占い師「カズマ、貴方は仲間に三回殺されます」カズマ「えっ」   作:500MB

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カズマ「オークが周辺で発見された?」

 緊急警報を受け集まった冒険者の手前、受付のお姉さんが深刻そうな表情で告げた。

 しかし、それ以上に深刻になるのはこっちの方だ。あんな思い(原作五巻)するのは勘弁だ。

 こっそりと、隙を見て帰ろうと画策するが、なぜか入口は職員の手によってしっかりとガードをされていた。

 

「今回、男性だけ冒険者を集めた理由がわかりますか」

 

 周りを見るとわかりたくもないといった風に耳をふさいでいるのが多数だ。

 どうやら、この世界でのオークのことはやはり有名らしい。

 

「ど、どうせ俺たちだけが狙われてるからなんだろ!」

 

 誰かがヒステリックに叫ぶ。

 

「……はい、その通りです」

 

 そこらで呻くような声が響き渡る。

 

 まあ、もしかしたら俺みたいな目にあったやつが他にもいたのかもしれないしな……。

 

「とにかく、皆さんには駆除が確認されるまで拠点で大人しくしていてほしいのです」

 

 冒険者たちが大げさに首を縦に振る。

 かくいう俺も、もはやトラウマとなっているあの事を思い出して、どうしても大げさになる。

 

 その日は、注意事項だけにとどまり、すぐさま解散となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「本当に友達になってくれるんですか!」

「ぶへへへ、本当だよぉ。じゃあ、あっちの茂みで一緒に遊ぼうか」

 

 兜に全身をコートで包んでいる男。

 そんな明らかに怪しい人に声をかけられていた少女を見つけた。

 

 放っておこうか……いや、このまま放っておいたら本当に連れていかれそうだな。

 というより、俺にとってもこれは耐えられることではない。

 

「おい、衛兵呼ぶぞ」

 

 ぶしつけに男の肩を掴む。

 

「ぶひぃ!? な、なんだお前は!」

「カズマさん?」

 

 ゆんゆんがこちらを不思議そうな顔でみつめる。

 

 もしかすると、友達になるという言葉を本気で受け取っているのかもしれない。

 純真なのはいいけれど、明らかに怪しい人についていくのはいただけないな。

 それはともかく、俺はこの変態に言っておかねばならないことがある。

 

「お前みたいなロリコンがいるから、世の中のロリコンは肩身が狭い思いをするんだよ! 俺はロリコンじゃないから関係ないけどな!」

「ぶひっ!?」

「カズマさん!? 私ロリじゃないですよ!」

 

 ……確かにゆんゆんはロリじゃないかもしれないな。

 

 じっと見つめると、何かに気付いたのか胸を押さえて一歩下がられた。

 

「ぶひぃ! 邪魔をしやがって!」

「うるせー! いいか、イエスロリータノータッチという言葉を知らないのか! 幼女は離れて見守るものなんだぞ! 俺はロリコンじゃないから関係ないけどな!」

 

 なんだかゆんゆんの視線が冷たくなってきている気がするが、気にしないことにしておく。

 

「ぶひー! うるさい男ブヒ!」

 

 さっきからぶひぶひ言ってくる変態は逆上したのか、無理矢理こっちを押し倒してくる。

 こちとら冒険者、変態ごときに負ける筋力をしているわけじゃ……。

 

「って、力強っ! いたたたた! ゆんゆん助けて!」

「は、はいっ」

 

 ゆんゆんが適当な魔法をぶっ放してくれたおかげで、変態は俺から離れた。

 

 いや、こいつただの変態じゃないぞ……。

 

「お前、ただの変態じゃないな」

「ぶひひひ、ばれてしまってはしょうがない。俺の名はオーク! 雄オークの生き残りぶひ!」

 

 お、雄のオーク!? 雄のオークは絶滅したという話では……。

 

「ぶひひひひ、驚いているぶひね。俺はあのぶっさいくな雌のオークに見つからないように隠れて生き延びていたぶひ」

 

 あの雌オーク、やっぱり同族からも不細工だって思われてんだな。

 

「あのオーク共が不細工だというのは認める。だが、それで人間を襲うのは感心できないな」

「ぶひ、お前もあの雌オークに襲われた身ぶひか」

「思い出させるな!」

 

