メガーヌさんはこんな感じで良いのかなぁ……キャラが掴めない。
ようこそ世紀末
西暦20XX年、世界はピンクの光に包まれた!
地は裂け、草木は消し飛び、あらゆる生命が消失したかに見えた。
だが、この女だけは死滅していなかった!
「逃げ回れば、死にはしない……」
その女の名はフェイト・T・ハラオウン。人は彼女をハンザイシャスレイヤーと呼んだ。
「死にはしない、けど……!」
彼女は一瞬にして滅んだ街に悲嘆の目を向ける余裕さえ無い。何故なら、一瞬でも気が緩んだ瞬間が彼女の終わりだからだ。
今、フェイトの眼前はピンクで埋め尽くされていた。正確に言うならば、縦横無尽かつ無数に蠢くピンク色のアクセルシューターが、フェイト個人に目掛けて突っ込んできているのだ。
両手に握られた二刀のライオットブレードを手元で回転させながらアクセルシューターを切り払い、撃ち漏らしはプラズマランサーで相殺する。
自慢の高速機動でアクセルシューターを振り払い、即座に振り返って一閃。ピンクの爆発が眼下に広がり、全てのシューターを誘爆させて破壊する事に成功した。だが、それはまだ攻撃のほんの一部でしかない。
瞬間、視界の端で閃光が瞬いた。
頭が何を思うよりも先に、身体は既にその場所を飛び退いている。そして、そこを一筋の光が走り抜けていった。フェイトの背中にすうっと冷たい物が走る。
「相変わらず容赦が無い……ッ!」
今のは確実に脳天を狙いにきていた軌道だった。演習とはいえ──いや、演習だからこその本気の一撃。絶対に仕留めるという気概を感じ取れる。
フェイトの高速機動に慣れてきたのか、段々と狙いが正確になってきているピンク色の閃光に苦いものを覚えつつも、しかしそれと同時に高揚感も覚えていた。シグナムとでは決して味わえない砲撃型との駆け引きを楽しんでいたからだ。
だがこのままではこちらは向こうに決定打を与える事ができない。どうにかして接近する必要があった。
「バルディッシュ。今から一気に詰め寄ったとして、あと何発喰らう?」
《最低でも4発ほどかと》
相棒の試算にフェイトは頷き、そして突撃する。最低限の4発を避けれないようではこの死合を制する事はできないし、逃げ回っていてもジリ貧だからだ。それに、砲撃型の相手に延々と遠距離戦を仕掛ける事ほど愚かな事もないだろう。
「……レイジングハート」
主の呼び掛けに、紅いコアユニットを輝かせる事でデバイスは応える。
迎え撃つは四門の砲塔、そのうち二つは主を護る盾の役割も担っている。青組最後の生き残り、なのはは防御を己のデバイスが制御する機動盾に任せ、両手で長大な砲身をフェイトへと向けた。
その装備の名はCW-AEC02X
第三管理世界、ヴァイゼンの魔導端末メーカー「カレドヴルフ・テクニクス」が開発・提供している対AMF装備の一つである。
その長大な砲身は、砲弾に対して圧倒的な加速力と破壊力を付与する魔導的なレールガンとして機能し、また、突撃槍や重剣としても扱える遠近両用の武器だ。
「ディバイン……」
身内読みというのか、なのはにはフェイトがどう避けるかが大まかに読めていた。最も、それはフェイトも同じことだろうが。
「バスターーっ!」
放たれた一条の光は瞬きのうちにフェイトにまで到達する。しかし、やはり読まれていたのか僅かにバリアジャケットを掠める程度に被害を抑えられてなのはは内心で舌打ちした。
ストライクカノンの欠点として、発射から着弾までがあまりに早すぎるので、なのは自身にも砲撃の制御ができない、という物がある。つまりどういう事かというと、普段ならできる"一度避けられた砲撃を曲げて背後から直撃させる"や"砲撃でまくのうちラッシュ"等のテクニックが使用不可能なのだ。
この欠点は戦術の幅を大いに狭める致命的なもので、発射タイミングに回避を合わせられると簡単に避けられてしまう。初見や格下には非常に有効だが、フェイトやシグナムクラスになると殆ど通じなくなるのである。
「レイジングハート!」
《Divine Buster Full Burst》
しかし、それも予想はできていた。フェイトならば避けるだろうと半ば確信めいた予想をしていたなのはは、当然次の策を用意している。
続いて周囲に滞空している三門の砲塔が火を噴いた。一筋の閃光ではなく、何十もの細かい光に分かれた拡散ビームがゲリラ豪雨のようにフェイトを襲う。
「くぅっ……!」
