アイツ"ら"の愛は重い?   作:因幡の白ウサギ

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私になぁ、シリアスなんてなぁ、書けるわきゃねえだろォォォォ!!


特異点G:多重時空屈折都市海鳴〜Gudaguda Of Destiny〜②

「これからどうしましょう?」

 

 たんこぶを頭に作ったヴィヴィオ、俺、そしてアインハルトは、現在突き付けられている問題に頭を悩ませていた。

 

「どうもこうも……なんとかして帰るしかないだろ」

 

 あれから少し時が経ち、その間に俺達は1度下の街に降りて情報を集めていた。

 その結果分かったのだが

 ・どうやら此処は地球の日本の海鳴で合っているらしい。道行く人々は皆が日本語を使っていたし、標識にもそう書いてある。

 ・しかし年号が一致しない。何故か時間が巻き戻っていた。具体的に言うと16年くらい。

 ・その他の情報は一切無し。なぜ魔法の使用が禁止されている管理外世界である筈の地球で魔法戦が始まったかの理由も不明。

 ・つまり、今シュウさんの御両親に顔繋ぎをしておけば許婚の可能性がワンチャン……?

 

 ……最後のはヴィヴィオの戯言だ。

 まあつまるところ、俺達は時間旅行という、マジカルに見えて割とロジカルな魔法が発達した世の中でも体験できない出来事を経験した事になる。……この現状を額面通りに受け取れば、であるが。

 

 常識的に考えればこんな事はありえない。テレビ番組のドッキリ企画だと考えた方が遥かに筋が通る。 はやてさん辺りなら「面白そうだから」という理由で何の説明もなくやりかねないし。

 貴方は時間旅行をしました。と言われて、はいそうですか。と言えるほど俺の常識は狂ってはいないのだ。

 

「待ってくださいシュウさん。それだとさっきまではしゃいでいたヴィヴィオさんの頭がおかしいみたいで……ああ、元からでしたか」

 

「おいィ?アインハルトさん?なぜ自分の事を棚上げワッショイしながら流れるように私だけdisってんですかね?」

 

「仕様です」

 

「仕様ですかぁ、そっかあ……」

 

 あっはっはっはっはっ

 白々しい笑い声がシンクロし、一瞬の後に2人は動いた。

 

「「ファイッ!!」」

 

「落ち着けおまえら」

 

 スッと同時にファイティングポーズを取る2人を宥めつつ頭を使うが、しかし現状を打開する策などそう簡単に出て来る筈もなく、思わず頭を抱えてしまう。

 

「ていうかだな、お前らも案を出せ案を。なんでもいいから」

 

「つぶですか?こしですか?」

 

「誰がアンパンを出せと言った」

 

 恐らくコンビニで買ってきたであろうアンパンを2つ持ちながらアインハルトは言う。こっちの通貨はどう用意したのか──と思ったが、先ほどアインハルトがガラの悪いお兄さん達に絡まれていたのを思い出した。こいつカツアゲしてやがる。

 

「いえいえ、そんな物騒な事はしませんよ。ただ皆さんがお金を献上してくれるというので受け取っただけでしてね?」

 

「むぐむぐ……物は言いようですよね、本当に」

 

「食うの早っ!?」

 

 ちょうど小腹がこう、いい感じに空いてまして……。と言いながらもアンパンを齧る事を止めないヴィヴィオを見ていると、なんだか俺までお腹が減ってきた。

 

「つぶですか?こしですか?それとも私?」

 

 さっきとほぼ変わらないセリフで俺の前にアンパン2つを差し出してくるアインハルトと、高速でムシャムシャしてるヴィヴィオとで目が動く。

 

「……つぶで」

 

 多少迷ったが空腹には勝てなかったよ……でも仕方ない。だって夕飯食ってないから。

 名も知らぬお兄さん達よ、すまんな。

 

 

 

 10.産地チェック

 

 

 

 今俺達は、生まれて初めて『トラックにぶん殴られて神様転生するような』衝撃を味わっていた。

 

 俺も、アインハルトも、そして誰よりヴィヴィオが、呆然とした表情で膝を着いている。その横を見ると、クリスとティオも似たような感じだ。

 

「んな、馬鹿な……!?」

 

「こんな、事……有り得る筈が……!」

 

「嘘、嘘だよ…………だって、こんなのって、無いよ……!!」

 

「……、……!(目を擦ってマジマジと確認し、首を左右にブンブン振る)」

 

「にゃー!ファッ!?」

 

