無限の龍と無神臓   作:超人類DX

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ほのぼの……だよ。


ソーナさんかわいいよソーナさん……その2

 ひんぬー会長にザマァ見さらせと言いたい。

 故に、俺達はグレモリー先輩を強くしちゃえば宜しいと冥界に不法侵入したんだけど……。

 

 

「いや、なるべく対等な条件でやりたいし……その」

 

 

 駄目だった。

 そういや俺ってこの人達に超避けられてるんだったわ。

 遠慮しがちに『貴方の助けは要りません』と言われてしまったよ。

 

 

「あーあ、フラれたな一誠?」

 

「残念だったが、まあ、アザゼルが居るんだし、仕方ないだろ」

 

「…………」

 

「大丈夫。最悪は我があの雌悪魔をどっかに投げ飛ばす」

 

 

 曹操の言葉にちょっと殴りたくなった。

 が、流石にそれは八つ当たりなので我慢をしながら、正式に渡された入国許可書を首にぶら下げながら、グレモリー領の街を徘徊する。

 

 余所者というのと、ヴァーリの間抜けな格好が目立ち、すれ違う悪魔にめっちゃ見られてるものの、曹操もヴァーリもオーフィスも無視だ。

 

 

「ハァ、まぁ良いか。

只言うだけなら別に」

 

 

 そんな感じで街の安宿で一泊した後、やることも無く徘徊しながら三人から受ける妙な励ましの結果、手段を失った俺は開き直る事にした。

 考えてみれば、別に俺はあんな貧乳に恋心なんて笑ってしまいそうな感情なんざ皆無だし? 悪魔共の前で嘘臭い台詞を吐くのに抵抗なんか無いし? そりゃあ、ひんぬー会長のドヤ顔を泣き顔にはできないかもしれないけど、この先他にも手はあるし? 良いよ別に、言ってやろうじゃん? それにおっぱい大正義グレモリー先輩が負けると決まってる訳ちゃうし? 良いもん良いもん。

 

 

「………と、言いつつシトリーの城には行くんだな」

 

「普通に一誠も気になるんじゃないか」

 

「……。ちょっと我は嫌だ」

 

「うっさいな、あれだけ自信満々に吹っ掛けてきた相手の程度を知るくらいは良いだろが。

無様だったら大笑いしてやるぜ」

 

 

 なんて思いつつ、グレモリー領から出た俺達は冥界の交通ラインの一つである電車に乗って、シトリー領に向かっていた。

 何でもオーフィスの次元遊泳移動は色々と災害が発生してしまうから自重して欲しいんだと。

 だから……まあ、コイツ等をパシりにしてたのと、たまにはボーッと電車に乗りながら駅弁でも食いたいなんて思ったので、ヴァーリがアザゼルさんから貰った冥界通貨のお小遣いで『レヴィアタン監修・幕の内弁当』を購入し、こうしてムシャムシャしながらシトリー領までちょっとしたプチ旅行を楽しむ事にしたんだよ。

 

 

「レヴィアタン監修なんて書いてあったから、ゲテモノ系だと思ったが、普通に普通の弁当だな」

 

「あのふざけた格好と同じく、妙にカラフルな弁当だと思ったよ俺も」

 

「お前の今の姿を鏡で見てから言えよ――っと、ほれ、口開けろオーフィス」

 

「ん、あーん……もきゅもきゅ」

 

 

 割りと少食のオーフィスは、俺と二人で一つの弁当である。

 食いたいものを指差すオーフィスに、俺が箸で摘まんでオーフィスの口の中に放り込む。

 こう、雛鳥に餌でも与える親鳥みたいな気分にさせられつつ、何故か話の内容はこの弁当の監修したらしいレヴィアタンの事についてになっていた。

 

 

「ふざけた格好だが、実力は本物。俺も一度は闘ってみたいね」

 

「そういや一誠は会談の際に戦ったんだろ?」

 

「あ? あー……」

 

「今度は我がやる。一誠、あーんして?」

 

