東方新抗禍 ~A new Fantasy destroys devious vice~   作:ねっぷう

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第30話 「イミテイションズゴールド」

「妖怪共の邪気に侵されて、愚かな自意識を持ってしまったようだな」

 

その場に崩れるアナトへ向けて手を伸ばそうとしていた禍王。

 

「させるか!!」

 

が、それを見ていた易者が我慢できずに飛び出し、ステージ上の禍王に飛びかかる。

 

「ここまで妖怪共が抗うというのは珍しい事例なのでな。元人間であるお前を解析できれば、一気に妖怪共を滅ぼせる鍵が見つかるかもしれない」

 

今度は、禍王から伸びた無数の触手が易者へと向かう。あまりの威圧と圧迫感に易者ももうダメかと身構えた瞬間、禍王が何かを感じ取ったように後ろを向いた。アナトと易者もそれに釣られ、禍王と同じ方向を見る。

 

「…ん?」

 

そこには、虚ろな顔で座っていた新子たちが居た。しかし、新子の体の周りに青いオーラが出現した直後、新子たちは目に輝きを取り戻し、パッと起き上がる。

 

「もう負けねぇぜ、禍王!!」

 

「新子、これを!!」

 

易者は立ち上がった新子へ向けて、手に持っていた打ち出の小槌を投げる。それを受け取った新子は、地面へ小槌を叩きつけ、こう願った。

 

「『全ての転換計画の蟲を滅ぼせ』!!」

 

新子たちの頭の中から追い出されるように這い出て来る蟲たち。それは闘技場へ集められた群衆たちも同じで、彼らは小槌が発する聖なる光と頭から出てきた直後に干からびていく蟲を交互に見ていた。

そして、禍王の前に、新子、華扇、マミゾウ、正邪、勇刃、椛、バンキ、リグル、易者、妹紅、神子、聖の十二名が立ちふさがる。

 

「馬鹿な…!お前達如きが、転換計画から脱せられる訳が無い!」

 

「舐めんじゃねぇ!」

 

新子は強く言い放つ。

 

「そんなモン、知ったこっちゃねぇんだよ。己が決めた道に禍が壁となって現れればそれさえ壊して突き進む!それがアタシ達、新レジスタンスだ!!」

 

─打ち出の小槌よ、最後の願いだ…

 

新子がもう一度小槌を振る瞬間、全員が口をそろえて叫んだ。

 

─『禍王を倒せるだけの力を与えよ』─

 

直後、『東の反逆者』を生成する新子。そしてその背後に『新博麗幻影』が出現し、有無を言わさぬ慈愛の両手でそれを包み込む。さらに姿を現した『新ダイヤサカ』が、口内にそれを格納する。

願いによって生まれた小槌から溢れ出る魔力がダイヤサカを覆い、魔力を使い果たした小槌は粉々に壊れてしまう。

しかし、小槌の最後の魔力を吸収したダイヤサカは内部の新博麗幻影、そして東の反逆者と混ざり合って融合し、さらに巨大化していく。

 

結果、闘技場の中に、超巨大な霊力の塊が出現した。その巨躯はダイヤサカのような赤と紫色のボディを持っており、通常の頭部、そして胸や肩、腕や足に計十二個の妖怪のような荒々しい顔が出現し、それぞれに新レジスタンスメンバーが搭乗している。

 

「因果も運命も突破して!」

 

「命の叫びがこの地に響く!」

 

「仲間の力をこの身に宿し…」

 

「示した道を突き進む!!『超ダイヤサカ』ァッ!!」

 

「「アタシ達を、誰だと思ってやがる!!?」」

 

 

…これは、現世とは隔離され、戦闘因果に支配された幻想の地で戦う戦士たちが、新たなる力と理想を掲げ、禍に抗う物語である。

そして今、戦士たちの前に…その禍と運命が姿を現そうとしていたのだった。

 

─────────────────────

 

 

第30話 「イミテイションズ・ゴールド」

 

「…ほう、驚いたな、ここまで来た幻想郷の民は初めてだ。まさか、道具の魔力を利用しお前たち専用の”戦闘鎧”を生み出してしまうとは」

 

『超ダイヤサカ』の体躯は妖怪の山を優に越え、その二倍以上はある。

 

 

【挿絵表示】

 

 

「いいだろう。お前たちの拠り所とするその姿と、同じ地平で戦ってやろう」

 

