彼の双眸に映る景色は   作:sophist

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20 詳(Show)

「じゃあまずは皆がどれ程の事を知っているかの確認だね」

 倉庫から持ってきた移動式ホワイトボードに、ペンで文字を書く。

「まずは、これかな」

僕は『F=ma』と書いた。

「これ知っている人」

すると数人―長門さん、鳳翔さん、龍驤さんの手が挙がった。僕は次に『1/3-1/6=』と書いた。

「これ分かる人」

今度はヲ級以外の全員が手を挙げる。少し迷って『一期一会』と書く。

「読める人」

キリ、不知火さんと軽巡以上の方が挙手。『794年』と文字を連ねる。

「歴史上で何が有ったでしょう?」

不知火さんが手を下げる。『 Tom whom I respect the best works as much as possible. 』と長々綴る。

「日本語に訳せる人」

誰も手を挙げなかった。少し考えて、最後にもう一問だけ出題する。

「『2x²+3x+1=0』が解ける人」

果たして球磨さん、青葉さんが真っ先に手を挙げ、龍驤さん、長門さん、鳳翔さんの順に手が挙がる。これで大体把握は出来たかな。

「はい、もういいよ。おおよそ年齢、いやこの場合は見た目の歳位の知識はあるらしいね」

 僕はホワイトボードに書き込んだ文字を消しながらそう伝える。

「さてここからが本題。今日は近年の情勢と艦娘というテーマで話していきたいと思います」

 僕は海軍の提督学校、正式名称を海上警護指揮官養成学校で使った教科書を片手に―片手しか使えないのだが―授業を始める。

「十年ほど前に世界は再び冷戦状態となりました。え? 冷戦は何かって? 掻い摘んで言うと戦争一歩手前の緊迫状態の事。昔そういう事態が有ったんだよ。で、また十年前から世界の大国を中心に緊張状態が続いていた。そんな中、二年前に我が国で大地震が起こり甚大な被害を負いました。これを聞いたある国がミサイルを撃ってきた事で、世界規模の戦争が起こりました。しかし深海棲艦の出現で、一カ月で停戦。その後、深海棲艦に対抗できる艦娘が現れました。大体一年前の事だね。以降世界各国が協力して掃滅にあたっている」

それがここ最近の世界や日本の情勢。二年前は僕もかなり大変だった。運良く地震と大戦では被害を受けなかったけれども。

「艦娘が出現した直後、彼女らと各国との間で交わされた取り決めが有る。大まかな概要は『艦娘は人間と対等である』。国に拠って詳細や文言は異なるが、この大原則を基にした取り決めとなっている。この国では『艦娘は全て我が国の法に則らなくてはならない』がそれに当たるね。これによって、憲法法律政令条例等に従わなくてはならないが、一方でそれに守られていると言える。この取り決め、いや契約と言った方が合っているかな。この契約を作った艦娘は相当に優秀だろうね」

最後の方は半ば独り言つ様に話す。この契約の締結は艦娘出現後一、二カ月で行われたと言うのだから、僕はそう思わざるを得なかった。

「何か質問がある人」

……。無い様だ。

「じゃあ次は君達の事についてだ」

僕はホワイトボードに簡単な人の形の絵を描く。片方は何かを背負っている。

「まず君達艦娘は、大きく言って二つの状態が有る。一つ目はこの艤装を装着していない状態。二つ目はこっちの艤装を着けた状態。この二つにかなりの差が有る事は、皆も解ってるでしょ?」

「そうだな。艤装を装着した時は体力などが上がっているな」

そう言ったのは長門さん。

「その通り。例えば物理的な観点からは、未装備時は『丈夫な人間』くらいなんだけど、装備時は『恐ろしい程に頑丈な人間』になる。そうだね、龍驤さん、この前銃弾を喰らったよね」

そう言えばと思い出し、龍驤さんに話を振る。

「そうやね。何にも傷は出来てなかったけどな」

「その時、艤装は着けていたよね」

「うん。キミが着けとき言うてたからね」

僕は前に向き直る。

「まあこんな感じ。他にも視力体力聴力、平衡感覚や演算能力、その他諸々が強化されるらしい。言うなれば、全ステータスの超上昇みたいな感じだね。他にも霊能力も備わるのでは、と言う人も居るみたいだ。今の時点で分かっているのはこの位だ。何でも良いから質問ある人」

「はい!」

と茶髪の少女が手を挙げる。

「はい、雷さん」

「妖精さんについては何か言われてないの?」

僕は少し考え、

「似た様な質問は他に有る?」

と言葉を発した。

「あ、じゃあ不知火も。どうして艤装を着けた状態では、水面に浮く事が出来るのでしょうか」

ふむ。

「まず、『妖精』と言われる存在、艤装を装着した時の効果、他にも『建造・開発・入渠』のシステム、空母の艦載機発艦。これらは一切合切謎です。人間の科学では説明不可能です」

オカルトやファンタジーの領域だ。

「ならどうやって入渠ドックとか工廠が造られたんだ?」

木曾の質問にはこう答えるしかない。

「いわゆる妖精さんが造ったらしいよ」

人間の科学で出来ない事は、人外の法則で行われたに決まっている。僕には妖精なる物が見えないので、些かにわかには信じがたいけれども。

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