「なあリリィ。これから俺達ってどうなると思う?」
太陽が昇りきり、人の営みが活発になり始めた頃。何処か別の場所で風評被害を受けている彼、トーマ・アヴェニールは自身が置かれた状況に漸くの理解を得ていた。
日常を過ごしていたら突如訪れた非日常。しかしそれは、彼の知るフッケバインの仕業などではなく、もっと別の誰かの仕業であるらしい。
曰く、突然に飛ばされたこの世界は、自分が暮らしていた時間軸の凡そ16年前である事。
それを聞いた時、トーマは人知れず納得していた。なら彼の知る、未来の八神部隊長があんなに小さかった理由に説明がつくからである。……別に未来でも小さいとか言ってはいけない。
最近のデバイスは高性能化が進んでいて、滞在時間軸の年号まで把握する事も出来たからこそ掴めた情報であった。シュウ達がやったように自分の居た時間軸の年号を覚えておいて、そして地球の西暦を新暦に置き換えても特定は可能であるが、非効率的だし正直めんどくさい。
「分からないけど……でも、きっとなんとかなるよ!」
そんな相方の前向きな言葉に励まされる辺り、どうやら自分でも知らない内に思考がマイナスに寄っていたようである。トーマは自分の頬を両手でピシャリと叩いた。
「だよな……なんとかなるよな!」
トーマはそうやって自身を鼓舞させると改めて前を見据えた。そこには彼の知る、しかし何処か幼い協力者の姿。
「そうだよ!なんとかなるって!ねっ、アインハルトさん!」
「ええ、きっと」
──その名を、ヴィヴィオとアインハルト
シュウの知る彼女達とは別次元の真面目な方である。
その真面目さ、そしてピュアさたるや、恐らく相対した別次元の本人すら浄化しかねないくらいピュアッピュアであった。
そんな彼女達もトーマと、そしてシュウ達と同じようなケースで過去の世界に飛ばされて来た被害者。
犯人を見つけ次第8割殺しでボコる、と殺意を漲らせている別次元の彼女達ほどではないが、今回の一件の犯人にはそれなりに文句を言ってやろうと思っている程度には、この2人もイラッと来ているようである。
「でも、盛り上がった所で解決策が出てくる筈もないし……」
「銀十字の検索待ちだね。こればっかりは仕方ないよ」
グーグル先生でも分からないような答えが銀十字の書にあるとは思えないが、それでも一途の望みは其処にある。
良いにしろ悪いにしろ、結果が出るまではヒマだなー。……なんて思ったのがフラグだったのだろうか。
「(!!)」
「にゃッ!」
「転送反応確認。脅威判定7体」
全デバイスが近寄る誰かに反応した。その数なんと7。
「7!?」
「一体誰が……」
「トーマ!あれって……!?」
リリィが指さした方を見た3人は、迫り来るピンク色を見て大なり小なり顔が引きつった。コレだけで誰が来たのか分かる辺り、別の未来でも彼女は砲撃の代名詞であるらしい。
「さ、散開ーー!!」
3人は即座にデバイスを展開して飛び退いた。そして一瞬の内にピンク色に飲み込まれた屋上を見て更に顔が引きつる。
「よ、容赦が欠片も無い……」
手加減?なにそれ。と言わんばかりの全力砲撃は、未来で管理局のガンダムと呼ばれる彼女の片鱗をひしひしと感じさせる物であった。
戦慄する彼らの前に一人、代表するように向かってくる者がいた。幼きフェイトである。
「……トーマ・アヴェニールさんですね?」
自然とトーマの顔が引き締まった。
トーマの現在の年齢は15。正しい時間軸では彼はまだ産まれてすらいない。しかし、フェイトは彼がトーマだという確信を持っているようであった。それはつまり、彼を知っている人間が管理局に組みしている事に他ならない。
「……はい。トーマ・アヴェニールは確かに俺です」
逃げても無駄だろう。此処で波風を立てるより、その後の関係を良くしておく方が大事だ。
そう考えたトーマは、あっさりと抵抗を諦めた。
別に、なのは、フェイト、はやて+ヴォルケンリッターという北斗七星を見て諦めた訳ではない。そんな事実は断じてない。手が震えてるのも気の所為だし、足が震えてるのは武者震いだ。
リリィが心配するレベルでガクブルしているが、それも全て、目の錯覚なのだ。
11.薄い壁1枚でも隔てると人は違う。