 あのトラウマを思い出して体がブルリと震える。

 

「ぶーひっひっひ! だったら俺の気持ちもわかるはずぶひ!」

「くっ……わ、わかってしまう……っ!」

 

 悲しいか、あいつらを引き合いに出されると人間を襲うことを許してしまいそうになる。

 

「ぶっひっひ、じゃあ、次は邪魔しないことぶひね!」

 

 そう捨て台詞を置いて、オークは去っていった。

 

「待ってください、放っておいていいんですか!」

「は、しまった」

 

 ちょっとだけ許してしまったが、あいつを放っておくと俺と同じ苦しみをこの町の女性に味あわせてしまう。

 

 ……ちょっとだけ、そういう場面も見てみたいとか思ったのは内緒だ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぶひひひひひ、いい魔導具があるぶひよー」

「ほ、本当です……この魔導具からすごい魔力が込められています」

「これがほしいなら、ちょーっとこっちの方へ来てほしいぶひ」

「はい、何があるんですか?」

 

 見つけた。

 あのオーク、今度はウィズを狙っている。

 

 俺はゆんゆんとアイコンタクトを交わし……。

 

「『ライト・オブ・セイバー』!」

 

 ゆんゆんにオークの背中を切りつけさせた!

 

「ぶひっ!? 危ないぶひ!」

「避けられてしまいました、カズマさん!」

「オークならオークらしく一発でやられておけばいいものを……」

「奇襲なんて、お前たち雌オークの顔より汚いぶひ!」

 

 とんだ暴言である。

 

「こんにちはカズマさん。お知り合いですか?」

「オークと知り合いだなんて嫌だからな!」

 

 ウィズの言葉を否定しておく。

 

「せっかく押せば行けそうなお姉ちゃんだと思ったのに……次を狙うぶひ!」

 

 またしても捨て台詞を残し逃げていくオーク。

 

「逃げ足が速いな……」

「あのオークを捕まえようとしているんですか?」

「放っておいたら危ないだろう」

「そうですね……それに、絶滅危惧種ですから、捕まえたら報奨金ももらえるでしょうしね」

 

 ……ん? 報奨金?

 

「それっていくらぐらいだ?」

「どうでしょう? もしかしたら、二千万エリスはくだらないと思いますが……」

 

 二千万エリス!? 

 お金はいくらあっても困ることはない。あのオークを捕まえるだけでそんなにもらえるというのなら、捕まえない手はない。

 

 そこで、少しばかりゆんゆんが不安そうな表情を向ける。

 

「つ、捕まえるんですか? オークを?」

「ゆんゆん、命というものはとても尊いものなんだ。それに、あいつはここまで雌オークに狙われながら生きてきたんだ。殺すのはかわいそうじゃないか。俺はそんなあいつに敬意を表すし、友と呼んでもいいと思っている」

「……」

 

 俺の説得に顔を伏せるゆんゆん。

 

 さすがに常識人のゆんゆんにこんな説得は効かないだろうな。

 どうにかして、捕まえる方向にもっていかせたいのだが……。

 

「そうです、そうですよね、カズマさん!」

 

 と考えていたら、顔を伏せていたゆんゆんがバッと顔を上げた。

 その目は少しうるんでいて、まるで今の言葉に感銘を受けたような……。

 

「友……いい言葉ですね。たしかに、彼はあのオークたちから頑張ってここまで生きてきたんですよね。わかりました、不肖ゆんゆん、協力いたします!」

 

 いや、受けたようなではなく実際に受けてる。

 

 そうして、やる気に満ちたゆんゆんと、オークの持っていた魔導具が気になってついてきたウィズと共にオークの向かった先へ向かうのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「君から神器の匂いがするね」

「ぶ、ぶひっ?」

 

 次に見つけたオークは、見知った盗賊に絡まれていた。

 

「げっ、あいつらももう追ってきたぶひ!」

 

 そして俺たちの姿を見るや再び逃げ出すオーク。

 ここからでは少し距離がある。このままではまた逃げられてしまう。

 

「クリス! そいつを捕まえておけ!」

「えっ? う、うん! 『バインド』!」

 