マガノ国の大地が割れ、その地下から超ダイヤサカと同程度に巨大な化身が姿を現す。肩から外側へ向かって伸びる翼には巨大な目玉がいくつも埋め込まれており、その翼の先端からはもう一対の長い腕が確認できる。灰色の体に、頭部には大きな角が伸び、その姿はさながら悪魔のようにも見えた。

禍王はその中に入り込むと、その化身の眼が光り、超ダイヤサカに向き直った。

 

 

【挿絵表示】

 

 

「アレは…どういうことだ?」

 

「妖怪に絶対的絶望を与える、禍王専用超巨大戦闘鎧”ベヒーモス”。これが奴の切り札だ。かつての大戦で、ダイヤサカはアレに敗れた」

 

「正邪、その身体は…!?」

 

新子が搭乗している超ダイヤサカの頭部に、モニターのような物を通じて姿を見せた正邪がそう言った。その正邪は、生前のような肉体を持っており、新子は驚いた。

 

「小槌の魔力で得た付け焼刃の肉体だが、今はお前たちと共に戦わせてくれ」

 

「心強いな」

 

ベヒーモスとダイヤサカは、同時にゆっくりと歩きだした。両者は互いににらみ合いながら、徐々に歩く速度を速め、ついには走り出す。

そして互いの顔と顔が触れる距離まで接近した瞬間、同時に拳を顔面へ喰らわせた。

両者は後ろへ吹き飛ぶが、ダイヤサカは態勢を整えると同時にベヒーモスへ蹴りを繰り出した。しかし、ベヒーモスはそれを腕で受け止め、カウンターとして殴りつけた。

 

「うお!?」

 

さらに、倒れようとするダイヤサカの脚を掴み、振り回しつつ何度も地面へ叩きつける。

 

「そんなものかァ…本居新子ォオオオオオオ!!!」

 

肩から伸びる長い腕を振りかぶり、もう一度渾身の力で殴り抜けた。ダイヤサカは勢い余って地面を転がり、例の工場にぶつかって空中へ跳ね上がる。

 

「ふははははは!!」

 

肩の目玉からレーザー光線を発射するベヒーモス。ダイヤサカはそれを避けながら、空中に浮かぶ衛星戦艦を盾にするように後ろへ隠れる。

 

「任せるのじゃ」

 

マミゾウが、ダイヤサカの生成した弓矢を手に取り、狙いを定める。スコープで敵を覗いているとき、先ほど禍王が頭部に入り込んだのを思い出し、頭部の中に居る禍王の本体目がけて矢を放った。

 

ズキュン

 

ベヒーモスの頭部は損傷し、同時に本体の禍王の顔半分を焼き払った。

 

「な…アレは!?」

 

吹き飛んだはずの禍王の顔半分は、肌色の肌を見せており、人間と同じ顔になっていた。

 

「まさか…、禍王は…」

 

「その通りだ。この私も、元はお前たちと同じ、幻想郷に住む人間だった。が、妖怪の存在が幻想郷に滅びをもたらすと気付いた私は故郷を去り人間であることを辞め、このマガノ国を作り上げた!」

 

ベヒーモスは空中に浮かんでいた岩塊を手に取り、それを手裏剣のように投げつけた。ダイヤサカも衛星戦艦を抱えるようにして移動させ、飛んでくる岩塊を防いだ。

 

「妖怪を滅ぼすために妖怪を超えた存在となったこの醜き姿こそ、私の決意の印!!」

 

「そこまでして幻想郷の妖怪に執着するのか!?」

 

椛とバンキがそう言い、ダイヤサカの右腕をカギ爪の生えたような構造へ変え、それでベヒーモスへ飛びかかる。

 

「無駄な事だ。このマガノ国は完全に私が支配している。ここでお前たちが勝つ可能性は、ゼロだ!」

 

カギ爪の攻撃をもいとも簡単に受け流し、刃状の長い腕を振り回して攻撃を加える。ダイヤサカも右腕でそれをガードし、地面に着地する。

 

「可能性は自分で決める!!」

 

勇刃はベヒーモスへ向かい、ダイヤサカの拳による乱打を浴びせた。

 

「無駄だァ!ぬうううう!!」

 

が、ダイヤサカの顎にアッパーを喰らわせ、その身体を空高く突き上げる。

 

「この程度の、真理も理解せずに、闇雲に進む!それがお前たちの姿だ!人間としてのささやかな暮らしすら妖怪に奪われ、この地の支配者となり、元は故郷だった幻想郷に住む妖怪たちと闘い続けるほどの覚悟が、紛い物であるお前たちにあるか!?」