 過呼吸気味な俺達の口から辛うじて出たのは、そんな現実を否定する声。しかし、幾ら口で否定しようとも、それは変わることのない"事実"としてそこに聳え立っていた。

 

「あ、あの……」

 

「クソッタレ!ドッキリ企画にしちゃあ冗談が過ぎるぜ……!」

 

「これがあの人……!?じゃあ私達が知ってるあの人は誰ですか!?」

 

「たった一つ、たった一つのボタンの掛け違えで、こんな事になるなんてッッッ……!!」

 

 やっと頼れそうな人に会えた安心からか、それとも認めたくない現実をシャットアウトする為に防衛本能が仕事をしたのかは分からないが、とにかく薄れゆく意識の中で俺はあの人の顔を見た。それはやはり、昔見せられた写真に写っていたあの人と寸分違わぬ顔で、それが余計に絶望を加速させていく。

 

 俺は、いや、俺達は決して信じないだろう。

 

「ねえアルフ。こういう時、どういう反応をすれば良いのか分からないんだけど」

 

「取り敢えず怒れば良いんじゃないかい?」

 

 こんなマジメな人がフェイト・T・ハラオウンだなんて、そんな残酷な事実が信じられる筈がなかった。

 

 

 

 ──なんて事があったのが、大体6時間くらい前であるらしい。俺達はイケメンからショタにチェンジしたクロノさんの説明を聞きながら、自分が何処か別の世界に来てしまった事をなんとなく察していた。

 

「それで調べた結果だが……残念ながら、時空管理局に君の言うレドイ夫妻は()()()()()()()

 

「……そう、ですか……」

 

 なにせ、コレである。

 だって俺の知るフェイトさんの話が正しいのなら、かつて発生した闇の書事件の時には既に染まっていたのだ。そして、今は闇の書事件の後だという。さっき見たフェイトさんのマジメさと合わせれば、それはつまり……そういう事だろう。

 

「シュウさん……」

 

 アインハルトとヴィヴィオが目を伏せている。なんか珍しい。

 コイツらもコイツらで生まれにかなり複雑な事情を抱えているし、それが今の俺に何かシンパシーを感じたのかもしれない。

 

「気にすんなって。確かにこの世界に俺は、両親は居ないかもしれないけど、でも俺はここに居るだろ?シュウ・レドイは実在する人物なんだって、お前達は知ってるだろ?」

 

「それはそうですが、しかし!」

 

「しかしも案山子もねーよ。此処はそういう世界だった。それだけの話だ」

 

 ある意味では世界から自己の存在を否定された俺であるけれど、でもそれが可笑しくて仕方がなかった。たった一つの家族が居ないだけで世界はこうも変わる。その変わりようが、俺にはたまらなく面白いのだ。

 そして同時に確信も抱く。

 

 

 やっぱ俺の両親って頭おかしいわ

 

 

 何をどうしたら、あんな生真面目を地で行くフェイトさんをハンザイシャスレイヤーに変える事が出来るのだろうか。疑念は絶えない。洗脳とかしたんじゃなかろうな。

 

 今頃は何をしているだろう。まだ遺跡の中をさまよっているのか、それとも地球めぐりの旅の最中か。

 そういえば、前回家を出る前に「パンツァーフォー!」とか言ってた記憶があるから、もしかするとまたサブカルにドハマリしているのかもしれない。大して信じないで送り出した両親が、予想通りサブカルダブルピースなビデオレターを送ってくるなんて……なんだ、いつもの両親か。

 

「……強いんだな」

 

「良い隣人に出会えましたから」

 

 本当に、これに尽きる。なのはさんを筆頭とした元機動六課の面々や、ナカジマジムのチームメイトとノーヴェさんを含めたスタッフの皆さん。聖王教会の職員さんや、インターミドル上位陣の人達。そして忘れちゃいけないベルリネッタ家の皆さん。

 ざっと挙げただけで、これ程の人が俺を支えてくれている。だから前を向けるし、笑っていられる。

 

 両親?アレはほら、中1の男女を放置して仕事に行くような畜生だから。

 普段リンネに要らんことばっかり教えて愉しんでるリンネの義父であり、父さんの長年の悪友であるダンさんですら「お前それはねーよ」と苦言を呈し、両親を師匠と呼び慕うフェイトさんも「何やってんのあの人達」とか若干キレ気味に言うレベルだから……。

 

 あの両親から学んだのは理不尽への耐性かな、うん。

 思い返す度に考えるのだが、これって訴えたら勝てるんじゃねーの。やらないけど。

 

 

 あれ?俺の両親が居ない世界って、それはつまり、ある意味で凄く平和って事じゃね?

