鬱これ:財前提督シリーズ   作:駒由李

8 / 18
タイトルネタ通じるかな。提督+伊勢型+飛鷹で節分ネタ。
個人的に日向と飛鷹は一押しの組み合わせです。史実で絡みない? 知らんね!!!! しっかり者の妹属性としっかりしすぎてつんけんしちゃう姉属性のコンビとかね! もうね!! 伊勢と隼鷹は組ませたらさぞ煩いだろうな あ、いつもの鬱設定シリーズですが今回はギャグです。
「行くぞ、飛鷹。豆の貯蔵は十分か」
「司令、ゲームが違うから。確かにそれも18才以下は出来ないゲームだったけど」


提督「もしかして豆ぶつけとけばいいと思ってない?」

 最早、様式美だ。節分の日、豆撒きで戦場になるのは。

「けど何も、普段戦場に行っている私達の鎮守府でなる事はないんじゃないかしら!!」

「飛鷹、突っ込んでいる暇があったらバリケートの強化を手伝え」

 叫ぶ飛鷹、場所は司令官執務室。横では日向が、扉の前に黙々と家具を積み立てていっていた。その腕力はさすが戦艦というべきだろう、中身の詰まった棚を軽々と担いだ。それに飛鷹は密かに感心したものの、直ぐに思い直す。このバリケートを隔てた扉の向こう、そこには日向と同じ戦艦の艦娘が跋扈しているのだ。駆逐艦や巡洋艦などと混じって――後者達が投げても相当な威力だ。だが前者達が投げると、SEは機関銃である。彼女達に突撃された司令室は、現に壁も床も天井も穴ぼこだらけだった。後片付けを想うと頭が痛い。この日の豆撒きに参加するつもりのなかった日向と飛鷹は、「なんだよー入れれねーのかよー」「司令に合法的に豆をぶつけられる日と聞いて!」などという司令室の前を通り過ぎる艦娘達の声を耳にしていた。自然、溜息が漏れる。そして飛鷹は窓を見た。開いたままの大きな窓ガラス、温暖な地域といえど寒風が吹き込んでいた。バリケートを作るのに必死で忘れていたので慌てて駆け寄る。そこには鈎縄が下がっていた。風に揺れるそれを呆れながら巻き取って回収する。それなりに重みがある。飛鷹は再び息を漏らした。声はトーンダウンしていた。

「寧ろ日向は何でそんなに落ち着いていられる訳。司令もさっき、一緒に籠城しようとしたのに『良い事思いついた』なんていって、鈎縄で窓から降りていったし。ここ3階よ」

「今の海軍の士官学校はリペリング降下の訓練もやっているんだな。鈎縄とは古風だが」

「そういう問題じゃなくて」

「司令の頑丈さなら、比叡や長門が投げる豆でも平気だろう」

 言い募る飛鷹。彼女を宥めるように日向が相槌を打った時だ。向こうから長門の声がした刹那、扉の上方、バリケートの甘い部分を豆粒が貫通した。

 ……フローリングに転がる、炒られた豆。それを凝視した。日向がいう。精悍な横顔が引きつっていた。

「………………多分」

「し、司令ー! 今すぐ戻ってきなさーい!!」

 窓に駆け寄った飛鷹が叫ぶ。しかし返ってくるのは、風の音と、豆撒きならぬ豆撃ちの音だ。見えるのは冬の海と、港だ。向こうには工廠が見える。今日も通常運転で、槌の音が響いていた。それでも尚、上官の名を呼ぼうとする飛鷹に、改めてバリケートを固め直す日向は肩を竦める。飛鷹の日頃の司令官への態度を彼女も知っていたからだ。苦笑して日向はいう。半ばからかい混じりで。

「というか飛鷹。君は普段あれだけつんけんしている割には、司令の事を心配しているんだな」

 しかし返ってきたのは、存外に素直な即答だ。諦めた様子で窓を閉めた彼女は、それでも尚「当たり前でしょう」と怒鳴る。とても真剣な顔だ。

「心配せざるを得ないでしょうが。風吹けば倒れるぐらいの病弱男なのよ!?」

「病弱なのは事実だが、あいつはあれでも軍人だぞ……病弱イコールか弱い訳ではないし。ソフトは弱いがハードとメンタルは頑丈だぞあいつは。実際か弱かったらリペリング降下なんてしないし、今年の書き初め大会の時のような悪のりもする。この無法地帯を生み出した豆撒きだってあいつが提案した事だぞ。それにそもそも軍人になんて」

「書き初め大会の時の司令の悪のりに付き合ってたのはあんたじゃなかったっけ。あー司令その辺で穴空いて倒れてるんじゃ」

「人の話を最後まで聞け」

 回収した鈎縄を纏めながらも、飛鷹は落ち着かなそうに室内を歩き回る。まるで檻の中の獣だ、とは彼女の幼顔の外見には相応しくない感想が生まれる。日向は嘆息した。なぜか1番艦、特に妹持ちの艦娘はここの司令官を過剰に心配し、過保護に走る気がある。確かに外見も幼いし実際に若い。普段の性格はどちらかといえば穏和だ。ぼんやりしてすら見える上にマイペースだ。そういったところが、しっかり者で人を引っ張っていくタイプの多い1番艦には、鈍く、保護を必要とする子供に見えてしまうのだろう。尤も、末妹の立ち位置にある艦娘は理解している。頼りなげなあの司令官も、放っておけばちゃんと自分で身の回りの事を済ませてしまう事を。何だかんだで〆切には間に合わせるし、何だかんだで最終的には帳尻を合わせる。ペース配分が非常にゆったりとしているのだ。基本的に姉に世話を焼かれる立場である妹達は、自分達の司令官が強かである事をわかっていた。妹のような性格の姉を持つ、日向でさえそうだ。

