鬱これ:財前提督シリーズ   作:駒由李

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良い風呂の日だったので入渠ネタにしよう→気がついたら半分ぐらいは関係なくなったよ という事態に陥りましたどうしてこうなった_(:3」∠)_  
とある方の「ドッグって健康ランドなんじゃ」というお話が私の中でピッタンコカンカンなんですが一応ここではお風呂設定です。あと流水シャンプーはマジでオススメです、それまで悩まされてた頭皮のかゆみがだいぶん治まった上に抜け毛も減りました。男女両方にいいらしいそうで。どうしても痒いっていう人は低洗浄力のシャンプーがいいそうです。
ところで旧海軍の葬式の時の将校の服が正装の方なのか通常礼装なのかそれとも通常の軍服なのかわかりません教えてミリオタの人_(:3」∠)_ カーチャンに訊けば1発だったんだろーが とりあえず通常礼装の方にしました。でもここだと元提督の葬儀に参列したって事になってるから正装の方だろうか……あと海軍の弔砲わからん_(:3」∠)_ というか弔砲というのがよくわからんのよね 
お題は「晩霞」(http://www11.plala.or.jp/harutake/banka/banka_top.html)より。


どうか私を信じないで

 大浴場前。久方ぶりに顔を合わせた司令官を見て、天龍は鞄を片手に彼の頬を軽く抓った。

「どうしたんだよ司令、元気ねーぞ」

「え、ひょーかな。あといひゃいてんりゅー」

 上背だけは天龍を上回る、司令官の声にも張りがない。幼顔に反して低い声だが、それにしたっていつもより沈んで聞こえた。上官の抗議の声に構わず丸い頬を摘んでいた天龍は、彼が落ち込んでいる理由を推測する。

 士官学校時代の恩師の葬儀に出席する為に、ここ暫く鎮守府に不在だった。天龍が如月筆頭の駆逐艦を連れて遠征に赴く前に、この日の夜遅くに帰投するとは訊いていたものの、こんなに落ち込む程の相手だったのか。天龍はそう思いながら、既にシャツとジャージというラフな姿になっている司令官の手にする、洗面器の中に気付く。そしてその中のラインナップに、思わず手を放して声を上げた。

「……元気ねーのも気になるが、何だよこの女子力満載ラインナップ。トリートメントにコンディショナーにヘアパック、化粧水に乳液って」

「えーだって俺、髪が傷みやすくて」

「如月みたいな事いうな! 気を遣いすぎだろこれ!!」

「今時の男子はお手入れぐらいするよ~」

「私がどうしたのーってあら、司令官さん帰ってたのね」

 会話に参入してきたのは、角を曲がってきた当の如月だ。天龍に問い詰められている司令官の姿を認めると、人なつっこく駆け寄ってくる。そして彼の手の中にある洗面器、その中にあるケアセットを見て、彼女は自分のビニルバックを示しながら微笑む。

「あら、私と同じシリーズのヘアパック使ってらっしゃるんですね司令官さん」

「ああ、ここのいいよねー。君もよく髪が傷むとかいってるけど、ここのは効くよねー。ただ5分待つのって結構辛いよね」

「わかります~」

「おいお前ら、俺を挟んで理解不能な会話をするな……! おい行くぞ如月」

「あらーそれじゃ司令官、また明日から宜しくお願いしますねー」

「ああ、ゆっくり入ってきなよ」

 肌や髪の手入れなど、妹分の龍田にされるがままで天龍には今ひとつ理解が及ばないものだ。ましてや自分達艦娘は戦闘が本分で、彼女もそれを心から楽しんでいる。ゆえに、「自分磨き」などというものに彼女は苦手意識すら持っていた。だから如月と上官が交わしはじめた会話を打ち切らせ、如月を傍らに担いだ彼女は女子風呂に入っていった。見送る司令官の様子のおかしさを、一瞬だけ忘れてしまって。

「……風呂入ろ」

 ひとりごちる、彼の言葉を聞く者はいない。元より、最高司令官という立場ゆえに、部下を風呂場でまで萎縮させないように最後に入るように努めている彼だ。彼は「女子力満載」のケアセットの詰まった洗面器を片手に、青い暖簾を潜った。

