東方新抗禍 ~A new Fantasy destroys devious vice~   作:ねっぷう

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第27話 「アンタの遺志は受け取った」

マガノ国の支配から解放された幻想郷。しかし、再び魔の手が忍び寄るのも時間の問題だ。

本居新子、茨木華扇、そして二ッ岩マミゾウの三人は、マガノ国に囚われた人間と妖怪を救い出すため、新たなる旅へと出るのだった。

 

ついに、ダイヤサカ奪還作戦を成功させた新子たち。しかし、ダイヤサカのエネルギーを吸い取ろうとする禍王に対し、ある人物が立ち上がろうとしていた。

 

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第27話 「アンタの遺志は受け取った」

 

「敵の戦艦は大分片付いた。だが、肝心の禍王と衛星戦艦が厄介だな…」

 

「ああ、また動きを見せれば動き出しますね」

 

艦内へ戻ってきた妹紅たち。通常の戦艦や兵士たちは機能停止レベルにまで壊滅させることができたが、それでもこのダイヤサカよりも巨大なプロメテウス級の衛星戦艦に動きを封じられてしまっている。

 

「だが、このダイヤサカは今我々のものだ。先ほど、ダイヤサカは人型へ変形して見せた。あれをもう一度我々が行えれば、あんな衛星戦艦など目ではないであろう」

 

 

「くぅっ…!」

 

ダイヤサカへエネルギーを送り続ける『東の反逆者』の腕の代わりになっているメンドーサの体にも、限界が近づこうとしていた。それもそのはず、マガノ国の生物や兵士には魔力が宿っており、今新子が送っているのは霊力。魔力は霊力に弱いため、魔力で生きるメンドーサの体には負担がかかり続けていた。

 

「大丈夫か?」

 

「もう少し…」

 

新子の問いに答えるメンドーサ。しかし…

 

「ぐああ…!!」

 

その直後、メンドーサの髪が溶けるようにして千切れてしまった。彼女の”第二の顔”の口から霊力があふれ出し、苦しそうな悲鳴を上げる。

 

「もういい、少し休め…」

 

「ええ、そうさせてもらうわ…」

 

「新子、腕はもう一度作れそうか?」

 

動力室に居た神奈子がそう尋ねる。

 

「ああ、後一分くらいあれば…」

 

「ごめんなさいね、私が魔獣なばかりに」

 

「気にするな…しょうがないさ」

 

メンドーサが不甲斐なさそうに目を下へ向ける。悔しげに唸り、床に拳を叩きつける。

その時だった。メンドーサは自身の肉体に異変が訪れているのを感じ取った。身体の痛みやダメージが引いていき、自身が感じた事のない力が湧き上がってくる。

 

「こ、これは…!?」

 

「まさか、霊力に覚醒したのか?」

 

神奈子がそう判断する。

その通り、メンドーサは先ほどの新子との戦いで霊力を使用した攻撃を受けており、その影響で体内の魔力が中和されかけていた。そして、東の反逆者の一部となり輝針城へ霊力を送る伝導体となったことで、魔力は打ち消され、代わりに霊力が生成できるようになったのだ。

 

「これなら行けるわ!!」

 

メンドーサが力を込めると、一騎に霊力を放出した。すると、再び霊力ゲージが上がり、その霊力を受けて、東の反逆者の消えた腕がもう一度再生された。

 

「いいぞ、メンドーサ!アンタも立派な新レジスタンスだ!」

 

 

「霊力ゲージが上昇してる!動力室で何かあったか?」

 

「これなら好都合。”超妖怪弾頭”を発射するのだ」

 

超妖怪弾頭とは、このダイヤサカに装備されていたミサイルの事である。ダイヤサカが再び戻ってきた上で、その装備も復活し、霊力から変換された妖力を使って撃ちだすことが可能だろう。

 

「よし、発射!!」

 

バンキがモニターのボタンを押した。

すると甲板上に主砲門が出現し、螺旋王宮へ向けて座標を固定する。そして炎を吹きながら、三発の超妖怪弾頭を発射した。

弾頭は真っすぐに螺旋王宮へ向かって行く。が、しかし、それに気づいた禍王と衛星戦艦が光線を放ち、超妖怪弾頭を潰すように破壊してしまった。

 

