彼の双眸に映る景色は   作:sophist

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32 有効な推定―球磨の場合

 五日目だクマ。今日は鳳翔と一緒に提督を見張るクマ。その提督は隣をゆったりと歩いている。

「どこに向かっているクマー?」

「第一から第四艦隊までの司令室。もしかしたら他の所も気付いてないだけかもしれないと思ったからね」

その返答通りにそれぞれの司令室を訪ねる提督。そして

「我々は第25支部総司令の命令で此処の内部調査をしている者だ。最近ある者の通報により、この支部内に不穏当な動きがある事が判明した。詳細は言えないが、貴官の艦隊の出撃における命中率、被弾率のデータを提出して欲しい。此処の安寧を守る為に、まさか拒否したりなんて司令官である貴方がする訳ないだろう?」

と大まかに言ってこんな事を、丁寧口調で口八丁に指令所と大義名分を振りかざしながら、目的の物を要求したクマ。提督は敵に回したら厄介なタイプだクマ、絶対に。

 結果、他の艦隊には異変は見られなかったクマ。こうなると異変を起こしているのはあの等々力っていう少年、という線も捨てられなくなるクマー。

「鳳翔はどう思うクマ?」

球磨はともに歩く鳳翔に聞いたクマ。

「正直の所、私には何も分かりません」

と力なく首を振る鳳翔。

「というか、スパイだとばらして良かったのかクマ?」

「うん。逆に公表した方が僕達に手出し出来ないかなって思ったから」

提督をチラっと見ても、いつもと変わらぬ無表情で何を考えてるかは分からない。その飄々とした態度が少し気に食わない。……しょうがないクマ。球磨の本気を見るがいいクマ。球磨は思考の海にダイブしたクマ。

 そんな事はお構いなしに提督はどこかに歩いて行くクマ。そのまま第24支部を出て、道すがら誰かに電話をかけるクマ。

「もしもし、紫野です。ヴェールヌイさん? ……いや、昼食を一緒にどうかなって。……うん。分かった。あ、じゃあ第三執務室で食べよう。丁度、等々力さんにも用が有ると言えなくもないし。……僕達の分? こっちで調達するよ。君達は食堂から昼食を運ぶ事になるけど良い? ……分かった。じゃあまた後で」

どうやら秘書艦ヴェールヌイに電話をした様だクマー。そして球磨達は街のスーパーに入ったクマ。

 

「あっ」

「どうしました?」

「飲み物を買うのを忘れてた」

 待ち合わせ場所の第三執務室前で、提督は飲み物を買っていない事に気付いたクマ。

「悪いけど、ちょっと二人で買ってきてくれないかな。僕はお茶で良いから」

と五百円玉を手渡されたクマ。

「まったく、しょうがないクマー」

僕は中で昼食の用意をしておくからとの言葉を聞いて、球磨と鳳翔は近くの自販機に向かったクマー。

 

 飲み物を持って執務室に入ると、もう用意は済んでいたクマ。鳳翔が提督に緑茶とお釣りを手渡す。

「あら? 自分の昼ご飯を食べないのですか?」

鳳翔の言葉に、提督の前に置かれているのを見るクマ。それは恐らくヴェールヌイが持ってきた昼食であろう。その彼女の前には、提督が買っていた菓子パンと弁当が置かれている。

「ああ、間宮さんが作る料理を今後の参考にしたいと思って、無理を言って交換してもらったんだ」

球磨たちの鎮守府では食事作りは当番制だから、当然提督も作る日があるクマ。でも何か引っかかるクマ。

「じゃあ皆揃ったし、頂きます」

それに合わせていただきますと食べ始める皆。球磨もいただきますクマ、と箸を手に取る。

 不意に、灰色の脳細胞が、活性化した。

 球磨は提督に向かって叫ぶ。

「提督、ストップだクマ!」

提督はそれを聞いたあとに、一口昼食を含み、嚥下してからこっちを向く。

「ん? 何?」

「どうして直ぐに止まらなかったクマ!」

「そんな急にストップと言われても。あと球磨さん、食事中は静かに」

と彼は白々しく答える。球磨は歯噛みしたクマ。球磨の両隣には鳳翔とヴェールヌイが座っていて、無理には動けない。それを良い事に、提督は食べるスピードを速めたクマ。

「球磨さん、どうしました?」

「……後で話すクマ」

口惜しさを滲ませながら、球磨は大人しくクリームパンをかじったクマ。

 

「つまり、今回の件は薬物によるものだったという訳クマ。誰かが食事に混入させて、それを食べた艦娘に異変が起きたという事だクマ」

 昼食後、第三執務室。球磨は自分の推測を話すクマ。

「おいおい、その推理は穴だらけじゃないか」

と白々しく言う提督。

「まず食事は全員分を纏めて作るらしいし、あと薬物だったら自覚症状は出るんじゃない?」

「じゃあ彼に聞くクマ。等々力さん、食事は第一第二艦隊と第三第四艦隊に分かれて食べるクマ?」

「うん、そうだ」

「じゃあ配膳は? 着席時に配膳はもう終わっているクマ?」

彼は首肯するクマ。

「つまり何かしらを入れる隙はあったクマ」

そして提督の方に向き直る。

「自覚症状が無かったのは、艦娘は丈夫だから、で説明できるクマ。それにこれだと提督が昼食を交換したことに意味を持たせることが出来るクマ」

「もし、ですよ。それが合っているならば……」

鳳翔が言葉を発する。

「そうだクマ。もし、さっきの料理に入っていたならば」

提督がにやりと陰鬱な笑みを浮かべ、口を開く。

「つまりはそういう事だね。球磨さんの推理も中々大したものだったよ。こじつけと牽強付会が多分に有るけど、実に僕好みの推論だ」

そう言うと提督は立ち上がり、

「さて行こうか。あ、等々力さん達も気を付けて下さいね」

と部屋の扉に向かって歩き始めたクマ。

 どうしてそんなに飄々というか軽佻浮薄としていられるのかと、少し不愉快だクマ。

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