 本国で参列した葬儀。そこで覚えた感情を洗い流し、また彼は司令官へと戻らなければならなかった。洗い流す為にも浮き上がらせた記憶はまだ新しい。曇天の秋の下、士官学校時代の先輩と再会した時、交わした会話を。先程、彼女達と交わした他愛ない会話、それを大切に思っていたから。

 

 

 

「艦娘が轟沈しても、葬儀をまともに行う事の方が珍しかったそうですね」

 弔砲が鳴る。式の終わりを告げる音だ。曇天の下、集っていた礼装の男達が徐々に散開しようとしていた。その礼装は、海軍のものがほとんど。陸軍や空軍、それに高価そうな喪服を着ている者まで見られたのは、今回の葬儀の主の嘗ての影響力を若手にも知らしめている。嘗て、深海棲艦を文字通りの艦船のみ、戦術で対抗していた先人の、死。それは、海軍の中で、深海棲艦への戦法への転換点を、誰にも予感させていた。大方は、悪い方へ――そこに立っていた2人の軍人も、その中の1部だった。比較的見た目が若く、本来ならまだ軍事学校に通っていても可笑しくない年頃だ。実際、若いのだ。しかしその袖章が、彼が佐官以上の地位にある事を示しており、通り過ぎる人々の目を時々瞠らせていた。そんな「少年将校」といった方が適切の幼顔は、今は正帽を目深に被っていて半分程隠れている。冷える晩秋の空気。装飾用の短剣の束を手袋越しに握る、少年の手に力が籠もっていた。それを見て、相対する青年は顔を顰めながらも相槌を打つ。

「そうらしいな。今でいったら、彼女達のつけている装備のようなものだ。壊れたら、捨てる。それだけだ。今は、だいぶ、よくなった方のようだがな」

「馬鹿馬鹿しい」

 吐き捨てる声は、幼い顔に反して低い。一瞬、それが自身へ向けられた言葉かと思ったが、次いで出された少年の言葉に、それが艦娘達への待遇についての批判だと知った。ともすれば彼女達に似て見える士官学校の後輩は、忌々しげにその顔を渋くしていた。その顔が、時に彼も目撃する事のあった深海棲艦のそれに似ていた。少年はいう。

「別に、この葬式みたいに派手にしろ、とか、そういうんじゃなくて。彼女達が今1番、戦線で命を張ってる。なのに、いまだに待遇は家畜のそれだ。……教授だっていってたじゃないですか。自分達司令官は1番安全なところにいる。それなのに軍の中で尊ばれるのは、危険に身をさらす彼女達じゃない、自分達だ。それがおかしいって、何で誰もいわないんだ」

 後半は悔しさの滲むものだった。そこに、青年は彼の青さや若さを知る。彼もまだ20代で、地位も年齢に反して高い方だ。それでも少年のような情熱は既に失われていると自覚していた。青年は窘めるように、後輩に向けて頭を振る。

「僕達の通弊は確かにそこにある。だが、彼女達をあまりに奉っても、どちらにしろ今は彼女達に頼るしかない。下手をすると彼女達の轟沈を賛美して、更にそれを加速させるかも知れない。『お国の為に轟沈する』事を強いる馬鹿どもの為にな。……正味な話、ある程度立場が低い方が守りやすい。■■、もっと戦況が落ち着いてから彼女達の立場向上に努めた方がいい。君のいいたい事はわかるが」

「いつ、落ち着きますか」

「……わかってるさ。寧ろ、悪化してきている。だからこその、昨今の急激な『鎮守府』の増設や、君程ではなくても若い軍人が司令官へ昇進される事例の多さだ」

 突きつけられる声。それは彼の帯びるサーベルよりも硬く鋭く、青年ののど元に突きつけられる。しかしそれは、彼にとって慣れきって、そしてわかりきった冷たい事実だ。喉をひやりとさせる感覚に、青年はずれてもいない正帽の鍔を下ろした。大尉を示す袖章と少年のそれとを見比べていく人物がいた。視線を構わず、見詰めてくる円らな目に、青年は溜息を吐く。