「そんな…!」

 

「禍王が居る限り、王宮への攻撃は届かんという訳か」

 

 

「はははははは!!無駄だァアアア!!」

 

禍王が邪な笑い声をあげる。

 

 

「クソッ、ダメだったか…」

 

新子がそう呟く。機関室には妹紅、神子、聖、易者が集まっていた。

 

「聖、魔法で超妖怪弾頭の強度を強くしてくれ」

 

「分かりました!」

 

その様子を見ていたメンドーサが、意を決して言った。

 

「本居新子、私が…」

 

「おっと、それは私の仕事だぞ」

 

それを遮る、神奈子。

 

「お前が使っていた、あのロボット…アレはもともと、私が作った”ヒソウテンソク”なんだ。さっき気付いたよ」

 

神奈子は、壁際に横たわる巨大ロボットを見やる。

 

「お前さんがあれを使うよりも、私が使った方が上手く動けるぞ」

 

「特攻か…」

 

易者が呟く。

 

「そんな、死ぬのが怖くないのか?」

 

「阿呆か、お前は!!」

 

神奈子にそう言った神子に対し、大声で怒鳴りつける。神子もかつて尸解仙に成る際、死を恐怖している。

 

「死ぬのが怖いのは、人間だって神様だって同じだよ。ただ、満足して死ぬか、後悔するのか…その違いさね。もちろん私は、滅ぶなら満足して滅びたい。きっと今がその時なんだ」

 

「だったら、私たちだって…!!」

 

「いや、ダメだね。私はお前たちよりもずっとずっと長く生きてるんだ。だから…もうこれ以上見て待ってるだけってのは嫌なんだよ。それにね…本当にやりたいときってのは、理由なんて必要ないんだよ」

 

神奈子は横たわるメドゥシアナに触れる。すると、メドゥシアナは独りでに起き上がり、故障した箇所が瞬時に修復され、配色や頭部のデザインと表情が変わった。

 

「でも、神奈子…。アンタが行こうって言ったから、私たちはここに来れたんだ。アンタが闘う気になってくれなきゃあ、私たちもずっとあのくらい地底世界で、ただ怯えながら暮らしていたよ」

 

妹紅の言葉に、神子たちもうなずく。

 

「お前たち…」

 

 

 

 

約五分後、ダイヤサカの艦橋上部から、一つの巨大な塊が飛び出した。元は核熱をエネルギーとして動くのだが、200年前の第二次マガノ国襲撃においてその際に核熱ではなく搭乗者の妖力で動くように改造を施された。名を”ヒソウテンソク”といい、搭乗者は八坂神奈子。作り手である彼女の神力でにより、ヒソウテンソクは最大級の性能を引き出せていた。

 

「行くよ!」

 

ヒソウテンソクは行く手を阻む戦艦を圧倒的なパワーで破壊し、活路を開いてゆく。

 

─そうさ、アタシはずっと後悔してたんだ。妖怪の山を捨てて地底へ逃げた事、そして自分だけ戦わず妖怪たちに戦いを押し付けた事、そして、何も新子たちの力になれなかったこと…。だが、その後悔を、今こそ変えてみせる!!

 

 

「頼む…」

 

機関室のメンドーサが小さくつぶやいた。

 

 

「ぬおおおお!!」

 

右腕が巨大な御柱へと変わり、それを向けながら、王宮へと一直線に迫る。

 

「やらせるかァア!!」

 

それに気づいた禍王が、雲の目の隙間から尖った触手状のワイヤーを伸ばし、ヒソウテンソクを攻撃する。そのワイヤーを、ヒソウテンソクはなんとか避けるが、さらに襲い来る第二波のワイヤーにかすり、それを皮切りに次々とワイヤーが機体を貫通していく。

 

「くっ、ここまでか…!!」

 

直後、ヒソウテンソクは破壊され、爆発してしまった。

 

 

 

「神奈子…」

 

「犬死かよ、バカヤロウ…!!」

 

勇刃が拳を握りしめて声をあげる。

 

