それはそれとして、アインハルトって太ももの辺りがちょっと性的過ぎません?
無事で良かった。
俺が今、万感の想いを乗せて言えるのはこの言葉以外に無いだろう。
なんか途中で
「あ~~……」
しかし、やはり辛い戦いであったのか、未来組は全員がソファに寄り掛かってノックアウト状態。アインハルトは俺の左肩に頭を乗せた状態で寄り掛かり、ヴィヴィオは俺の膝を枕にしてソファに横たわっていた。
ヴィータさんとかは「まだまだ修行が足りねーな」とか言っているが、古代ベルカをリアルタイムで生きた人達と一緒にしないで欲しいと、きっと誰もが思っている事だろう。
「モテてんだな、お前」
「懐かれてるだけですよ」
若干揶揄うような口調のヴィータさんにそう返しながら、俺は右手で膝上のヴィヴィオの頭を撫でながら左腕をアインハルトの好きにさせていた。ちなみにその腕は立派に自己主張している胸をむにゅっと変形させて太ももに挟まれていたりする。もうデフォだから特に緊張はしないが、最初にやられた時は酷く焦ったものだ。
「……懐かれてる?好かれてるの間違いだろ」
「コイツら猫みたいですから、好かれてるって表現より懐かれてるって表現の方がしっくり来るんですよね」
「シュウさんからの可愛がり(意味深)を受けられるならネコ耳とネコ尻尾の装着も辞さない所存です」
「ヴィヴィオさんに同じく」
「はいはい。また今度な」
恐らく無駄にキリッとした表情をしているであろうヴィヴィオの顎の辺りを猫にやるように弄ると、無駄に媚びた声で「にゃぁぁぁぁぁぁ」とか鳴いた。気分はバスローブ姿でペルシャ猫を撫でる大富豪だ。
そしてテーブルの上では、ティオがキャラ被りの危機を感じ取ったのかヴィヴィオ相手に威嚇しているのを、ティオにライドオンしているクリスが宥めるという光景が見られる。
「ヴィヴィオさんってあんな声出せるんですね……」
「待ってアインハルトさん。それ誤解、凄い誤解ですから。向こうの私はもう私じゃないですから。見た目同じなだけの別人ですから
……っていうか、そう言うアインハルトさんだって大概ですよ。あんな大胆な事が出来るじゃないですか」
「待って下さい、アレは違うんです。天狗、天狗の仕業ですから。私とは何の関係も無いですから」
「認知して?」
「自己存在の否定とか、一歩間違えればクラウスに侵食されかねないような事を……」
自分にボケを投げつつ、ヴィヴィオは通路の方に向いていた体の向きを変えた。つまりは俺の方に向いたのだが、膝枕状態でこっちを向くって事は、まあ、つまり……
「目の前にシュウさんの
「向くだけなら良いけど、それ以上何かするんだったら即ボッシュートだからな」
実際、此処で「ご立派ァ!」等と叫ぼうものなら躊躇無く床にボッシュートするつもりである。近くの汚れを知らない過去のヴィヴィオとアインハルトの為にも、此処は是非自重して頂きたい。
……トーマは良いのかって?アイツはほら、この歳でリリィさん(マジで誰よこの人)と切っても切れない存在(多分意味深が付く)になってる時点で
「クリスタル(みたいに心がピュアな)ヴィヴィオちゃんになんて事を!?」
「ハッ」
「おいちょっとアインハルトさん。今どこで笑ったか言ってみ?ん?」
「はいはいステイステイ。あとアインハルト、指しゃぶるの止めてもらっていいかな」
「指じゃない場所をご所望ですか。大胆ですね」
「久しぶりにヴィヴィオが空気読んだと思ったら今度はお前かよォ!」
ホントにどうしようもなく、この2人の手綱は握れないようだ。
俺は真っ赤になったヴィヴィオ(小)とアインハルト(小)、そしてリリィさん(意外と純粋?)と流れ弾を喰らったらしいトーマを見ながらそれを痛感していた。
「だってほら、どっちかっていえばシュウさんは握られる側ですし。だから──」
「はいボッシュート」
「テーレッテレッテーン」
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
13.それはいわゆるコラテラル・ダメージ