地面スレスレを飛ぶフェイトの周辺のビームが着弾した場所が弾け飛び、土煙と共に上層部が抉られていた建造物が完全に崩壊した。砕け落ちる音を背後に聞きながら、フェイトの目線は空中に浮かんだなのはにのみ向けられている。
飛び散ったガレキの破片で傷付き土埃で汚れていても、なお消えぬ闘志がそこにはあった。
「バルディッシュ!」
《Plasma Smasher》
仕返しと言わんばかりに放たれたプラズマスマッシャーは、なのはの近くを浮遊する盾の一つが射線を遮るように立ち塞がって受け止める。
その盾はプラズマスマッシャーを防ぎきると素早く元の位置に戻った。そして再び開いた射線にピンクの閃光が煌めく。フェイトは咄嗟に宙返りで閃光を回避した。
拡散ビームの雨霰の中を突き抜けてくるフェイトを見たなのははストライクカノンを左腕のアタッチメントに装着すると、空いた右腕に浮遊していた一つの盾を装備した。そして、その盾から実体剣を出現させると、それでフェイトのライオットブレードを迎撃した。
「てぇいっ!」
「っ!」
激突するライオットブレードと実体剣。激しい火花と音を撒き散らしながら、至近距離でフェイトとなのはが向かい合う。
「"待"ってたよ!この"瞬間"をォ!!」
「暑苦しいなぁもう!」
一度お互いに距離を置き、フェイトは二刀のライオットブレードを一刀の長剣に変化させ、なのはは左腕のストライクカノンに魔力刃を出現させて再び切り結ぶ。ガリガリと凄まじい勢いで二人の魔力刃が削れていき、周囲にピンクと黄色の魔力の残滓が撒き散らされた。
「やっぱりなのはは凄い!いつも私の予想を上回ってくる!」
「そういうフェイトちゃんも!殆ど無傷で寄られるとは思わなかった、よっ!!」
一瞬拮抗した鍔迫り合いだが、両手でブレードを握っているフェイトと、あくまで片手で受け止めているなのはでは使える力の総量が違う。フェイトに押し切られるようにして鍔迫り合いに押し負けたなのはは、続くフェイトの猛攻を残り二枚の盾と右腕の実体剣を展開した盾をフル活用してなんとか凌ぐ。
「どうしたの?!動きが鈍くなってるよ!!」
「私、遠距離型なんだけどなぁ!──フォートレス!!」
その言葉を合図にして、二人の間に壁を作るように上からの砲撃が飛んできた。フェイトが飛び退き、近距離戦の強制から解き放たれたなのはは牽制にアクセルシューターを数発放って距離を置いた。
CW-AEC00X
こちらもストライクカノンと同様にカレドヴルフ・テクニクス社の武装であり、ストライクカノンと併用する事を前提に設計された戦闘支援武装である。
わかりやすく言うと、なのはの周辺には3機のシールドビットと、レイジングハートの先端部分を切り離したような形状のメインユニット兼ファンネルの、合計4機が常に滞空しているのだ。
「なのはばっかり装備マシマシでズルイ!私のはブレードが二刀になって片方を投げてもブーメランみたいに帰ってくるくらいしか変化ないのに!!」
「文句なら管理局に言って!!」
ライオットブレードを二刀に換装したフェイトは、その片方を、やけに気合の入ったフォームで思いっきりぶん投げた。歴戦を共にしてきた相棒の、あんまりといえばあんまりな扱いに思わずなのはの口元が引き攣る。
滞空している多目的盾が動き、内蔵されている砲戦用の大型粒子砲を傷付けないように受け流す形でブレードを弾き飛ばした。錐揉み回転しながら背後に吹き飛ぶそれに、なのはは自分が対応を間違えた事を察する。先ほどのフェイトの嘆きが正しいのなら、次にフェイトが打つ手は──
「この瞬間を待ってた!!」
「どの瞬間なの!?」
「あの瞬間だよ!!」
再度の接近。今度は牽制のアクセルシューターに被弾しながらも確実に詰め寄ってくる。そして背後からも、まるで意思があるかのようにライオットブレードがなのは目掛けて飛んでくる。
並の魔導師であれば、ここでどちらも防御出来ずに詰む。プロテクションは円形に範囲を伸ばすと、同じ魔力量を使い一点集中で発動した時と比べて強度が劣り、更に発動時間も余計にかかるのだ。そしてその薄い防御破ることくらい、フェイトには濡れティッシュをぶち抜くのと同じくらい簡単である。
《Protection》
が、それは並の魔導師が相手ならのお話である。
管理局のエース・オブ・エース、生きる機動戦士、全身ガンダニュウム合金、ターミネーター、元コマンドー、悪魔、死神、鬼教官
そんな数々の(一部を除いて)不名誉すぎる称号を持っているなのはのプロテクションは、使い込まれている事も相まってフェイトでも容易には打ち破れない強度を有している。
