あなたが王都シルベリナルから、ユンナと共にリグシェリアに戻ってきて、約二ヶ月が経った頃の話。
六の月、ギルドリーダー集会にて
「今月だな。」
「ああ…またやるのか…」
「こちらのギルドからも、選りすぐりの強者どもを出そう。」
集会所にて、あなたを含めた、十一人のギルドリーダーが話し合っている。その内容は…
『第六十五回 傭兵ギルド主催 終末狩り』
簡単に言えば、ギルド側で、危険認定した神器。
《ラグナロク》を用いて、意図的に終末を引き起こし、その際に出てくるドラゴン等を狩ると言うものである。
主な目的として、ドロップ品の収集、ステータス向上、これらが目的となっている。
六の月に行う理由は、十二の月は雪国の《アインスルーナ》で、聖夜祭が行われるので、多くのメンバーがそっちに行ってしまい、終末を起こすと、戦力不足で全滅するから。
三の月は、二の月にチョコレート渡すの遅れて、参加できない、なんて事故を防ぐために無いのである。
そんなこんなで、例年、六の月、または九の月に行う。因みに、三の倍数の月でしかやらないのは、エーテル風が吹くタイミングに合わせて、終末狩りを行う為である。
(終末を引き起こすと、エーテル風が吹き荒れる事になる特典付きでいて、エーテル風は有害なので、できる限り、エーテル風による被害を抑えるために、元々、エーテル風の吹く三の倍数の月だけでしか行わない。)
「こちらの支部では、人材は足りてますが、終末に堪えられるものが少なく…」
「同じく、こちらの支部も終末に堪えうる人材がおらず…また、比較的安全な土地のため、人材も最低限しかおりません…」
「我が支部には堪えうる人材は居ますが、人材不足でして、そう数は揃えられませぬ…」
各支部から、様々な情報が出揃い。あなたは頭を悩ませた。
去年よりも、圧倒的に数が足りないのだ。
四の月最初の日の報告会で聞いていたが、死者が多くおり、その分、数が減ったのだ。歴戦の猛者だとしても、気を抜けば一瞬で死んでしまうような世界…そのうえ、イケイケな性格、その二つが組合わさると、一気に死亡率が上がると言うのに、丁度そんな感じの性格の人間が多すぎたのだろう…
「これは、本部から人員を出すしかねぇだろ、リーダー。」
そう言ったのは、あなたの後ろに居た、傭兵ギルドNo.3のシュートだった。
「どうせ、悩んでたって意味ねぇし、どのみちやるんだ、選りすぐりのメンバーと武器を用意して、死ににいくしかねぇだろ。」
あなたはその言葉を聞いて、覚悟を決めることにした。
あなたは、今月の終末狩りを強行することにした。
そして、ギルドメンバーに命令を下した。
・死ぬな
・自分の全ての力を引き出せ
・利用できるものは利用しろ
・神にすがるのも忘れるな
・最後の一人になっても戦い続けろ
あなたは、そう命令した。
死ぬな、は、あなたのギルド優先度最優先の、自分の命の事である。
自分の全ての力を引き出せ、とは、肉体復活、精神復活のポーションを使ってのドーピングや、ステータスアップの出来る魔法、スキルを使いまくれと言う意味である。
利用できるものは利用しろ、これは、使えるものは全て使え、全財産を注ぎ込み、ポーションを買うなり、武器の強化をするなり、どんなものでもいいからより強くなれと言う思いである。
神にすがるのも忘れるなとは、己の力だけでなく、己の信仰する神の力さえ、利用して、戦えと言うことである。
最後の一人になっても戦い続けろ
終末狩りとは、常に命がけの狩りであり、皆、死を覚悟しながら臨む。
人によるが、遺書を書くものだっている。
死ぬ可能性があっても戦う、その理由とは…
もっと強くなる
ただそれに集約される。
実は、傭兵ギルドの、ある呼び名がある。
『何かを失った者達の溜まり場』
互いに、何かを失なったことがあると、何となくわかってしまう、だからこそ。
誰でもいい、必ず生き残れと臨む。
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「なあ、お前、今回の成功すると思ってるか?」
あなたは静かに頷く。
「そいつぁ良かった、どうにも弱気になっちまって仕方ねぇ…」
「らしくないですね、シュート、いつものあなたならもう少し、」
「あー、はいはい、わかってますよー」
「はぁ…」
あなたの目の前で、アイリアとシュートが会話している。あなたはそれを見ながら、大剣を磨く。
あなたの愛剣である大剣は、力の無いあなたが、片手で持てるほどに軽く、それでいて力の増強、スピードの強化がされる、特殊な武器である。大剣以外には、連弩を使っていて、あなたが一番使っている武器である。矢の本数に物を言わせて、一気に群れを殲滅したり、矢の先端に塗られた毒で、ドラゴンを一気に弱らせたり出来る。
「なぁ、どこでやるんだ?」
「えーっと、確か…」
シュートの問いに、アイリアが答える。
「リグシェリアの北にある、山岳地帯でやるみたい。」
「んー…上で引き起こして、谷底召喚になるかな…?」
「確かに、発動地点から少し離れた場所ってなると、谷底だったりするかもね。それを利用すれば、近付いてくる前に、半分ぐらい倒せるかも…」