「待って、アレは!」

 

「あのサイズ…ヒソウテンソクの中に居た、神奈子だ!!」

 

 

 

「まぁだこの私が残ってるぜええ!!」

 

爆発の中から飛び出してきた神奈子。その腕には、ヒソウテンソクの物であった御柱が装備されている。

 

「何だと…!!」

 

「禍王、たかが二、三百年生きただけのクソガキが…支配者を気取りやがって!!私たちの、妖怪の、いや…幻想郷のドデカい怒り…存分に喰らうが良いィィイイイ!!」

 

右手に携えた御柱がさらに巨大化し、その先端が矢印状に鋭利になる。結果、そこに出現したのは長さ五百メートルを越える超巨大な御柱。その先を禍王へと向け、ドリルの如く高速回転させる。

 

「行くよ!!『リベリオン・オンバシラ』ァアアアアアアアアア!!!」

 

そのまま禍王の雲のような体へ突っ込み、貫くかのように勢いを込める。禍王の脚が甲板上から離れ、御柱の回転に巻き込まれて散っていく。

 

「ぬぎゃああああ…!!」

 

禍王を破ると同時に神奈子と御柱はなおも前方へ突き進み、そしてついに、螺旋王宮に直撃した。

 

「見ているか、お前たち…私は満足だ…」

 

言う通り、満足そうな笑みを浮かべ、神奈子は眩い光に包まれた。

 

 

 

 * * * *

 

 

 

王宮は爆発し、真っ赤な閃光を放出している。神奈子は自らの存在、命と引き換えに、ダイヤサカのエネルギーを吸い取っている螺旋王宮の破壊に成功したのだ。

 

「…見て、膨大な…とてつもなく膨大な妖力だ!!」

 

「うむ…螺旋王宮が破壊されたことにより、今まで吸い取ったエネルギーが全て妖力としてあふれ出した。当然の帰結と言える」

 

「らしいわ、新子…いけるわよ!」

 

 

 

 

「神奈子…アンタの遺志は受け取った。行くぞ皆…ダイヤサカ、変形だ」

 

「その言葉、待っていた」

 

ダイヤサカの船体に亀裂が入り、真っ二つに割れる。装甲が纏まって腕と成り、脚を形成し、前部にあった妖怪の顔面は胸部に移動した。そして艦橋が内部に引っ込み、代わりに一本角の頭部が出現する。

衛星戦艦の顔が見つめる先で変形を終えたダイヤサカが堂々と腕を組んだままその姿を現す。神奈子の意匠を取り込んだ赤と紫色のボディに、両肩に備えた巨大な矢印、胸には妖怪の顔面がはめ込まれ、背中には輪っか状の注連縄を背負い、巨大な御柱を装備している。先ほどのダイマガノの時のようなほっそりとした姿ではなく、ガッシリとした威圧感漂う姿へと変貌を遂げていた。

 

「仲間の想いをこの身に宿し、八百万の意志が全てを照らす。特大超弩級戦艦超絶形態…『新ダイヤサカ』ァアアッ!!!」

 

気迫と共に衛星戦艦の顔を睨みつける。

 

古の神(八坂神奈子)の力…見せて…やるぜぇッ…!!」

 

そう叫び、ダイヤサカの腕を伸ばし、衛星戦艦の顔に指を突っ込み、そのまま握りつぶす。戦艦の顔面は爆発するが、ダイヤサカはその爆風に曝されようともビクともしない。

 

「すっげぇ…!」

 

その時、衛星戦艦の顔がさらに凶悪になったかのように深みを増し、大きく開いた口から魔力を極太のレーザーとして放出した。戦艦自身も反動で後ろへ下がってしまうほどの威力。それを正面から受けるダイヤサカ。

更に別の衛星戦艦からは、虫のように細長い手足が伸び、周囲を飛行する戦艦や、浮かんでいた岩塊を掴み、それをダイヤサカへ向けて投げつけた。だが仁王立ちしたまま、やはりそれすらも受ける。

 

「そんなモンが…効いてたまるかよォ!!」

 

