「さて、僕達は此処で一週間滞在します。その間は誰かと行動する様にして、一人で居る事は極力避けて下さい」
との言で、提督の話は始まる。
「そして外出する時は必ずこの端末を持っていてね。何か有った時に対処出来る様に」
提督は普段一人一人に持たせてある、大本営配布の端末を見せながら話す。それはスマートフォンと基本内容は同じであるが、セキュリティ等々が強化された特別製。
「我々が今回する事、いや出来る事はただの二つ。聞く事と、見る事。君達には支部の艦娘達と話しをして欲しい。とは言っても何か聞き出して来いと強いる訳じゃないよ。それが出来たら有難いんだけど。世間話でも、なんなら自分の為になる戦闘上のアドバイスを聞くのも良いね」
ふむ。無理に聞く必要は無いと。
「見る事、とは具体的には何を見るんだ?」
話しの続きを促す。
「特に何かに注視しろ、という訳では無くて、何か様子が変に見えたら教えて欲しいという意味で言ったんだ」
ならば私たちは、基本的には支部の艦娘と談笑をすればいいのだな。
「後は演習が数回有るほかは、自由時間とするよ。けれど早めに帰ってくるんだよ? じゃあ解散」
皆がめいめいの行動に移る中、私は気になる事があったので提督の傍に寄る。
「なあ、ちょっといいか?」
「長門さん、どうした?」
「もし私達が有用な情報を得られなかった時はどうするんだ?」
「大丈夫だよ。ちゃんと別に手段は有るから」
「ほう、それは?」
「本人に直接聞く」
……その本人があんな風にしかSOSを出せない状況では、直接聞くのはリスクが高いと思うのだが。そう伝えると、彼は微かに笑みを浮かべこう言った。
「その時はその時だ。半月有った猶予が無くなっただけと捉えれば良いさ」
そのあとに小声で、
「まあどうせリスクなんて無くて有る様な物だから」
と続けた。それはどういう意味か尋ねようとしたが、既に提督はテレビを観る事に戻っていため、聞くタイミングを逃した。仕方が無いので私も一緒にテレビを見る事にした。
斯くして僕達の調査は始まった。期間は二週間程有るが、それ即ち猶予という訳でもない。かなりの確率でそれは縮まる。此方側はゼロからのスタートに対し、敵は(居るのならば)百からのコンティニュー。何か名案が有るでもなく、何で明暗が分かれるのかも不明。曖昧模糊、五里霧中、一寸先は闇。そんな言葉が合う様な状況に置かれて笑えない。リスクが嵩むし、不安は重なる。
僕は溜息を一つ吐いた。
何にせよ今から一週間後を一つの目安としよう。その頃には秦野さんも此方に来る予定となっているらしい。そして僕達も一旦鎮守府に戻る。そうと決まれば明日から早速行動し始めますか。流石に僕も今日位はゆっくり寛ぎたいし、そうしても罰は当たらないだろう。
アナウンサーが話すニュースを聞きながら、そんな事を思った。