「教授もいっていたな。『軍がやたらと昇進を増やしたり英雄を作ったり功績を過度に褒め称えて喧伝しはじめたら、やばい』と」

「今将にそのやばい状況じゃないですか」

「困った事にな。……今回の教授の死、嘗て一般人のみ、艦船のみの戦術で深海棲艦を破っていた軍人の死を、軍はどういう風な宣伝材料にするかわかったものじゃない」

 鍔に手をかけたまま、青年は顔を向ける。少年も釣られてそちらを見た。葬儀会場となった教授の自宅。そこでは軍の広報部が、教授の夫人とその養子の長男に取材をしているようだった。煙たげに広報部を追い払う彼らを遠目に眺めながら、少年はいう。年にも顔にも見合わぬ、深刻さを刻んだ表情で。

「ただ、嘗ての英雄の死を伝えるだけならともかく、教授が死んだ事で『艦船のみの戦術で戦う時代は終わった。艦娘のみの戦法に一本化すべきだ』っていう風に軍が方針を固めなければいいんですが」

「それどころか艦娘にも司令官を任せるようになったりしてな。僕達司令官も第一線にいる、死なない可能性がゼロではないしな」

「笑えませんよ」

「冗談をいったつもりはないからな」

「……冗談じゃないですよ」

 眉を顰める、後輩を見上げて青年は思い出す。士官学校生だった時点で、既にこの後輩は目的を見定めていた。それでも、遠方の僻地に飛ばされるまでは、こんな顔をしなかったと、彼は思う。実際に前線で彼女達と接したからだろう。まだ犠牲を出していないとは訊いているものの、その為に、糸が極限まで張り詰められているようだった。それに仄かな危機感を覚える。しかし、可愛い後輩のそれを解消してやるには、彼らは物理的に離れすぎていた。そしてこれからも近づく事はないだろう。将校同士はそんなものだ。だから今、出来るだけその糸を緩めてやる為に、密かに尽力する。彼の糸が切れれば、彼のみならず、彼の部下――艦娘達を巻き添えにする可能性がある。彼ら2人にとってそれはどちらも度し難い結果だった。だから青年は、少年を窘める。

「時代だ。わかっているだろう。君が最終的に目指している『艦船のみの戦術の復活』による艦娘達の解放は、本当に難しい。それこそ、ずいぶん前にはじまったこの戦争が、君ひとりの手で片付けられると考えるのは寧ろ傲慢だ。それこそ、教授のいっていた『ベストよりベター』だ。君はその段階を少しずつ踏み、次代に受け継がせる事の方が重要だ」

「わかっています、そんなの」

「そうだろうな。そもそも、果たして戦争が終わったあとの艦娘達が、今度は一般人から爪弾きにされる可能性も、君はわかっているだろうからな」

「……わかっています。結局、一般人からしてみれば、艦娘の強さもまた化け物、ですから」

 唇を噛み締め、短剣を握りしめる手によりいっそう力がこもる。後輩の悔しさが伝わってきた。それを認めるのが悔しい、恨めしい、辛い。負の感情と言い切るには、あまりにかなしいそれ。

「人は理解出来ないものを恐れる。いわば深海棲艦は、一般人と艦娘にとっての共通の恐怖で、そして敵だ。……彼女達を駆逐してしまう前に一般人に艦娘を本当に受け入れて貰った方が、切り離せないぐらい浸透していた方が、いい。俺にとってそれが理想なんですけどね」

「理想は理想だ。戦場も理想通りにはいかないだろう、いつだって」

 自嘲する後輩に、先輩は肩を竦めた。少年のそれに比べれば厚い肩には、既に幾多もの命が重なっていた。生きている者と、死んでいる者と。それを少年は知っていた。青年は続ける。

「結局、今のところ艦娘の力を1番受け入れられるのは軍しかない。だから艦娘の存在を軍でアピールして、軍の中で彼女達を切り離せないものにする。それが結局、彼女達の為になるんじゃないか」

