蒼き鋼、深き蒼のアルペジオ-credenza- (凍結) 作:チキンブロス
テロ組織、「2BFN」は主戦力は潜水艦であったが弾道ミサイルを有していた。梅津らは迎撃に向かうが、最中に梅津は些細な事で苦悩する。例え核ミサイルが迫っていても。
「外れただと!」
「目標はどうなっている!」
「
「地上の迎撃はアテにならないか……。SM-6、発射用意!」
「みょうこう」「ときつかぜ」は諸元入力にかかる。しかし突然モニターが乱れ、奇妙な文様が表示された。
「何だ!どうした!」
「システムに何者かが割り込みをかけています!こちらからの操作を受け付けません!」
「これは……」
「目標を仕留め損なった穴埋めのつもりか……?」
「2艦を私の指揮下におく。システムに割り込む」
「……諸元入力完了」
「……梅津?」
梅津は自身の虚飾に気が付いていた。そして衝撃を受けている。しかしウインドの声で我に返ったふりをし、声を上げる。
「あ、ああ。撃て!」
VLSから迎撃ミサイル、SM-6が発射された。
続いて少し間を置き、第2射が発射された。
ターゲットデルタは「みらい」に配分されていた目標である。
SM-6には主に艦隊防空ミサイルとして用いられるが、対艦攻撃にもそのまま転用可能であり派生型では弾道弾迎撃型も存在する。
弾道ミサイルの主な迎撃は大気圏外を飛行する
中間段階ではイージス艦によるSM-3を用いての迎撃や地上から発射される
そして、SM-6は終末段階での迎撃に用いられる。迎撃の過程としては
SM-6とTHAADの違いとしてはTHAADミサイルが弾道弾の迎撃が可能なのは大気圏外のみである。SM-6は大気圏内ギリギリでの迎撃となる。
しかし、性格的にはTHAADミサイルとは大差は無い。
合計4発のSM-6が発射され、THAADミサイルと同様の飛行経路を取った。
固体ロケットブースターが点火一気にマッハ5程度まで加速、船からは白い白煙のみが伸びていった。
「目標、中間軌道を通過!」
北良寛議員の職と引き換えの陸軍の作戦は電撃的に発動された為、各軍とも小さな混乱状態に陥っていた。空軍のPAC-3は射程不足もあって頼りには出来なかった。つまりSM-6が最後の賭けとなる。
やがて固体ロケットブースターを切り離し、弾頭の赤外線画像シーカーで目標を捜索する。
そしてスラスターで自身の位置を調整しつつ目標に直撃し撃破する。
という手はずであった。
「第1射、外れた!」
「くっ……」
梅津は焦りを覚えた。いつもの感覚とは異なったものだ。レストを掴む手が汗ばむ。嫌な汗が流れるのを感じた。
「第2射命中まで10秒!」
「……マークインターセプト!」
「やったか!?」
「目標、撃破……」
そう声を上げた途端、ウインドの姿が梅津の位置から消えた。
倒れる音が響いた。
「なっ……」
梅津は目を見開く。そこにはいつも梅津のシートの横に寄り添うように立っていたヴィルベルヴィント――ウインドが倒れた。
物思いに浸っていた分体の動きが鈍る。一番先に側に寄り、声を掛けられる時間が経った。
最初に動いたのは安斎であった。抱き上げ、肩を揺する。
「おい!しっかりしろ!」
普段は楽天家で無神経、捻くれていたが本当の性格はこんな時に表面に出るものだ。
遅れて梅津が駆け寄る。本来ならば一番先に駆け寄らなくてはならないのに。
(ウインド、大丈夫か!)
