蒼き鋼、深き蒼のアルペジオ-credenza- (凍結)   作:チキンブロス

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——前回のあらすじ——
梅津らはすぐさま対潜探知行動に入る。その正体は超兵器「ドレッドノート」であった。
しかし、梅津は物怖じせず多段の罠を張った。


18kt:恐れを知らぬ艦たち

梅津の作戦は既に最終段階へと差し掛かっていた。

目的はもちろん超兵器「ドレッドノート」の撃沈である。

梅津はヴィントシュトースよりドレッドノートは疑り深い性格と聞いていた。

囮の無人艦を全力で行動させ誘い込む事に成功。しかし気を抜けないのはこれからである。

「ウインド、面舵一杯をとらせろ。派手にやってくれ」

「りょーかい。面舵一杯」

「安斎、侵食弾頭ミサイル発射用意」

「まずは1発。先制で放つ」

「ドレッドノート、アクティブソナーを使用」

永田が報告。

「こっちの正体をやっと明かす気になったか」

「侵食弾頭ミサイル、発射!」

「みらい」前部のVLS(Mk.41)のハッチが開き、「ヴィルベルヴィント」に搭載されていた侵食魚雷をVLSに対応させたSUM(対潜ミサイル)が姿を見せた。

無人艦「シーハンター」が打ち続けたアクティブソナーにより位置は掴めていた。あとは侵食魚雷がパッシブ、アクティブで目標を探知する。

一筋の煙の柱が立つ。

目標付近の水面にパラシュートを開き静かに着水。

そして侵食魚雷の持つソナーで追尾を開始。

ドレッドノートは着水音を僅かに感知し停止、対魚雷防御行動を取ろうとする。しかし「シーハンター」に気を取られていた分反応が遅れる。

侵食魚雷は高速で目標へと殺到する。水柱が立つ。

「命中!」

永田が報告。しかし梅津は冷静に「いや……重力場が働いたな」

「確かに、不意打ちだったが爆発の衝撃がまだ小さい」

 

危機一髪であった。あと数秒気付くのが遅れていれば船体は消滅していただろう。

反射的にあの命知らずな船に魚雷を発射する。

 

「シーハンターに魚雷だ!感4!」

「……ご苦労だった。海の狩人」

ウインドが呟く。梅津はやるせない表情であった。

「こうなるだろうとは予測出来た……だろう」

モニターへと振り返る。

「しかし、シーハンターの置き土産を食らわせるぞ。安斎」

「了解。キャスターに諸元入力開始」

「奴は多分魚雷を発射した位置からは動かないだろうな、安心するだろう」

「そうだな。なんとか厄介な奴を倒せたとでも思っていそうだな」

「追い討ちをかけるぞ。永田、パッシブには注水音はあったな?」

「ええ、もちろんだわ」

それはシーハンターの全力航行のノイズに紛れさせて設置した魚雷であった。通常弾頭のものに加え侵食魚雷も紛れさせた。

これで「みらい」に搭載された侵食魚雷は残り2発である。

ドレッドノートから発射された魚雷は命中。

轟音が響いた。ソナー感度低下。

船の生命線とも言える竜骨は真っ二つにへし折られた無人艦は静かに海中へと姿を消して行く。

「今だ。魚雷発射!」

海底に設置した魚雷群は「みらい」からの指定された座標へと殺到した。

そこには梅津の読み通りに、安堵している巨大な潜水艦が鎮座していた。

 

馬鹿な、一体どこから?相手はこちらが油断するタイミングを知っているようだ。

しかしさっきの魚雷攻撃でキールはへし折った。脱出する間も無かっただろう。

一旦様子を見るしか無い。急速潜行。

 

「まだ飽和しないのかよ~」

安斎が落胆の声を上げた。

「馬鹿。相手はゆうに100mは超えている巨大な潜水艦なのよ。ちょっとやそっとでは飽和しないでしょ」

咲嘩部は小言口調であった。

「まだ何か策はあるんでしょう?艦長」

「そんなにプレッシャーをかけるな……まだあるさ」

「しかし、こちらも動かなければならない」

「永田、どんな微温も逃すなよ」

「……プレッシャーを受け流された」

「ヴィントシュトースにやってもらった事はあれだけでは無い――」

「はい来たー……海底で何か動いているわ」

「気付かれたかな」

「対魚雷防御用意」

「本当に魚雷か?遅いぞ」

「一気に加速するタイプかもしれん、気を抜くな」

「射出されたのが急上昇中!」

「もうすぐ海面だ」

 