「いやー。一時はどうなる事かと思いましたが、なんとか大きな怪我も無く終わりましたね!」
「そうだな」
「これで私達も元の時空に戻れますね!」
「……そうだな」
「いやー、ようやっと帰れるなー!ママ達も心配してるだろうなー!」
「…………そうだな」
「ところでシュウさん。そこで逆さまに吊るされてるフロマージュ姉妹はどうしたんですか?」
「フローリアンな?……お前とアインハルトがやったんじゃないか」
「てへっ☆」
だからその、どこからともなく出した大剣を仕舞え。そして目にハイライトを戻せ。
現在はお昼の1時を越えようかという時間。食堂の椅子に座る俺の前には、縄でぐるぐる巻きにされたフローリアン姉妹が居て、なんかむーむー呻いている。
「むー!むーーっ!」
「なぁにぃ?聞こえんなぁ」
ヴィヴィオの顔のタッチが北斗の拳みたいに変わるくらいには、この件でご立腹であるみたいだ。
その気持ちは大いに分かるけど、でも首筋に大剣(年代物らしい)を突きつけながら悪役顔をしてまでやる事なのかと。
「一体どうやって落とし前を付けるつもりですか?この愚の骨頂としか言いようのない大失態を」
「んー!んーー!」
「ん?今なんでもするって」
アインハルトが
二人共に、さっきからずっとこの調子だ。まあ帰れると思って死にかねない目に遭って、それで帰れませんじゃなぁ……。
「シュウ君。君から彼女達を止められないか?」
皆が遠巻きに2人を眺める中で、クロノさんだけは俺に近寄って来てそう言った。クロノさんの表情は苦々しく、他の皆は何故かホッとしていた。
「いやーキツいですよ。2人とも今は止まらないでしょうし……ところで、なんでそんな表情してるんですか?」
「そこをなんとか頼む。それと、この表情は多分じゃんけんで負け、いやなんでもない。……あそこでグーを出せば……!」
ああ、要は貧乏くじを引いたのか。ヴィヴィオとアインハルトがキレてるから、きっと俺もそうなんだろう。と思われているのかもしれない。
「そんな顔しなくても、別に俺はキレてないですから」
「キレてる人は皆がそう言うんだ……はぁ、不幸だ」
心外だ。俺はマジで怒っていないというのに。
そして最後の言葉は某ツンツンヘアーな幻想殺しのリスペクトか何かだろうか?…………いや、唯の偶然だろうけどさ。
やはりというか、なんというか。次元が違ってもクロノさんは苦労人であるようだ。
「じゃあそれでいいです。とにかく、あの2人を止めてくればいいんでしょう?」
「ああ、頼んだ」
俺は椅子から立ち上がると、ヴィヴィオとアインハルトに近寄る。
「ちょっといいか?」
「少し待って下さい。今からこの人から情報を聞き出しますから」
「んーー!んーー!」
「あっはっは、そんなにバタバタしてもダメです」
目が据わってる辺り、ちょっと冗談ではないみたいだ。唯一動かせる足を凄い勢いでバタつかせているフローリアン姉妹の様子が、俺のその考えに確信を持たせる。
このままだとマジで取り返しのつかない事になりそうだし……仕方ない、奥の手だ。
「ヴィヴィオ」
「なんですかシュウさああああああああああああああああああああああああん!?」
やった事は単純で、後ろからヴィヴィオを優しく抱きしめただけだ。優しくだから一切の拘束力は無く、振りほどこうと思えば簡単に振りほどける程度でしかないけれど、しかし今の2人には誰が使うバインドよりも強力な拘束効果を発揮する。
その証拠に、一切の動きを止めて身体をビクンビクンさせていた。
「ちょっと落ち着いて欲しいんだけどなーダメかなー?」
「ひゃい!でででででもですね、これだと逆に落ち着かないかなーって思うんですよ!具体的に言うと、その、胸のドキドキとか子供を作るうんたらかんたらとかがですね!?」
大剣を床に取り落としながらワタワタしているヴィヴィオ。ちょろっと耳元で囁けばこの通りだ。
あんまりやりすぎると効果が薄くなるから滅多な事では使わない奥の手である。
「じゃあ椅子に座って一旦落ち着こう。歩けるか?」
「あっはい!もちろ……あ、ああー。でもわたし、けんおとしたしょうげきでいまちょっとこしぬけちゃったなー。はこんでもらえないかなーチラッチラッ」
