電さんの言葉を切っ掛けに斯くして歓迎会は始まったのだった。並べられた料理は鳳翔さん達が作ったらしい。僕はその料理に舌鼓を打ちながら、時折飛んでくる質問に答えたり、躱したり、或いは思い出話を聞いたり、笑い話に笑ったりしていた。隣席のキリは料理を黙々と食べていた。どうも人見知りしている様で、積極的に話すことはしなかった。二、三時間後には歓迎会というより最早半宴会と化し、軽巡重巡ががんがん飲酒し始めた。流石に駆逐艦組は飲んでいなかった様だが。
夜も深くなりキリ、電、雷、不知火を部屋に帰した。椅子に座って机に伏しているのは、酔い潰れた球磨、多摩、青葉。空母のお二方はそこまで酔っていないように見える。
「この三人は放っといていいですかね」
と僕は聞いてみる。よくもまあここまで飲んだものだと内心呆れていた。
「良いで。後で起こして部屋に帰らすし。そういうキミはお酒飲まんかったね」
「生憎下戸なもので」
からっきし飲めない僕はそう答え、手近にある皿を重ねて運ぶ。場に残った三人でどんちゃん騒ぎの後片付けをする。
鳳翔さんが洗った皿を拭いていると、龍驤さんが此方を見ているのが視界に映ったが僕は無視した。手元から目を離して皿を落としたりでもしたら大変だ。最悪足で受け止める事態に成りかねない。
「提督」
隣に居る鳳翔さんが声を発した。……ああ、僕の事か。遅れること数瞬、僕は反応した。
「何ですか?」
「明日はどうなさるのですか?」
そう言われて数秒思考する。
「ひとまず、明日は主な活動は有りませんね。書類とか、片付けなくてはいけませんし」
後は鎮守府内の地理や状況の把握とかかな、と伝える。
「そうですか。では他の皆さんにもそう伝えておきますね」
「よろしくお願いします」
十五分程度経ち食器を粗方片付けたところで、鳳翔さんに
「明日も早いでしょうから、先にお休みになってください」
と言われた。僕は遠慮したのだが頑として譲らない雰囲気を感じたので、その言葉に甘えることにした。
さて、と。
先程から此方をじいっと見ていた人に声を掛ける。
「何か用ですか? 龍驤さん」
「いや、なんもあらへんでー」
「そうですか、じゃあまた明日」
特に気にも留めず、僕はそう言って食堂のドアを開ける。
「また明日な~」
龍驤さんの伸びやかな声を聴きながら、僕は私室へと歩を進めた。
関西弁の少女は未だその後ろ姿を眺めていた。
そんな事も露知らず、僕は欠伸を噛み締めながら廊下を歩き、部屋で眠った。