 いきなり受けた魔法に、それでも飛び上がりすり抜けるオーク。

 さすがにここまで逃げてきただけのことはある。

 

 だが、突然のことに体制を崩していることはここから見ても明らかだ。

 

「『クリエイト・ウォーター』!」

 

 オークの足元に広がるように水を広げる。

 警戒する姿が見えるが、もう遅い。

 

「『フリーズ』!」

 

 流した水を凍らせる。

 これで足は取られるが、おそらく転げるまではいきそうもない。

 

 そこで、オークの足元が突然小さく揺れた。

 

「カズマさん! 多分時間稼ぎにしかなりませんけど……!」

 

 さすがゆんゆん、なにか魔法を使ってくれたらしい。

 これでも転ばないオークだが、これ以上避けられる体制ではない。

 

「クリス!」

「わかってる。『バインド』!」

 

 今度こそクリスのバインドがオークをとらえた。

 オークはそのままミノムシのように転がされた。

 

「ぶ、ぶひっ!」

「わ、ちょっと! な、なんだか壊されそう!」

「それなら、私に任せてください」

 

 いつの間にか近づいていたウィズがオークに手を添える。

 どうやらドレインタッチをしているようで、みるみるうちにオークは大人しくなっていった。

 

「さて、どこに売り払えばいいんだ?」

「その前に魔導具を……」

「神器の方を聞かせてもらいたいんだけど」

「あの、友といっていたのは?」

 

 

 ……少し状況を落ち着けた。

 

 

「ふうん、それで、その神器は時間跳躍ができるもので、オークが滅亡する前の過去から来たってこと」

「ぶひ」

 

 どうやらここまで生き残っていたオークではないらしい。

 言われてみれば、あの雌オークから逃れられる同族がいるとは思えない。

 

「一人で逃げてきたけど、俺だってオークの戦士。やっぱり友を見捨てて逃げるなんてできなかったぶひ」

「そうですよね、友達を見捨てて逃げるなんて、できるわけないですよね」

 

 ゆんゆんはそのフレーズだけで肯定しているんじゃないだろうか。

 

 そこで、オークが持っていた魔導具を調べていたウィズがクリスに話しかけた。

 

「これ、魔力が切れていて使えないみたいです」

「そうみたいだね。だから、このオークも帰れなかったんだろうね」

 

 クリスはウィズが調べていた魔導具を手にして、ごにょごにょと何かを口にした。

 

「……帰れる分の魔力は残っているみたいだね」

「ぶひ? でも、何度使っても発動しなかったぶひが……」

「ううん、大丈夫だよ」

 

 そんなクリスに不思議そうな顔を向けるウィズ。

 もしかしたら、見立てが間違っていたのかと不安になっているのかもしれない。

 

「って、帰ってもらったら金が!」

「助手君、君は本当にぶれないよね」

「カズマさん、このオークは友達のもとに帰れるんですよ、いいことじゃないですか!」

 

 うぐ、こう二人から言われると、さすがに押し通せない。

 二千万エリスはあきらめるとするか……。

 

「なんだかんだ、優しくしてくれてありがとうぶひ。元の世界に戻ったら、最後まで徹底抗戦するぶひ」

 

 まあ、未来からして敗北は決まってるんだけど。

 

 そこで、俺は一つ疑問に思っていたことをオークに聞いてみた。

 

「そういえば、クリスには自分から話しかけたのか?」

「違うぶひ。俺は貧乳なんて男と同じに思ってるぶひ」

「く、クリスさん! おさえて、抑えてください! オークさん、早く行ってください!」

 

 オークの言葉に暴れるクリスに、それを押さえるゆんゆん。

 それを背にオークはこの時間から去っていったのだった。

 

「くっ……次に会ったとき、天罰を下してあげるんだから!」

「職権乱用はしないようにな」

「というより、もう会えませんよね」

「魔導具も一緒に持って行っちゃいましたしね……さすがに魔力切れだと思いますけど」

 

 なんだかんだで、そうして雄のオーク事件は平和に終わりを告げたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

「あれ、カズマさん無事だったんだ」

「てっきりいつものように犠牲になってるのだと思いましたよ」

「むう、オーク相手では変わってやれなくて済まないな」

 

 あの場面にいたやつがこいつ等じゃなくてよかったと本気で思った。

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