「仰せのままに、
俺がヴィヴィオをお姫様抱っこで持ち上げてさっきまで俺が座っていた椅子に座らせると、クロノさんが何とも言えない表情で出迎えてくれた。
「なんというか、そんな恥ずかしい事をよく普通に出来るな……」
「これも慣れですよ。じゃあクロノさん、アインハルトの方は頼みましたね」
「え?いやだが、さっき2人を止めてくると……」
「あれは嘘です」
この奥の手のメリットは、このように対象が絶対に動きを止めてくれる事だ。
しかし、世の中は等価交換で成り立つ。当然の事だが、それに対するデメリットは当然──しかも複数あって
①:まず対象が1人しか取れないこと。
これは俺が抱きしめるという都合上の問題だ。2人同時も出来なくはないが、効果が一気に落ちるのでオススメはされない。
「嘘って、それは無いだろう!?」
「いやだって、行きたくてもヴィヴィオが離してくれないので」
②:しばらく対象が離してくれない。
ちなみに強引に引き剥がそうとすると無言でブチ切れて止める前より悪化する。
今も多分、悪鬼の眼光でクロノさんを威嚇している筈だ。位置の関係で俺から確認は出来ないが。
でもこの程度は3つ目のデメリットに比べたら可愛い物だ。ぶっちゃけいつもの事だし。
で、肝心の3つ目だが……
「頼む、君だけが頼りなんだ!」
「気持ちは分かりますけど……」
「ならやってくれ!僕だって人間だ、恐怖は普通に感じるんだぞ!?」
クロノさんはアインハルトを指さす。俺が意図的に逸らしていた目をアインハルトに向けると、そこに居たのはアインハルトっぽいナニカだった。
「■■■■■■……」
「君がやらかした事だろう!あの言葉も通じなくなってる彼女をなんとかしてくれ!」
……③:対象以外で、俺に好意を寄せてくれている人が近くに居た場合、ちょっと鬼神と化す。
簡単な話、嫉妬に狂う。
あの現象も俺が抱きしめれば容易に止められるが、そうすると今度はヴィヴィオが鬼神と化す。
あっちを立てればこっちが立たない、まさに感情のデフレスパイラルという訳だ。
明らかに等価交換が成り立っていないような気もするが、あの2人を止めるにはそれくらいの代償が必要だと考えると、まあ必要経費として割り切れる。
それにそもそもヴィヴィオは俺の首に腕を回してから離していないので、俺はヴィヴィオのドアップした顔から離れられない。
目が発情した猫のそれだから、もしかするとキスくらいはされるかもしれないが、普段からそれより恥ずかしい事をさせられている身としては「それくらい良いかなー」と考えてしまう。まあ、もうヴィヴィオの初キスを貰っているからこそ言えるのかもしれないが。
ちなみに、本当の意味での初キスは父さんらしい。けど赤ん坊時代らしいから流石にノーカンだよな?
「まあまあ、クロノ君はジュースでも飲んでリラックスしなよ。そしてシュウ君はアインハルトちゃんの所に行ってあげて。ヴィヴィオの面倒は私がしっかり見ててあげるからさ」
「今がどんな状況か分からないのか!?僕の人生でかつてない大ピンチなん……あれ?」
「面白い奴だな、気に入った。殺すのはさい……あれ?」
「はにゃ~~~~……あれ?」
そんな時に向こうの方から掛けられる声。それにクロノさんは魂の叫びを挙げ、俺は咄嗟にネタで返して、ヴィヴィオは蕩けたような声を出して、同時に疑問の声を出す。
なんか、凄い聞き覚えのある声がするんですが。
ヴィヴィオが離してくれた事で解放された俺は、その声のした方を向いて、そして絶句した。
まず目に入るのは栗色のサイドポニー。…………この時点で誰か分かるな。
そして次に目線が移るのは、『撃つ』事に特化した形状のデバイス。
数多の敵を文字通り光の中に消してきたそれは、ただ在るだけで存在感を放ち続けている。
最後に見るのは──エプロン姿という、明らかに手に持った武装と合わない日常的な出で立ち。
そんな、全体的に見るとアンバランス極まる装備をした人の名前は高町なのは。
