月影のセリオン   作:手無玲惟

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前に投降したプロローグを少しいじりました。



0.巨人殺しの魔人

カツッ、カツッ、カツッ

 

 

爆炎と薬莢の音が支配する戦場。逃げ惑う人々。簡単に命を散らしていく子供たち。

古来、戦場とはこういうものだ。周りは簡素な住宅街であったろう建物の廃墟ばかり、度重なる戦争と、この地で起こる戦闘の跡が少し見ただけでもうかがえる。

月から奴等が攻めてきて以来、我々地球人は人型起動兵器「Hope」を駆り、敵の人型起動兵器と我々の地球を守るためにこうやって戦っている。

そもそも我々地球人と同じ、地球人を名乗る奴等「月人」がこの地球に降り立つことになったのもかれこれ一年前。月に小惑星が激突し、月から人工物と思わしき機械でできた星が出てきたことに起因する。

 

カツッ、カツッ、カツッ

 

当時はとても大きな騒ぎになった。地球から一番近い星である月から、文明の跡が出てきたのだから。

月から機械でできたわけのわからん星が出てきて以降、我々地球人は幾度となく、「Hope」で構成された調査団を送り込んできたが、誰一人として帰ってこなかった。

そして、数度目かの調査団派遣の折、奴等から宣戦布告された。

 

『青い星の知的生命体に次ぐ、我々は地球人だ。これより我々は荒廃した地球の代わりにその星を住処とすることとした。』

 

それが、やつら「月人」の主張であり、今現在も続いている地球人と月人との争いの火種となった宣言でもある。

それからというもの建物が破壊され、人が死に、子供の夢が潰えていくのが日常茶飯事となった。

 

そして、今も目の前で起こっている。

 

カツッ、カツッ、カツッ

 

「本当に、糞くらえ、だ」

 

爆音と薬莢の音が支配し、誰のものかもわからない焼けただれた肉塊が散乱するこの戦場に、普通ならあり得ない穏やかな足音が一つ。

 

カツ、カツ、カツと戦場へと近づいてゆく、その足音と共に、祈り言に似た響きを持った言の葉が紡がれる。

 

しかし、それは祈りに非ず、彼の者が口にするは、彼の信ずる一つの理。

 

(しん)ずるは夢、ここに(しん)を持って(しん)となす(なり)。」

 

その足音の主である男は腰に差した刀に手を置き目を閉じながら奴らのもとへと歩いていく、あたりに落ちる100mm銃弾を何の脅威ともせず歩く姿はまさに・・・

 

「源の英傑、その手に携えし剣にてかの鬼の首を一刀のもとに落としたるべし。」

 

銃弾がその男へと迫る。このままいけば彼はその銃弾にて命を落としてしまうだろう。100mmを超える銃弾が人体にもたらす結果など、見なくても想像にたやすい。

四肢は散り散りと化し、散らばった肉は周りの肉会と同じ末路をたどることだろ。

しかし、その男はその銃弾にもものともせず、変わることのない歩幅で歩いていく。

 

それは彼が目をつむっているから、見えていないからであろうか?・・・・否。

 

「・・・・・抜刀。」

 

男は腰の刀を引き抜くと、閉じていた眼を見開き、その刀を一閃した。

その一閃にて迫りくる銃弾はおろか、自らを狙ったであろう銃口までをも一振りにて斬り伏せた。

 

信装霊基(しんそうれいき)(しん)(ことわり)。安綱が秘宝・・・童子切。」

 

人型起動兵器同士の戦争に、生身で戦いながらも決して劣らない者たちがいる。機械の巨人を突き殺し、一閃し、斬り殺し、叩き潰す。そんな非常識極まりないことをやってのける者たちが存在する。

 

「黒装十二騎士が第11位。『幻斬』上月(こうづき) 無間(むげん)子供()を散らせる貴様らを俺は絶対に許さない。」

 

それこそが、我ら黒装十二騎士。第1位から第12位から成る、巨人殺しの英雄(魔人)である。

 

 

 





私はこの手に筆を執る
なまり切ったこの右腕に

再起の灯が再びともらんと欲するのだ


うだつの上がらぬ日々に別れを告げ、

後に続く兵共の

夢を希望へとつなげんが為。

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