「あー……もぐもぐ――おう、そういややったな。

中々良いスタイルしててちょっとデートの申し込みをしたいと思ってたが、あの時はコイツに吹っ掛けられてた変な風評を力こそは正義思考で黙らせようとしてな。

確か腕をへし折ったかな……顔は当然狙わなかった」

 

 

 曹操の問い掛けに、俺はオーフィスにミニ焼き魚を口に放り込んで貰いながら、あの時の事を思い返す。

 テンションの問題があったとはいえ、ボインなねーちゃんに暴力を振るってしまった――なんて罪悪感は無いけどちょっと悔やまれる。

 

 

「この女、お前の言ってるソーナ・シトリーの姉だって知ってたか?」

 

「おら、ゆっくり飲め――――おう、本人が言ってたな。

全く、姉妹なのにどうしてああも体型が違うのか……現実は非情なもんだ」

 

「そればっかりだな一誠は」

 

 

 オーフィスにお茶を飲ませてる俺の言葉に、食べ終えてヨレヨレの余り袖に腕を隠したヴァーリと、何処かの中二病みたいな格好をしていた曹操が呆れた顔をするが、それ以外にどこを見ろって話だ。

 

 まあ、腕をへし折った奴の言うことじゃないけどさ。

 

 

「というかヴァーリ。さっきの街で服くらい買って着替えれば良かったんじゃ……。それ、寝巻きだろ?」

 

「そうだが、一誠に二着買ってもらってるし、汚さないように注意してるから大丈夫さ」

 

「いや、それギャグのつもりで買ったんだけどな? そこまで気に入られてるとは思わなかったわ」

 

 

 エロ本で余計な知識ばっかりなオーフィスが、色気もクソも無いネグリジェの姿になるのにうんざりし、もっと見た目らしい格好にしてやろうとデパートに行ったんだが、暇だからってんで着いて来たヴァーリにちょっとした嫌がらせで、買って押し付けてやったのに……当の本人はフードまで被ってる気に入りっぷりと来た。

 いや別に良いんだけど、何だかな。

 

 ちなみにオーフィスには鮫とパンダの着ぐるみパジャマを買ってやった。

 本人は『子供っぽい……』なんて鏡見てからほざけや的な台詞を宣ってたが、ヴァーリ程じゃないにしろ寝る時はちゃんと着て寝ている。

 

 

「着てみると案外悪くないんだよこれが――あ、販売員のお姉さん、オレンジジュースを一つ」

 

「……。販売員のお姉さんが一瞬固まってるじゃねーか」

 

「珍獣みたいなもんだしな」

 

 

 何にせよ、気に入ってるなら別に良い。

 イメージがガタガタになろうが、車内販売の悪魔お姉さんに一瞬固まれようが、俺には関係の無い話だしね……なんて思いながら、シトリー領土の街に到着するまでの間、くだらない話に華を咲かせるのだった。

 

 

 

 今日もリアスとのレーティングゲームに勝つ為の鍛練をしているソーナと眷属達。

 眷属達のソーナに対する不安もあるが、レーティングゲームに勝ちたいことに変わりは無く、朝から修行に取り組もうとしたのだが……。

 

 

「城の前に不審者?」

 

「ハッ! 只今身柄を押さえて尋問の最中でございますが……」

 

 

 修行の最中、城に常勤している警備兵の悪魔が現当主であり、中庭で修行してるソーナを妻と眺めていたシトリー卿に膝を付きながら報告を受ける。

 どうやら城の前をウロウロしていた不審者数名を捕らえたとの事だが……。

 

 

「一人珍妙な格好をしている者もそうなのですが、もう一人、成人を迎える前の子供と思われる者がしきりに『ひんぬー会長見たら帰りますから!』と喚いておりまして……」

 

「ひんぬー……?」

 

「会長……?」

 

 

 困った様な表情で聞いた事もない様な言葉を口にする警備兵に夫婦は揃って頭に?を浮かべる。

 が、たまたまそれを聞いていた夫婦の娘……というかソーナが、激しい鍛練による疲労で、その場に座り込む小休憩をしていたのだが、急激に目をこれでもかと見開くと、両親の前の礼なんてどうでも良いように警備兵に向かってボ〇トもひっくり返る様な猛ダッシュで近付き、そして詰め寄った。