「たとえ、軍で生きたくなくてもですか」

「現実、他にないだろう」

「だから俺は、せめて選択肢を広げたいんです。平和になった時、彼女達の居場所を、出来るだけ速やかに広げる為にも、艦船のみでの戦術を復活させたい」

 彼は笑った。苦しそうな笑みだった。

「何も、片方だけじゃなくてもいいんですよ。選択肢は多い方が、幅が広がる。軍は、だから艦船のみでの戦術を衰退させるべきじゃなかった。それが結局、自分達の為にもなったのに」

 それに対する答えは、青年は持たなかった。

 

 

 ヘアパックを塗りおえる。目を瞑り、300秒のカウントダウンを脳の片隅ではじめた。そして彼は、いつもは下ろしている前髪を掻き上げる。その様を見る者は、この広い浴場で、今は誰もいなかった。

(先輩は、そういえばどこに行くんだったっけ)

 結局、問答のあと直ぐに互いの迎えが来て、挨拶もそこそこに別れた。その先輩の口から、彼もまた昨今の流れに巻き込まれた事を知った。つい先日、ある深海棲艦の大襲撃の中、武勲を上げて中尉から大尉に昇進したばかりだった。それが「これ以上なく有能な指揮官」として一時期、軍に持て囃された挙げ句、新設の鎮守府に赴かされる事となったという。青年もまた、後輩と同じように上層部から「有能だが扱いにくい」人材と見なされていた事を、後輩の彼は思い出したのだった。事実上の2階級特進に近いので、後輩の彼としては不吉で仕方がない。尤も、簡単に死ぬような人間でもないし、寧ろこれをチャンスと捉えるだろう。「類は友を呼ぶ」と彼らが呼ばれたゆえんだった。扉が開く音がする。こんな時間に誰だろう、そう思いながら彼は250秒のカウントを切った。

(そう、これはチャンスだ。俺が、真実を知って、そして、艦娘の立場向上をさせる。……その為にも、絶対死なせるものか。誰だって。結果として彼女達を利用するという事になるけど、それでも)

『――』

『――』

「……賑やかだな」

 思考の螺旋に陥りかけた、彼の意識を取り戻したのは、浴場の奥。露天風呂へと続くガラス戸の向こう。正確には更に竹の柵を隔てた女子風呂からだった。先程は天龍と如月しかいなかったが、彼女達だけで遠征に行かせたという報告はなかった。他の艦娘達も追いついてきたのだろうか。そう思いながら、先程の浴場の出入り口。抓られた頬の痛みを思い出す。

『どうしたんだよ司令、元気ねーぞ』

「……君に心配される資格は、俺にはないよ」

 呟く声は、口の中。先程入ってきたらしい者にも聞こえないぐらいの小ささだった。そして、それが彼にとっての真実である事を彼自身が知っていた。

 結局、自分はここで接する彼女達を利用しているのだ。絶対に死なせるつもりはない。肉体的に彼女達に致命的な損害を与えはしない。

 けれど、心はどうか。彼女達に信用される司令官でありたいとは願っている。けれども。

 けれども、自分が信頼に能うかは、自信がなかった。彼女達全体の事は考えている。けれど、個人では、どうだろう。

(いっそ、信じてくれなければいい。そうやっていてくれれば、いっそ)

『ある程度立場が低い方が守りやすい』

「……やだなあ、もう」

「何がです。あ、司令官さん、このヘアパックお借りしていいですか」

「あーうんいいよ」

 深刻な自己嫌悪に陥りかけていた司令官は、頷きかけた。頷きかけ、目を閉じたままヘアパックのボトルを手に取る。そして、声のした方へと渡そうとした。

 思わず目をかっぴらいたのは、いうまでもない。そこに、緩やかに波打った長い髪を括った、紫色の目の少女がいたからだ。胸までバスタオルを巻き付けた彼女は、何でもない様子で彼からヘアパックのボトルを受け取る。思わず凝視する彼に、彼女はボトル片手に頬に手を添えた。

