とある無限と無神臓の駄弁り
別に青年的にはどうでもよかった。
誰が誰になろうと、誰がどうなってしまおうと、肉親じゃないのに肉親を名乗る謎過ぎる存在が現れようとも、今となっては彼にとってはどうだって良かった。
その謎過ぎる存在が御大層な才能と力を持っていようとも、自分の居場所を取ってしまおうとも、弾き出されしまった少年は何の恨みも感慨もなかった。
無限と夢幻の両方を覚醒させた今となっては、そんなちっぽけな存在に何をされても『平等にどうでも良い』としか思えない。
「イッセーと我の力を合わせてグレートレッドを倒す。グレートレッドの力も持ってるイッセーとなら相殺したあと倒せる」
「やだ。一人でやってくれたまえ龍神様。
ちっぽけな人間が入り込める領域じゃねぇし」
「そんなことない。イッセーの力はグレートレッドと我の力を足したもの。今でも我と単騎で戦える」
例えそれが龍の神同士の小競り合いを聞かされても……俺にはクソどうでも良いと吐き捨てる
それが兵藤一誠という『人間』の在り方だった。
「倒したら我と次元の狭間で永遠に暮らす。我の事も好きにして良い……」
煩いのがまーた来て同じ事を言っている。
エロゲーの邪魔をされてご機嫌斜めな俺は若干不貞腐れた気分で頬杖なんか付きながら目の前の餓鬼を睨む。
「何が悲しくて餓鬼みたいな見た目の貴様とコンビニも無さそうな空間に閉じ籠らなければならんのだ。
嫌だねったら嫌だね……というか、お仲間集めはどうした? その戦力を総動員させてグレートレッドを殺せば良いだろ?」
「まだ不可能。
我が集めた仲間全部でもグレートレッドには勝てない……だからイッセーが欲しい」
兵藤一誠。
それが俺の名前だ。
只の人間であり、只の学生。
家族と呼べるものは12年も前に俺の目の前で殺されたので居ない。
その日を適当に生き、同年代が集まる学校に行ってそれなりに楽しむ毎日。
平凡……常人にはとある力を二つ持ってる以外は真面目に平凡。
12年前に奴が現れ、『俺が主人公だ!』と訳の分からん事を言って只の家族だった俺達を――いや父さんと母さんを殺しやがったクソ野郎の所為で、何故かギリギリ生き残ってしまった俺のそれからの人生はゴミ箱漁りのホームレス幼児・小学生となっちまった。
まあ、それの所為か知らんけど、とある力に覚醒し、それを感じ取ったコイツと出会い、以後はそれを使って強くなり、父さんと母さんを殺したクソボケを苦しませてから殺してやった後は、それなりに上手く行く生活をしている。
普通に、平穏に、凡人のようにね。
とはいえ、俺が今通ってる駒王学園って学校が、実はモノホンの悪魔が管理してて、その悪魔が実は人間に混ざって通っていて、その悪魔の中には俺にソックリな顔をした不審人物である――ええっと、名前は分からん奴が転生とやらを果たした状態で混ざってるとかそんな状態ではあるが、俺に何の関係も無ければどうでも良い。
簡単な話、それなりの学校を出てそれなりに金を稼いでそれなりに暮らしてそれなりの嫁さん手に入れてそれなりな老後を迎える。
それが今の俺が抱くしょうもない夢であり、その夢には、自宅の借家アパートで寛いでる俺にベタベタ引っ付きながら、事情を知らなければ餓鬼の遊びの設定みたいな事を宣う見た目幼女は必要ないのだ。
「そもそもイッセーの夢幻……えっと……なんだっけ?」
「
「そう、それ。
その力でグレートレッドを否定さえしてくれれば直ぐに終わる……」
「めんどくせぇわ。
奴クラスになるとただ否定しても無理っぽいわ。
まぁ、心をへし折っちまえばどうとでもなるが、奴に心があるとは思えんな。というか一々ベタベタすんな鬱陶しい」
今ある現実を任意に書き換える事が出来る力。
かれこれ数年は似たやり取りをというか、化け物龍神が人間界の、それもクソ安アパートに毎日毎日通うなんて、あの悪魔共が知ったらビックリ処じゃすまねぇだろうな。
それ程までにこのオーフィスという存在は連中達には有名な名前なのだ。
「イッセーは無限も持ってる。我と同じ――だから惹かれる」
「無限じゃない
まあ、ヒーローのつもりは一切無いが」
「でも同じ。だからイッセーの傍は安心する」
「………」
それなのにこの龍神はといえば、過大評価甚だしい事を宣いながら俺につきまとう。
曰く、もう一つの力である
だがしかし俺は全然嬉かない。
折角人生を楽に生きられる力を得たのに、注目するのは化け物龍神だ。
それじゃあ得した気分なんて全くありゃしないし、下手に人間ぽっちが力を持つとロクな事がないお手本みたいだ。
「何度でも言うがな、俺は人間であって、お前らみたいに手からビームを出すような異次元生命体じゃないの。
美味い飯を食って、良い女を抱いて、気持ちよく人生を楽しみたいってだけの人間で、それが俺の生きる意味なの。だから神様同士の殺し合いなんぞ興味もねぇの」
「…………」
グレートレッドだぁ?