そう声を上げるつもりだったが何故か声が出なかった。喉が乾燥しきって干からびたかのように。
そして、こんな言葉が出た。
「本艦は深刻な問題が発生した為緊急帰港する!僚艦にはそう伝えてくれ!」
やはり口から出たのは事務的な事柄に関するものであった。
岡も駆け寄っていたが、梅津の指示を受けて直ぐに持ち場に戻り、操舵輪を握る。
「やはり……耐えられなかったか……」
「フン、機械か何かのように言っていやがる」
安斎が悪態をついたが反論は出来なかった。ただバツが悪い顔でうつむくしか今の梅津には出来なかった。
何とか梅津はその場を取り繕いウインドをベッドに運んだ。
その際、岡には小声で帰港するように伝えた。
そして「みらい」は通常通りの手順で特秘ドックへと入港した。
ハンガーアームに接続、排水、そして着床した。
ずらりの艦が並ぶ様は壮観である。ここには第1艦隊の第1、6水上戦隊の他新設された第5、7艦隊もここを定係港としている。
なお、「みらい」は特務艦隊であるので特に定係港は定まっていない。
飛びように姉である「ヴィントシュトース」が現れた。実際飛ぶような勢いのジャンプをして艦を飛び移っていたが。
「全く、無茶してくれたわね」
「大それで……丈夫なのか?」
「なんとかはなるわ。でも処理能力を限界まで使ってしまったようね。私に妙なデータが流れ込んで来ていたわ」
「それって姉妹艦だからか?」
安斎が指差して言った。
「そう!その通りよ。勝手にデータリンクされたからね」
ヴィントシュトースはウインドに手をかざし、何かを呟いた。機械的なもののようだったが聞き取れなかった。するとウインドの身体が脆く、崩れ銀砂と化した。
その中に円形状の「コア」が埋もれていた。
ヴィントシュトースはそれを拾い上げ、また艦を飛び移って行き奥へと消えた。
ジャンプをする直前、ヴィントシュトースは梅津に忠告するかのように言った。
「あたしたちゃ紛い物なんだから……その辺、分かってよ?」
「……」
答えようが無かった。
「……今日はもう帰っていいぞ。後の事は俺が――」
「相変わらずね、梅津クン」
突然の声にメンバーが驚く。しかし梅津は満更でも無い様子だった。
「黒田先生……何故ここに?」
その人物は比較的ラフに白衣を着こなしていた。徽章は戦略軍のものであったが。
側には渡瀬の姿もあった。
梅津は敬礼。しかし普段のぞんざいなものでは無かった。一同はさらに戸惑う。
続いてメンバーが敬礼の動作に入ったがその人物は手で制し、「いいよいいよ。そんなかったるいコトしなくて」と言った。
「……言っていなかったな。この人は
また、特殊作戦コマンドの司令は各艦隊を束ねる連合艦隊の司令官が兼ねている。
「自己紹介代理どうも。まあ梅津クンが言った通りよ。こんなナリだけどね」
梅津は続けた。
「あと、最初は学院の講師であったが航空開発実験軍団に腕を買われた後に戦略軍の情報局、そして海軍の情報軍団と転々としていた人だ。この白衣は実験軍団からのものだ」
呟くような声であったがしっかりと聞こえていた。
そして、メンバーが梅津の異様なまでの経歴の詳しさに引いていたが安斎は平気な顔であった。
そしてさらに安斎が補足をする。
「まあ、この人は梅津の恩師的な人だからな」
ようやく納得した顔になった。
「皆私の才能を欲しがっているからね」
「それで黒田先生、何故ここに?」
すると黒田は真顔になって言い放った。
「緊急性の高い案件がある。これには合衆国全軍の命運が掛かっていると言っても過言では無い」
突然の発言に梅津は立ち竦む。
(合衆国全軍の命運?一体……?)
