールできる!奴が我の隙を突こうとしてできる隙を、我が突く!!

 

「殺す!!テメェも仲間も、跡形もなく消すぞ!!」

 

「お前、馬鹿だろ。そりゃ無理だぜデクノボー、テメェはさっさと外行って、いつも通りバカ面しながら星の数でも数えてな」

 

「フ フフフ フ フフフフフフフフフフ」

 

直後、ゲムルルは再び膨張した。その巨大に膨れる身体には、様々な妖怪の顔が浮かんでは消え、牙や角、細い腕や太い腕、髪の毛や体毛が全身に見え隠れする。

それを見た新子は、一気にクレーターの斜面を駆け下りた。

 

─いける!このタイミングなら確実に一発!いや二発!!奴の顔面に渾身のパンチぶち込んで爆発前に回避できる!喰らえ豚野郎!!まずは勇刃の分!!その後も勇刃の分だ!!

しかしおかしいなアタシ、アイツの事そんなに好きじゃねーのに、むしろいけ好かねー根暗野郎とか思ってたのにいつの間にアタシの中で仲間にまでランク上がって、なんでこんなムキになって仇討とーとしてんだろ?

仇っつーか多分アイツ死んでねぇけど。ま、やっぱ一緒にここまで来たのがでけぇな。命懸けで何かやれる奴なんて無条件で友だちだろ、ってツムグも言ってたしな。

なのにこのクソッタレ、そんな勇刃の覚悟を足蹴にしやがって。死ぬ気で戦って殺される事すら覚悟している相手をシカト!?有りえねぇだろ、グチャグチャ曖昧野郎がァア…!

それに、華扇だよ、華扇。勇刃と二人でちょっといい感じになってただろ、そう思うと華扇の分も一発入れなきゃだめだな。

あ~~マジますますムカついてきたぜ!アタシの分も合わせて四発入れる!

…ってアタシスゲェな、今人生で一番頭回転してんじゃね?まだ拳振り上げてる途中?おそらく四百文字以上考えてるけど…

アレ?アレアレ?

これってアレじゃね?時間がゆっくり…今まで出会ってきた奴ら…ツムグとか華扇とかの顔が浮かんで、周りがスゲースローになるって…

死ぬ前の…

 

ズッ

 

─膨張を、途中で…止めたァ!?

 

新子が見たのは、膨張を止めて元の大きさにまで戻り、にやりと不気味な笑みを浮かべるゲムルルだった。

 

─やられた、コイツ…クールだった!!止め…られねぇ…勇刃、ワリィ、しくじった…!!

 

目の前に迫る、超巨大な、血のように真っ赤な拳。

 

─こりゃ、終わったな…。華扇、マミゾウ、正邪…後は頼んだ…

 

 

 

ビギャアア

 

その時だった。雷鳴と共に上空より降ってきた雷が、ゲムルルの脳天に直撃し、全身に流れた。ゲムルルは完全に硬直し、体に電気を纏わせたままプルプルと震えている。

 

「ッ…ッ…」

 

それを見た新子は目を開け、真っすぐにゲムルルを見つめると同時に、振りかぶっていた拳を、その顔面へ叩きつけた。

 

─雷…?硬直してる?チャンス!!

 

「うおおおおお!!!」

 

更に、二発、三発、四発、それを越え五発、六発、七発…

 

「膨らんでなきゃあ、テメェなんざああああああ!!何発でもオオオオ!!!」

 

ドグシャアア

 

最後にゲムルルの顔面に強力な蹴りを入れると、そのままの勢いでクレーターの斜面を全速力で登り始めた。自分でも何をしたのかよくわからないまま頭がフワフワし、心臓がかつてないほどにバクバクと脈打っている。

 

「やった!やった!!やった!!!無理、もー無理!やっべぇアタシ完全に死にかけた!三途の川見えたァ!さっさと勇刃を連れて戻らねぇと…」

 

新子は斜面を登り切ると、感極まって言葉にならない叫びを上げながら、拳を空へ振り上げた。

 

「ひゃああああっはァァァァァアアアアアアアア!!フゥウウウウ!!!」

 

 

─…何が起きた?決まってる、別方向からの攻撃に、気付かなかったのだ…。誰だ?仲間か?だとすれば…

 

ゲムルルは口の端に付いた血を舐めとると、大股で強引に斜面を登った。そして、当たりを見渡すが、既にその場には誰も居なかった。

 

─もう居ねぇ?馬鹿な…こんな短時間で、このまっ平らな焼野原から出られるか?さっき奴らがわらわら出てきた時もそうだった…何もない場所から、いきなり攻撃を喰らった。つまり、奴らの仲間に、自由に出たり消えたりできる奴が居るな…

 

正確には、誰も居ないと思い込んでいた。新子はまだゲムルルの目の届く範囲を走っていた。だが、神子のマントの能力で姿を隠していたため、気付かれなかっただけなのだ。

しかし、先ほどの雷はこのマントを使ったわけではない。その点では、ゲムルルの憶測は間違っている。では誰が、あの雷を使い、新子を死の窮地から救ったのだろうか?