可能性が無い、なんて言えなかった。
別次元のヴィヴィオやアインハルトの存在だって確認されていたんだ。もしかするともしかする可能性だって、そりゃあるだろう。
どちらかと言えば俺の知るあのトーマの方が異端なのかもしれない。
でも、それでも認められないのは……俺がまだ現実を現実として認識する事を拒んでいるからか。フェイトさんの時もそうだったから、俺は自分が思っている以上に頭が固いのかもしれない。
「つまり?」
「トーマが常識人とか認められんなぁ!」
「ええっ!?」
相方のリリィさん(誰だこの人)曰く、生真面目な少年であるらしいトーマが驚愕の声を挙げた。
この大部屋には、正しい時間軸に本来は存在しない人……言ってしまえば未来人が集められている。
そこで俺は、ようやく別次元のヴィヴィオとアインハルトをまじまじと観察する事が出来たのだが、それで分かった事が一つある。
この娘たち、メッチャいい子なんだけど。
相対した本人達が浄化されかかってたくらいだし、相当にいい子だ。
それに対して俺の知るヴィヴィオとアインハルト。
「コォォォォォォ…………!」
「ホォォォォォォ…………!」
何かの儀式かな?と思いたくなるような謎の動きで互いを牽制しあっていた。実際、場所が場所なら何か怪しい儀式だと言われても否定できない凄みが2人の動作から溢れている。
端的に言えば、正気を失っているとしか思えないような、そして見る者を片っ端から呪いそうな、そんな感じだ。
なぁにこれぇ。元は同一人物の筈なのに、なぁにこれぇ?
「な、何をどうしたら、こんな事に……?」
「(絶句)」
「なあリリィ。この人達、本当にヴィヴィオとアインハルト……なんだよな?」
「た、多分……少なくとも見た目はそうだけど」
そんな彼女達に、俺が告げるのはたった一言。
「チェンジで」
「ちょっとー!?」
「やはりシュウさんはロリ好きなんですね……!」
「どうしてそうなる」
やはりとはなんだやはりとは。お前達の中で俺はロリ好き認定されているのか?だとしたら心外だ。
それにしても、産地の違いがここまで露骨に表れるとは思わなかった。やはり
「……そろそろ話を戻して良いか?」
「どうぞ。このバカ2人にお構いなく」
「「えっ」」
「そうさせてもらおう。……それで、君達が時間移動をした原因、というか犯人だが……」
構っていると日が暮れそうな2人は放置してクロノさんが話を戻す。あれ、そもそもなんで話が逸れたんだっけ。思い出せん。
「彼女はこのアースラ内部に居る。……なのは、フェイト。そこの2人にバインドを」
儀式を止めて突然走り出したヴィヴィオとアインハルトをバインドがぐるぐる巻きにして拘束した。バタリと倒れてもまだ動こうとしている。その姿に、俺は打ち上げられた魚を連想した。
そうだ。無事に帰ったら翌日の夕飯は刺身にしよう。
「離してなのはママ!そいつ殺せない!!」
「殺しちゃダメだよ!?っていうかママってどういう事!?」
「くっ、殺せ!」
「遊ぶなアインハルト。フェイトさん……?が困ってるだろ」
「なんで疑問形なのかな?」
俺が貴女の事をまだフェイトさんだと認められないからです。
なんて言えないので、適当に笑って誤魔化す。ハンザイシャスレイヤーの業は深い(確信)
「居るんだが……ええい、縛られても芋虫みたいに這って進もうとするんじゃない。シュウ君、だったか。すまないが彼女達を抑えておいて欲しい」
「了解でーす」
ぐいっと腹の辺りを持ち上げて肩に担ぐ。
「血が!頭に血がぁ!」
「お腹いっぱいにシュウさんのヌクモリティを感じる暇もないくらいヤバぁぁぁぁぁぁぁ!?」
「事情は君達から彼女に聞いた方が良いだろう。その方が納得もしやすいだろうしね」
「Hey!そこのboys&girl's!少しくらい私達にツッコミを入れても良いんじゃないかな!?」
ヴィヴィオが何か喚いているような気がするが、誰も気にしていないし気の所為だな。
「こ、これが私……?」
「アインハルトさんや私の顔と声から想像もつかないようなセリフばっかり……」
ヴィヴィオ(小)とアインハルト(小)がドン引いていた。そりゃそうだ、という感情しか出てこない。こんなの見たら、まあ、ねぇ……?