(弟持ちの長男の筈なんだがな、司令は。弟属性なんだろうか。もしくは伊勢と同じタイプか。……顔も知らない弟さんが気の毒になってきた)

「ちょ、ひゅ、日向」

 考え事に没入しかけた日向を、飛鷹の声が引き戻す。日向はバリケートを背にしながら彼女を見た。

「何だ、心配はもういいのか」

「それより私達の身の危険を心配した方が良いみたい」

「……まずいな」

 相対する彼女の顔色が悪い。その大きな目の先を見て、事情を悟った。

 穴が大きくなっていた。

 日向は飛鷹に向き直った。その顔は深刻だ。

「飛鷹。君、リペリング降下は」

「出来るわけないでしょ」

「だよな。仕方ない、私が抱えて脱出しよう」

「ちょっ」

 そういって日向は飛鷹を抱える。左腕に座らせる形で。軽々と担いだまま窓に歩み寄る日向は、机に置いていた鈎縄を手に取る。窓を開きながら、暴れる飛鷹を宥めた。

「落ち着け飛鷹。じっとしてくれていないと放り出してしまう」

「いやいやいや、何で抱えるの!? というか隠れてればいいんじゃ」

「私は戦艦だからそれでいいがな、飛鷹。君は軽空母だ。長門型の投げる豆に痛恨の一撃を食らわない自信はあるか」

「……」

「ないなら大人しくしててくれ。大丈夫だ、書き初め大会の時も司令を抱えてたんだ。遙かに軽いお前なら平気だ。だからしっかり捕まっていろ」

「男と比較されても嬉しくな……あれ司令じゃない」

 それでも素直に日向の首にかじりつきかけた、飛鷹はふと気付いた。背後からは豆の放つ音とも思えぬ音と、扉が軋む音。窓の下では、工廠の方から歩いてきた2人の白い人影。伊勢と、司令官だ。日向が眉を顰める。

「伊勢の奴、いないと思えば……」

「……何を運んでるのかしら、司令はスピーカー片手だし」

 飛鷹の言葉に日向は目をこらした。確かに、司令官と伊勢は2人がかりで何かを持っている――木箱のようだ。2人仲良く片端ずつ持って運んでいるのが、微笑ましいが悪寒を禁じ得ない。何せ伊勢は、隼鷹や北上と並び司令官と悪巧みをする仲だ。彼らと工廠という組み合わせは、燐とナフサの化合物に火種をぶち込むようなものである。焼夷弾レベルの被害だ。しかし思わず事態の推移を見守ってしまう。そうこうしているうちに2人は建物の前に木箱を置いた。そして司令官は頷くと、ホーンスピーカーの電源を入れる。そして、それをこちらに向けた。

『撃ち方やめ』

 たったひと言だ。それだけで、背後からの音はやんだ。

 それに思わず感心しかけたのもつかの間だった。日向の左腕から降りる飛鷹。彼女達の前で、司令官はいった。スピーカーで声を拡大しながら。伊勢が木箱の蓋を開いた。

『鎮守府の皆、盛り上がっているようで何よりだ。豆撒きは大事だからな。けどお前ら。福を寄せて鬼を祓うのに、手で撒くだけなんて心許ないと思わないか』

「えっ」

『どうせやるならもっと派手にだ。そういう訳で、今、急遽、伊勢と一緒に作ってきた。豆撒きの大豆を装填できる機銃だ。お前らー一旦鎮守府裏手まで集まれー持っていけー早い者勝ちだぞー』

 木箱の中は、黒光りする機銃が詰まっていた。

 沸き立つ鎮守府。飛鷹は怒鳴った。

「日向! 今すぐ私を馬鹿司令のところまで下ろして!」

「艦載機を飛ばしたらどうだ」

「直接殴らないと気が済まないの!!」

「了解した。掴まれ」

 既に扉の外には気配がない。しかし1分1秒と惜しかった。飛びついて首にかじりつく飛鷹を抱えた日向は、素早く窓に鈎縄を引っ掛け、片手で降下した。

 最短距離で司令官の下へ辿り着くと、飛鷹は小さく礼を言ってから、司令官の方へと走っていった。それは見事なドロップキックだったと、蹴られた司令官が冬の海へと落下していくのを目撃した伊勢型は語る。水しぶきが上がった。

 これがのち、「●●鎮守府司令官節分水没事件」といわれる事件の全容である。この事件に先立ち、この鎮守府では、まるで深海棲艦の襲撃にでも遭ったような弾痕が残り、改修を余儀なくされたという。

 

(手でぶつけるなんて生ぬるい!! By 司令)

 

「……1番体の心配をしていたんだがな。その手で海に突き落とすとは」

「飛鷹も結構大胆ねー」

「それより伊勢。何を機銃を作るのを協力しているんだ」

「私まだ戦艦だしー。それに書き初め大会の時に、日向と司令が人間書道やってたじゃない。司令が筆役で、日向が抱えて書き初めしてさ。司令も頭を真っ黒にしてまで。私もこういう全力投球の悪い事をしたくってー」

「被害は甚大だがな。飛鷹、そろそろ司令がチアノーゼ起こしそうだから海から引き上げてやれ」

 

End.

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。