 

 

「何処に居るんですか?」

 

「え……」

 

「だからその不審者は何処に!?」

 

 

 明らかに目の色を変えての詰め寄りっぷりに、思わず警備兵は畏縮してしまって上手く言葉が出てこない。

 ここ最近、若手悪魔四王として知略に長けた落ち着きのある王と言われ、この警備兵もそれをよーく知っていた。

 が、一体何があったのか、ここ最近のソーナは知略以上に肉体派というか……華奢で儚そうな少女のイメージをぶち壊す勢いで眷属全員を千切っては投げるという姿にちょっと戦々恐々の思いを抱いていた。

 

 故に両肩を痛い程掴まれ、ガックンガックンと興奮した面持ちで何処だと聞かれる警備兵は脳がシェイクされて口から泡まで吹き出そうとするダメージを負わされてしまう。

 

 

「ま、まだ……門のまえ……に……あぶ」

 

「っ!?」

 

「ちょ、ソーナ!?」

 

「そんなに慌てて一体どうしたの!?」

 

 

 使命に燃える若き警備兵がグロッキー状態となり、その場に白目を剥いて倒れ伏すのも目もくれずに、死にかけの言葉を最期に聞いたソーナは、黒神ファントムもビックリな瞬発力で実家の正門へと猛ダッシュだ。

 自分の娘があんまりにも鬼気迫るオーラを出すから思わず、何も言えなかった両親がハッとして呼び止めようとするがお構い無し。

 

 ひんぬー会長なんて口にする男なんて一人しか居ない。

 昨日から妙に彼の気配が近くで感じられるとは思ってたし気のせいでも無いと思ってた。

 修行に明け暮れていたせいで今の今まで気付けなかったが……まさしく彼と、彼にひっつく龍とその他二つの気配がある。

 

 走り、すでに音速を突破して城門を跳躍して飛び越えたソーナは、眼下に捉える茶髪の少年を見た瞬間――

 

 

「あら……力が……?」

 

 

 修行で体力を使い果たした事を忘れ、更には火事場の馬鹿力もガス欠を起こし、そのまま警備兵と揉めまくってる少年目掛けてまっ逆さまに落っこちた。

 そして――

 

 

「ですから、あの眼鏡で貧乳で、最近なんか無駄にクールぶってるド貧乳ですってば!」

 

「そんな者はこの城には居ない! 即刻立ち去らないと逮捕するぞ!」

 

「ん? あ、おい一誠!」

 

「んだゴラ! 今この無駄に使命に燃えちゃってる脳筋と話して急がしんだ! 後にしろこの野郎!」

 

「だ、だが上――」

 

「何だと貴様! 言うに事欠いて脳筋だと!? もう許さん、逮捕してやる!」

 

「上等だ、やってみろやぁぁっ!!!」

 

「一誠、上、上に雌悪魔――」

 

 

 

 

「キャッ!?」

 

「だがぼ!?」

 

 

 それは事故だった。

 後に曹操とヴァーリは苦笑い気味に語り、オーフィスは不機嫌そうに顔を逸らしたのだという。

 

 

「た、隊長! 空からソーナ様が!」

 

「いや目の前で見たわ! 心臓止まるかと思ったぞ! ……って、な、何故ソーナ様が!?」

 

 

 こう、ちょっとした隕石とも云うべきか……。

 警備兵長とヒートアップしていたせいなのか、それともソーナが一誠の予測を遥かに越えた成長を遂げたのか。

 それは今誰にも解らない事だが、ものの見事に一誠をクッションにして落ちてきたソーナは、動揺する警備兵達に向けて、ズレまくりな眼鏡を直しながら此処に居るだろう一誠は何処かと問う。

 

 

「………」

 

「……?」

 

 

 しかし誰も返事をしない。

 はて、どうしたのかしら? と、自分が一誠を下敷きにしている事に気付いてないボケっぷりを噛ましながら首を傾げるソーナだったが、ふと後ろに狐の着ぐるみパジャマを着た少年と、目付きが鋭い黒髪の青年が何とも言えない表情で己を見ているではないか。

 