(あまり時間は掛けられない……)
バルディッシュから知らされた残り時間は僅か、このままではHPの差で赤組が負けてしまう。だからこそ、ここでフェイトは多少の被弾を覚悟して至近距離に噛み付いたのだ。
なのはは砲撃魔導師であり、長年のキャリアもあって距離の置き方も心得ている。一度引き剥がされてしまうと、残りの時間でもう一度噛み付くのはフェイトでも不可能に近かった。
「ソードオフ!」
その一言をトリガーに、飛んでいる方のライオットブレードの刀身が爆ぜた。魔力で構築された刀身が、かなりの数のプラズマランサーに化けたのだ。
フェイトがFPSゲームで愛用しているソードオフ・ショットガンに不意に何かを思ったのか、それともショットガンという近接専用銃の存在自体に思うところがあったのか。
ともかく、シャーリーとフェイトが3徹の末に完成させた専用術式《ソードオフ・ショットランサー》はショットガンと同じく「至近距離で最大火力を発揮する」射撃術式としてなのはに牙をむいた。
この《ソードオフ・ショットランサー》で射出されるプラズマランサーは性能が大幅改造されており、最大飛距離を1/20にする事によって発生した余剰リソースを全てバリア貫通能力に割り振った特別仕様となっている。
全段命中でも総火力は決して高くはないが、ディバインバスターに匹敵するバリア貫通能力によって防御が硬い魔導師には特に有効に働く。そう、なのはのような魔導師には特に。
「うっそ………」
何十本ものプラズマランサーが同時にプロテクションにぶつかり、一瞬でひび割れた己の防御に信頼を寄せていたなのはは驚愕に目を見開いた。
そして、ひび割れた壁を強引にぶち抜く事に関しては、フェイトもなのはに負けてはいない。
「さあ、さらけ出すといい……なのはという存在、その全てを!」
「ここでそのセリフチョイスするの!?」
極めて原始的に、そして力任せに叩きつけられたライオットブレードによってプロテクションは割られ、その勢いは衰えることなく、なのはの胸元へと吸い込まれるように突き立てられた。急速に削られるHPになのはが顔をしかめる。
「捕った!第三部、完ッ!」
「っ……まだだよ、まだ終わらない!」
ところで、これは何の関係もない話だが、勝負事において人が最も油断するタイミングは勝利がほぼ確定した瞬間であるという。
なのはの背後でレイジングハートが不穏な動きを見せた。スススッとフェイトの視界から隠れるようになのはの背中に移動すると、その砲身から魔力刃を生成する。
《A.C.S., standby》
それは、いつかの聖夜になのはが使ったレイジングハートの突撃形態。それがなのは目掛けて突撃し、
「ぐうっ!」
「なんっ!?」
「なのは、何を!?」
「私だけが落ちるなんて納得いかない……フェイトちゃんのHPも、一緒に連れて逝く……!」
「だけど、そんな事をしても私がなのはのHPを削りきるのが先!どのみち私の勝ちだ!」
「それは、どうかな!?」
「なん……だと!?」
なのはが両手でフェイトの肩をがっしり掴むと同時に謎の発光をはじめる。
「ヴィヴィオ……ダメなママでごめんね……。そしてシュウ君……ヴィヴィオを宜しくね……」
「ちょっと!!なんでハイクめいた発言してるの!?まさか──」
「任務、完了……」
「自爆テロだコレーーーーッ!!?」
ちゅどーん
◇
「おーい、エリオーー。生きてるかー?」
「な、なんとか……」
地獄のような陸戦試合が終了して、場外から観戦していた俺とユミナさんとメガーヌさんで犠牲者達の救助を行っていた。
なのはさんの自爆という形で終わったこの試合は、無効試合として処理する事が決定されている。しかし、試合結果は無効になっても犠牲者達のダメージは無かったことにはならないので、回復のために今日はこれでお開きになるらしかった。
「あれ、キャロとフリードは?」
「先に部屋に送還されてる。肩を貸そうか?」
「いや、いい。膝が笑ってるけど、辛うじて歩けるから……本気で死ぬかと思った」
「ああ、まあそう思うよな。俺、今回ほどリンカーコア無くて良かったって思ったのは初めてかもしれん」
見るも無残なレイヤー建造物の成れの果てを見ながら俺とエリオはゆっくり歩き始めた。
「他の皆は?」
「何人かは掘り起こしたけど、全員ガレキの下に居た。もちろん、お前とキャロとフリードもだ。掘り起こすの苦労したんだぜ?」
