彼の双眸に映る景色は   作:sophist

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2 それはお祭り騒ぎの前の賑やかさ

 時刻は十八時四十五分。私室の窓から見える景色は、とっくに夜の闇と灯りくらいしかない。午後は、あの後搬入した荷物を片付ける事に費やした。それ程多いという訳でも無いが、しかし二人分の荷物となればそれなりの量にはなる。幸いこの私室には備え付けの家具が幾つか有ったので収納に困る事は無かった。

 ある程度片付け一息ついた所で、ドアのノック音が聞こえた。そういえば、と記憶の片隅に残っていたセリフが思い起こされた。

「電です。そろそろ夕食の時間なのです」

やっぱり。

「よし、じゃあ行きますか」

僕は部屋に居るもう一人の方を向いた。その子は椅子から立ち上がり僕の方へと寄る。僕はそしてドアを開け、私室から繋がる執務室から出た。部屋の前で待っていた電はそれを確認して、先行して歩き始めた。

 昼過ぎにも一度来た食堂のドアを電が開けた。続いて僕達が這入る。中にはこの鎮守府所属の艦娘が勢揃いしていた。視線が刺さる。後ろの子が裾を掴む力を僅かながら強くした、かもしれない。衆目の―とはいったものの少人数だが―視線を浴びながら、僕達と電は皆の前へと歩く。

「みなさん、新しい司令官さんなのです!」

と声を弾ませながら言う電がこちらに目を向ける。それを自己紹介をしろというサインと受け取り口を開く。

「今日からここに勤める事になりました、紫野(ゆかりの)です。色々至らない所は有りますが、これから宜しくお願いします。ほら、自己紹介して」

僕は端的に自己紹介し、そして僕の陰に半分隠れる様に立っていた人に言う。

「……紫野、キリ。よろしくお願いします」

果たしてそれだけ言って沈黙してしまった。場を保とうとするかのように電が

「じゃ、じゃあ私たちも一言ずつ自己紹介しましょう」

と言った言葉をきっかけに艦娘側の番となる。

「駆逐艦雷よ!かみなりじゃないわ!そこのとこもよろしく頼むわねっ!」

「軽空母龍驤や。これからよろしゅうなぁ」

「ども、恐縮です、重巡の青葉ですぅ!一言お願いします!」

「軽巡の球磨だクマー。よろしくだクマ」

「……同じく多摩です。猫じゃないにゃ」

「駆逐艦不知火です。ご指導ご鞭撻、よろしくです」

「航空母艦鳳翔です。不束者ですが、よろしくお願いいたします」

「電です。改めてよろしくお願いします、なのです!」

 以上航空母艦2名、重巡洋艦1名、軽巡洋艦2名、駆逐艦3名、合わせて8名にプラス僕ら2名。以上10名で始まった悲劇的喜劇の行く末は、神のみぞ知るといった所か。僕はここでの生活に夢を膨らませながら、あるいはしぼませながら、面前の少女達を眺めるのだった。

「では早速、歓迎会をはじめちゃいます!」

 まあ、結末を知る神が居るかどうかは僕の与り知らぬところだけど。

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