 何か見たことが……あ、この狐の着ぐるみの方は確かコカビエルの件で目にした白龍皇だった気がするわね……片方は知らないけどと内心動揺しまくりな二人を見るソーナはだったが、ふとさっきからピクピクと地面が揺れていて、しかも生温くて妙に柔らかい事に今更ながら気付き、視線をそのまま落としてみると……。

 

 

「あら?」

 

「が……ぺ……」

 

 

 自分に強烈な呪いを掛けた年下の男の子が、うつ伏せになって絶命寸前の虫の様に痙攣しているではないか。

 なるほど、どうやら落下した先が面白いくらい調度一誠であり、自分が思いきり踏み潰してしまったらしい。

 だから警備の方々も唖然としてるし、お友達と思われる二人の少年と青年は何とも言えない顔であり、オーフィスは――

 

 

「今すぐ我に消されたくなければとっとと一誠から離れろ雌悪魔」

 

 

 あの無限の龍神と吟われた世界最強は、死ぬほど嫌そうな顔をしながらソーナを睨んでいた。

 だがしかしソーナはそんなオーフィスの殺気に慣れたのか、特に怯えもせずケロっとしながら返す。

 

 

「あら、会っていきなりなご挨拶ね。言われなくても離れますよ……流石に悪いことをしましたし」

 

 

 何時もおちょくられてムカつく相手だけど、流石に踏み潰してしまったのは悪いと思い、パッとピクピクしたまま動かない一誠から降りて立ち上がると、唖然としたままどうしたら良いのか解らない警備兵達に一言。

 

 

「彼を中へ、私の客人です」

 

「へ? あ……は、ははっ!」

 

 

 警備兵にこの珍妙な四人組を中へ入れても構わないと命じる。

 城主の……というか次期当主なソーナに言われてしまえば従うしか無い警備兵達は、ただただ整列し、絶命寸前の虫宜しくになってる一誠を含めた妙ちくりんな連中に向かって来客に向けての挨拶をする。

 

 

『よ、ようこそシトリー城へ』

 

 

 ほんのちょっぴり、ピクピクしてる一誠に向かって『ザマァ見ろ』と思いながら……。

 

 

「よく来ましたね。そちらのお二人とは初対面ですが、貴女と一誠君は違う。歓迎しますよ?」

 

「お、おう」

 

「こ、この女……あれだけタフな一誠を一撃で気絶に追い込んだだと?」

 

「………ちっ」

 

 

 ニッコリ。

 修行の最中なのと、先程の落下によりちょっと土で藍色のジャージを汚した出で立ちで歓迎すると宣うソーナに、ヴァーリと曹操は未だ起き上がれずに倒れ付してる一誠と交互に目配せしながら戦慄していた。

 ぶっちゃけヴァーリも曹操もソーナなんて眼中にも無く、レーティングゲームにしてもどっちが勝とうが知った事じゃなかった。

 

 が……しかしだ。

 

 

「も、もう五分も経過してるのに一誠が起き上がれてない……」

 

「な、何なんだあの女……?」

 

 

 

「良いですよオーフィス、私が運びますから」

 

「黙れ、お前に一誠は触れさせない」

 

 

 

 オーフィスの殺気すらはね除け、直接では無いにしろやり合ってる姿を見せられたヴァーリと曹操は思った。

 

『将来、この女に逆らえなくなるかもしれない……』

 

 一誠の知り合い……しかも決して浅くない関係である以上、この先色んな事で顔を合わせる事になるだろうと察した二人は、悔しさ半分にソーナに変な怖さを感じるのだった。

 

 

 

 

「五千万」

 

 

 そんなこんなでソーナの眷属達が驚く中、ソーナは一誠達を城内に招き、両親に紹介をした。

 が、その過程で一誠の意識が覚醒すると、チンピラの様な顔でソーナに向かって慰謝料の……しかも超法外な請求を開始した。

 

 

「五千万、キャッシュで寄越せド貧乳。

礼を無視したのは落ち度だが、隕石落下を喰らわされるほど悪い事をしたつもりは無い」

 

「だからお金を?」

 

「そうだこのド貧乳。貧相。寸胴。地味子。アタッシュケースに日本通貨で五千万円今すぐ用意して寄越せ」

 