勢いよく海底より発射されたそれはミサイルにも見えた。がカプセルから姿を現したのは、ミサイルでは無かった。

垂直尾翼、水平尾翼の無い、ステルス性を重視した小型の全翼の航空機であった。数は3機。

その航空機を見て岡が声を上げた。

「EQ-47C!」

「あの時の――刑部邸の事件のやつか」

「こうやって飛ばしていた訳か。やっぱり空軍機では無いな」

「くそ。視覚的に正体を明かそうっていうのか」

「24式SAM発射用意!」

「一刻も早く墜とせ!」

 

しかし他の物体をSPYは捉えた。

「上空よりミサイル接近!」

そしてそのミサイルは瞬く間に飛翔体へと命中、爆散した。

「……撃墜した?」

ウインドはっとした表情で

「特殊戦だ」

 

HUDの表示が5、4、3、2、1、0命中、となる。

「カメラにはばっちり写ったのか?」

「ああ、ばっちりだ」

統制空軍、航空戦闘軍団の特殊戦3番機はその射出された飛翔体を偵察ポッドにその姿を納めた。

「これで謎は解けたな、ブッカー」

「資料室へ行く手間が省けたよ」

戦闘偵察機「RF-3」機上でジェイムズ・ブッカー大尉は相棒の零・ミッチェル少尉に飛翔体の撃墜を命じたのだ。

これで梅津とかいう不気味な少年からの依頼はほぼ完了というわけだ。

「コピーしたのかな、あれ」

「やはり既存の航空機にする事によって内部の分裂を図ったのか?」

「あんたの読み通りだと思うな」

「このデータは情報局の連中が血眼になってよこせと言うだろうな」

帰投してから面倒なレポートを仕上げなければならないだろう。

「まだ任務は完了では無い」

「引き続き超兵器の動きに警戒しろ」

 

「特殊戦といえば無情というのが噂だったのだが」

「どちらにせよこれはありがたい」

「早く動きましょう」

「ああ」

もう梅津の仕掛けた第3の罠にかかっていることをドレッドノートは知る由も無かった。

しかしこれからの行動次第でこの艦の命運は左右される。

こちらには重力場、クラインフィールドも装備していないイージス艦である。1発でも被弾したら即あの世行きなのである。

梅津には大きなプレッシャーとなる。

「ドレッドノート、見失った」

「だがポイントには十分近づいている。あとはこちらが動くだけだ」

「ドレッドノートの鼻を明かすぞ――両舷前進微速、舵そのまま」

「両舷前進微速、舵そのまま、ようそろ」

岡が復唱し、「みらい」は静かにその地点へと進む。

毎時約3ノットという低速のためその地点に近いようで遠く見える。しかし急いでしまうとドレッドノートに探知される恐れがあるので急ぎたくても急げない状況であった。

 