あなたは二人の会話を聞き流しながら、大剣を磨き終える。磨き終えた大剣は、不思議と輝いて見えていた。
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「良いか!殲滅しろ!死者を出すんじゃねえぞ!」
あなたの目の前で、シュートが大声で叫び、それに答える様に、集まったギルドメンバーが武器を掲げ、叫び返す。
あなたは静かに大剣を抜き、地面に刺す。そして、腰から、一本の長剣を引き抜く。
あなたの手に握られた剣こそ、終末を呼ぶ危険性から、危険神器判定を受けた剣《ラグナロク》である。
剣を構えていると、遠くから、腹を空かせたドラゴンが1匹、飛んでくる。
「起きてきたか…リーダーから離れないように行動して!」
「リーダー、ラグナロクはどうだ?行けるか?」
あなたは、無言で頷く。
あなたの目の前に降り立ったドラゴンが、咆哮を放つと同時にあなたは斬りかかる。
ドラゴンはそれに反応し、爪で薙ぎ払うが、あなたはそれをたたっ切り、ラグナロクで体を切り刻んでいく。
そして、幾度か体に切り傷を付けた時だった。
突如として、あなた達を突風が襲う。
それを皮切りに、次は周囲を火柱が埋め尽くす。そして、火柱が消え、そこにあったのは…
大量のドラゴンである、数はあなた達の三倍近くあるだろう。
「ほら出たぞ!射撃部隊、一斉射撃開始だ!」
シュートの合図で遠距離攻撃を専門としているクラスのメンバーが攻撃を開始する。
弾丸、ボルト、矢がドラゴンの群れに降り注ぐ。
中には、追加射撃をする者、連弩による毒矢攻撃をしている者も居た。あなたも、負けじと使い込んだ連弩で攻撃する。
多くの弾や矢は、ドラゴンの体に傷を付けていった。そして、それにやって倒れるのも、少なくはなかった。
「よし、射撃続けろ!アイリア!」
「わかってる!詠唱完了したわ、魔法部隊、お願い!」
魔法部隊は、射撃部隊の攻撃中に詠唱を完了し、一斉に魔法を発動する。
発動する魔法は様々で、広範囲に渡って、ドラゴンが殲滅されていく。
そして、あなたはラグナロクを鞘にしまい、地面に刺していた大剣を引き抜く。そして、ドラゴンの群れに、正面から突撃する。
それを見た近接職のメンバーが後ろから続く。
射撃や、魔法で傷付いたドラゴンを、あなたは片っ端から切り伏せ、殲滅していく。
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「あぁぁぁぁ…疲れた…」
最後の一匹を倒し、終末狩りを終えると、シュートを始めとして、多くのメンバーが疲れからか、その場で倒れる。
「相変わらず…大変…リーダー、シェルターを…」
あなたは、汗を拭いながら、シェルターをその場に設置し、メンバーと共に避難した。
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「リーダー、まだか?」
あなた達は、シェルターの中で、エーテル風が止むのを待っていた。
「早いとこ、武器類を回収して町へ戻りたいぜ…」
あなたは、そう言っているシュートに、トレーニングマシンを使うことを提案する。
「やだよ!?疲れてんのにトレーニングとか殺す気か?!」
さも当然のように拒否された、あなたは若干しょぼくれながらラムネを飲む。
外の様子は、シェルターに付いている小さな窓からでしか確認出来ず、中々に待つのが辛い。
「まあ、仕方ないことだろうな、まずスタミナ切れで寝てるやつらも居るし。」
あなたとシュートはすぐそばで寝ているアイリアを見ながら会話をする。
「ま、死者が出なかったのは良かったぜ…」
あなたはその言葉に、深く頷いた。
★《ラグナロク》
神器(アーティファクト)の一つ。
不確定名は《全てを終結させる剣》である。
様々な固定アーティファクトの中でも、終末を呼ぶ類いのアーティファクトである。
《終末》
終末とは、特定の武器で攻撃していると発生する、恐怖のイベント。
初心者がこれに遭遇すると、まず生き残れない。
至るところで火柱があがり、高濃度のエーテル風が吹き荒れ、ドラゴン等が大量に湧くそれは、まさに終末である。
しかし上級者は、あえてそれに立ち向かい、モンスターを殲滅し、己を鍛える。
これが終末狩りと呼ばれるものである。
(作者は、これに遭遇したら死ぬ)
《アインスルーナ》
雪原に存在する、中規模都市。
クリスマスツリーや、スノーマンなど、他には無い交易品があり、商人なら、確実に大金を稼ごうとすると、ここは避けて通れないとさえ、言われている場所。
また、ここでは《聖夜祭》なるものが行われる。
《聖夜祭》
十二の月に行われる祭事。
十二の月は、全ての神が生まれた月とされ、日々の感謝として行われるのが、聖夜祭である。
多くの屋台等が出ており、多くの観光客が集まったりする。
《二の月》
二の月は、好きな人、お世話になっている人にチョコレートを送る文化がある。
一体どこの文化だったかは、遠い昔に忘れられたが、文化そのものは、根強く広まっている。
《ラムネ》
アインスルーナの聖夜祭時に出る屋台で売っている飲み物。シュワシュワしていて、仄かに甘いため、中々の人気を誇る飲み物。不思議とスタミナが回復する。難点は、とても冷たい事。