僕は一週間で退院となった。後は鎮守府で安静にしながら時折病院に通えと言われた。僕は松葉杖をつきながら、迎えに来た鳳翔さんと帰路につく。
結局今回の怪我は大事には至らなかった。流石の僕もこれまでに撃たれた事は無かったので、今回ばかりはまずいと思わなくも無かったのだが。大量出血もしていたので僕の真っ白な軍服が赤黒くなってしまったが、新しい物が今朝届いた。流石に穴の開いた血染めのそれを着る訳にもいかないからね。僕が入院してから二日後に、同じく入院していた木曾さんが退院したので、長門さんと共に先に鎮守府に行ってもらう事になった。
「本当にお二人に言わなくて良かったのですか」
隣を歩く鳳翔さんが言う。ヲ級の事かな?
「言っても言わなくても同じですよ。いずれ知る所となる。ただ、言わない方が何かと都合が良いだけです」
「そうですか……」
それにあの二人とは会って一週間しか経っていない。まだどんなパーソナリティーかも判らない内から、そんなに信用は出来ない。
「……提督」
暫く歩いていると、彼女はふとこう言った。
「いつでも、頼って良いんですよ?」
「……急にどうしたんです?」
「提督は何でも独りで抱え込もうとするきらいが有ります。だからこれは私達からのお願いです」
私達、か。
「……覚えていたらね」
「覚えていたら、ですね」
そう言って彼女は微笑んだ。精一杯の反抗も何だか見透かされている様で、僕は肩を竦めた。右腕に鈍い痛みが走った。痛い。
鎮守府に戻ったのは午前十時位の事だった。入口の所で皆が出迎えてくれたのは驚きだった。
「司令官、お帰りなさい!」
「お兄さん、お帰り」
「司令の帰還を心待ちにしてました」
「うん、ただいま」
僕は出迎えてくれた皆を一旦押し留め、会議室―しかし畳敷きなので名前が似つかわしくない―に集合する様言った。
「さてと、今日から通常営業と参りますか」
僕は松葉杖を突きながら久々の、と言う程でもないが、廊下を進んでいく。
会議室に入室した時には既に全員揃っていた。
「よし。じゃあ、まずは今回の件で無事に帰ってこられた事を嬉しく思うよ」
「いやキミ大分重傷やったやん」
「うん。流石に全員無傷とはいかなかったけどね。でも生きて帰れた。ぶっちゃけ最後の最後で運転ミスした時は流石に焦った。まあそれは置いといて、皆も知っている様に新しい人がやって来ました。木曾さんと長門さんね。後もう二人配属予定だけど、もう暫く時間がかかるらしいよ。他には、えっと、この一週間何か問題が起こったりした?」
「特にないクマー」
「事務の方も問題は有りませんでしたよ」
「この一週間、皆には面倒をかけたね。取り敢えず今日から活動再開だ。今日から座学も行いたいと思っているからそのつもりで」
「座学ですか」
「うん。君達がどの位知識を持っているのかは分からないけど、それでもやった方が良いかもしれないし。一日のスケジュールは大体こんな感じね」
「ふむ、大分ゆとりの有る一日だな」
「その方が楽だからね。あ、今日は午後からだからね。昼食後ここに集合。じゃあ解散」
そう言うと皆は思い思いに動き始めた。僕も立ち上がろうと左脚に力を入れたが、生憎撃たれていた方だったので痛みと脱力で転倒した。
「大丈夫ですか?」
鳳翔さんが尋ねる。
「ええ」
僕は、今度は右足で立ち松葉杖を手に取る。何故か僕の後ろをついてくる鳳翔さん。
「……もしかして今週の秘書艦ですか?」
と僕が尋ねる。
「はい、そうです」
鳳翔さんはにこやかにそう言った。
「……じゃあ行きましょうか」
僕達は執務室へと歩いていく。