 

 三大勢力会談に突如出現し、三トップを無傷で捻り潰した人間の少年と無限の龍神、白龍皇……テロリスト所属の神滅具使い。

 ぶっちゃけ冥界が危険きわまりない面子が何の因果か娘の知り合いだった。

 

 何となく急に娘が変わったから変だなとは思ってたが、よもやその原因がこの四人組の……只今平然と娘に金をせびろうとしてる少年だったとは思いもしなかった両親は、拉致の開かない娘と一誠のやり取りを咳払いをしながら間に入る。

 

 

「その、何だ……。

娘が随分と失礼を働いた様で、申し訳なかったね」

 

「あ、はい全然気にしてませんよ? 五千万くれるのであれば」

 

 

 天下のシトリー家当主に向かって平然と無礼な態度で引き続き金の請求をしようとする一誠に、ソーナの眷属達は顔を青くするが、一誠は全く気付いてない。

 

 むぅ……とキャッシュの五千万を今すぐにという要求に困った顔をするシトリー卿だったが、その隣に居たソーナの母親が夫の援護をする様に一誠へと口を開く。

 

 

「ソーナのご友人という事で此処は一つ穏便には出来ませんか? 勿論皆さんを出来る限りのおもてなしを致しますので」

 

 

 正直自分が訴えてもこの目が据わってる少年は取り合わないだろうと内心タメ息混じりの懇願だったが……。

 

 

「あ、はいわかりました。じゃあもう請求しません」

 

「そうですか……ならば――へ?」

 

「は?」

 

『え?』

 

 

 一誠は突然頑固過ぎる請求を白紙に戻すと言い出した。

 これにはシトリー卿も懇願した本人の妻も、ハラハラしながら見てたソーナの眷属達も一斉に目を点としてしまう。

 

 

「ええっと……。

私からお頼みしておきながら変な質問ですが、一体何故……?」

 

 

 返って不気味過ぎる急な展開に、魔王すら携帯片手に相手取ってぶちのめしたとされる少年に対し、恐る恐るといった様に問う。

 すると少年は、何故か娘と……噂通り本当に幼女の姿で少年の傍らに居るオーフィスがムッとし、何故かタメ息を吐く可愛らしい出で立ちの少年、黒髪の青年の態度を納得出来る理由を――

 

 

「だってひんぬー会長の母ちゃんは美人ですから? そら言われたら撤回しますわ」

 

 

 ヘラヘラした顔で宣うのだった。

 

 

「あ、あら……そ、そうですか……あははは」

 

「一誠くん? お母様をナンパしないで貰えますか?」

 

「そもそも一誠の好みでもない」

 

「バッカだな、人妻で歳上の時点で最強だわ。

いやまぁ、流石にマジにはならねーけど」

 

「ホントお前はそればっかりだな」

 

「それで理不尽に強いんだから世話がないぞ」

 

 

 

 色々と慌ただしくもあったけど、一誠君が実家にやって来た。

 噂と違ってある程度話せるタイプだと認識したのか、父も母はそのまま彼等を夕飯の席に招待し、今までちょっと不透明だった一誠君達のお話で割りと盛り上がったのだが……。

 

 

「えーっ!? ひんぬー会長の姉ちゃん居ないのかよぉ!?」

 

「普段はレヴィアタン領に居ますからね」

 

「んだよ、こちとら城下町で人数分のハッピと光る棒を持って来たのに」

 

 

 どうやら実家に来た理由は姉さんだったらしく、姉さんの趣味で展開されてるグッズを取り出しながら、ムカつく程に残念がる一誠君。

 旧ルシファーと人の間に生まれたヴァーリ・ルシファーと英雄の魂を継いで生まれた曹操のお二人は、実に嫌そうな顔をしている辺り、まともな感性はしてるらしい……ヴァーリという少年の格好が果たしてまともなのかは置いておいてだ。

 

 

「チッ、腕をへし折った事を謝りつつ然り気無くデートのお誘いでもしようと思ったのに……」

 

 

