蒼き鋼、深き蒼のアルペジオ-credenza- (凍結)   作:チキンブロス

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——前回のあらすじ——
「霧」から送られた刺客の力は強大であった。メンタルモデル「ヴィルベルヴィント」の実力を軽んじ梅津たちを「ガキ」と評したものに梅津は怒りを覚える。しかし逆にそれは梅津の闘志に火をつけ、単艦での特攻を試みる。自殺行為としか言いようが無いその行動にヴィルベルヴィント、そして梅津たちの力は示されるのか。


6kt:会敵

「状況は?」

統制軍横須賀第二海・空指揮所では状況報告がこと細やかに行われていた。

「依然、防護壁内では401、白鯨が大戦艦2隻に対して奮闘を続けています」

「なお防護壁外では現在複数の霧の艦艇が封鎖を行っています」

「外の船に必殺の兵器とやらを持った船が現れたようだが」

「はい、ですが乗っているのは…」

「分かっている。子供と先日鹵獲された超兵器のメンタルモデルだな」

「はい……」

すると指揮官らしき男は小さな声で

「時代は変わったものだ……今の子供達が世界の命運を握っている状況になってしまったな…401といいみらいといい…」

「はぁ…」

側にいた若いオペレーターはその言葉の真意は理解出来なかった。

「……!」

「防護壁外の霧の艦隊、モニターから消えました!」

「何?」

「一体どういう事だ!」

指揮所内は二度喧騒に包まれた。

「新たな反応、重巡洋艦1隻と推測されます!」

「1隻に守りを変えさせたのか?」

「衛星『オオトリ』からの画像、来ました!」

表示された画像には確かに重巡洋艦クラスの蒼い船が写っていた。

「蒼い船…?」

「データベース照合中」

「該当の艦はありません!」

そう報告したオペレーターのモニターには確かに一致する艦が無い事を示す「No Matching」とあった。

「もしや……」

指揮官は霧の艦隊に次ぐ第二の勢力を思い浮かべた。

「超兵器か?」

 

一方、壁外の艦隊もその変化を察知した。

「超兵器に守りを変わらせたのか?」

「ウインド、あの超兵器は?」

「…『超高速巡洋艦ヴィントシュトース』25.4cm主砲、魚雷発射管及びミサイルなどを装備、最大速力70lt」

「70kt?」

「それと、『防御重力場』を装備している」

「何だそれは?」

「クラインフィールドのようなもの、ただしレーザー兵器は防げない」

「なるほど」

「あの超兵器のデータを白鯨に送れ」

「了解」

しばらくして白鯨から通信が入った。

『貴重な情報、感謝する』

続いて艦隊全体に向けて通信で

『本艦隊はこれよりミサイルによる飽和攻撃を仕掛ける』

『なお敵超兵器にはLaWS(Laser Weapon System (レーザー兵器システム))が有効だが射程不足の為ミサイル攻撃で引きつける』

『ま、君達は突っ込んでいくなど無謀な事は慎みじっくり見物していてくれ』

『よし、全艦対艦ミサイル発射!』

そう言うと各艦からは白い硝煙と共にミサイルが放たれた。

水面からも硝煙が上がった。恐らくバージニア級に搭載されている水中発射型のハープーンミサイル(UGM-84D)だろう。

また、その中にも一際空中へ煙の柱を上げている艦があった。

DDA-903 きたかみ型ミサイル艦3番艦「きそ」であった。

DDAのAとはかつてアメリカで計画されていた「アーセナルシップ」のアーセナルの頭文字を取ったものである。「アーセナル(火薬庫)」の名が示す様に大量のVLSが装備されており、通常の艦の2~4倍程度もの量のミサイルを放つ事が可能である。