「魚雷航行音!感2!」永田が叫ぶ。

行程の内の3分の2を過ぎたあたりであった。

「両舷前進最大戦速!」

同じく梅津も反射的に声を張り上げる。

「両舷前進最大戦速」

「マスカー作動。魚雷ジャマー、デコイ投射!」

「遠くに投げろ!」

マスカーで艦の騒音が掻き消されるのを期待する。

「ジャマー、デコイ、投射!」

安斎が素早い手つきでパネルを操作、対魚雷防御に入る。

「魚雷、なおも接近。命中まであと8秒!」

あとはどうかうまくデコイに当たってくれと祈るだけである。

咲嘩部は手を合わせていた。嫌な汗が流れる。

「魚雷、進路変更!デコイへと向かっていくわ!」

爆裂音、そして水柱がたつ。

「やったか?」

梅津が確認を急がせる。

「ああ、ヤバいヤバい!」

ちらりとモニターを覗いた咲嘩部が言った。

水柱がたったのは1本のみであった。つまりもう1発はデコイに惑わされずに本命に向かっていたのである。

「命中まであと10秒!」しかし少しは惑わされたので少しだけ余裕があった。しかし10秒である。

「主砲、CIWS、魚雷あらゆる火器を水面に撃て。フレアもだ」

「はいよ!魚雷、着水2秒後に自爆させる」

「任せた。合図で撃て」

「命中まであと6、5秒!」

「――今だ撃て!撃て!」

安斎はトリガーを引いた。

主砲、CIWS、魚雷、さらにはミサイル回避用のフレアも作動。

「みらい」に装備されたあらゆる火器が一斉に作動した。

魚雷発射管(68式3連装短魚雷発射管)から発射された短魚雷は着水してから2秒後に自爆。

短魚雷の原子力潜水艦をも破壊する成形炸薬弾頭(HEAT弾)が炸裂、横殴りの衝撃が襲った。

「うわっ」永田が椅子から転げ落ちた。

素早くヴィントシュトースが起こす。

「大丈夫か?」

「即席の座席は良く無かったわ」

「全くだ……ヘッドフォンを早くつけろよ」

魚雷は完全に撹乱され、本命の目標を見失う。

そして自爆。「みらい」は水浸しになった。

「回避成功!」

「はぁ~」

梅津も思わずため息をついた。

 

「本番はここからだ。咲嘩部、モニターに映してくれ」

そこには複数の船があった。

先日の海戦で犠牲になった船であるが、まだ完全に沈んではいなかった。

「今回はそれを利用させてもらった」

「どう?」

「見れば分かるさ」

そのモニターには「みらい」が複数存在した。

 

再び姿を消したイージス艦、だが見つけるのは簡単――の筈であった。

超底周波アクティブソナー作動。

そこには目標のイージス艦が5つ存在した。

どれも大きさは同じであった。

 

「これは苦労したわ」

ヴィントシュトースがモニターを見ながら言った。

「なるほど、全部デコイにしてしまおう。という訳か」

「利用出来るものは最大限利用させてもらう」

「シーハンターしかり、沈没船しかり」

安斎がニヤついて呟いた。

「しかしこちらの侵食魚雷は残り2発か」

「問題は無い」

「!ドレッドノート、アクティブソナー使用――ダメ、場所がぼんやりしている」

「よし、『全艦』アクティブソナー作動」

「え?どういう事?」

「ヴィントシュトースにはここにある船に即席のソナーを設置してもらった。精度は低めだが」

一同、唖然とした顔になる。

「り……了解。アクティブソナー打ちます」

SMCにピコォンと響いた。

「これでどれが本物かは分かるまい」

「補足したわ」

「では『全艦』魚雷発射」

「まさか魚雷発射管も……」

「フフン、その通りさ」

「ありったけ叩き込め」

「フルファイア!」

各艦からは通常弾頭魚雷が、みらいからもありったけのSUMを発射した。

もちろんその中には侵食魚雷も含まれていた。

「ドレッドノート、対魚雷防御行動に入ったわ」

「囮の魚雷がわんさかいるからな」

数発は迎撃される。

しかし迎撃されると同時に大音響を出した。

「これで敵艦のソナー感度は低下したな」

「衝撃に備えろ」

数本の魚雷がドレッドノートに到達。

侵食魚雷が防御重力場に食らいついた。

エネルギー流動が追いつかず、飽和。

そこに後発の通常弾頭魚雷が次々に命中する。

盾を破られたドレッドノートになす術は無かった。

「ビンゴ!」

「ここまで食らえば――」

 

「ドレッドノート、急速浮上!」

「ジグザグ航行しろ!」

そして水面より巨大な潜水艦が姿を現した。

その姿はまさに「恐れを知らぬ者(Dreadnought)」であった。主砲らしきものがこちらを向いている。

「まさか潜水艦なのに格闘戦を仕掛けるつもりか……?」

安斎はすっかり腰を抜かしてしまった。

「ECM作動!」

「さらにミサイル接近!」

「全自動モードで対処だ――ウインド、力を貸してくれ」

「りょーかい。同調開始」

「主砲、17式!火器をぶち込め、ピンポイント攻撃だ!」

迫り来るミサイルをCIWSで撃ち落とす。さらには主砲で盾を失い丸裸となった潜水艦に砲撃を加える。

ビームが艦橋右をかすった。ECMが無ければあの世行きだっただろう。

遅れて、中央の発射管から17式SSMが放たれた。

2つの船が戦うその姿はタイマン(1対1)での殴り合いであった。




——設定関連——
9話から暗躍していた「宮戸」という人物のモデルは鬼頭莫宏先生作「なるたる」に登場する「宮子巽」がモデルです。ちなみに彼はこの後の話にも絡ませていくつもりです
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