ちょっと目を合わせただけで『ガンつけた』などとほざいて本気で殺りに来るような理性も何もない奴と殺し合いなんぞしたかねぇ。
オーフィスにしたってそうだ。
そりゃあアレよりまだ大分マシだが、故郷に帰りたいからって理由で天敵をぶっ殺したいとか宣う時点で俺からすれば物騒な事に変わりはないのだ。
「おんにゃのこナンパしてた方がよっぽど有意義だぜ」
「む……」
最近は保険か何かで一部の悪魔や堕天使やら、俺とは系統が違う……寧ろこの世界的には主流とも言える特殊な力を持つ人間やそんな種族達を集めてテロ集団化させてるみたいだし……。
そんなもんに誰が好き好んで関わるか……。
俺は適当に学園に居る可愛い子と楽しく過ごせりゃ良いの、殺伐とした戦闘集団なんぞゴメン被るぜ。
仲間集めすぎて精々傀儡のtopにでも祭り上げられてろってんだ。
「……むぅ」
「へん、そんなツラで見られても無理なものは無理だ。いい加減諦めてくれ」
「イッセーは冷たい」
「おう、冷たくて結構。
貴様に協力してもメリットなんざ無い時点で優しくする道理は無いだろ?」
風呂上がりのサイダータイムを邪魔したあげく、ベタベタとクソ萎える餓鬼の肢体でくっつくような奴に優しくなんてするか。
「ならグレートレッドを倒すのに協力しろとは言わない。その代わりずっと我と一緒に生きて欲しい」
「は?」
すっかり温くなったサイダーを一気飲みし、寝るために追い出そうと人の使ってるベッドに座って足をパタパタとさせていた矢先、急にそんな事を言い出し始めたオーフィスのに、俺は眉をこれでもかと潜めながら黒真珠みたいた目でジーッと見てくる龍神に視線を寄越す。
「故郷を諦める代わり。
静かに暮らせなくなるけど、それ以上に我はイッセーの傍が落ち着く」
「つまり協力しない代わりに寄生するお前の面倒を見ろってか?
おいおいおいおい、グレートレッドをどうかするためのお仲間はどうすんだよ?」
「…………………………………さぁ? 我知らない」
こ、コイツ。
やはり人間と違うせいか、決断が極端過ぎる。
グレートレッドを倒すのを諦める代わりに、それまで集めた仲間を放置して俺に寄生するなんて、まともな思考回路じゃねぇわ……いや、こんな感情も読み辛い黒真珠みたいな目をしてる時点で今更か。
「お前の仲間共の目の前で言ってみろよ。確定的にぶちギレるだろうな」
「怒るなら怒れば良い。
元々我の目的は静寂を得たいからだし、その目的が変わった以上仕方無い。
よくよく考えたら故郷よりイッセーの傍の方がポカポカするし……」
「俺にとっちゃデメリットだらけで話にもなりませーん」
無限の龍神を養うなんてありえねーよ。
只でさえこうしてくっちゃべってるってだけでも、この地の悪魔連中にバレたら――いや別にバレてもどうともなるけど、それにしたってかったるい事には変わりないし、何よりこんなのに四六時中付きまとわれてたら女の子を家に招いてイチャイチャできねぇじゃないか。
以上、デメリットだらけの申し出に俺の判断は『無理でございます』という判決を下し、即断ろうと口を開きかけたが、それより早くジーッと黒い眼差しを向け続けるオーフィスが身体を揺らしながら声を出す。
「メリットならある。
今の我は限りなく人間に近い肉体を構築してる。だから雄の肉体であるイッセーは雌の肉体である我と番になれる」
「は? ……………はぁ?」
ユラユラと心無しか早口で宣うオーフィスに、俺は思わず2度同じ声が出てしまった。
あまりにも唐突でアホらしいというか……つがいて……。
「何ほざいてんのお前? 意味わかってんの?」
「む、我知ってる。イッセーが学校とやらに行ってる時、我はイッセーの事――いや、人間を勉強した。
人間の雄と雌は番になって子供作る」
あまりにもあんまりな申し出に呆れてるのがオーフィスにはわかったのか、若干だがムッとしながらクソ餓鬼の見た目でクソ餓鬼そのものな胸を張って更に続ける。
「今我が座ってるコレの下にあった本で最近はずっと子作りの方法を勉強した。