「そりゃあ手間かけたね……無事なの?」
「メガーヌさん曰く、デバイスの緊急防御システムが働いてるから、特に大きな怪我は無いそうだ。フリードは自前の強靭な生命力でなんとか」
空を見上げると、向こうの方から真っ黒い雷雲が近付いてくるのが分かった。近いうちにこっちにやって来そうだ。
「なのはさんとフェイトさんは?今回の件について流石に文句の一つくらいは言っておきたいんだけど」
「メガーヌさんに捕まってお仕置きされてる。観戦席のあった場所に居るよ」
あの2人はやり過ぎたんだ……途中からチーム戦そっちのけでタイマンを始めると誰が予想したか。いや、戦術的には強い奴を強い奴で抑えるのは正しいのだろうけど、二次被害が酷かったのが悪い。流れ弾で皆がガンガン落とされてたし。
「そうなんだ……ちなみにお仕置きって、どんな感じの?」
「石抱き」
「えっ?」
「石抱き。拷問だよ」
慣れた手つきで拷問の準備を整えたメガーヌさんに一生逆らわないようにしようと決めた瞬間だった。なんで当然のように石抱き用の石を用意できるんですかねぇ……
「えっ、ええっ!?ちょ、それ大丈夫なの!?」
「メガーヌさんも引き際は心得てるだろうから大丈夫だよ。やけに手慣れてたし、多分その道のプロだったんじゃないかな?」
「知りたくなかったそんな情報……」
しばらく歩いて集合場所の観戦席があった場所に戻ってくると、近寄るにつれて呻き声らしき音が聞こえてくる。エリオはそれに疑問符を浮かべ、段々と声の主が分かってくるとその顔を引き攣らせた。
「あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"…………」
「ゔあ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"…………」
ボロボロのバリアジャケット姿のままで石抱きされているフェイトさんとなのはさん。石はお互い2枚ずつ積まれている。
「地獄の底から聞こえてきそうな声だよな」
「聞いてると呪われそうな……」
「あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"……あ?エ"リ"オ"ォ"ォ"ォ"ォ"ォ"!!」
「うわぁぁぁぁぁ!?」
「待て、なんで俺を盾にする」
正座の姿勢のまま、石が2枚も載っているとは思えない軽快な動きで跳ねながら寄ってくるフェイトさんにエリオが俺を盾に隠れた。
「はーい、動いちゃダメですよー」
「ゔあ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"!! エ"リ"オ"ォ"ォ"ォ"ォ"ォ"!!」
「フェイトさん……今回ばかりは僕も擁護は出来ないです」
そして、直後にメガーヌさんがバインドを投げ縄のように投げてフェイトさんを捕まえると元居た場所に引きずり戻す。悲痛な叫びを木霊させたフェイトさんを、エリオは俺を盾にしながらそう言った。
「さあシュウ君、埋もれてる人はまだ居るから急いで救助に向かいましょう?天気予報によるとあと少しで雨も降るし、それまでに皆を掘り起こさないと」
「ですね。エリオ、悪いが……」
「大丈夫、1人で戻れるよ。それよりも早く皆を助けてあげて」
「分かってる。でもヤバそうならすぐに連絡しろよ?」
俺は背負ったスコップを揺らしながらメガーヌさんと共にまだ埋もれている要救助者を助けに世紀末と化した廃墟街へと降りて行く。
エ"リ"オ"ォ"ォ"ォ"ォ"ォ" キ"ャ"ロ"ォ"ォ"ォ"ォ"ォ"
ヴィ"ヴィ"オ"ォ"ォ"ォ"ォ"ォ"
背後からの声は聞かなかった事にした。
おまけ、観戦者たち
「ねえシュウ君」
「なんでしょうユミナさん」
「これ、チーム戦だよね……?」
「その筈ですけど」
「なんで1VS1の決闘になってるのかな?」
「それもこれもなのはさんのSLBが悪いんですよ。あの人、平然と味方ごと巻き込んでパナしてましたし」
「ヴィヴィオちゃんも光の中に消えていったよね……」
「最期の「えっ」って言いたそうな表情は忘れられな──何の光ィ!!?」
「なのはさんから光が逆流する……!?」
「あらあら、あの2人にも困ったわね」
「いや、あれは困ったとかそういう類い、で、は……」
「あらシュウ君、どうしたのかしら?」
「メガーヌさん、あの、その石は何に使うつもりですか?そもそも何処から?」
「禁則事項よ。知らない方がいいわ」
「アッハイ」