 

 

 

「やったぜ勇刃!奴に八発もぶち込めたぜ、感謝しな」

 

「そ…そうか…八発、丁度新レジスタンスのメンバー分、だな…」

 

勇刃の元へと戻ってきた新子は、自分の体験を聞かせていた。

 

「喋るな。待ってろ」

 

新子は自らの手を勇刃の体へ触れた。その手から溢れた光が、勇刃の傷を癒していた。新子の能力による、自分の高まった治癒力を他人に分ける力である。ここに居ても感じるゲムルルの魔力は、容易に勇刃を治療できるだけの力を新子に与えてくれていた。

 

「おお…痛みが引いて…」

 

「完全にゃ無理だがな。アタシに触れながら、仲間の元へ急ごう」

 

新子はもう一度勇刃に肩を貸した。少し回復した勇刃は、何とか自分の足も使おうとしている。これを見て、新子は少し微笑むのだった。

 

 

 

同刻。勇刃を助けるため、新子を追ってこの場所までやってきていた華扇。華扇はこの焼野原を見て、言葉を失っていた。

 

「何があったのよ、ここは…」

 

まさか、勇刃も、それに新子もすでにやられてしまったんじゃ…!

最悪の予想を思い浮かべながら、焼け野原に点々と残る半壊した家屋の影から影へと移動する。

 

「ゲムルルは…戦っているのなら、奴も近くに居るハズ…」

 

そう呟きながら、慎重に速足で歩く。

 

「よォ、テメェか?エスパーは」

 

そこに現れる、”警戒形態”のゲムルル。華扇は冷や汗をかきながら、ゆっくりと振り返る。

直後、一瞬にして”殲滅形態”へ移行したゲムルルは、鞭の触手を華扇へと叩きつけた。血をまき散らす華扇、追撃を加えようとするゲムルル。

と、そこに…。

 

ビシャアア

 

「ぬあああああ!」

 

─またか!?

 

再びゲムルルを正確に射抜く落雷。電流により硬直し、動きが止まる。

 

「何なんだァ、今のは…?」

 

そう呟くと同時に、ゲムルルは膨れた。先ほども見せた、あの膨張だ。今度はコントロールなどできない。できる精神状態ではなかった。受ければ動きが止まる落雷を続けて受け、流石のゲムルルの肉体にもかなりの痛みとダメージが蓄積されていた。それによる怒りは、以前のような冷静な怒りではなかったのだ。

 

「殺す!!」

 

怒りによる明確な殺意を胸に膨張したゲムルルは、華扇へと腕を伸ばす。華扇を捕まえ、自分から逃れられない状態で爆発する、という手段を無意識に取ろうとしていたのである。

 

ドムン

 

しかし、膨張するゲムルルの顔を、咄嗟に現れた新子が殴った。新子はマントにより姿を隠しており、ゲムルルは「殴られた」という感覚だけを、華扇はきっと姿を隠した新子が攻撃をしたのだとすぐに理解した。

 

それを喰らったゲムルルは最大にまで膨らみ、大爆発を起こした。

 

 

再び爆心地となった南区はもはや原型を残していない程変わり果てていた。焼け跡には今度こそ何もなくなり、建物の残骸も、燃える木も、全てが木っ端みじんに吹き飛ばされていた。

 

─…掴んだ!今の感覚だ、爆発を操作する…。もう一度、もう一度やれば完全にモノにできる…!!

 

ゲムルルは虚無感の中、自分の手を見つめていた。

 

─怒りだ、忘れる前に怒りを溜めろ…

 

「三度だ!!いきなり攻撃を喰らったのは!!クソ、ムカつくぜ!ゴミカス共がァァアアア!!」

 

ゲムルルはまだ気づいていない。

 

─冷静に怒り狂え!それを肉体で、力で表現するのだ!