 

そう言い放ちながら、空中でダイヤサカの腹を蹴り、そのまま落下させて地面へ激突させる。そして、そのまま動くことのできないダイヤサカの頭部に拳を叩きつけた。

 

「否ァ!否否否否否否否否…断じて、否ァア!!!」

 

成す術もないまま、劣勢のダイヤサカは、ただ殴られ続ける。そして極め付けと言わんばかりに巨大化させた拳に潰され、霊力が血のように真っ赤な液体となって噴き出した。

 

「決意も無く、覚悟もなく、道理もなく!妖怪共は歴史を都合の良いように改竄し、何も知らない人間たちを利用する!少しでも自分たちの意にそぐわない人間が現れれば、それすらも黙殺し、何ともないような顔で人間を飼い続ける!それが妖怪たちの愚かな行為であり、真実だ!!」

 

ダイヤサカの肉体を引き裂き、千切り、潰しながら痛めつけていく。霊力の血を噴出し、ボロ雑巾のようになったダイヤサカの首を掴み、顔を近づける。

 

「だからこそ、滅びなければならないのだァ!!!」

 

ダイヤサカを天に掲げるようにして上へ持ち上げ、そして思い切りバラバラに破壊した。

同程度の大きさを誇っていた両者だったが、わずかに禍王が実力を上回り、そして勝った。壊れたダイヤサカから、搭乗していた新子たちが投げ出される。

 

「幻想郷、か…」

 

ベヒーモスはゆっくりとマガノ国と幻想郷の境界面に向けて歩き出した。そして、幻想郷へ向けて、長く巨大な腕を伸ばすのだった…。

 

 

 

そのころ、人間の里では。

道を歩いていた阿富が、人々が騒がしいのに気付いた。人々の視線は、北の空を向いていた。自分も一緒になって見上げると、阿富は青ざめた。

 

「本居さん本居さん本居さーーーーん!!」

 

阿富は猛スピードで走りながら鈴奈庵に戻り、カウンターで本を読んでいた新子の母親の手を引っ張った。

 

「ちょっ…稗田さん!?どうしたっていうの?」

 

「いいからいいから、ホラ、見て!!」

 

半ば無理やりに外へ出された新子の母親は、阿富が指で指す方向を見て、ぎょっとした。

北の空に、巨大な一対の目玉が浮かんでいる。とてつもなく巨大だ。

 

「何なんだ…あの化け物は…!」

 

同じく、空を見ているツムグが驚愕の声を上げた。

 

「あそこはマガノ国…という事は、禍王か…!」

 

迪郎がそう呟く。そう言っている間にも、禍王の伸ばした巨大な手が人間の里の上空を覆い尽くし、さっと暗くなった。

 

 

「くははは…本居新子よ、お前が守ろうとする人間どもが滅ぶ様を、高みの場所から見物させてやろう」

 

ベヒーモスはダイヤサカの瓦礫の中から、東の反逆者を探り出し、自分よりも高い位置へと持ち上げた。東の反逆者は既に半壊して崩れかけであり、ぐったりとしている。

 

 

「あ…新子の『東の反逆者』が…!!」

 

ツムグが見つめる先で、いよいよベヒーモスの手が人間の里を叩き潰そうと、ゆっくりと振り下ろされる。

 

 

「最後の拠り所と成る心とやらも折れたようだな、本居新子!潔く散れ…」

 

「心が折れただと…?誰がそんな事を言った…!」

 

その時だった。高速回転する巨大なドリルが、東の反逆者を持ち上げていた腕に突き刺さった。腕ははじかれ、持っていた東の反逆者を取り落としてしまう。その前に立ちはだかったのは…。

桃色の淡い光を放つ、茨模様の服をまとった、いかつい顔をした巨人。その頭部の両サイドからは、ヤギのように巻き上がった巨大な角が生えている。

 

「その通り。新子、そして私たちの心は、決して折れたりしない」

 

─『新・茨木幻影(しんいばらぎげんえい)』─

 

茨木華扇が発現させた幻影。大きさこそベヒーモスやダイヤサカには遠く及ばないが、右手に作ったドリルを向け闘う意志を見せている。

 

「茨木華扇。お前如きが、この私に歯向かうか!?」

 

「それもその通り。私たちは禍に抗い続ける…やってみせる!うおおおお!!」

 