ダイヤサカは両腕を振り上げる。するとその身体から膨大な妖力が放出され、波動となって敵へ襲い掛かる。吹っ飛ばされた敵の戦艦軍が消滅し、ついに一隻残らず始末されてしまう。

 

「何だと…ッ!!」

 

その光景をただ見上げるゲムルルが声を漏らす。

 

「一気にトドメだ、行くぜ!!」

 

両肩に装備されていた矢印と、背中に背負っていた四本の御柱が合体し、超巨大な矢印を形成した。その矢印を前に向け、高速回転させながら妖力を噴射し敵へと突っ込んだ。

 

「『リベリオントリガー』アアア!!!」

 

ダイヤサカは敵衛星戦艦を貫き、さらにもう四隻の戦艦を次々と破壊した。戦艦はバラバラに砕け、爆発を起こし、その爆炎は流星群が如く王都に降り注いだ。

変形したダイヤサカの圧倒的な力によって、マガノ国軍は幻想郷へ出撃する前に、全て滅ぼされた。それほど、妖怪たちが希望を託し、八坂神奈子の意匠を取り込んだダイヤサカの真の力は強大だったのだ。

 

 

「こんな事が…」

 

もう一度雲状の体で形を取ろうとしている禍王が、信じられないと言ったような風でそう呟く。

 

「禍王様、転換計画の準備完了で御座います」

 

「…そうか。これで奴らも終わりという訳か」

 

 

 

「よし、敵は蹴散らした。後は最終目的である、囚人の救出だ。王都に居ないとなれば、工場か闘技場か…」

 

「そうだな…行くぜ、ダイヤサカ!」

 

ダイヤサカの超巨大操縦席に輝針城が座り、輝針城の巨大操縦席に『東の反逆者』が座り、それを新子が操縦する。そしてまず闘技場目指してダイヤサカを発進させようとしたその瞬間…

 

「そこまでだ。愚かな幻想郷の民共よ」

 

「ぬあッ!!」

 

その声を聞いた途端、新子の体がまるで金縛りにでも遭ったかのように硬直し動かなくなる。

 

「本来、死とは疎み、悲しむものであるのに仲間の命を懸けた犠牲を美しいと感じる。それこそが幻想郷の愚か者共の宿業だな」

 

再び新レジスタンスに、禍王の声が響き渡った。

 

「だがそれも、何度も繰り返された行為に過ぎない。見るがいい、幻想郷の”真実”を…」

 

新子の脳内に、また知らない光景が映し出される。

人間を殺し、貪り、暴虐の限りを尽くす妖怪。人に化け、ありったけの食料や金品をだまし取る妖怪。それにより人里の人間は怯えて暮らす。その生活に不満を持ち、幻想郷の存在について意義を問う人間も居たが、力ある妖怪に封殺され、闇に葬り去られる。そうして幻想郷は事実を隠蔽し、”真実”を隠し続けてきた。

その光景は、現在の妖怪が滅多に存在しない人里で生きてきた新子にとって、酷く衝撃的な物であった。

 

「これこそが幻想郷の背負う業だ。それ故に妖怪は滅ぼされ、怠惰の道を歩んでいた幻想郷は正しい有るべき姿へと変わらなければならない。そしてこの私が、それを施したのだ。近代化を嫌っていた妖怪を駆逐し、里に電気と水道を通してやったのは誰だ?新しい食文化や服を伝えたのは誰だ?この私だ」

 

「あ…あ…!」

 

「どうしたの新子、そんな念に惑わされては…」

 

「残念ながらそれは確かに真実だ、華扇。禍王は人間にとって恐怖の対象である妖怪を駆逐する代わりに、人間に新しい文化を興させたのだ」

 

正邪が華扇に対してそう言った。

その時、新子の腕の影から、赤い小さな塊が這い出してきた。細い足をせっせと動かし、腕を上ってくる。

 

「む、虫か…!!」

 

目玉のような虫が何匹もその場に現れ、払い落とそうにも金縛りで動けない新子の体を這いあがる。

 

「”転換計画”」

 

頭に響いたその言葉を聞きながら、ただ新子は自分の頭の中に虫が侵入してくる感覚を感じていた。

 

 

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