 

 だってアレでしょ?ジェイル・スカリエッティの《アーッ!》にザンバーをぶち込む執務官の姿は無いんだろ?もっと真面目に戦闘するって事だよな?

 

「女の犯罪者は顔を殴るかケツバット。男の犯罪者は股間を潰すか《アーッ!》に長物をぶち込むかすれば容易に逮捕できる。またはケツバット」とか宣うマジキチ執務官も居ないんだろ?

 

「苦労、してるんだな……」

 

「慣れました」

 

 適応力が無ければあの世界では生き残れない。でも他の世界にはそんな適応力は必要ない。

 つまり、俺の両親の所為で世界がハードモード。

 

 そんな悲しい現実を知った、異世界で迎える初めての朝だった。

 

 

 

 

 

 

「待てよ。となると、ヴィヴィオやアインハルトって一体どうなってるんだ?」

 

 場所は変わって食堂。俺達が居るのは、ジェイル・スカリエッティ事件で一躍有名になった戦艦アースラであるという。

 

 戦艦として役目を終えて解体待ちであったこの船を、はやてさんはどんな手段を使ってか臨時の拠点として持ち出して来た。しかし、長年の無理が祟ったのか事件の後に自沈した。というエピソードから、世間一般からは「過労死した社畜戦艦の鑑」として認識されるという、或る意味で不名誉すぎる有名であるが。

 

 そして、「あんな老戦艦に鞭打つとか、管理局は畜生共の集まりかな?」というジェイル・スカリエッティの発言から、意外にも彼の根が優しい事を象徴するエピソードとしても知られている。

 

 そんな過労死戦艦アースラの、貴重な現役時代であるというのだ。俺たち未来人としては、これからアースラに訪れるであろう悲劇に涙を禁じ得ない。

 

「どう、とは?」

 

「ヴィヴィオもアインハルトも、なんか俺の所為で頭のネジを落としてるみたいだけど、俺が居ないって事は落ちるネジも落ちないって事だよな。いや、でもお前達なら自力でワンチャン……?」

 

「時々シュウさんってナチュラルに失礼なこと言いますよね」

 

「まあシュウさんですし。でもそこが素敵……!」

 

 俺からすれば事あるごとにアホ発言をぶちかますアインハルトとヴィヴィオがデフォなので、違う性格をあまり想像できなかったりする。出来なくはないが、違和感が半端ない。

 

「まあ時間が時間だから会う事もないし、真相は時空の闇の中なんだろうけどな」

 

「……それについてなんだが」

 

 隣で黙々と食べ進めていたクロノさんが此処で口を開いた。

 

「昨日、君達と接触した後にもう一人のヴィヴィオ君とアインハルト君に接触したんだ」

 

「おっ?」

 

「最初は闇の欠片かと思ったんだが、話してみるとどうも違うらしくてね。結局逃げられてしまったから今は行方を追っているが……」

 

 闇の欠片とやらが何なのかは知らないが、とにかくヴィヴィオとアインハルトも居るらしい。……フラグの回収早くね?立ててから10秒も経ってないぞ。

 

「シュウさんは居ましたか?もし私達が知ってる私達なら、シュウさんを放置して逃げるなんて事は決してしないのですが」

 

「…………」

 

 その沈黙こそが答えと言うべきだろう。それを察したアインハルトは「そうでしたか……」と言って食事に戻る。

 

「それとあと一人、恐らくは君達と同じケースであろう人物とも接触していたんだが……この人物に見覚えはあるか?」

 

 表示された画像を見た俺達は、口から物を吹き出さないように必死に堪えた。

 

「ケホッ、ケホッ……シュウさん、この人って」

 

「ウッソだろお前……」

 

「よりによってこの人かぁ……たまげたなぁ」

 

「知っているのか?」

 

「ええ。なにせコイツは……」

 

 そこに写っていたのは、俺の知る彼より幾分か禍々しい姿であるが、しかし紛れもなく彼だと分かる人。

 ロリはいいぞ。とばかり言う彼の名は"紳士"のトーマ。またの名を──

 

「筋金入りの紳士ですから」

 

 ──ロリコン




おまけ

前回のあらすじ:荒ぶるフーカ

「フーカはまだマシだろ……」

「会長……?」

「私を見ろ。ナカジマジムの様子が描写されない、または人数調整の都合で常に省かれている私の姿を」

「会長、体が、透けて……?」

「フーカ、お前は私達(空気)のようにはなるなぁーー!!」

「か、会長ーー!!……また世界が奪った。わしの家族を、わしの出番を!」

「フーちゃんがご乱心してる……」
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