大丈夫、我とイッセーと子供なら頑丈な子供になる」
「……………」
そう妙にしてやったり顔で宣うオーフィスに俺は閉口してしまう。
コレの下……つまりベットの下の本とは俺が入手してはしまってるエロ本の事であり、色々とこの龍神様は間違えまくったお勉強をしてしまったらしい。
てか、何が悲しくてこんな生理も来てなさそうな見た目が餓鬼と子作りなんぞしなければならん。
「まずは衣服を脱ぐ」
「おい」
それを知らずにこの龍神はそそくさと目の前で真っ黒な服を脱いで全裸になり始め、ジーッとどうリアクションして良いか困る俺を見つめる。
「そしてイッセーも裸になって、このベットに一緒になって裸で抱き合ってつがう。何の間違いもない」
見事に餓鬼の肢体で俺の目の前まで近付き、グイグイ腕を引っ張るオーフィス。
微妙にその引っ張る力が強いのは何故なのか……。
「早くイッセーとポカポカしたい。だから早くイッセー」
「…………」
段々マジで力を入れ始めるオーフィスに俺は取り敢えずその脳天に1発喰らわせる事にした。
うん、この判断をした『俺は悪くない。』
「痛い……何で叩く……?」
打ち所か良かったのか、頭を押さえながら涙目で睨んでくるオーフィスに俺はもう2発ほど喰らわせやりながら呆れ半分な気分で、色々と億劫になってきた口を開く。
「グレートレッドを殺す協力をしなかったら、今度は寄生して子作りしろだ?
テメーはバカなのか? いやバカだ」
「ぅ……どうして――」
「何が悲しくてそんな毛も生えてねぇクソ餓鬼みたいな見た目したテメーのなんぞとヤらなきゃならん。さっさと服着て帰れバカ龍が」
脱ぎ捨てたオーフィスの趣味の悪い服を顔面目掛けて投げ付けて帰れと促す。
最初の頃に比べたら大分マシな服センスになったとは思うも、これもぶっちゃけどうかと思う……なんて関係ないこと考えながらまだ素っ裸のオーフィスを見てると、何を思ったのか半ベソかいて首を横に振りだす。
「い、嫌だ帰りたくない……イッセーと子供作りする」
意味がわかんねぇ。半ベソ声でそんなん言われても困るんだけど。
「……。チッ、じゃあグレートレッドの件に協力してやるからそれは無し――」
「グレートレッドなんてどうでも良いから子作り――」
「しねぇよボケ!
テメェまさかそれが最初から目的だったんじゃねーだろうな? ったく、人のエロ本で余計な知識つけやがって」
「痛い……イッセーに叩かれるのが一番痛い……グスッ」
っ……あぁ! メンドクセーなコイツ!
最初会った時はかなりドライだったのに最近は変に感情的になりやがって。
遠慮せず物が言い合える相手がコイツだけなのも考え物だぜクソッタレ。
「早く服を着ろ!」
「でも子作り――」
「るせぇ! 2度と顔すら合わせねぇぞゴラ!」
「う……それも嫌だ。我、急いで着るから会わないなんて嫌だ」
兵藤一誠
種族・只の人間(自称)
備考……過去の出来事により若干やさぐれた人外。
オーフィス
種族・龍(
備考……人にして己と同等の力と天敵の力を両方持つ人間に惹かれた龍神様。
「我、勉強したのに……。イッセーとポカポカしたかったのに……」
「俺の恋愛対象は人間の女の子だ。性別不明の龍なんぞレベルが高すぎるぜ」
「でも今の我は人間とほぼ同じ姿……」
「ああ、俺がゴミ漁りしてた頃から全く変わって無いと後ろに付くぜ。
いや、というか生理も来てなさそうな餓鬼みたいな見た目に興味はねぇ」
備考……無限同士による共鳴。
「寝るんだから早く帰ってくれねーかな!」
「や……!
我、子作りは後にするけどポカポカはしたい」
「ぐぉう!?
て、テメェ……この馬鹿力が! 離れろやボケがっ……!」
「ん……んっ……ポカポカする。
イッセーの匂いも我は好き……あと美味しい」
「くひぇ!? て、テメェどこ舐め――あひ、あぁ……!」
「ちゅーちゅー……イッセーの味も我は好き……」
終了
IF集のネタを単に引っ張るスタンス。
故に『エンピツカリバー』と『輪ゴム鉄砲』が一誠くんのメインウェポンよ!