「ここじゃアレだからいつものブリーフィングルームに来なさい」
「は、はい……」
心に付いている枷がまた一つ増えたように感じた。
ブリーフィングルームに入るや否や梅津以外は全員外に追い出された。
「本題の前に……2つ程話しておくわ」
「はあ」
「梅津クン。また変な状態に陥っているでしょう」
「自分の中で何か渦巻いてつまづいたような感じがするわ」
「仰る通りですよ……」
「全く、前にもあったわね……今みたいな事……」
学院時代の、思い出したくも無い記憶である。あれは自分の中での最大級の汚点でもあった。
「この特務艦隊は1人でも欠けると機能しなくなってしまう。これを危惧していたのは良いけれど……そう偉そうぶる必要は無いと思うわ」
「超兵器相手に喧嘩するなんて並の軍人には出来っこ無いわ。恐れを知っているからね。あなたはまだ若い。もっとシャキっとしなさい」
「そんな状態を続けているといずれ身の破滅を招くわよ。梅津特務中尉。心のエンジンは掛かっている筈よ」
梅津は自問自答を止めた
「これからは軍人としてでは無く、チームの一員として行動しますよ」
「シンプルね……そう思うならそうしなさい。私はどうこうしろとは言わないからね」
「フフ……そう言われると安心しますよ」
顔を上げた。
「やっぱりその目が梅津クンらしいわ」
変な上官だ。しかしいい意味である。
「航路は
「もう一つ、話しておく事は――」
「咲嘩部さん、いるよね」
「どうかしましたか?」
黒田は視線を窓へとやった。
煙草を燻らせた。
「彼女、下の名前で呼ばれるのを極端に嫌がるでしょ」
確かにそうであった。この元教師は何でもお見通しのようである。
「秕――中身の無い実、実ることの無い実。ネガティブな名前でしょう」
「確かにそうですよね」
「あの子との関係に一癖あってね……」
「……」
「あの子に名前の意味を教える前に引き離されたのよ。生まれてすぐにね」
学院に勤める事は軍ともある程度関わる事を意味する。だから相手方から話を切り出され、それに応じた。
その後、相手方が再婚寸前に黒田は身籠り、再婚後に引き渡した。
「秕という名前はあの人への嫌がらせというか……まあそれもあったけど本当の意味は――中身の無い実、実ることの無い実。これはこうも解釈できる」
「私から離れて欲しく無い。ずっと一緒にいたいって思いも込めたのよ」
「もうこれ以上何処にもいって欲しく無いって意味もあるけどね」
「女性って怖いですね」
「全てを悟ったかのような言い方ね」
「まあ、それは昔からだけど」
梅津はこのチームのメンバー1人1人がはぐれ者ばかりのただの寄せ集めでは無い事を確信した。
そして、これはまだ軍の上層部は完全な厭戦気分には染まっていない事の証明でもある。
また、黒田が今回の異動で副司令に着いたのも、やはり娘と近くに居たいからであろう。
「ホント、俺はこのチームへの配属は目に見える左遷だと思っていましたが……大分違うようですね」
「あなたが仕組んでいたんですか?」
「フ……その通りよ。情報局と軍のコネは役に立ったわ」
「だからあなた達が無茶をしてもそのコネを活かせるから、心配は無用よ」
「さて……本題に入るわ。ここからは一軍人として言うからね」
梅津は微笑した。
「まず合衆国全軍の命運がなんたらというのは……」
「超兵器が合衆国に向かっているわ。航空機型のね。低速だけどあと1週間もすればワシントンを爆撃できるわ」
「……」
「まあ簡単に言うとアメリカは『
「成る程」
では、と続けて梅津が言った。
「レーザー兵器を全力で使用するように。レーザー兵器は極めて効果があります。……と伝えて下さい。あの国はレーザー兵器の航空機への搭載に成功している筈です」
「簡潔的ね。でも簡潔的な程あの国は動いてくれるし、それに情報を盗まれる危険性も無いと思うわ」
「レーザー兵器は自衛用の微弱なものなら合衆国空軍の切り札。『F-38 ストラマ』に搭載されているわ。あと強力なものは『B-52』を母体とした『AL-2、AL-3』が配備されている」
「それらを投入するように。と伝えて下さい」
梅津は去り際に呟いた。
「タバコ、止めた方が良いですよ」
扉の向こうには仲間がいつもと変わらず、待っている筈だ。
《超兵器に対してはレーザー兵器が極めて有効である。貴軍の健闘を祈る。Good Luck》
そして、3日後ウィルキア帝国からのメッセージがアメリカに発せられる。
そのメッセージから、超兵器の名称は「
米軍は近年に無い全軍を挙げた大規模な作戦、「Operation Fossil excavation《化石発掘作戦》」を発動。
米軍はカリフォルニア沖で迎撃態勢に入った。