「こうして僕は銃弾三発喰らって入院しましたとさ」
「そんな事が有ったのか」
「一応これが今回の顛末。何か質問は?」
「……そうだな。お前が想定していた三つのパターンとは何だったんだ?」
「1、単に多忙で手紙が出せなかった。2、骨折など自分の不調で書けなかった。3、他人によって手紙を出せない状況下に置かれていた。この三つだと2は除外できるから、実質1か3だった」
「ふむ、じゃあ次だ。今までの話で結局例の三十分間、お前が何をしているのか語られなかったな。具体的には何をしていたんだ?」
「まず散策をして艦娘を見つける。そして『僕の所の多摩さんが会いたがっているんだけど、木曾さんを呼んできてくれないかな? 最近の多摩さんは元気が無くてね、妹に会えれば彼女も喜ぶと思うんだ』と言った。そしたら全員口を揃えて知らない分からないを繰り返すものだから、支部に電話を入れただけだよ。その時にあの峠にも誰か寄越すよう要請したんだ」
「よくそんな短時間で上が動いたな」
「まあ、この録音機でその時の会話は録っていたし、後は最近ブラック鎮守府に目を光らせていたらしいからね。この前の会議でも言ってたし。そうでなくとも艦娘轟沈の隠蔽は、疑いだけでも十分な動機になるよ」
「つまり俺が轟沈したかの様に話したのか」
「可能性を述べただけで、生存の可能性も有ると僕は言ったよ。もう質問は? ……無いなら今度はそちらの話を聞こうか」
僕は彼女に話を振る。
「君たちがバスで出て行った後に支部から客が来た。艦隊付きのな。今の話で君の差し金と分かったわけだが、その時は分からなかったな。あわや全面衝突になりかけたが、私達が反旗を翻した事によって鎮守府は制圧された。そして監禁していた艦娘が発見され提督は逮捕。買収されていた者も連行された。現在も調査は行われていて近い内に諸々が明るみに出るだろう」
「まあ概ね予想通りだね」
「……本当は、私が止めなければならない事だったのだがな」
何やら悔恨の念が残る彼女に、僕は尋ねた。
「ちょっと質問良いかな」
「……なんだ?」
「あの鎮守府は今後どうなるのか、まだ聞いてないんだよね」
「結局解体となったよ。あそこに残ろうという者が殆ど居なくてな。尤も大半は治療の為に入院中だがな」
「ふうん」
「お前聞いといて関心が無さすぎだろ」
「少しは有るよ、少しは」
「まあともかく、私共々、今後も宜しくお願いするぞ」
「今後も?」
「ああ。この長門と木曾は端水鎮守府所属となった。私の希望が通った様で良かったよ」
「木曾さんも?」
「結果的に助けてもらったわけだしな」
隣のベッドの上で彼女は笑った。
「まあ、お手柔らかに頼むよ」
僕はそう言って肩を竦めるのだった。
他の所に用が有ると言って、長門さんはこの病室から出て行った。
右腕、左脚、腹部を撃たれた翌日。目を開けると知らない天井が視界に映った。その後支部の人によって事情聴取が行われた。その時に隣のベッドに居るのが例の木曾さんだと知った。龍驤さんと鳳翔さんがわざわざ見舞いに来た後、やって来た長門さんと木曾さんと僕で会話を交わした。
それにしても僕の所を希望するとは。それに続く言葉を僕は心の奥深くに押し留めた。
季節は風薫る五月。しかし生憎窓から見えるのは大量の雨雲だけだった。僕は何もする事が無いため目を閉じた。