蒼き鋼、深き蒼のアルペジオ-credenza- (凍結)   作:チキンブロス

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——前回のあらすじ——
弾道ミサイルの迎撃には成功する。しかし梅津は苦悩し続けていた。「ヴィルベルヴィント」に非情に接してしまったからである。しかしそんな梅津に懐かしい人物が喝を入れた。


22kt:始祖鳥の嘴爪

《HQよりチャグレーザー、ストライクレーザー、アウルレーザーへ》

《敵スーパーウエポン(超兵器)のバリアーはレーザーが極めて有効である》

《レーザー攻撃で先鞭をつけ、バリアーを無効化。そして通常火力でケリを付ける》

《合衆国の誇りを今ここで取り戻すのだ。健闘を祈る》

 

超兵器「アルケオプテリクス」は依然アメリカに向けて飛行を続けていた。その姿は偵察衛星ですらはっきりと確認された。

その姿は全長200mを超え、ガル翼が特徴的な巨大な航空機である。ステルス性は無いと推測された。

無論途轍もなく巨大であるので直ぐに警戒機に捉われた。

米軍は本土防衛作戦として「Operation Fossil excavation(化石発掘作戦)」を立案。本土防衛を担当するアメリカ北方軍を中心とし、ピーターソン空軍基地を司令部とし、カリフォルニア沖での迎撃となった。

なお米統合軍はアメリカ北方軍が本土防衛を担当となっているが、北方軍というのはあくまで形式的なものであり、現状では霧の艦隊により制空権及び制海権の確保が困難となった為殆どの戦力が米国本土に集結している。

その為形式上では、アメリカ中央軍をはじめ他国に展開していた統合軍は名前だけの存在となっている。

 

《照射用意。最大出力且つ稼働限界まで照射だ》

B-52を母体としたAL-2の兵装扉が開き、レンズ状の照射装置が姿を現した。

《敵超兵器は依然平均320ktで飛行中。2時間後に本土に到達します》

《航空機、攻撃準備完了》

《了解。Operation Fossil excavation、フェーズ1を開始せよ》

《攻撃開始》

 

「確かに効果はあるようだな」

無人偵察機からの映像をホワイトハウスで見守っていた大統領が呟いた。

やはり防御重力場によってレーザーは拡散、減衰されていたが超兵器の速度は確実に低下していた。

「レーザー照射第二波いきます」

大統領の傍に座っていた国防長官が言った。

防御重力場さえ無効化できればただの馬鹿でかい飛行機である。

 

超兵器もやられっぱなしでは無い。

《超兵器から何か射出されたぞ!》

《ミサイルか?まずいぞ、一番先にやられる》

《照射が終わるまであとどれ位だ?》

パイロットが叫ぶ。

《たった今だ!》

レーザー照射の終了と共に即座に機体を反転、一路帰投していった。

「ミサイルの回避の完了と同時にフェーズ2へと移行します」

 

超兵器からのミサイルの発射と同時に電子戦機がECMをかける。またAL-1からも妨害を仕掛けた。

しかしミサイルは猛然と突き進んだ。

《チャフ放出!壁を作れ!》

機体後部から金属片を一斉にばら撒く、ミサイルが発しているレーダーが掻き乱され、「壁」にぶつかり自爆した。

 

《こちらHQ、作戦がフェーズ2へと移行された。交戦を許可する》

《レーダー・コンタクト。全機攻撃を開始せよ》

既に、基地を離陸し滞空中の戦闘機が一斉に超兵器へと向かった。

そして今度は超兵器に向かい、大量のミサイルが向かう。

 

「やはり旧型機はミサイルキャリアーにするのが良いですな」

大統領が指していたのは、それは16発もの空対空ミサイルの搭載を可能にした、F-15MCを指していた。

「確かに。これで如何に有効かは照明出来る筈だ」

 

