彼の双眸に映る景色は   作:sophist

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24 緩和 如実虚日

 僕達は元提督の書店を後にし、駅前のファミリーレストランに入った。

「いらっしゃいませ、三名様ですね。禁煙席と喫煙席のどちらに致しますか?」

「禁煙席で」

店員に案内された席に座る。雷電姉妹が対面に座る形になる。

「僕持ちだから好きなのを頼んで良いよ」

と僕はメニューを見ながら二人に告げる。二人も楽しそうにメニューを見始める。

 僕はさっさと注文する物を決め、窓の外を眺める。日曜の昼間とあってかそこそこに人通りは有る。その中で一際目を引く人物を発見した。二つに括った髪を揺らしながら歩く少女。ファミレスは二階にある為、上から見る僕の視点からだと顔は見えず、見覚えの有るサンバイザーで辛うじて誰か分かった。

「あ、龍驤さんだ」

僕の視線の先に居る人物を見て、窓側に座る雷さんが声を出す。その注目の少女はこのファミレスへの入口に入って行った。という事は。暫くしてカランカランと扉に付く小さい鐘が鳴る。彼女は店内に入り、恐らく空いているかを確認する為だろう、辺りを見渡す。すると当然彼女を見ている僕と目が合う訳で。

「おお、司令官と雷電ちゃん」

「あ、龍驤さんなのです」

龍驤さんはこちらに歩いて来て、空いている僕の隣に座る。

「はい、メニュー。龍驤さんも好きなのを頼んで良いよ。僕が支払うから」

「それはおおきにな」

と彼女は嬉しそうにメニューを受け取る。

 

 全員が注文し終え、料理がテーブルに並ぶまでもう暫く。僕はドリンクバーで注いできたジュースを口にする。

「龍驤さんはどこに行っていたのです?」

「商店街をぶらりと見て回ってたんや。けどめぼしいモンは無かったなぁ」

「私達は図書館と本屋に行っていたの」

「じーちゃんは元気やったろ?」

「そうね、変わらず元気だったわ」

雷さんは声を弾ませる。彼女達が和気藹々と話をしていると料理が届いてきた為、一旦会話は中断。各々が料理を食べ始める。僕も頼んだハンバーグセットを食べる事にしよう。

 

 さて、腹は満たされた。僕達は街へと繰り出した。実際は雷さん、電さん、龍驤さんの行きたい場所に僕がついて回っていると言った方が正しいが。しかしこの娘達は元気だな、とまるで自分が老衰したかの様な事を考えながら、僕も店内をちらほら見て回る。そう言えば、とふと思い出す。此処は以前にも鳳翔さんらに連れられて来た事が有った。目的は確かキリさんの服を買いにだったはず。僕もキリさんも物欲が強い方ではないので、結局その時は選んでもらった数着しか買わなかったのを覚えている。あとヲ級の服も此処で買ったんだっけ。

 恐らくファッションのトークで盛り上がっているであろう彼女らが見えるベンチに、僕は腰掛けた。人間、暇な時にはどうでも良い事を考え始めるもので、僕はぼーっとしながら取り留めの無い事を考え始める。例えば、『鎮守府の艦娘も増えたな』とか『次はいつになるやら』とか『艤装って重くないのかな』とか。そんな事を考えていると龍驤さん達が近付いて来た。手には何着か衣服を手にしている。

「なぁ、キミにちょっち聞きたいんやけど」

「何?」

「司令官さんに服を見てもらいたいのです」

と手に持った洋服を少し掲げる電さん。

「そうは言っても、僕はそういうのには疎いよ?」

「だったら司令官の直感で選べばいいのよ」

ふむ。それだったら良いかな。僕は分かったよ、と三人に告げる。まあ二つの内から選ぶ位は出来なくもない。

「じゃあ私からね」

と雷さんが掲げたのはTシャツとワンピース。

「右手に持ってる方、かな。そっちの方が合っていると思うよ」

どちらも似合っていると思うけど。

「次は電なのです。司令官さん、どちらが良いと思いますか?」

次は妹の方だ。

「そうだね、そっちかな。その位の色合いだと、そっちのデザインが好みだね」

最後に龍驤さん。

「どっちか選んでぇな」

彼女が持っているのは暖色系と冷色系の服。

「左の薄い水色。いつも赤色の制服を着ているから、そっちの方が新鮮な感じはするよ」

そうやって感覚で選んだけど大丈夫なのかなと不安になるが、彼女達が喜んでいる様なので一先ず安心する。

 

 さて、そろそろ時間も良い頃合になったので帰りますか。

「そうや、鳳翔に買い物頼まれてたんや」

「何を頼まれてるの?」

「調味料が少なくなってるて言うてた」

「じゃあスーパーに寄りましょうか」

夕焼けの赤が街を染める。僕等はその中を賑やかに歩いて行く。こうして僕の休日は終わっていく。

偶にはこんな休日も良いなと思わなくもなかった。

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