彼の双眸に映る景色は   作:sophist

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29 猶予は未定―長門の場合

「さて、僕達は此処で一週間滞在します。その間は誰かと行動する様にして、一人で居る事は極力避けて下さい」

 との言で、提督の話は始まる。

「そして外出する時は必ずこの端末を持っていてね。何か有った時に対処出来る様に」

提督は普段一人一人に持たせてある、大本営配布の端末を見せながら話す。それはスマートフォンと基本内容は同じであるが、セキュリティ等々が強化された特別製。

「我々が今回する事、いや出来る事はただの二つ。聞く事と、見る事。君達には支部の艦娘達と話しをして欲しい。とは言っても何か聞き出して来いと強いる訳じゃないよ。それが出来たら有難いんだけど。世間話でも、なんなら自分の為になる戦闘上のアドバイスを聞くのも良いね」

ふむ。無理に聞く必要は無いと。

「見る事、とは具体的には何を見るんだ?」

話しの続きを促す。

「特に何かに注視しろ、という訳では無くて、何か様子が変に見えたら教えて欲しいという意味で言ったんだ」

ならば私たちは、基本的には支部の艦娘と談笑をすればいいのだな。

「後は演習が数回有るほかは、自由時間とするよ。けれど早めに帰ってくるんだよ? じゃあ解散」

 皆がめいめいの行動に移る中、私は気になる事があったので提督の傍に寄る。

「なあ、ちょっといいか?」

「長門さん、どうした?」

「もし私達が有用な情報を得られなかった時はどうするんだ?」

「大丈夫だよ。ちゃんと別に手段は有るから」

「ほう、それは?」

「本人に直接聞く」

……その本人があんな風にしかSOSを出せない状況では、直接聞くのはリスクが高いと思うのだが。そう伝えると、彼は微かに笑みを浮かべこう言った。

「その時はその時だ。半月有った猶予が無くなっただけと捉えれば良いさ」

そのあとに小声で、

「まあどうせリスクなんて無くて有る様な物だから」

と続けた。それはどういう意味か尋ねようとしたが、既に提督はテレビを観る事に戻っていため、聞くタイミングを逃した。仕方が無いので私も一緒にテレビを見る事にした。

 

 

 

 斯くして僕達の調査は始まった。期間は二週間程有るが、それ即ち猶予という訳でもない。かなりの確率でそれは縮まる。此方側はゼロからのスタートに対し、敵は(居るのならば)百からのコンティニュー。何か名案が有るでもなく、何で明暗が分かれるのかも不明。曖昧模糊、五里霧中、一寸先は闇。そんな言葉が合う様な状況に置かれて笑えない。リスクが嵩むし、不安は重なる。

 僕は溜息を一つ吐いた。

 何にせよ今から一週間後を一つの目安としよう。その頃には秦野さんも此方に来る予定となっているらしい。そして僕達も一旦鎮守府に戻る。そうと決まれば明日から早速行動し始めますか。流石に僕も今日位はゆっくり寛ぎたいし、そうしても罰は当たらないだろう。

 アナウンサーが話すニュースを聞きながら、そんな事を思った。

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