「む、私が私を見つめる目に、何か残念な人を見るような物が含まれてますね!」
「そりゃそうだろ。実際お前達って残念な人だし……」
「わーおセメント。私、涙いいですかね?」
濡らすわー、涙で枕濡らすわー。とか言ってるヴィヴィオをスルーしながら、俺は硬直したままの別次元組にこの2人のストッパーとして一言。
「言いたい事はあるだろうけど……慣れてくれ」
「……はい」
「ところで、私が私を見つめるって、なんか哲学みたいですよね」
「鏡でも見てろ」
「「覚悟ォーーーーー!!」」
「なのは、フェイト」
場所は変わって艦内のとある一室。そこに居たピンク髪に飛び掛ったヴィヴィオとアインハルトは、まるでギャグかコントのようにバインドで縛られて地面に引き摺り倒された。
この短時間で別次元組に「まあ、そうなるな」とスルーされる程度には繰り返された行動である。
しかし、ピンク髪には未知の行動であったらしい。……当然か。見知らぬ人から出会い頭に飛び掛られるのに慣れてる人とか居ないだろうし。居たら怖いわ。
「えっ!?ちょっと、一体何よ!?」
「君が引き起こした時間移動の被害者達だ」
「そこの椅子で寛いでる淫乱ピンク女ァ!!」
「生きたまま生皮を剥がされたくなければ!」
「「私達が未来に帰る方法!」」
「「教えてくださーい!」」
俺を除く全員がそう言ってピンク髪の女性に詰め寄る。詰め寄られた側は顔を引き攣らせ、そして涙目でクロノさんに助けを求めた。しかし、クロノさんは首を左右に振って「諦めろ」とジェスチャー。俺としても帰る方法は知りたいので、特に何も言わずに見守る。
「あー、えっとねぇ……その、ひっじょーに申し訳ないとは思うんだけど……私1人ではどうにも出来ないというか、なんというか……」
……ほほう。
「ちなみに、平行世界への渡航技術とかは有ったりするんですか?」
「へ?何それ、私そんなの知らないわよ?」
……ほほう。ほほーう。
「
「殺したくはなかったけど、最早やむを得ないな。殺せ」
「やめないか!」
クロノさん渾身のツッコミが光る。その輝きたるや、俺の視界に星が瞬くほどであった。
「って、なんでいきなりS2Uでマジ殴りしてくるんですか!?」
「君達相手に手加減は無意味だと判断したんでね、申し訳ないが手荒に行かせてもらうよ」
達って、ひょっとしなくても俺も含まれてる……?
いや、区分的には正しいんだけど、でもなんだろう……この言いようもない感覚は。
「それはきっと恋ですね」
「変の間違いだろ」
おまけ
前回のあらすじ:ノーヴェ会長がE・HEROエアーマンになった。
「こうなったら、此処で一旗挙げるしかない!」
(あ、このミカン美味しい)
「リンネ!同じハブられた者同士、放課後あとがき同盟として共に行こう!」
「んー」
「本編とは独立した屋根裏の不思議空間……名付けてラビット道場!」
「んー」
「さあ行くぞリンネ!自分の出番は、自分で掴む!」
「いや、私は出番内定してるから」
「ゑ?」
「一章丸々主人公やるんだって」
「……………………」