飛び跳ね、ベヒーモスの両腕による猛攻を潜り抜けながら、何とか敵の肩まで上り詰めた。そして、ドリルの先端を巨大な目へと突き刺した。

しかし、ベヒーモスはそれに臆することなく、細長い触手を無数に放った。触手は茨木幻影を捕らえ、再び地面へと叩き伏せる。

 

「ははははは!!紛い物共が、一斉に塵と成るがいい!!」

 

トドメと言わんばかりに、目玉の瞳から紫色をしたレーザ光線を放った。もうダメかと歯を食いしばる華扇だが、寸前でレーザー光線は消し飛ばされた。

光線は巨大な腕で遮られ、弾かれていた。真っ赤なオーラを放つ、筋肉質な巨体。額から伸びる巨大な一本角。

 

「お前の相手はこっちだ!!」

 

─『新・星熊幻影(しんほしぐまげんえい)』─

 

「下がっていてくれ、華扇!」

 

「ありがとう、勇刃!」

 

「この暗黒の地で、大切な人を守れるとはな…。感謝するよ…流転の運命に!!」

 

拳を握りしめ、パンチの連打を放つ。それに対抗して、ヘビーモスもパンチの連打で応戦する。お互いの強烈なラッシュが続き、勇刃は一歩後ろへ下がった。

 

「その程度、効かんわ…!!」

 

「どうかな!?奥義…『新三歩必殺』!!」

 

新・星熊幻影が足を踏み鳴らすと、津波と見まがうほどの妖気の波が発生する。三つの波はベヒーモスを飲み込み、ヘビーモスは腰を突いて倒れ込んでしまう。

 

ビシュン

 

次の瞬間、追い打ちをかけるように、光の筋がベヒーモスの胸部を貫いた。頭に大きな獣の耳を持ち、目の周りに隈取のある顔を向け、肩に赤い布をかけた細身な影が、巨大な弓で矢を放ったのだ。

 

「これはどうじゃろうなァ!」

 

─『新・二ッ岩幻影(しんふたついわげんえい)』─

 

マミゾウがさらに間髪入れずに何度も矢を放つ。しかし、ベヒーモスは矢の間のわずかなスキを縫って、腕を地面に突っ込んだ。腕は地面の中を掘り進みながらマミゾウの下から飛び出し、奇襲をかける。

 

「ぬぐ…ッ!」

 

すかさず、ベヒーモスは頭上に浮かんでいた岩塊を掴み、独楽のように回転させながら投げつけた。

だが、無数の”顔”が突如現れ、岩塊に噛みついた。

 

─『新・飛頭幻影(しんひとうげんえい)』─

 

胸、肩、足、腕…体中の至る所に勇ましい頭部が浮き上がった巨体。幻影を操るのは赤蛮奇。

 

「妖怪に絶対的絶望を与える戦闘鎧だって…?そんなものよりこの私の頭たちの方が…強いわ!!ふん!」

 

噛みついた岩塊を粉々に砕き、両こぶしを天へ突き上げた。

その時、背後から二つの影が飛び出した。影はベヒーモスを囲うように周囲を回転し、敵へ向けて妖力の光弾を放った。

 

「ぬうううう!!」

 

苛立ちの声を上げる禍王に向けて、影の一つが飛びかかり、腕にしがみ付いた。それにより現れたベヒーモスの急所でもある頭部へ、別の影が手に持っていた剣を突き刺した。

 

「白狼天狗、犬走椛!」

 

─『新・白狼幻影(しんはくろうげんえい)』─

 

犬の顔を持つ巨大な白狼天狗の姿をした、巨大な影。

 

「リグル・ナイトバグ…覚えておいてもらおうか!」

 

─『新・夜蛍幻影(しんやけいげんえい)』─

 

と、蟲のような眼を持った、黒い姿の幻影が地面に着地する。しかし、禍王は二人へ拳を叩きつけ、それを掴み、握りつぶそうと力を込める。

 

「小賢しいわ!」

 

だが、片方の握り拳にどこからか放たれた法力が浴びせられる。

 

「摩訶般若波羅蜜多心経…『喝』!!」

 

結果、握り拳は強制的に解かれ、中から椛が救い出される。

 

「七星剣『神霊大宇宙斬(ホーリーギャラクティカスラッシュ)』!!」

 

さらに飛んできた斬撃がもう片手の指を切断し、リグルが抜け出した。

 

─『新・命蓮幻影(しんみょうれんげんえい)』─

 

─『新・聖徳幻影(しんしょうとくげんえい)』─

 