反面、自衛用の兵器は最小限度のものしか装備しておらず、他の艦との連携は必須である。

「着弾まで18秒、17、16……」

「3、2、1、今!」

蒼い船体は一気に赤い炎と黒煙に包まれる。

「全弾命中!」

しかし、超兵器は傷一つ付けていなかった。

「目標健在」

「まだだ!あるだけ撃ち続けろ!」

白鯨艦長の言葉の通り見物を続けていた梅津に再び通信が入った。

『今の様な攻撃をあと何回続ければ破れるんだ?』

梅津はちらっとウインドの方を見ると指で7回と示していた。

「あと、7回程です」

『7回だと……』

「アーセナルシップの『きそ』もいるんでしょう?」

『…全艦、そのまま撃ち続けろ』

みらいでは岡が梅津に向けて

「何故超兵器は迎撃をしないのでしょう?それに迎撃もです」

「分からんな。本当に盾代わりなのか?」

 

「…「性能試験』にしては少々乱暴ですな」

モニターからある男が言った。

『フ……ミサイルをこんなに叩き込まれる機会なんて中々無いでしょう?』

『防御重力場。あれの開発のは手間取りましたよ…霧に協力してもらいましたがね』

『それにきちんと動作するかも心配でしてね。でもあんな舞台を用意してくれるとは、霧にも日本にも感謝しますよ』

しかしその言葉には感謝の気持ちなど無い。

『先行装備した物が成功すれば後はすぐ量産出来るようにしますよ』

「ああ、度重なる協力感謝する」

『いやいや、感謝するのは我々の方ですよ。重要な顧客ですからね』

『フリードリヒさんによろしく頼みますよ』

 

横須賀、防護壁の外では一方的な戦いが続いていた。

それは人類側からである。

「やはりおかし過ぎる」

いくら「クラインフィールド」と同等の能力があったとしても、およそ100㎏もの高性能炸薬を搭載したハープーンミサイル(対艦ミサイル)の攻撃を受けていればエネルギーは蓄積されている筈だ。

しかも迎撃はおろか反撃さえ加えて来ない。

「何かを待っているのでしょうか?」

「……よし、俺たちも動くか」

「は?」

「奴の近くまで接近しそこから振動弾頭ミサイルを直撃させる」

「また不意打ち作戦か」

安斎の呆れた声をよそに

「俺たちがただの子供では無いという事を証明出来るチャンスだ」

「まぁ、確かにその方法が手っ取り早いですね。私は賛成しますよ」

岡がそう言ったのを皮切りに結局全員がその案に合意した。

「デコイ投射と同時にレーダーを切れ」

「目視が頼りになる。岡、少しでも怪しい動きがあればすぐ知らせろ」

「了解」

「見つかっても無視されるだろうな」

敵艦に誤った位置情報を発信するデコイを投射した「みらい」は忍者の如く超兵器へと足を進めた。

依然超兵器には雨のようにミサイルが降り注いでいるが全く動じていなかった。

一方壁の中では未だに激しい戦闘が行われていた。

「白鯨、スーパーキャビテーション航行に入りました。30秒間は可能です」

「派手な時間稼ぎだな」

「外はどうなっている」

「ハイ、依然敵艦に対して一方的な攻撃が続いています」

「大分てこずっているようだな」

司令部はもはや単なる状況報告しか行えなかった。

 

「やはり『防御重力場』というのはクラインフィールドに似ていますね」

「ま、実弾しか防げないがな」

「みらい」艦橋から岡が目視で分析をしていた。

「可能な限り近付くぞ、いいな」

「壁の中ではドンパチやってんだろうな」

 

アーセナルシップ「きそ」から遂にミサイルが途絶えた。

「…『きそ』弾薬欠乏」

敵超兵器はそれでも沈んでいなかった。

「みらい」もその変化を捉えた。

「何でしょう、ミサイルが来なくなりましたね」

「弾薬が尽きたそうですよ」

心配そうに岡が言った。

「気付かれるのは時間の問題になったな」

 