「あっすいません、私のヘアパック切れちゃってて。間宮さんはもう店じまいしちゃってるし。何なら貸してくれたお礼に、今、頭、すすいでさしあげましょうか。頭だけとはいわずにお背中も」

 

 その時、天龍は露天風呂に入っていた。熱い湯、夜気の冷たさが心地よい。先程の司令官の様子はまだ頭に引っかかっていたが、あとから追いついてきた龍田の言葉で、再びそれは彼方に押しやられる。手拭いを片手にやって来た彼女は、きょとりと辺りを見渡した。

「あれ、天龍ちゃん。如月ちゃんは~」

「え? そっちにいねーの」

「こっちに如月ちゃんの服とか洗面道具はあったんだけどね~」

 いいながら、龍田は湯船から湯を掬う。そして体に引っかけていく妹分の姿を尻目に、天龍も辺りを見渡した。そして、ふと、ある事を思い出す。

「あ」

「どうしたの、天龍ちゃん」

「最近、あいつがいなかったから忘れてたけど、如月の奴、よく司令官が単独で風呂に入ってると突入しにいってたよな」

「……あっ」

 龍田が声を上げた。刹那、水飛沫。

 岩風呂の真ん中。そこに放り込まれた何かにより起きた飛沫が、天龍の頭をてっぺんからびしょ濡れにした。まだ湯船に入っておらず、難を逃れた龍田でさえも目を瞬く。

「……もー、司令官さんってば過激なんだから!」

「如月!? おまっ何して」

 一瞬ののち、湯船からすぐさま飛び出てきたのは如月だった。天龍よりも頭からびしょ濡れになっている上にタオルを巻き付けたままだ。そのマナー違反を咎める事と、彼女が柵の向こう――男子風呂から放られたという事実に突っ込む事、どちらを優先すべきか迷っている時に、柵の向こうから再び何かが放られた。それを如才なく受け取ったのは龍田だ。呆然とする姉の前で、龍田は受け取ったそれをしげしげと眺める。

「……ヘアパック? これ、如月ちゃんの使ってる奴じゃ」

「如月」

 怒鳴り声ではない。だが、確実に染み入ってくる、それは怒りの声だった。それが司令官が滅多に発さない類の声だと気付いて、天龍は思わず隻眼を瞬く。まだ、目の前の事態とその声の事実を結びつけられずにいた。

 柵の向こうで、司令官は淡々と、しかし確実に怒りながらいった。

「如月。ヘアパックならいくらでも貸すし、申請を通してくれればシャンプーセットを自販機にして置いてやる。だから、今後一切、男子風呂に突入してくるなよ」

「司令官さんったらこわーい☆」

「如月」

「はーいわかりましたー」

 如月の不真面目な返事でも、満足したらしい。やがて怒気は引っ込んだ。思わず事の成り行きを眺めていた天龍型姉妹は、「バスタオルが濡れちゃった」と岩風呂から上がってくる駆逐艦娘を見る。白いタオルを外してその場で水気を絞る彼女は、湯船に放られた衝撃などモノともしていないようだった。そういえばそろそろ改装が出来る程度のレベルには上がっていたような。龍田の手からヘアパックを受け取った如月が悪びれもせずに洗い場へと向かうのを見送りながら、天龍は呟く。

「……あんなに怒った司令官の声、はじめて訊いた」

「私もー。何か新鮮だよね。如月ちゃんへの対応は随分過激だったけど」

「怒るんだなーあの司令官も」

 いいながら、彼女は自身の胸中に見出した感情に首を傾げた。それは日頃、微笑むばかりで、必要以上の労苦を決して艦娘に強いない彼が見せた、人間らしい一面のように思えたのだ。そしてはじめて、その時天龍は彼を信頼する気が起きたのかも知れない。のちに、彼女はそう述懐する事になる。

 

 

 

 その後、間宮の発注により、浴場の前にシャンプーやリンスのみならずヘアパックやトリートメント、コンディショナーなども取り扱った自動販売機が置かれ、主に艦娘に人気を博す事になる。

 

End.

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