《超兵器からまた何かが射出されました!》

《こちらAWACS。飛翔体を4つ確認。あれは……》

巨大な機体から発射されたそれは一直線に天へと伸びていた。

大統領の談笑が一瞬で止まった。

「まさか……弾道ミサイルか!?」

「どうやら、そのようですね」

閣僚の顔が青くなる。

そのミサイルは一定の飛行ルートを飛翔し、炸裂する。

《何だ……?空が……》

モニターの映像が途絶えた。

「偵察機、撃墜されました!」

そして、空には無数の黒煙が上がっていた。

「何が起きた!?」

 

《バカな……信じられん。超兵器に向かっていたミサイルが全て撃墜されたぞ!》

《一体どうやったって言うんだ!》

それだけでは無い、ミサイルの中間誘導の為前面に押し立てていたF-22(ラプター)F-38(ストラマ)を始めとするステルス機や電子戦機までも叩き落とされた。

 

ピーターソン空軍基地のモニターの映像が復活する。

そこには平然と飛行する超兵器が映っていた。

また、周辺の雲は超兵器を中心に綺麗に無くなっていた。

「あれは……周辺空域の雲の様子から見て、サーモバリック爆弾の爆発と酷似しています」

「つまり衝撃波弾道ミサイルと言うべきか」

「バリアーの次は弾道ミサイルか。厄介だな」

「しかし、超兵器のかなり近くを飛行していた偵察機が撃墜されたという事は超兵器自身もそれなりの衝撃を食らった筈です」

「ミサイルを肉薄させて、自爆を狙うという作戦が有効ですが――」

発言の途中で奥にいた男が遮った。

「いえ、その前に航空機が叩き落とされます。よって作戦をフェーズ3へと移行させ海上からの攻撃に切り替えさせます」

「そうだな。例えミサイルを近付けても『元の木阿弥』になってしまうな」

「海上戦力も霧の艦隊にやられる可能性があるだろう」

「周辺海域には現在霧の艦艇は確認されていません。また電磁砲の射程は300km超です。船を沖に出さなくとも十分狙えます」

「またその間には無人機、生き残った航空機の陽動をかけます」

「待て、陽動は危険過ぎる。それに――」

「しかし今は耐えるしかありません。既に犠牲無き勝利というのは幻想になりました」

その男は終始冷静な口調で言った。

「とにかく、ホワイトハウスに連絡を」

「……分かりました」

去り際にその男の制服をまじまじと見た。

「国家海洋戦略局だって?全く……」

大海戦以来軍上層部は海主陸従の姿勢をとっているが、帝国の事案は頭には無さそうだ。

 

ホワイトハウスのモニターも復活する。

電話を終えた国防長官があの「衝撃波弾道ミサイル」の説明を行なった。

「――しかし、地表付近では大きく威力が減衰されると思われます。その証拠に、艦船から発射された迎撃ミサイルは撃墜されていません」

「そこで作戦を繰り上げ、海上からの直接火力の投射を行います。現在ズムウォルト級駆逐艦が急行しています」

無論、その駆逐艦には兼ねてより搭載が予定されていた電磁砲が搭載されていた。

「帝国に我が合衆国の力を見せ付ける良い機会になるだろう」

 

そして、電磁砲による長距離射撃が開始された――

 

 

 