 そう言って夕飯も終え、客室のソファーに座りながら項垂れる一誠君を、何故か付いてくる眷属達を後ろに控えさせた私は鼻で笑いながら言ってやった。

 

 

「姉は貴方に興味無いというか、腕をへし折って良い印象も無いでしょう?」

 

「そうだそうだ、そもそも我も隣で見てたから覚えてるけど、ああいう格好が良いなら我が着る」

 

「チッ……」

 

 

 私と珍しく味方なオーフィスの言葉に舌打ちすると一誠君。

 

 

「何なら私が代わりにしましょうか?」

 

「は?」

 

「なっ!? か、会長!?」

 

 

 よく解らないが、姉さんの格好が好みであるなら此処は一つ、踏み潰してしまったお詫びとして私が代わりに着て踊ってあげようかと告げると、目を丸くしながら私に視線を向ける一誠君と……何故か急に慌て出す眷属の一人であるサジ。

 

 

「ま、待ってくださいよ会長!

そ、そんなの俺だって見たいのに何でこんな奴に……!」

 

「と、アンタの部下は言ってるが?

つーか何そのギャグ? アンタって俺を笑わせるセンスだけはスゲーわ」

 

「む……」

 

 

 急に騒ぐサジは置いておき、大層馬鹿にした半笑いな顔の一誠君にちょっとイラっとする。

 

 

「お、おい一誠……?

あの女を怒らせるのはマズイんじゃ……」

 

「そ、そうだぞ。それに折角のご厚意じゃないか」

 

「お前等こそ何その態度? 何ビビってんだよ?」

 

 

 確かに、何故お二人が初対面の私の肩を持つのでしょうか?

 というか、よく見たら私を見ながらビクビクしてるような……。

 

 

「いやいや、普通に考えろよ。

こんな地味でひんぬーがあの格好したって只のコントじゃねーか」

 

「何だとテメー! 前から会長の事馬鹿にしやがって!!」

 

「おう!? 急にどうした部下君よ?」

 

「るせっ! お前のせいで会長はなぁ!」

 

 

 本当に急に何なのよサジは? まあ確かに馬鹿にされてるし、貧乳貧乳とバカの一つ覚えみたいに連呼されるのは嫌だけど……。

 

 

「え、何キミ……確か学校で見た事あった気がするけど、アレなんか? ひんぬー会長の事好きなのか?」

 

「うぐ……それは今関係ない! 最近になってお前みたいに会長がそこら辺の小石で鋼鉄を粉砕し始めたんだぞ!? どうしてくれんだ!」

 

「………………。は?」

 

「っ!?」

 

「何だと!?」

 

「……………。チッ」

 

 

 驚かせてあげようと黙ってた事を此処でバラされたくは無かったわね。

 いえ、言うなとは言わなかったし責めるつもりは無いけど――――む?

 

 

「一誠と同じだと?」

 

「どいう事だ? まさかこの女……俺もヴァーリもオーフィスすらなれてない一誠の領域に?」

 

「やっぱりムカつく……」

 

 

 匙を黙らせ、下がらせた後、急に三人が集まってひそひそ話を始めるのが見える。

 何やら一誠君と同じ領域がどうのこうのと聞こえるが全部は聞こえず、代わりにそれまでふざけていた一誠君の表情が、殆ど見たこともない真剣なそれとなって私を……そう、私だけをジーッとソファに座りながら見ている。

 

 

「……。何ですか? そこまで見られると流石に照れますよ?」

 

「………」

 

 

 微妙に気恥ずかしくてつい軽口を叩いてみるけど、一誠君は何も答えずに只見つめ、チョイチョイと私に向かって手招きをした。

 

 

「お、おいお前、一体会長に何をするんだよ?」

 

「……」

 

 

 仲間の皆が警戒し始めるものの、それすら流して手招きをする一誠君に、何か感じるものを抱いた私は、眷属達に『大丈夫』と目で合図して警戒するのを止めさせてから、言われた通りソファに腰かける一誠君の真ん前まで赴く。

 

 すると一誠君はその場に立ち、私を見下ろすようにして読めない表情のまま見据えると――

 

 

「あ……」

 

 