 

何故、相反する感情が同時に成り立つか。そして、己の現状に。

展開した背脚は形を変え、コウモリのような翼へと変形し、額からは黒い一本角が伸び、その表情は以前よりも知的で人間に近いものとなった。

 

「今分かった…力とは何かに向ける物なんだ」

 

─我の力は妖怪の力…ならばその力を使い、奴らを排除する!

 

クレーターの中から飛び出したゲムルル。その前方に、姿を隠した新子と勇刃が居た。新子はマントを勇刃と二人で被り、二人同時に能力を発動することができていた。しかし、流石に三人はマントの大きさ敵に考えて不可能。防御壁で爆発の威力を殺し、致命傷を避けた華扇にもマントを被らせ、敵に認識されなくするのは…。

 

「オラァ!!」

 

ゲムルルは翼で飛び、宙を自在に飛び回る。「吸血鬼」の翼と、「鴉天狗」の飛行能力をも身につけていたのだ。

そして滑空で勢いをつけ、華扇にタックルを食らわした。更に、追撃と言わんばかりに触手のような鞭に変えた腕で、華扇を撃った。

 

「ぐうう…!」

 

その場にうずくまる華扇。

 

「なんて楽…さっきの二人に比べれば、追いつめるがなんて楽なんだ」

 

勇刃と華扇は、総合的な戦闘能力で言えば、ほとんど差は無いといえる。それを、ゲムルルが勇刃より華扇と戦う方が楽と思うのは、すなわち、ゲムルル自身が戦闘において勇刃と戦った時よりも成長してるからだと言えるだろう。先ほどまではただ殺意や怒りのままに攻撃していたゲムルルが、今や一手二手先の相手の行動を読み、敵の気の流れを敏感に察知し、自分が行える最善の攻撃を行う。

 

「はぁ…はぁ…」

 

初撃のタックルが直撃したことにより、華扇の行動選択の余地と戦う意志を大きく削いだゲムルルは有利な状況に立っていた。今もなお、ゲムルルの鞭が華扇の体力と精神力を奪い続ける。

最早、なけなしの気力を振り絞っても立ち上がる事すらできない限界に、たった数秒で追い込まれてしまった。

 

「…良いことを思いついた」

 

ゲムルルは口の端をにやりと曲げると、膝を立てる華扇の襟元を掴み上げ、剣のような刃に変化させた腕を突きつける。

 

「おい、さっきの奴と人間。その近くに居るんだろ?出て来いよ、さもないと…コイツを殺すぞ」

 

この場でゲムルルは、人質を取るという手段を考え付くまでになっていた。

 

─最初に、喰らった二発…。今考えれば、簡単な事。見えないのに攻撃が当たる、攻撃が当たるのに見えない…つまり透明なだけ!奴らの仲間に自分だけじゃなく他人も透明化できる奴、もしくは透明になれる道具か何かを所持してるって事だ。最初はこのピンク髪がそれではないかと思ったが、それが使えるなら今使っているはず。やはりあの二人のどちらか…!

 

「いいのか?本当に殺すぞ」

 

ゲムルルと華扇には認識することもできないが、そのすぐ近くに新子と勇刃は居た。

 

─どうする…!?ここは華扇を置き、すぐにでも輝針城と合流するのが筋…!しかし…

 

─彼女を置いて、行けるはずがない…!!

 

「そこに居るのなら…私はいいから、構わず…はやく仲間の元へ…!!」

 

新子と勇刃では、いくら的に姿が見えない状態でどんな攻撃を繰り出そうとも、ゲムルルを倒す術はない。つまり、このままここを去るか姿を見せるか、その二択しかないのだ。

結果…二人が取った行動は…

 

「ほう、そこに居たのか」

 

姿を見せる事であった。

 

「これでいいだろ…早く華扇から手を離せ…!」

 

「まだだ、お前がつけてるそのマントだろ?姿を隠す道具…怪しいもんな」

 

「な…!」

 

「それを外して前に置け」

 

そう言いながら、もう一本腕を生やし、その腕の刃も華扇に突きつけた。新子はマントを外し、自分の前に置いた。その瞬間、目にもとまらぬ速さで伸びた触手が、瞬時にマントを微塵に破り去った。

 

「これでよし。このピンクは解放してやる…ただし、お前らだけは殺す」

 

「何だと…」

 

「馬鹿が、これで王都に仇なす連中を逃がしてやるわけねぇだろ。残るお前らをここで排除する」

 

「テメェ、ハメたのか!?」

 

「そうだ。お前らの次にこのピンクも殺して、仲良くあの世へ送ってやる」

 