いくら水中にいるとはいえ、与えられた任務が索敵、情報収集の類のものではどうしても退屈である。

普段は海中にいる魚などを見て水族館よろしく見て暇を潰しているがこうも騒がしくしているので今はいない。

定時通りに通信が入った。

『ドレッドノート、定時報告の時間だ』

「……了解、現在『ヴィントシュトース』の防御重力場の演算飽和率は62.819%」

『攻撃は止んだのか?』

「28秒前に」

『引き続き観測を続けろ』

「……了解」

やはり退屈という概念しか出てこない。

『後、くれぐれもメンタルモデルは形成するな』

「……了解」

「ここまで言わなくとも良いのでは?」

横須賀に送り込んだもう一つの超兵器、「ドレッドノート」からのデータ解析を続けている研究員が言った。

「いいか、『彼女たち』は生まれたばかりの赤ん坊と同じだ」

「好奇心が強いのだよ」

「だから前にいたのが離反したのだよ」

熟練者らしき研究員が比較的若手の研究員に諭す様な口調で言った。

「はぁ……」

「全く、『コード』と言っても霧の模倣でしか無いのだからな」

 

「ウインド、あの超兵器にはメンタルモデルは存在するのか?」

「……反応無し。というかあれは起動すらしていない。誰かに制御されていると思う」

「マジに盾代わりなのか!?」

安斎が素っ頓狂な声を出した。

 

「やれやれ、こうも一方的にやられているのを見ているのはいい気分とは言えないわね」

「ヴィントシュトース起動コード使用。暴風が吹くわね」

すると、それまで沈黙を守っていた艦が突然緑色に閃光した。

「何だ?」

「!ヴィントシュトース起動。やはりあの超兵器は外部から強制的にシャットダウンさせられていた」

「マズイぞ艦長!」

「諸元は送ってあげる」

ヴィントシュトースの主砲から一筋の光が走った。

「あの方向は!」

光の先には統制海軍の艦隊がいた。

「え?」

梅津はいづれかの艦に直撃すると危惧した。

が、ヴィントシュトースから放たれた光は艦隊の隙間を一直線に走り虚空へと消えた。

「全艦、散開!」

光が通り抜けたと同時に白鯨の艦長が叫んだ。

「きそ」は40ノットという高速を誇るが他の艦の足はあまり俊敏では無いため梅津の目には全体的に遅く見える。

「あいつが寝起きで良かったよ」

しかし、既にヴィントシュトースからは無数の対艦ミサイルが発射されていた。

『全艦対空戦闘よーい!』

『白鯨より目標を分配する』

「みょうこう」は前方に配置されていた。

「艦橋よりCIC、140度、2万メートル、まっすぐ突っ込んでくる」

「対空ぅー戦闘ぉーよぉーい!」

「短SAM、主砲、LaWS発射用意!」

旗艦「白鯨」より迎撃目標が送られて来た。

「CIC了解。なお本艦はトラックナンバー101から11まで担当する。特装モードで対処。トラックナンバー101から11、CIC指示の目標。撃ち方はじめ」

「“また”ブっ壊れるのはごめんだ!」

短SAM(24式艦対空誘導弾)発射準備」

「撃ち方始め」

リコメンドファイア(発射指令発信)、てぇー!」

サルヴォー(一斉発射)!」

各艦から対空ミサイルが発射された。

 

ヴィントシュトースは第2波のミサイル発射準備にかかっていた。

「……5、4、3、2、1、マークインターセプト(迎撃、今)!」

空中に爆裂音と煙が上がる、しかしヴィントシュトースからの第2波のミサイルが煙の中から姿を現した。

「!?第2波ミサイル、高速で接近!」

「24式は間に合わない!」

「Laws、AAWオート!」

しかし、そのミサイル群は全て艦隊突入前に爆発した。

「爆発した……?」

「あれは?」

その硝煙の先にはヴィントシュトース付近に一隻のイージス艦があった。

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