 私の眼鏡を外し、そのまま無言の状態でコツンとお互いの額をくっ付けた。

 

 

「なっ!? な、なな、何さらしとんじゃゴラァ!!」

 

「お、落ち着け少年! アレはそういう意味じゃないから!」

 

「ああでもしないと確実に調べられないんだ! だから落ち着け!」

 

「黙れぇ!! さっきから会長と距離が近くで羨ましぃんじゃあ!!」

 

「………………………。チッ」

 

「うお!? 中々の力……ちょ、ちょっとそこの君達も彼を止めるのを手伝ってくれ!」

 

「え、あ、は、はい!」

 

「落ち着いて匙君!」

 

「うおおおぉぉぉっ!!」

 

 

 

「あ、あの……これは一体何の意図が?」

 

「…………………」

 

「あと一歩でキスなんですけど……?」

 

「………………………………」

 

「え、まさかの方向転換? このパターンは流石に不意打ち――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「確定、ひんぬー会長……自覚してないけど発現してる。しかも……両方のな」

 

 

 2分ほど、まるで自重しない恋人みたいな真似をし続けていた私と一誠君だったが、それまで無言から突然意味の解らない言葉を交えながら私から離れる。

 

 

「ほ、本当なのか!?」

 

「あぁ……まさか人間以外で現れるとは思わなかったわ」

 

「じゃ、じゃあ彼女は能力保持者(スキルホルダー)という事か?」

 

「そうなるな……ふっ、何か妙に波長が合うと思ったら……ククッ」

 

「………………」

 

 

 

「あ、アイツ等何を言ってるんだ……クソ」

 

「スキルがどうって会長の事を……」

 

 

 ちょっと残念……いや、頭突きでもしてしまうべきだったと思いつつ、何やら私について話し合ってる四人。

 すると話を終えたのか、一誠君が私の眼鏡を手渡しながら一言……。

 

 

「外出ろ、俺とヤるぞ」

 

 

 大真面目な顔で物凄い事を要求されてしまった。

 

 

「お、お外ですか……? い、いえ……一誠君がそういう趣味をお持ちで、急に私に欲情してしまった事は責めませんし? えっと、あの……はい……私処女なんで優しくしてくださいね?」

 

 

 しょうがない。

 ヤるぞなんて乱暴に言われちゃえば、しょうがない。

 初めてはもっとこう……良い雰囲気でみたいな事を思ってたけど、一誠君がそうしたいのであれば、私はお姉さんなんで大きく受け止めますよええ……。

 

 

「ふざけんなテメー!! 言うに事欠いて会長に何ほざいてんじゃ!!」

 

「は? ダメなのか?」

 

「ちょっと待て一誠……ソーナ・シトリーの顔からして盛大に勘違いされてるぞ」

 

「何が?」

 

「多分、お前に野外での情事を求められた……みたいな」

 

「はぁ!? おいおい、いくら何でもそんな馬鹿な勘違いするわけ――」

 

「あの、避妊具は無いんですか? いえ、別に貴方の子を孕むことは吝かでもないですよ? しょうがないですもんね? 私に欲情しちゃったんだもんね?」

 

「うそーん……?」

 

「色ボケ雌悪魔が」

 

 

 ……。この後、勘違いだと知ったソーナは泣きながら自室に籠り、真っ赤な顔を枕に埋めながら足をバタバタさせるのだった。

 




補足

スキルホルダーとわかった瞬間、この時点で只のひんぬーとは思わなくなったのと同時に、どう足掻いても今回の賭けは負けると確信した一誠なのだった。

その2
ヴァーリきゅん、のほほさんスタイルのまま冥界プチ旅行を敢行。
未来、世界を越えて彼はのほほさんスタイルの彼女と無言の握手をするのかは不明。
つーか誰の得だよ。


その3
ソーナさん自爆した。

まあ、何も無く額こっつんこされたあげく、真面目な顔して外でヤるぞなんて言われたらしゃーないよね。

それ言われた後の彼女の口走りは完全に願望入ってますけど。


その3

スキルホルダーの時点でオーフィス、曹操、ヴァーリはソーナを羨ましがってます。

何せ、一誠と同域ですからね……。
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