ヴィヴィオの母親の1人にして、『フェイトさんの貴重なツッコミ(物理)役』『フェイトさんの嫁にして婿』『生きる機動戦士ガンダム』『戦いを(敵と味方を地形ごと巻き込んで)終わらせる英雄』等という、散々な評価を世間一般からされている人だ。
「迎えに来たよー」
「いやそんな近所に散歩に来たみたいなノリで言うことですか!?」
最大の特徴として、見た目が機動六課時代から変わっていない。
◇◇
「なんでエプロン姿なんですか?」
「夕飯作って待ってたらフェイトちゃんからヴィヴィオ達が居なくなったーって呼び出されて、急いで飛び出したら後は流れでね」
「何ですか流れって」
とにかく、なのはさんは帰還の方法を持って来てくれたらしい。それを聞いた隣のヴィヴィオとアインハルトはホッとしたようで、露骨に胸をなで下ろしていた。
ちなみに先ほどまで暴走していたアインハルトだが、なのはさんが指先一つでダウンさせていた。何やったんだあの人。
「はいこれ。なんかよく分からないけど、これで帰れるらしいよ」
「俺の質問はスルーですか……って、あの、これ……」
手渡されたのは3人分の機械、なんだが……なんか凄い見覚えがある。具体的には父さんの部屋で。
「ポケベルですよね?」
「ポケベルだね」
それはポケベル。もうだいぶ前に廃れた地球での連絡手段だ。
「どうしてこの形状に?」
「製作者の趣味じゃない?またはフェイトちゃんの圧力」
「…………まあいいや。とにかく戻れるんですね?」
「見た目はアレだけど性能は確かだよ。それはフェイトちゃんも製作者も保証すると思うな」
「そうですか…………で、そろそろ解放してあげませんか?」
俺はなのはさんを──正確に言うと、なのはさんの膝の上に座らされているこちらの世界のフェイトさん……?を見た。
俺の言葉に対して、なのはさんはフェイトさん……?を抱きしめると一言。
「やだ。絶対に持ち帰る」
「ダメです。元居た場所に返してらっしゃい」
さっきアインハルトを制圧した後にフェイトさん……?と一言二言だけ言葉を交わして、その直後からずっとこうだ。
気持ちは凄い共感できるが、でもダメだ。俺は心を鬼にしてなのはさんと向き合う。
「な、なのはぁ……」
「なにかなフェイトちゃん?」
「貴女じゃないですから。向こうの小さいなのはさんですから」
「やだ……向こうの私、若すぎ……?」
捕獲されたフェイトさん……?はこの世界のなのはさんに助けを求めて手を伸ばし、それに答えるように向こうのなのはさんも「フェイトちゃん!」と声を上げて手を伸ばしていた。
「まあそれは置いといて。フハハハハ、フェイトちゃん姫は頂いた!」
「フェイトちゃん姫って語呂悪すぎでしょ」
高笑いするなのはさんは無駄に様になっていて、フェイトさん……?も連れ去られるヒロイン役が無駄に様になっていた。
「ところで……」
なのはさんは縄でぐるぐる巻きにされたまま床に倒れているフローリアン姉妹を見て言った。動かない所を見るに、多分気絶してるっぽい。
「そこの通路でノビてる奴はなんなのかな?」
「此処に住んでます」
「さらりと嘘をつくのはやめないか」
クロノさんのツッコミには、やけに哀愁が漂っていた。
おまけ
「なんじゃ今回の話、なんかやけにシュワちゃん主演の映画ネタが多いのう」
「一昨日のイレイザーで熱入っちゃったんだって。『奴のツラ目掛けて突っ込んで行け』とか、『道が混んでた』とか、『良い銃だなマヌケェ』とか、テレビで聞いてテンション上がっちゃったみたいで」
「『ペパロニのピッツァだぁ激ウマだでぇ』とかもじゃな。
……ところでリンネ。わしらの出番は……」
「あと1話、つまりは次で無理矢理終わらせて、その後に4つの短編を1話に纏めたのを2回くらい投げて、それからかな」
「近いような、遠いような……。それともう一つ気になっとったんじゃが」
「なに?」
「番外編、なんであんなに中途半端なんじゃ?そろそろ苦情が来そうなんじゃが」
「飽きっぽいから」
「えっ」
「ぶっちゃけここまで書き続けられてるのが奇跡みたいだって言ってた。考えてない訳じゃないらしいんだけどね」
「ええー……」