ゲムルルはゆっくりと、二人の元へ歩み寄る。

 

「…ふん、どう見ても実力は我の十分の一以下…だ」

 

怒りのエネルギーを更なる形態へ変化するために使用する術を覚えたゲムルルの頭は冴えていた。戦闘の最中に驚異的な速さで進化し、新子たちとの実力差を更に大きく引き離したはずのゲムルルが抱いていた感情は、敗者への賞賛であった。

 

「なのに、スゲェな、お前ら…」

 

彼女らがゲムルルに持つ印象から考えればおそらくこの場に最もそぐわない言葉だったことで、逆に偽りないゲムルルの本心が出たのだろうと、素直に受け入れることができた。

 

「スゲェって思ったからこそ、キッチリやらなきゃな。ケジメ…というのか?ま、全員一撃で楽にしてやるから、動くなよ?」

 

─ゲームオーバー、ね…。今のコイツになら、殺されてもいいか、って思っちゃってる…

 

「じゃあな」

 

 

「殺してはダメ」

 

 

「…!?誰だ?」

 

突然、ゲムルルの頭に響いた、明らかに自分のモノではない声。その声が聞こえた途端、ゲムルルは動く事が出来なくなった。殺せるのに、これでコイツらを始末できるのに、この声に動きを止められる。

 

─また、頭痛が酷く…

 

「…クソッ」

 

ゲムルルは腕を引っ込めると、くるりと反対側を向く。

 

「待て、殺さないのか?」

 

勇刃が問う。

 

「…殺す気も失せちまった…」

 

「だったら…もう一度勝負!!俺と闘え!!」

 

勇刃がそう叫んだのは、さっきのゲムルルの言葉に己を揺さぶられたのと、華扇を危険にさらした自分を戒めるため。

しかし、ゲムルルは…

 

「やなこった」

 

その身体を見る見るうちに巨大化させ、恐竜を思わせるような巨体な姿の竜へと自らを変じさせた。そして勇刃を跨ぎ、超える。

 

「な、待て…何処に行く気だ!?」

 

「王宮だよ。お前も一緒に来るか?我はゆっくりと行くぜ」

 

「…ッ!」

 

最早、侵入者を多く王都へ入れてしまった事で、ゲムルルは開き直っていた。これ以上王都を守っていても無意味、ならば王都の中心である王宮を、そして主である禍王を守るのが自分の役目だと。

そしてそれを最優先とするなら、この場で三人とも殺すべき。理解していながらそれを実行できない自分に怒りとは異質の苛立ちを覚えていた。

 

「もしも、次に王宮で出会った時は、いつでもいいぜ。その時は我と対等だと思ってやる。今は殺すまでもねぇ、って事だ」

 

戦いの中で敵から教わった戦いの深遠。それは乏しかったゲムルルの知性を大きく刺激し、冷えた感情は逆に物事を単純に考えられなくさせていた。

これが成長なのか、ゲムルルには分からなかった。

 

 

ゲムルルが竜に変身しゆっくりとその場から飛び去った後、新子と勇刃は華扇の元へと駆け寄った。華扇に肩を貸し、立ち上がらせようとする。

 

パァン

 

「な…」

 

しかし、華扇は新子の頬を引っ叩く。

 

「馬鹿者…私に構うなって、言ったでしょ…」

 

「無理に…決まってるだろ。アタシも勇刃も、お前が居なくなる選択をする筈がねぇ…だろ」

 

「…でもいいわ、奴は『いつでも』と言った…ならば今は追うべきじゃない。今すぐ、私たちは仲間の元へ戻って…」

 

新子の治癒の力を借りて、何とか立ち上がる華扇。自分たちは一刻も早く輝針城へ戻り、正邪やマミゾウたちと合流することが必要と考えた。

 

「無事だったようだな」

 

その時、背後から聞き覚えのある声がした。まさか、と思い振り向くと、そこに居たのは、赤い服に紫色の髪をした…そう、八坂神奈子だった。

 

「アンタ、八坂神奈子…なんで…!」

 

「詳しい事は後だけど…なぁに、私も行くべきか…と思ってね。遠距離から雷だけを落としてお前たちを援護してた」

 

二度落ちたあの雷は神奈子が降らせたものだったのか、と理解する。乾を創造する程度の能力を持つ神奈子は森羅万象の天を司る。大雨を降らせようが台風を起こそうが、果ては雷を落とすも自由自在である。

 

「どうやら、アンタらの仲間は今大変なことになってるよ。急いだ方がいい」

 

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