「――超大国の誇りここに現れたり。ね」

「変な日本語だな」

「とにかくアメリカは超兵器アルケオプテリクスの迎撃に成功したわ」

作戦は、ヴィントシュトースが偵察機の映像を中継していた。

超兵器「アルケオプテリクス」の紅の腹部が見事に撃ち抜かれていた。

「これで一段落つきましたね」

「ああ、アメリカも及び腰だったアラスカ半島奪還にも目を向けるようになるだろう」

間も無く黒田が部屋に現れ、正式にアメリカが勝利した事を伝えた。

また黒田に続き2人の人物も入った。どうやら空軍の人物のようである。

「ブッカー大尉」

「ウメヅ君。元気でやってるか?」

相棒の零・ミッチェルは部屋に入るなりモニターに見やった。

「ほう。俺の祖国が何とか勝利か」

「知らされてないんですか?」

梅津が尋ねる。

「情報軍、いや特殊戦だから情報局のおかげでね。それが正しいものかを二重にチェックしているからな。二度手間さ」

「するとこの映像は……」

零は今度は2人の少女に見やる。

「彼女がメンタルモデル?」

「ええ。如何にもです」

梅津は訝しむ表情を見せるのを予想した。恐らく誰もがそんな表情をとるであろう。未知との遭遇と言っても良いのだから。

しかし、零は手を差し伸べ握手をした。

「君がメンタルモデルのヴィルベルヴィントか。それでこっちはヴィントシュトースか。なるほど姉妹艦だけあってそっくりだ」

「お互い陽に当たらない者同士上手くやろうぜ」

素朴な感想に梅津は内心驚いた。やはり特殊戦だからであろう。

「さて、本題に移ろうか」

ブッカーが咳払いをする。

「ええと、まず第一に……君らが依頼したやつの調査結果といこうか」

「君らも十分目撃したと思うが、あの正体不明の無人機はやはりあの超兵器潜水艦から射出されたものだ。映像、見るか?」

「いえ、結構です」

「多分内部分裂を誘うつもりだったんだろうな。刑部邸の時は」

するとヴィルベルヴィント――ウインドも身を乗り出した。

「刑部邸の時の無人機は探ってみたけれど識別番号などはそっくり空軍のものだったわ」

「そう、そして超兵器から射出されたやつも識別番号は空軍のものだった」

岡が発言する。

「空軍のそういうのは厳重に守られている筈ですが……」

「出来て間も無い超兵器がそこまで探りを入れるのは恐らく無理だ」

ウインドが断言する。

「とにかく、ドレッドノートに連絡を取ってくれ」

「分かった」

ウインドは「概念通信」を用いて連絡を取る。まだドレッドノートは横須賀からは出ていなかった。

 

『話は全て拝聴させてもらっている』

『じゃあ教えて頂戴』

『お前たちの方でそこまで話が進んでいるならわかる筈だ。――そう、内通者がいるという事だ』

『……』

『それに大きな声では言えんが、私もここ数日狙われている気がする。用心するべきだ』

『分かった……ありがとう』

『礼には及ばん』

 

「という訳だ」

「その事、特殊戦の副司令に伝えたわよね」

黒田が問うた。

「勿論だ」

「あのしわしわ婆さんなら言わなくても探ってくるよ」

「しかしこれはかなり重要な情報だな」

「陸軍内にいるなんて短絡的な考えでは……無いでしょうね」

黒田が笑みを浮かべた。

しかし安斎は図星だったようである。

「でも現実問題で陸軍内に親帝国派はいるんだぜ」

「バカ。何の為の情報部よ」

咲嘩部が窘めた。

「とにかく俺たちも用心するべきだな」

「そう思うと安全な場所ってどこだろう?」

「学院内、もしくは横須賀要塞港だ」

「特殊戦の居住スペースも空いているぜ。まあ戦略軍の傘下だからな」

「とにかく各々注意するように。以上、解散」

 

 

「全く……君たちを派遣した理由が分からんよ」

声だけであったがあのしかめっ面は想像がつく。

「御心配無く。既に次のプランは編んでおります」

「フン。超兵器を寄越せったってそうはいかんぞ」

「あと2BFNもだ」

「彼等は当てになんかしていませんよ」

「SLBMの件、忘れていませんよね」

「確かに、それは彼等を制御できなかったこちらの不手際だな」

「私が直接動きましょうか?」

「うーむ」

しばし相手は黙考した。

「それが良い」

「今までの失態、忘れていないよな」

「フフン。今度は大丈夫ですよ……」

「やり方は相当手荒いですがね」

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