二人を救ったのは袈裟を纏い、金と紫のグラデーションのかかった髪を持つ聖にそっくりな化身と、巨大な長剣を携えた神子にそっくりな化身だった。

 

「油断大敵、ですね」

 

「気を抜くなよ、藤原妹紅」

 

「ああ、任せておきな!」

 

さらに禍王の目の前に現れたのは、平安時代の貴族を彷彿とさせるような着物に身を包んだ藤原妹紅の化身であった。

 

─『新・藤原幻影(しんふじわらげんえい)』─

 

化身は炎で生成した翼を展開し、禍王の攻撃を避けつつ空へ舞い上がる。翼から無数の炎による弾幕を放ち、そのまま同じように弾幕を撃ち続ける仲間と合流する。

 

「おのれぇ…!無駄な事だと、言っている…ッぬぅ!?」

 

喋っている禍王とベヒーモスに攻撃を加え、態勢を大きく崩したのは、戦艦形態のダイヤサカであった。超妖怪弾頭を放ち、ベヒーモスを吹き飛ばす。

 

「はははは、喰らえい禍王!」

 

艦橋内でそう高らかに叫ぶのは易者。それだけでは無かった、ダイヤサカには、新子たちが地底の新都で知り合った蘇我屠自古、物部布都、寅丸星、雲居一輪、村紗水蜜らも搭乗していた。

 

「太子サマ!我らが推参しましたぞ!!」

 

「布都!?」

 

神子が驚きの声を上げた。

 

「私らも我慢できなくて来ちまったんだ!」

 

「貴方たち…!」

 

「塵共が、私に勝てると思っているのか!?」

 

態勢を立て直した禍王が、ダイヤサカへと手を伸ばす。

が、目の前に出現した何かが手を受け止め、それ以上力を込めても前へ腕を動かすことができない。

 

「何ィ!?」

 

目を凝らすと、腕を押さえ込んでいたのは、幻想郷の東西南北、そして中央部にそれぞれ生息する、五匹の神獣たちであった。その背には、河城にとりを筆頭とした河童とバン、更には妖怪の山のケチャルコチル兄弟までもが確認できた。神獣はこのベヒーモスに比べれば虫のように小さかったが、その力はまさに無限の如く発揮された。

 

「させはしないぞ、禍王」

 

「その通り!私だって負けてられないわ」

 

神獣たちの背後から飛び出したのは、人型へ変形した輝針城だった。それを操るのはメンドーサ。

 

「これからアンタに与えるのは蛇の試練よ!”新クリュサオル”の力、見せてあげるわ!」

 

「チイイイイ!!」

 

細長いワイヤーのような触手を放ち、クリュサオルを貫こうと襲い掛かる。が、メンドーサはその攻撃をすぐに見切ると、クリュサオルを操り、ワイヤーを掴んで見せ、直後に引き千切った。

 

「幻想郷へ手は出させるもんかァ!!」

 

その時、ベヒーモスの脚を何かが掴んだ。禍王がそちらへ目を向けると、さらに以前の十倍以上にまで巨大化した群青色の『東の反逆者』が、大きな腕で足を持ち上げようとしていた。禍王も負けじと踏ん張ろうとするが、その長い剛腕による圧倒的な力はベヒーモスをいとも簡単に持ち上げ、渾身の力で振り回す。

 

「ガンガンスマッシュ!!」

 

そのまま左右の地面に何度も叩きつけ、遠くへと投げ飛ばした。その様子を見ていた幻想郷の人里の面々は、一斉に歓声を上げた。

 

「新子…お前が居たから、我らもこうしてここまで来れた」

 

横で羽ばたいている神獣の竜であるロックが、新子にそう囁いた。

 

「そうだ、妖怪だけでは今まで同様、禍王は討てなかっただろう。だがお前の不思議な波動が、こうして絶対に混じり合う事のない異種族を結び付けたのだ。すなわち、それは…お前たちの旅は、無駄ではなかったという事だ」

 

新子たちと関わり合ってきた者たちがこの暗黒の地で、互いの種族や間柄など気にすることなく、ただ一丸となって戦いに臨んでいる。

 

「ああ、そうだな…。見たか、禍王!これがお前が嘲笑った、”紛い物達の輝き(イミテイションズゴールド)”だ!!何度でも言う、アタシ達を…誰だと思ってやがる!?」

 

 




今回は完全にグレンラガンの螺巌編をモチーフにしています。

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